コラム2007年09月03日 【ML耳より情報】 債務超過事業部門の会社分割(2007年9月3日号・№225)
債務超過事業部門の会社分割
会社法による債務超過会社の組織再編 会社法は、債務超過の組織再編成を認めました。簿価債務超過だけではなく時価で債務超過も含むと解説されています。合併に限らず、会社分割による債務超過部門の切出しも認められます。つまり、資産100、負債200の債務超過事業部門の切出しを認めたのが会社法です。しかし、会計、あるいは税法を考えると、理屈はそれほど簡単ではありません。
会社分割による債務超過事業部門の子会社化の会計処理 たとえば、会社分割により事業が資産100、負債120の債務超過事業部門を切り出し、100%子会社とするケースを考えてみます。子会社では、親会社の適正な帳簿価額で承継する資産・負債を受け入れます。承継する純資産額はマイナス20となるため、資本金は零とならざるをえず、その他利益剰余金をマイナス20と処理します。
一方、親会社では、移転する資産および負債は簿価での移転となり移転損益が生じません。子会社株式の取得価額は、移転した純資産額の簿価となります。しかし、簿価純資産額はマイナス20となるため、子会社の株式の交付を受けたにもかかわらず、その株式は有価証券には計上せず、「組織再編により生じた株式の特別勘定」との負債勘定で処理すると定められています。この特別勘定は、あくまで会計上の処理です。会社分割後の子会社株式の売却は、特別勘定を損益に振り替え通常の有価証券の会計処理に従って処理すると定められています。これに従えば、子会社株式を対価零円で売却したとしても、会計上は20の利益が発生してしまいます。さらに、この20のマイナスが分配可能利益に影響を与えるのかも読み解けません。
会社分割による債務超過事業部門の子会社化の税務処理 税務上の取扱いも明らかでないところがあります。100%子会社を創設する会社分割の適格要件は、その対価として子会社株式のみの交付を要求しているだけです。債務超過事業部門の会社分割であっても、継続保有要件さえ満たせば適格要件を満たし、分割時点での課税は生じないものと考えられます。子会社の税務上の資本金等の額および利益積立金は、法人税法施行令8条1項7号に従えば、資本金等の額をマイナス20と処理せざるをえません。一方、親会社での子会社株式の取得価額は、どのように処理すべきでしょうか。法人税法施行令119条1項7号では、「適格分社型分割により交付を受けた分割承継法人の株式は、当該適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額」と定めているだけです。会計上の「特別勘定」に相当する規定は見当たりません。税務上は、子会社株式をマイナスの取得価額とするのでしょうか。また、その子会社株式を売却した場合の取扱いも不明です。
マイナスが生じる組織再編成では、それが単なる債務引受けと評価されてしまうこともありえます。債務超過の組織再編成を認めたのは会社法であり、税法がこれをどのように位置付けるかについて、いまだ回答がでていないことを理解しておく必要があります。
taxMLグループ 公認会計士・税理士 大野貴史
会社法による債務超過会社の組織再編 会社法は、債務超過の組織再編成を認めました。簿価債務超過だけではなく時価で債務超過も含むと解説されています。合併に限らず、会社分割による債務超過部門の切出しも認められます。つまり、資産100、負債200の債務超過事業部門の切出しを認めたのが会社法です。しかし、会計、あるいは税法を考えると、理屈はそれほど簡単ではありません。
会社分割による債務超過事業部門の子会社化の会計処理 たとえば、会社分割により事業が資産100、負債120の債務超過事業部門を切り出し、100%子会社とするケースを考えてみます。子会社では、親会社の適正な帳簿価額で承継する資産・負債を受け入れます。承継する純資産額はマイナス20となるため、資本金は零とならざるをえず、その他利益剰余金をマイナス20と処理します。
一方、親会社では、移転する資産および負債は簿価での移転となり移転損益が生じません。子会社株式の取得価額は、移転した純資産額の簿価となります。しかし、簿価純資産額はマイナス20となるため、子会社の株式の交付を受けたにもかかわらず、その株式は有価証券には計上せず、「組織再編により生じた株式の特別勘定」との負債勘定で処理すると定められています。この特別勘定は、あくまで会計上の処理です。会社分割後の子会社株式の売却は、特別勘定を損益に振り替え通常の有価証券の会計処理に従って処理すると定められています。これに従えば、子会社株式を対価零円で売却したとしても、会計上は20の利益が発生してしまいます。さらに、この20のマイナスが分配可能利益に影響を与えるのかも読み解けません。
会社分割による債務超過事業部門の子会社化の税務処理 税務上の取扱いも明らかでないところがあります。100%子会社を創設する会社分割の適格要件は、その対価として子会社株式のみの交付を要求しているだけです。債務超過事業部門の会社分割であっても、継続保有要件さえ満たせば適格要件を満たし、分割時点での課税は生じないものと考えられます。子会社の税務上の資本金等の額および利益積立金は、法人税法施行令8条1項7号に従えば、資本金等の額をマイナス20と処理せざるをえません。一方、親会社での子会社株式の取得価額は、どのように処理すべきでしょうか。法人税法施行令119条1項7号では、「適格分社型分割により交付を受けた分割承継法人の株式は、当該適格分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額」と定めているだけです。会計上の「特別勘定」に相当する規定は見当たりません。税務上は、子会社株式をマイナスの取得価額とするのでしょうか。また、その子会社株式を売却した場合の取扱いも不明です。
マイナスが生じる組織再編成では、それが単なる債務引受けと評価されてしまうこともありえます。債務超過の組織再編成を認めたのは会社法であり、税法がこれをどのように位置付けるかについて、いまだ回答がでていないことを理解しておく必要があります。
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