解説記事2011年06月27日 【ニュース特集】 社会保障・税一体改革のポイントは(2011年6月27日号・№408)
各税目の改革の基本的方向性を示す
社会保障・税一体改革のポイントは
政府・与党で検討される社会保障・税一体改革は、消費税を含む税制抜本改革の姿を示すものとなる方向。特に社会保障改革の安定財源確保のための消費税率引上げについては、民主党社会保障と税の抜本改革調査会・税制改正PT総会や政府税制調査会等で激しい議論が行われている。また、社会保障・税一体改革では、「税制全体の抜本改革」として、個人所得税、法人税、消費課税、資産課税、地方税制などの改革の方向性が示される。
今回の特集では、社会保障・税一体改革における、税制抜本改革のポイントを整理する。
税制抜本改革の実施に係る条件を追加の方向 政府・与党社会保障改革本部成案決定会合は6月17日、「社会保障・税一体改革成案(案)」を公表し、(1)社会保障の安定財源確保の基本的枠組み、(2)税制全体の抜本改革、(3)社会保障・税一体改革のスケジュール等を明示した。
上記のうち(1)では、消費税率の段階的引上げに言及、(2)においては、主要税目の改革の方向性を示している。
具体的にみてみよう。まず、「成案(案)」は上記(1)において、消費税収(国・地方)は、今後、高齢者3経費を基本としつつ、「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用」(「社会保障4経費」)に充当する分野を拡充すると明記している。また、消費税率については、「まずは、2015年度までに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ、当面の社会保障改革にかかる安定財源を確保する」とした(図参照)。これらの内容は、平成21年度税制改正法附則104条の規定に則ったものとみることができよう(表1参照)。
しかし、消費税率引上げに対しては、民主党社会保障と税の抜本改革調査会・税制改正PT合同総会で異論が続出し、成案決定が難航している。実際に6月17日、20日の会合では、長時間にわたり執行部と出席議員との間で消費税率引上げの是非を巡り激しい議論がなされた。
激論となった民主党調査会・税制改正PT合同総会
こうした経緯から、上記(3)のうち税制抜本改革の実施に関して、①デフレ脱却と経済活性化に向けた取組みを通じた経済状況の好転の実現、②経済状況の好転を前提とした税制抜本改革の実施、③「経済状況の好転」は、震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極めて総合的に判断、④予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとすることが追加される方向となっている。
さらに、上記③④については、成案決定後、税制抜本改革法案の策定のなかで、十分検討し法制上必要な措置を具体化することとし、また、税制抜本改革は、不断の行政改革と歳出の無駄排除に注力しつつ、国民の理解を得ながら社会保障改革と一体で進めることが明記される模様だ。
なお、「成案(案)」では、「税制全体の抜本改革」として、主要税目の改革の方向性が示されている。この改革の方向性は、附則104条3項、平成22・23年度税制改正大綱に沿って、政府税制調査会が決定したものだ(表2参照)。
社会保障・税一体改革のポイントは
政府・与党で検討される社会保障・税一体改革は、消費税を含む税制抜本改革の姿を示すものとなる方向。特に社会保障改革の安定財源確保のための消費税率引上げについては、民主党社会保障と税の抜本改革調査会・税制改正PT総会や政府税制調査会等で激しい議論が行われている。また、社会保障・税一体改革では、「税制全体の抜本改革」として、個人所得税、法人税、消費課税、資産課税、地方税制などの改革の方向性が示される。
今回の特集では、社会保障・税一体改革における、税制抜本改革のポイントを整理する。
税制抜本改革の実施に係る条件を追加の方向 政府・与党社会保障改革本部成案決定会合は6月17日、「社会保障・税一体改革成案(案)」を公表し、(1)社会保障の安定財源確保の基本的枠組み、(2)税制全体の抜本改革、(3)社会保障・税一体改革のスケジュール等を明示した。
上記のうち(1)では、消費税率の段階的引上げに言及、(2)においては、主要税目の改革の方向性を示している。
具体的にみてみよう。まず、「成案(案)」は上記(1)において、消費税収(国・地方)は、今後、高齢者3経費を基本としつつ、「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用」(「社会保障4経費」)に充当する分野を拡充すると明記している。また、消費税率については、「まずは、2015年度までに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ、当面の社会保障改革にかかる安定財源を確保する」とした(図参照)。これらの内容は、平成21年度税制改正法附則104条の規定に則ったものとみることができよう(表1参照)。

【表1】附則104条1項と社会保障・税一体改革成案(案)の関連 |
○平成21年税制改正法附則104条1項 政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。 |
○社会保障・税一体改革成案(案)・抜粋 (社会保障の安定財源確保の基本的枠組み) 消費税収(国・地方)については、このうち国分が現在予算総則上高齢者三経費に充当されているが、今後は、高齢者三経費を基本としつつ、「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用」(「社会保障四経費」、平成21年度税制改正法附則104条)に充当する分野を拡充する。社会保障の安定財源確保に向けて、消費税収の規模とこれらの費用の関係を踏まえ、国・地方合わせた消費税収の充実を図る。 (消費税率の段階的引上げ) 社会保障給付の規模に見合った安定財源の確保に向け、まずは、2015年度までに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ、当面の社会保障改革にかかる安定財源を確保する。 (社会保障改革の安定財源確保と財政健全化の同時達成)・《2015年度における姿》 まずは、2015年度までに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ、国・地方合わせて、「機能強化」にかかる費用、高齢化の進行等により増大する費用及び基礎年金国庫負担2分の1を実現するために必要な費用(社会保障国民会議では、この3つの経費を合計して「機能強化」として試算している)、後代に付け回しをしている「機能維持」にかかる費用及び消費税率引上げに伴う社会保障支出等の増加に要する費用を賄うことにより、社会保障の安定財源確保を図る。これらの取組みなどにより、2015年度段階での財政健全化目標の達成が見込まれ、「社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成」への一里塚が築かれる。 |
しかし、消費税率引上げに対しては、民主党社会保障と税の抜本改革調査会・税制改正PT合同総会で異論が続出し、成案決定が難航している。実際に6月17日、20日の会合では、長時間にわたり執行部と出席議員との間で消費税率引上げの是非を巡り激しい議論がなされた。

激論となった民主党調査会・税制改正PT合同総会
こうした経緯から、上記(3)のうち税制抜本改革の実施に関して、①デフレ脱却と経済活性化に向けた取組みを通じた経済状況の好転の実現、②経済状況の好転を前提とした税制抜本改革の実施、③「経済状況の好転」は、震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極めて総合的に判断、④予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとすることが追加される方向となっている。
さらに、上記③④については、成案決定後、税制抜本改革法案の策定のなかで、十分検討し法制上必要な措置を具体化することとし、また、税制抜本改革は、不断の行政改革と歳出の無駄排除に注力しつつ、国民の理解を得ながら社会保障改革と一体で進めることが明記される模様だ。
なお、「成案(案)」では、「税制全体の抜本改革」として、主要税目の改革の方向性が示されている。この改革の方向性は、附則104条3項、平成22・23年度税制改正大綱に沿って、政府税制調査会が決定したものだ(表2参照)。
【表2】附則104条3項と税制抜本改革成案(案)の比較(抜粋) |
平成21年度税制改正法附則104条3項 | 税制抜本改革に係る成案(案) | |
格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、各種控除及び税率構造を見直し、最高税率及び給与所得控除の上限の調整等により高所得者の税負担を引き上げるとともに、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の検討を含む歳出面も合わせた総合的な取組の中で子育て等に配慮して中低所得者世帯の負担の軽減を検討すること並びに金融所得課税の一体化を更に推進すること。 | 個人所得課税 | 雇用形態や就業構造の変化も踏まえながら、格差の是正や所得再分配機能等の回復のため、各種の所得控除の見直しや税率構造の改革を行う。給付付き税額控除については、所得把握のための番号制度等を前提に、関連する社会保障制度の見直しと併せて検討を進める。金融証券税制について、金融所得課税の一体化に取り組む。 |
国際的整合性の確保及び国際競争力の強化の観点から、社会保険料を含む企業の実質的な負担に留意しつつ、課税ベース(課税標準とされるべきものの範囲をいう。第5号において同じ。)の拡大とともに、法人の実効税率の引下げを検討すること。 | 法人課税 | 企業の国際的な競争力の維持・向上、国内への立地の確保・促進、雇用と国内投資の拡大を図る観点から、国際的な協調や主要国との競争条件等にも留意しつつ、課税ベースの拡大等と併せ、法人実効税率の引下げを行う。地域経済の柱となり、雇用の大半を担っている中小法人に対する軽減税率についても、中小企業関連の租税特別措置の見直しと併せ、引下げを行う。 |
その負担が確実に国民に還元されることを明らかにする観点から、消費税の全額が制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられることが予算及び決算において明確化されることを前提に、消費税の税率を検討すること。その際、歳出面も合わせた視点に立って複数税率の検討等の総合的な取組を行うことにより低所得者への配慮について検討すること。 | 消費課税 | 消費税(国・地方)については、本成案に則って所要の改正を行う。いわゆる逆進性の問題については、消費税率(国・地方)が一定の水準に達し、税・社会保障全体の再分配を見てもなお対策が必要となった場合には、制度の簡素化や効率性などの観点から、複数税率よりも給付などによる対応を優先することを基本に総合的に検討する。 併せて、消費税制度の信頼性を確保するための一層の課税の適正化を行うほか、消費税と個別間接税の関係等の論点について検討する。 |
格差の固定化の防止、老後における扶養の社会化の進展への対処等の観点から、相続税の課税ベース、税率構造等を見直し、負担の適正化を検討すること。 | 資産課税 | 資産再分配機能を回復し、格差の固定化を防止する観点から、相続税の課税ベース、税率構造を見直し、負担の適正化を行う。これと併せ、高齢者が保有する資産の現役世代への早期移転を促し、その有効活用を通じた経済社会の活性化を図るとの観点から、世代を超えた資産格差の固定化にも配慮しつつ、贈与税を軽減する。また、事業承継税制について、運用状況等を踏まえ見直しを検討する。 |
地方分権の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進めること。 | 地方税制 | 地域主権改革の推進及び国と地方を通じた社会保障制度の安定財源の確保の観点から、地方消費税を充実するとともに、地方法人課税のあり方を見直すことなどにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築する。また、税制を通じて住民自治を確立するため、現行の地方税制度を「自主的な判断」と「執行の責任」を拡大する方向で改革する。 |
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