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都市・土地2026年06月26日 増加するデータセンターと近隣トラブル 執筆者:日置雅晴

 AIの需要などで、データ処理用のコンピューターや関連機器を多数収納するデータセンターの需要が世界中で急増している。
 日本でも、全国的にデータセンターの建設計画が急増しているが、それとともに建設計画に対して、地域住民などが反対するような事例も増えている。
 なぜデータセンターを巡って、地域での紛争が増えているのか、法律的な背景を考えてみよう。

 そもそも、様々な施設を作れる場所については、都市計画法により、都市計画区域内の市街化区域では用途地域というものが指定されており、その土地に指定された用途地域に応じて、建設可能な用途が定められており、これに適合した建築でない限り建築基準法による建築確認がおりない(建築できない)こととなっている。
 都市計画法では、13種類の用途地域が設けられており*1、それぞれに応じて建築可能なもの、建築できないものが定められている。ところが、建築基準法の用途規制は、低層住居専用地域については、住宅、寄宿舎など建築可能なものが定められているものの、それ以外の用途地域では、建築してはいけないものを定めるという形式をとっている。このため、以前からそれまで社会に存在しなかった新たな用途の施設・建築が出現したときには、都市計画による制限が適切に機能せず、地域トラブルになることがあった。ボーリング場、カラオケボックス、遺体安置所、ペット葬祭場など、それまでに存在しなかった施設が出現すると、その特殊性に基づく建築基準法上の用途規制が定められていないことから、近似の用途として建築が可能とされてしまい、地域トラブルが多発し、社会問題となってようやく後追い的に建築基準法の規制用途として新たな分類が設けられてきた。
 データセンターは、今のところ独立した規制対象とされていないことから、多くの事例は用途を事務所としたり、倉庫としたりして建築確認申請がなされているようだ。事務所なら規模にもよるが多くの用途地域に建設が可能となる。
 確かに昔は大企業などが計算機センターを設けていたことがあったが、大型計算機が設置され、それに関わる事務処理をする社員が多数勤務するというような形態で、事務所という扱いが妥当だったかもしれない。しかし現代のデータセンターはビル一杯に多くの機械が詰め込まれ、勤務する人はほとんどいないという点では、事務所とはまったく異なっている。他方で多量の電力が消費されるものの、物流などはほとんど無いという点では工場等とも異なっている。また、データセンターはなるべく多くの機器を収容するため、その地域の容積率一杯の建築が計画されることが多い。また、実際の地域の土地利用とは乖離した巨大建築になることも多く、機器の保全などのために、窓がほとんど無い巨大な建物が出現するなどで、地域景観に与える影響も大きい。
 ところが、このような深刻な問題を抱える施設の建設であっても、日本では都市計画法、建築基準法に適合しているとして、建築確認が認められてしまうと、近隣住民や地元自治体がいかに反対しようとも、それを強制的に調整して、建設の可否を判断するような行政手続きが存在していない。司法の場においても、行政許可の違法性を係争するか、調停などの強制力の無い手続きで話し合いを試みるか、ハードルの極めて高い民事の差し止め請求を考えるかなど、有効な対抗策が限られているのが現状である。
 トラブル急増を踏まえて、自治体によっては要綱や条例で規制を検討しているところも出てきた。東京都もまちと調和したデータセンターに向けたガイドライン*2を制定し、業界団体もガイドライン*3を制定するに至っている。
 しかし結局過去の経験からも、この種のトラブルは法的強制力の無いガイドラインや要綱では解決は困難であり、法的強制力を持った規制が不可欠であるため、まずは建築基準法上の用途規制にデータセンターを取り込むことが求められるが、法改正には時間がかかるので、集中が想定される地域では条例による規制なども検討が必要となる。
 それとともに、そもそも、巨大な建設計画や開発計画に対して、強制力を持った事業者と自治体や地域住民との協議調整が可能な仕組みを建築行政の中に取り入れる手続き的な制度改革も求められるところである。 

(2026年6月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

日置 雅晴ひおき まさはる

弁護士

略歴・経歴

略歴
1956年6月 三重県生まれ
1980年3月 東京大学法学部卒業
1982年4月 司法習修終了34期、弁護士登録
1992年5月 日置雅晴法律事務所開設
2002年4月 キーストーン法律事務所開設
2005年4月 立教大学法科大学院講師
2008年1月 神楽坂キーストーン法律事務所開設
2009年4月 早稲田大学大学院法務研究科教授

著書その他
借地・借家の裁判例(有斐閣)
臨床スポーツ医学(文光堂) 連載:スポーツ事故の法律問題
パドマガ(建築知識) 連載:パドマガ法律相談室
日経アーキテクチャー(日経BP社) 連載:法務
市民参加のまちづくり(学芸出版 共著)
インターネット護身術(毎日コミュニケーションズ 共著)
市民のためのまちづくりガイド(学芸出版 共著)
スポーツの法律相談(青林書院 共著)
ケースブック環境法(日本評論社 共著・2005年)
日本の風景計画(学芸出版社 共著・2003年)
自治体都市計画の最前線(学芸出版社 共著・2007年)
設計監理トラブル判例50選、契約敷地トラブル判例50選(日経BP社 共著・2007年)
新・環境法入門(法律文化社・2008年)
成熟社会における開発・建築規制のあり方(日本建築学会 共著・2013年)
建築生産と法制度(日本建築学会 共著・2018年)
行政不服審査法の実務と書式(日本弁護士連合会行政訴訟センター 共著・2020年)

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