コラム2008年03月10日 【ML耳より情報】 平成19年度減価償却改正の影響と対策(2008年3月10日号・№250)

平成19年度減価償却改正の影響と対策

償却方法のみなし選定とみなし承認
 平成19年度税制改正により新しい減価償却制度が導入されました。「旧定額法」を適用していた場合は新制度の「定額法」を、「旧定率法」を適用していた場合は新制度の「定率法」を選定したとみなされます。
 定率法から定額法のように償却方法を変更するときは、本来は新たな償却方法を採用する事業年度の開始の日の前日までに、変更申請書を提出し承認を受ける必要があります。改正に伴い、法人の場合、平成19年4月以後の最初に終了する事業年度で、償却方法を変更する場合は、その確定申告書の提出期限までに届出書を提出すれば、その提出をもって償却方法の変更の承認があったものとみなされるとの経過措置が置かれています。

新定率法と償却可能限度額の廃止の功罪  初年度に多額の償却費が計上される新定率法は、一定の利益水準を確保したい企業にとっては微妙な存在です。また、新定率法は旧定率法に比べて、償却額が急激に逓減していくため、損益計算に大きなインパクトを与え、業績の評価にあたって誤解を招きそうです。
 個人の場合には累進税率が適用されるため、損益の大きな変動により税負担が実質的増加するケースも生じます。さらに、所得税では、事後的に償却不足額を調整することができないため、通常の償却費の計算のみならず、残存価額1円までの償却についても慎重に行う必要があります。新しい償却方法に基づく計算は、平成19年4月1日以降取得資産から適用されています。それに対して、既存資産の1円までの均等償却は、個人の場合で平成20年分からスタートになり、適用に関してタイムラグがあるので注意が必要です。また、端数処理の取扱いの変更で、定額法の償却率が微妙に変化している点は計算に注意が必要です。

新しい減価償却制度の利用は有利なのか  新しい減価償却制度は、費用化が早まるだけでトータルの税負担は軽くなりません。新制度に合わせて臨時でシステムの導入などを行えば、企業にとってはコスト面でマイナスです。
 法人の場合は、旧定率法で計算しても、損金算入時期が遅れるだけです。仮に、残存価額を5%としておいても、除却時に減価償却不足額が除却損として調整されてしまいます。つまり、追加的なコスト負担をして、新定率法を適用する必然性はないと考えられます。
 耐用年数が2年の資産について、新定率法を適用すれば1年で償却できてしまう点は、節税思考には合致しているようにみえます。ところが、中小企業でニーズが高い決算対策との視点からは、月割計算の影響で大きな効果は期待できません。むしろ、決算対策なら、少額減価償却資産の方がずっと使い勝手がよいでしょう。
 税法上の新しい減価償却制度を、ただ漠然と受け入れるのではなく、会計方針として企業のニーズにマッチした減価償却方法を検討すべきタイミングです。

  taxMLグループ 税理士 飯田聡一郎

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