解説記事2009年06月15日 【ニュース特集】 定款変更認可前の相続発生、持分評価と債務控除の関係(2009年6月15日号・№310)
出資持分の定めのある医療法人→特定医療法人への移行
定款変更認可前の相続発生、持分評価と債務控除の関係
出資持分の定めのある医療法人の特定医療法人化に伴い出資持分を放棄する社員に、定款変更認可前に相続が発生した場合、当該出資持分は評価通達194?2で評価し、出資持分の放棄義務を併せて取得したとする債務控除も認められないと審判所が判断したことがわかった。
今回の特集では、出資持分の支払請求や相続に至った場合の多額の税負担等を踏まえて、特定医療法人化を決めた医療法人に関する未公開裁決事例(熊裁(諸)平20第18号)を紹介する。
出資者が社員総会で多数を占めるに至らず 出資持分の定めのある医療法人には、出資持分の払戻請求や出資持分を有する社員に相続が発生した場合、多額の税負担等が生じることがある。裁決事例の医療法人においても、出資持分の払戻請求、社員の相続を踏まえ、特定医療法人化することを決めている。また、当該医療法人の出資者は当該医療法人の理事である被相続人とその親族の計3人であり、その持分は、被相続人19,800口(99%)、A200口(1%)、B200口(1%)だが、被相続人を含めた3人で出資の100%が保有されているにもかかわらず、総数8名の社員総会では多数を占めるに至らないことから、社員の共存も踏まえた妥協的解決を図るため、当該医療法人の特定医療法人化とともに、当該医療法人の全額出資による2つの新たな医療法人の設立(実質的な医療法人の分割)が決められている(図1参照)。
被相続人等は特定医療法人化に伴い出資持分を放棄する
当該医療法人の特定医療法人化、新設医療法人の設立に係る主な経緯は、以下のようになる。
① 当該医療法人の平成14年5月29日の臨時株主総会において、当該医療法人の特定医療法人への移行を承認、可決。
② 被相続人等が平成14年6月29日付「基本合意書」を作成(次頁参照)。
③ 当該医療法人の平成14年11月20日の臨時株主総会において、当該医療法人が、特定医療法人の承認を得るためには、全社員が出資持分に係る払戻請求権の放棄をしなければならず、出資持分等を放棄する時期は平成15年3月の財務大臣による特定医療法人承認の内示を受けた後、定款変更の認可が下りた時となること、持分の定めのない社団に組織変更するため当該医療法人の定款変更の認可手続をすることなどについて、出席社員全員が了承、可決。
将来にわたる存続のため妥協を図ることは主観的事情 審査請求では、当該医療法人の定款変更が認可される前に、被相続人に係る相続が発生し(図2参照)、被相続人の配偶者が遺贈により被相続人の当該医療法人への出資持分を取得したことから、当該出資持分の評価、出資持分の放棄義務に係る債務控除の可否が争われた。
審査請求人(遺留分減殺請求により相続財産を取得した被相続人の長女)は、出資持分の評価について、①出資持分の放棄を履行する途中の段階であり、一般的な評価方法に従った価額とは異なる、②特定医療法人に出資持分の定めはなく、不特定多数の当事者間で自由な取引自体が起こり得ないので、出資持分の価額は零円と評価すべきなどと主張した(次頁参照)。
審判所は、相続税法22条に規定する「時価」である「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」、すなわち客観的な交換価値は、一方で、評価対象財産の価額に影響を及ぼすすべての客観的要素を考慮するとともに、他方においては、主観的な要素を排除しようとするものであると指摘している。
そのうえで、請求人が主張する本件出資持分は、特別の放棄の意思決定および特別の法定手続の拘束下にあるなどの事情は、当該医療法人、被相続人等が、将来にわたって存続し得るよう妥協を図ることを目的として、実質的に当該医療法人の分割を図りたいとの関係者の主観的事情であって、客観的交換価値である相続税法22条に規定する時価を算定する場合に、このような主観的事情を考慮することは相当ではないと判断した。
定款変更の認可により出資持分は消滅
また請求人は、出資持分に併せその放棄義務も取得したとして債務控除を適用したことについて、特定医療法人化に伴う本件放棄義務は確実な債務に該当するなどと主張した(下掲参照)。
審判所は、医療法人の定款変更による出資持分の消滅について、出資者による出資持分放棄の意思表示、定款変更に賛成する意思表示があっても、直接、その意思表示により出資持分が消滅するわけではなく、定款変更の決議により出資持分を有する出資者が、(将来に向かって)財産上の給付をしたり何らかの行為をすることが義務付けられるわけではないと指摘。
そして、この意思表示により被相続人に出資持分放棄の義務が生じたということはできず、その後、定款変更に係る認可申請書の提出を経て、都道府県知事による定款変更の認可があったことにより、被相続人の配偶者が遺贈により取得した被相続人の当該医療法人に対する出資持分が消滅したと判断。「出資持分の放棄義務」という被相続人の債務は存在しないとしている。

定款変更認可前の相続発生、持分評価と債務控除の関係
出資持分の定めのある医療法人の特定医療法人化に伴い出資持分を放棄する社員に、定款変更認可前に相続が発生した場合、当該出資持分は評価通達194?2で評価し、出資持分の放棄義務を併せて取得したとする債務控除も認められないと審判所が判断したことがわかった。
今回の特集では、出資持分の支払請求や相続に至った場合の多額の税負担等を踏まえて、特定医療法人化を決めた医療法人に関する未公開裁決事例(熊裁(諸)平20第18号)を紹介する。
出資者が社員総会で多数を占めるに至らず 出資持分の定めのある医療法人には、出資持分の払戻請求や出資持分を有する社員に相続が発生した場合、多額の税負担等が生じることがある。裁決事例の医療法人においても、出資持分の払戻請求、社員の相続を踏まえ、特定医療法人化することを決めている。また、当該医療法人の出資者は当該医療法人の理事である被相続人とその親族の計3人であり、その持分は、被相続人19,800口(99%)、A200口(1%)、B200口(1%)だが、被相続人を含めた3人で出資の100%が保有されているにもかかわらず、総数8名の社員総会では多数を占めるに至らないことから、社員の共存も踏まえた妥協的解決を図るため、当該医療法人の特定医療法人化とともに、当該医療法人の全額出資による2つの新たな医療法人の設立(実質的な医療法人の分割)が決められている(図1参照)。
被相続人等は特定医療法人化に伴い出資持分を放棄する
当該医療法人の特定医療法人化、新設医療法人の設立に係る主な経緯は、以下のようになる。① 当該医療法人の平成14年5月29日の臨時株主総会において、当該医療法人の特定医療法人への移行を承認、可決。
② 被相続人等が平成14年6月29日付「基本合意書」を作成(次頁参照)。
③ 当該医療法人の平成14年11月20日の臨時株主総会において、当該医療法人が、特定医療法人の承認を得るためには、全社員が出資持分に係る払戻請求権の放棄をしなければならず、出資持分等を放棄する時期は平成15年3月の財務大臣による特定医療法人承認の内示を受けた後、定款変更の認可が下りた時となること、持分の定めのない社団に組織変更するため当該医療法人の定款変更の認可手続をすることなどについて、出席社員全員が了承、可決。
将来にわたる存続のため妥協を図ることは主観的事情 審査請求では、当該医療法人の定款変更が認可される前に、被相続人に係る相続が発生し(図2参照)、被相続人の配偶者が遺贈により被相続人の当該医療法人への出資持分を取得したことから、当該出資持分の評価、出資持分の放棄義務に係る債務控除の可否が争われた。
審査請求人(遺留分減殺請求により相続財産を取得した被相続人の長女)は、出資持分の評価について、①出資持分の放棄を履行する途中の段階であり、一般的な評価方法に従った価額とは異なる、②特定医療法人に出資持分の定めはなく、不特定多数の当事者間で自由な取引自体が起こり得ないので、出資持分の価額は零円と評価すべきなどと主張した(次頁参照)。
審判所は、相続税法22条に規定する「時価」である「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」、すなわち客観的な交換価値は、一方で、評価対象財産の価額に影響を及ぼすすべての客観的要素を考慮するとともに、他方においては、主観的な要素を排除しようとするものであると指摘している。
そのうえで、請求人が主張する本件出資持分は、特別の放棄の意思決定および特別の法定手続の拘束下にあるなどの事情は、当該医療法人、被相続人等が、将来にわたって存続し得るよう妥協を図ることを目的として、実質的に当該医療法人の分割を図りたいとの関係者の主観的事情であって、客観的交換価値である相続税法22条に規定する時価を算定する場合に、このような主観的事情を考慮することは相当ではないと判断した。
定款変更の認可により出資持分は消滅
また請求人は、出資持分に併せその放棄義務も取得したとして債務控除を適用したことについて、特定医療法人化に伴う本件放棄義務は確実な債務に該当するなどと主張した(下掲参照)。審判所は、医療法人の定款変更による出資持分の消滅について、出資者による出資持分放棄の意思表示、定款変更に賛成する意思表示があっても、直接、その意思表示により出資持分が消滅するわけではなく、定款変更の決議により出資持分を有する出資者が、(将来に向かって)財産上の給付をしたり何らかの行為をすることが義務付けられるわけではないと指摘。
そして、この意思表示により被相続人に出資持分放棄の義務が生じたということはできず、その後、定款変更に係る認可申請書の提出を経て、都道府県知事による定款変更の認可があったことにより、被相続人の配偶者が遺贈により取得した被相続人の当該医療法人に対する出資持分が消滅したと判断。「出資持分の放棄義務」という被相続人の債務は存在しないとしている。

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