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解説記事2010年03月15日 【ニュース特集】 みなし配当活用した節税の防止策、現物配当……etc.(2010年3月15日号・№346)

グループ税制の重要条文はこう読む・第2弾
みなし配当活用した節税の防止策、現物配当……etc.

 平成22年度税制改正の目玉であるグループ税制に関する改正法人税法(案)のなかには、読みにくいものも少なくない。そこで今回は、本誌342号に引き続き、重要条文の読み方・第2弾をお届けする。
 今回は、受取配当等の益金不算入規定を活用しつつ、株式譲渡損失のみを実現させる節税スキームや、新たな企業再編スキームとして注目される現物分配が「適格現物分配」となる範囲、グループ法人単体課税の適用上、譲渡元法人が合併した場合における課税繰延べの継続など、実務家なら押さえておきたい重要条文をチェックする。

自己株活用の節税防止策、引き続き譲渡損失の実現が可能?  平成22年度税制改正では、100%グループ法人間における固定資産等の譲渡損益を繰り延べるグループ法人単体課税制度が導入されたが、その背景にあったとされるのが、親会社が保有する子会社の株式を当該子会社に買い取らせることにより、受取配当等の益金不算入規定を活用しつつ、株式譲渡損失のみを実現させるという節税スキームの存在だ。
 平成22年度税制改正では、この節税スキームの防止策が併せて導入される。その内容は既に明らかにされているとおり、①100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益を計上しない、②自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、みなし配当に係る益金不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含む)を適用しない、というものだが、上述したグループ法人単体課税制度の導入の背景から、①と②の措置は、節税スキームの防止策としてセットで論じられることが多い。しかし、法人税法改正案により、①と②が同時適用されることはないことが明確にされているので留意したい。
 ①の措置を規定しているのが、改正法人税法61条の2第16項だ。同条文は肝となる部分において条文番号が引用されているためやや読みづらくなっているが、要するに、有価証券の譲渡に係る対価の額(法法61条の2①一)は有価証券の譲渡に係る原価の額(同二)に相当する金額とする(すなわち、対価の額と原価の額が一致)ことで、譲渡損益が発生しない仕組みを規定したものだ。
 一方、②の措置を規定しているのが改正法人税法23条3項だが、これには「第61条の2第16項(有価証券の譲渡益又は譲渡損の益金又は損金算入)の規定の適用があるものを除く」とのカッコ書きが付されており、②の適用対象から、①の適用を受けるケースが除外されている。
 つまり、①の適用により株式に係る譲渡損益が発生しない場合には、みなし配当に係る益金不算入規定が引き続き適用される一方、②の適用によりみなし配当に係る益金不算入規定が適用されないこととなる場合には、引き続き株式の譲渡損益が発生することになる。①の措置は100%グループ、②は100%グループ以外を想定したものであり、「100%グループ内における譲渡については譲渡損益を繰り延べる」というグループ法人単体課税制度との整合性を図っているものと考えられる。
 ただし、みなし配当に係る益金不算入制度の適用ができなくなれば、たとえ譲渡損失が発生したとしても、(取得価額が譲渡対価を上回らない限り)譲渡損失額を上回るみなし配当が益金に算入されることとなるため、節税メリットは存在しないこととなる(図1参照)。

現物配当先に外国法人等あれば全体が非適格に  平成22年度税制改正で、新たな組織再編スキームとして注目されているのが「現物配当」だ。この現物配当は、特に孫会社の子会社化において有用な手法となる。
 現行法人税法上、子会社が親会社に現物配当を行う際には、配当資産の簿価と時価の差額に対し、配当を行う子会社に課税が生じる。この税負担を避けるため、従来、孫会社の子会社化にあたっては、子会社が親会社に対し孫会社株を現物配当することはせず、会社分割の枠組みを使って孫会社株式を親会社に移転させる手法がとられていた。
 たとえば、伊勢丹(子会社)が三越伊勢丹HD(親会社)に行った、岩田屋(孫会社)の会社分割などはその典型であろう。伊勢丹は、その有する岩田屋株式を三越伊勢丹HDに無対価で分割しているが、実質的には株式の譲渡であり、現物配当として実施してもおかしくないケースといえる。しかし、上記の通り、現物配当によった場合には、配当を行う子会社に課税が生じることから、現物配当は選択されなかったものと考えられる。
 こうした中、平成22年度税制改正では、100%グループ内の内国法人間の現物配当(みなし配当を含む)を組織再編の一環として位置付け、譲渡損益の計上を繰り延べる措置が導入される。これにより、平成22年度税制改正以後は、現物配当を活用した、より簡易な企業再編が可能になる。
 この措置について、改正法人税法では、譲渡損益が繰り延べられる現物配当を「適格現物分配」と名付け、改正法人税法2条12号の15において下記のとおり定義している。
 この条文においてポイントとなるのが、「との間に」と「のみ」という文言だ。
 まず「当該内国法人との間に完全支配関係」という部分だが、これは「現物分配法人」と「現物分配により資産の移転を受ける者」が100%親子関係にあるという意味ではなく、あくまで同じ100%グループ内に属していればよいことを意味している。
 したがって、図2左のような関係はもちろん、図2右のような関係も、法人税法2条12号の15の要件を満たすことになる。
 図2右の適格現物分配により、図2右から図3のような企業グループへの再編も可能となる。
 もう1つのキーワードが「のみ」という文言だ。これは、「現物分配により資産の移転を受ける者」が、「内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る)」以外に存在してはならないとしている。
 したがって、図2右を例にとると、B社が外国法人や公益法人である場合には、「現物分配により資産の移転を受ける者」が、「内国法人との間に完全支配関係がある内国法人のみ(普通法人又は協同組合等に限る)」とはならないことから、C社に対するE社株の現物配当も「適格現物分配」には該当しないこととなる。

譲渡元法人が合併した場合における譲渡損益の行方  グループ法人単体課税制度では、100%グループ内において譲渡損益調整資産(固定資産、土地、有価証券、金銭債権、繰延資産(売買目的有価証券、簿価1,000万円未満の資産、棚卸資産を除く))の譲渡が行われた場合、譲渡元の法人において生じる譲渡損益は繰り延べられることになるが、その後、譲渡元の法人が合併により消滅してしまうケースが考えられる。
 この場合、譲渡元の法人において繰り延べられていた譲渡損益の取扱いが気になるが、この点について規定しているのが、改正法人税法61条の13第5項だ。
 この条文で示しているのは、譲渡元の法人が100%グループ内の法人と適格合併し、消滅したケース。たとえば、100%グループ内のA社からB社(譲受法人)に譲渡損益調整資産が譲渡され、A社において当該譲渡に係る譲渡損益が繰り延べられた後、A社(被合併法人)が100%グループ内のC社(合併法人)と適格合併したケースだ。改正法人税法61条の13第5項では、この場合、C社がA社の繰延譲渡損益を引き継ぐ旨を規定している。すなわち、A社とC社が合併した後、B社において譲渡損益調整資産の再譲渡、減価償却、評価替え、除却等があった場合(改正法法61条の13②)には、C社において、繰延損益が実現する。
 これに対し、A社が100%グループ外のD社と合併した場合には、法人税法61条の13第3項に規定する「当該内国法人が当該譲渡損益調整資産に係る譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなったとき」に該当することになり、課税の繰延べが終了することになる。
 このほか合併に関する規定として、改正法人税法61条の13第7項がある。100%グループ関係にあるA社(被合併法人)とB社(合併法人)の「非適格」合併によるA社の資産のB社への移転もグループ法人単体課税制度による課税繰延べの適用対象となるが(改正法法61条の13①)、法人税法上、非適格合併は「時価移転」となることから、両者の適用関係を整理するために設けられたのがこの規定。ここでは、課税繰延べを優先させるとした上で、A社が合併により解散してしまうことを受け、B社がA社の資産を「簿価」で引き継ぐとしている。

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