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コラム2010年11月15日 【編集部レポート】 議事録から読み解く会社法制部会第一読会の審議(1)(2010年11月15日号・№378)

編集部レポート
議事録から読み解く会社法制部会第一読会の審議(1)
具体的な論点、意見状況はどうなっているか

 会社法制の見直しに関する法務大臣の諮問を受けて法制審議会に会社法制部会(部会長:岩原紳作東京大学教授)が新設され、4月下旬の初会合以降、今号刊行までに第6回会議の開催を数えるに至った(第7回会議が11月24日開催予定)。この間、第3回会議までに論点の洗出し作業を終えた会社法制部会は、第4回会議から1巡目の実質審議を開始。「第一読会」として年内を目途に継続されるこの審議では、部会のメンバーたる委員・幹事において検討すべき個別の議論の背景にある事情や問題意識の共有が図られており、議論の方向性や結論は来年に入り開始される2巡目の審議「第二読会」以降で収斂されていく。本稿は、かかる第一読会で提示された具体的な論点や委員等からの意見の分布状況を、席上配付資料・議事録の記述に基づき、まとめて紹介するものである。

まず「企業統治の在り方」で2度の審議  第一読会の審議では、まず第4回・第5回会議で「企業統治の在り方」を検討。第6回会議で「親子会社に関する規律」の審議が開始、第7回会議でも継続される方針となっており、最終の第8回会議では「残された論点・その他」が検討予定。これまでのところ、当初のスケジュールどおりとなる(369号13頁参照)。
 部会における各回の審議では、検討すべき項目を取りまとめ、その背景事情等を併せて説明した「会社法制部会資料」が配付され、これに沿って議論が進められる。審議の対象となった論点もこの段階で明らかになる恰好であり、本稿では、各回ごと後日公表される「議事録」により当該論点の取上げ方を確認しつつ、委員等の意見状況とともに、これら公表資料中の記述のニュアンスを損なわないよう紹介していく。
 意見状況の紹介にあたっては、論点自体に関する端的な発言を中心とし、この観点から述べられる意見については委員・幹事の別なく(一意見として述べられる場合は部会長も同様に)紹介する。本稿中、委員等である大学教授・准教授は大学関係者として、また、企業に関わる役員等はその立場がわかるようにしながら会社関係者、市場の開設者・利用者は市場関係者などとして大きく括りながら掲げるものである。
 なお、部会のこれまでの動きについては、本誌の次の各号各頁を参考とされたい。
・法務大臣の諮問(2月24日)344号10頁
・第1回会議の開催(4月28日)354号10頁
・第2回会議の開催(5月26日)357号13頁
・第3回会議の開催(7月5日)361号11頁
・第4回会議の開催(8月25日)369号12頁
・第5回会議の開催(9月29日)373号10頁
・第6回会議の開催(10月20日)376号12頁

代表取締役の選定等に監査役が関与すべきか  今号では、企業統治の在り方に関する初回の審議のうち「第1 監査役の監査機能に関する検討事項」を取り上げる(論点について、表1参照。同日のうちに「第2 取締役会の監督機能に関する検討事項」も検討された)。

 ここではまず「1 監査役の権限」として、表中の論点1①に係る審議が行われた。何らかの意見を表明した計14名の意見の分布は表2のとおりとなっており、当該選定・解職権限の付与は制度の本質と整合し得ないとする意見を中心に、適正な選定・解職は取締役会の監督機能強化の問題であるとするもの(大学関係A)、制度上の権限は既に多くあり、それが機能しているか否かは個別の会社によるとするもの(大学関係D・F)などがある。

 なお、表中会社関係(監査)の立場からは、制度が機能しているという状況認識をするのかどうかが出発点であり、機能していないという声が内外から継続的に出てくるのだとすれば、そこをどう解消していけばよいのかについて議論をお願いしたい旨の要請があった。また市場関係Aの意見は、株主に対する説明責任を経営者が果たすように見守る機能について、これに必要な監査役の権限を法令等で明記するよう要請するものであった。
 会社関係(監査)の要請との絡みでは、大学関係Hにおいて、この問題が「監査役の役割につき、言わば従来の枠を超えたものをここで導入をして、従来の監査役の枠を超えたような機関にすべきかどうか」と整理されるとともに、この観点からみた当該選定・解職権限の付与は熟していない提案であるとされている。
 また、監査機能強化の方向性については何ら反対ではない(大学関係A)、監査役が非業務執行取締役としてそのような権限を行使することを可能とするなど選択肢を多様化することが監査機能に関する見直しのポイントではないか(関係官庁A)とする意見もあった。
 論点1②については、大学関係Gにおいて、解任の訴えの提起権が監査役の権限行使となじむ面がある一方、株主総会が解任決議を否決した場合に一定の株主が裁判所に訴えるという現行制度下の権限を監査役に付与することの整合性を検討すべきとしており、これを受けて大学関係Hからは、解任決議の否決を要する現行制度自体への違和感とともに「(制度を)もう一度考え直さなければいけないという面もあるのではないか」「(提起権付与を考えるとすると)非常に課題が多い」との認識が表明されている。
 なお、大学関係Cが、もともと上記のような総会決議の必要はないと思っているが、監査役の現行権限を考慮した場合、最大限の行動をしているのかわからないまま訴えに走ることには違和感がある旨を、また、大学関係Aは監査機能強化について触れるなかで、当該提起権の付与を「十分検討に値する」と述べている。

監査の実効性をどのように高めるかが課題  論点2の関連では、実効性を高める必要があることについて異論はみられないものの、制度的な手当てが必要か、運用の改善で足りるのかについては様々な意見が述べられている。
 まず、現にある権限を働かせる工夫、いわば底上げするための法整備が必要であるとして、たとえば、事業報告において監査役の監査費用に係る方針等を記載することとする意見(大学関係D)、現行制度に限界があるとして、監査役の指揮命令に服するようなスタッフ・体制の設置を確保することが検討されてしかるべきとする意見(大学関係I)がある。
 また、企業における内部監査・内部統制の負担感を踏まえ、監査役が非業務執行取締役を兼任できれば内部統制部門との連携がスムーズに図られ、実効性を高めることができるという効果もあるとする意見(関係官庁A)、これに対しては、監査役が内部監査部門の情報収集能力を活用する形でその監査機能を高めるという方向を本筋に据えて議論するのがよいのではないかとする意見(大学関係B)、会社法施行規則100条3項4号において「監査役と内部統制部門との連携に関する体制」というような明文があれば連携すべきことなどが明確になるとする意見(大学関係A)、企業の負担感等に賛同を示しつつ、現状の制度は改善の余地があるとする意見(大学関係F)などがみられる。
 一方、これらの多くが金融商品取引法の内部統制の話であり、会社法の受止め方の問題であることをまず確認すべきとし、その内容・制度構築は金商法の問題が大半であると指摘する意見もある(大学関係C)。
 改正論議に対しては、経営者が真摯に受け止め、まず対処して、体制の整備等について工夫を凝らすことが適切であるとする意見(会社関係(経営)A)が表明されている。
 会社関係(監査)からは、事業報告等において内部統制の運用状況に触れることにつき何らかの制度化が望ましいとし、「一歩踏み込んだ御検討を頂ければ」とする要請があった。
 なお、特に論点2(2)に絡むものとし、監査役の選任経緯等を指摘しながら、不祥事等の際に従業員の声や情報を的確に吸い上げられる仕組みとして従業員選任監査役制度の検討を要請する意見がある(会社関係(従業員))。これに対しては、問題の解決策が同制度に帰着しないこと(大学関係B)、当該監査役の責任関係の整理が難しいこと(法曹関係A)の指摘がある。

会計監査人選解任議案等の決定権は?  論点3は、(1)が監査役設置会社の場合、(2)が委員会設置会社の場合と分けられる。(1)につき会社関係(監査)の意見は、決定権を監査役に移すべきとするものである。決定権となったとき、監査役は合理的判断もできる立場にあり、心構えもあると述べている。
 関係官庁Bからはまずこの問題が論点2との関係でも、監査役と会計監査人が連携して監査の実を高める枠組みを制度的に確保する観点からも大切な問題であるとの意見が述べられた。
 次いで大学関係Jから、(イ)(現行制度のように)同意権と提案権があれば決定権と実質変わらない旨とともに、(ロ)監査役がその権限を実効的に行使できない状況があるとすると、それは法律の問題というよりは事実・実態の問題ではないか、(ハ)決定権の付与は業務執行になるとする指摘がなされている。大学関係Cは権限強化の一方で任期が4年であることへの疑問を表明、問題整理の必要性を指摘した。
 会社関係(経営)Aの意見は、監査役が既に持っている機能・権能を十分発揮できるように企業努力をすることになるとするものである。
 論点3(2)について述べられたのは、現行どおり執行役の権限として運用することで問題がない(会社関係(経営)A)、(1)と食い違う場合は制度としてわかりにくい(関係官庁B)、選任との関係で考え方の整理はやはり必要である(大学関係H)との意見であった。

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