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税務ニュース2004年05月31日 神戸地裁、「税務署員の税務代理権侵害行為」を認定せず(2004年5月31日号・№068) 税務代理権を巡る「正面対決」に、裁判所は、「行政寄り」の判断

神戸地裁、「税務署員の税務代理権侵害行為」を認定せず
税務代理権を巡る「正面対決」に、裁判所は、「行政寄り」の判断


 神戸地裁第6民事部(田中澄夫裁判長)は、平成16年2月26日、税理士である原告が、税務署員らによる違法な職務行為によって税務委任契約に基づく税務代理権を侵害され、同委任契約を破壊された旨主張して国家賠償請求をした事案について、「違法な職務行為は認められない」として、請求を棄却した(平成11年ワ2274号損害賠償請求事件)。

事件の概要
 兵庫県内に事務所を置く税理士が、熊本県内の税務署員らによる違法な職務行為によって、関与先2社との税務委任契約に基づく税務代理権を侵害され、関与先が同契約を解除するに至り、契約を破壊された旨主張して、顧問料の一部等の損害につき、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した。
 原告は、税務署員の違法な職務行為として、原告が税務委任契約を締結している関与先2社に対して、①「事前通知のない調査」、②「税理士の代理権を無視する発言」、③「税務調査の不当な打切り」、④「調査理由の不開示」、⑤「脅迫的発言」、⑥「その他の威圧的言動」を主張した。
 裁判所の認定事実によれば、関与先は、反面調査等の結果に基づき、青色申告承認の取消処分・消費税仕入れ税額控除否認の更正処分・消費税の過少申告加算税の賦課決定処分を受けることになり、原告との税務代理の委任契約を解除するに至っている。

税理士の代理権を巡り多様な争点で争われたが

 田中裁判長は、原告が主張する税務署員の「税理士の代理権の無視」について、認定事実から、争点について下記のとおり判示して、原告の請求を棄却した。本件は、「税理士の代理権」を正面から問う訴訟として注目されたが、第1審での税理士の主張は、全面的に斥けられた。原告は、判決を不服として、大阪高裁に控訴した。






原告(税理士)の主張
争 点
裁判所の判断
税務署員は、調査の際に、「税理士は関係ない。」などと税理士である原告の代理権を無視する発言をした。
(中略)日本の納税者が自らの権利利益を守る手だてとしては税理士による専門的な援助以外にないのであるから、税理士法に基づく税務代理人の立会権を無視することは許されない。
税理士の代理権を無視する発言

 本件で、税務署員らがそのような言動(「税理士は関係ない。」)を用いてまで税務調査を強行する必要性があったとはいえず、いずれも信用できない。また、仮に本件で税務署員らが税務調査につき税理士の立会いの要否に触れる発言をしたとしても、(中略)「税理士は関係ない」との税理士排除のニュアンスを含む発言のように誤解したことも想定され、いずれにせよ、原告の主張する前記事実は認められない。
 相当期間前の事前通知は、諸外国では調査の法定要件であり、日本の納税者についてのみそれを無視することは許されない。
事前通知のない調査
 本件で事前通知なく税務調査のため臨場した税務署員らの行為が、調査の必要性と被調査者の私的利益との衡量において、社会通念上相当な限度を超えているとみるべき事情が認められない。
 原告が調査理由の開示を求め、理路整然と発問したのに、同税務署員は発問に対する回答をせず、調査不可能と称して調査を中止した。
  被告は、関与先が調査の状況をビデオカメラで撮影したことを調査打切りの理由とするが、調査の経過はすべて明示されなければならない。
税務調査の不当な打切り  税務調査の際、原告らが調査現場をビデオカメラで撮影し、税務署員らが中止を求めても応じなかった事実も認められるところ、(中略)国家公務員が撮影されることを回避するため撮影中止を求め、それに応じない場合には撮影の対象となっている当日の税務調査自体を打ち切るということも相当な判断として是認できる。加えて、仮に税務署が調査を打ち切りがあったとしてもそのことが、税理士の代理権を侵害するものと解すべき理由はない。
 (前略)日本においても、法定手続の保障条項(憲法31条)から、生命、身体に次いで大切な財産権に対する侵害行為に対して納税者が適切に対処できるよう調査理由を示す必要があり、課税庁の不明確な裁量が許される余地はない。 調査理由の不開示等  調査理由の個別的、具体的告知が法律上、税務調書の一律の要件とされていない。(中略)本件で税務署員らに違法な行為があったとは認められない。
  調査理由をどの程度、個別具体的に明示するかは質問検査の実施の細目であり、税務署員の裁量に委ねられているものである。
 税務署員は、「①調査協力が得られなければ反面調査②青色申告申告承認の取消しと消費税の更正処分を行うことになる。」の脅迫的発言をした。 脅迫的発言  関与先が税務調査に応じなかったために反面調査等をせざるを得ず、その結果、青色申告承認の取消処分や更正処分として消費税の仕入税額控除の否認等が行われる可能性がある旨の税務上当然予想される取扱いや結果について説明する目的で前記発言をなしたものとみることができ、同職員らに原告らを脅迫する意図があったとは認められない。
 税務署員は、関与先の承諾なく、営業所内を我が物顔で行き来し、まるで承諾なく建物内に侵入することを容認しなければならないような威勢を示す行動をした。 その他の威圧的言動  認定事実に照らしても、そのような事情は認められない。
 税務署としては、調査に際して、調査対象者と税務代理を務める税理士との間の税務委任契約を殊更又は誤って破壊毀損しない注意義務を負うものである。(中略)同税務署員らは、両社の担当者に対し、前記のように青色申告承認の取消しをする旨脅迫し、原告に従っていれば納税の面で不利益を被ることを意識させ、そのような指導をする税理士に不信を感じるように仕向け、顧問契約ないし委任契約の解除につながらしめた。 契約破壊行為  税務署員が、原告と両社との税務委任契約が解除されることを意図し、あるいはその恐れを認識しつつ、敢えて原告と関与先との信頼関係を破壊するような行為をなし、もって税務委任契約が解除されるに至らしめたことを認めるに足る証拠はない。かえって、前記認定事実に照らすと、原告が両社から税務委任契約を解除されるに至ったのは、両社が税務署長から青色申告承認の取消処分や消費税等の更正処分等を受け、多額の税金の追加納付を余儀なくされたことが主たる原因であり、税務署員らの行為により信頼関係を破壊されたことが原因であるとは認めがたい。

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