解説記事2011年10月10日 【平成23年度税制改正解説】 平成23年度税制改正における法人税関係の改正について(2011年10月10日号・№422)
平成23年度税制改正解説
平成23年度税制改正における法人税関係の改正について
浅野健次
はじめに
本稿は、平成23年4月27日に平成23年法律第29号として公布された「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「震災特例法」という。)」及び同年6月30日に平成23年法律第82号として公布された「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」による改正のうち法人税関係に関する部分について、その内容を紹介するものである。
法人税法関係
Ⅰ 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の導入に伴う改正
1 耐用年数の短縮特例 耐用年数の短縮特例について、国税局長の承認を受けた未経過使用可能期間をもって法定耐用年数とみなすことにより、その承認後は未経過使用可能期間で償却できる制度とされた(法令57)。
2 陳腐化償却 陳腐化償却制度が廃止された(旧法令60の2)。
3 確定申告書等の添付書類 確定申告書等の添付書類に、過年度事項の修正の内容を記載した書類が追加された(法規33一、35二、37の10一、37の12二、37の17二)。
Ⅱ 資本に関係する取引等に係る税制の見直し
1 100%グループ内の他の内国法人の株式の評価損
(1)資産の評価損 内国法人が、その内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人で次のものの株式又は出資を有する場合におけるその株式又は出資については、評価損の額を損金の額に算入しないこととされた(法法33⑤、法令68の3)。
イ 清算中の内国法人
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれる内国法人
ハ 内国法人でその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(2)連結納税の開始等に伴う資産の時価評価 連結子法人となる内国法人との間に完全支配関係がある次の内国法人の株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないものが、時価評価の対象外とされた(法令122の12①五)。
イ 清算中のもの
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれるもの
ハ その内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(3)非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価 株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人との間に完全支配関係がある次の内国法人の株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないものが、時価評価の対象外とされた(法令123の11①五)。
イ 清算中のもの
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれるもの
ハ その内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(4)その他 上記(1)の改正に伴い、連結子法人株式の投資簿価修正の事由となる評価換えについて評価損の額が損金算入されるものに限定する等の整備が行われた(法令9②二、33①二、48⑤、118の6②、119の3①二、122の2)。
2 解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入 適用年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、そのマイナスの資本金等の額を欠損金額と同様に損金算入の対象とすることとされた。具体的には、適用年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額の金額は、適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額から適用年度終了の時における資本金等の額を減算した金額とされた(法令118一)。
連結納税制度の場合には、連結事業年度終了の時におけるその解散した連結法人の連結個別資本金等の額が零以下である場合には、そのマイナスの連結個別資本金等の額を欠損金額と同様に損金算入の対象とすることとされた(法令155の2③)。
3 連結納税における期限切れ欠損金の損金算入 (1)会社更生等による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入 会社更生による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入及び民事再生による債務免除等があった場合(一定の評価を行う場合)の期限切れ欠損金の損金算入の制度について、損金算入の対象となる欠損金額から期限内の連結欠損金個別帰属額を控除しないこととされた(法令155の2①②)。
(2)連結欠損金からないものとする金額 会社更生による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入、民事再生による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入及び解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入の制度について、これらの制度による欠損金の損金算入額のうち期限内の連結欠損金個別帰属額から成る金額は、連結欠損金額から切り捨てることとされた(法法81の9⑤四、法令155の20⑨)。
4 適格組織再編成等の場合の欠損金の制限措置等 欠損金及び特定資産譲渡等損失額の制限額を移転資産の含み益の額までとする特例について、次の見直しが行われている。
(1)移転資産のうち移転を受けた法人の株式又は出資(すなわち移転を受ける法人にとっての自己株式)は、含み益の額の計算の基礎となる資産から除外することが明確化された(法令113⑤、123の9⑦)。
(2)移転資産が移転を受けた法人の株式又は出資のみである場合には、この特例を適用することによって欠損金及び特定資産譲渡等損失額の制限がないこととなるが、この特例を適用するための確定申告書への明細書の添付及び書類の保存は不要とされた(法令113⑥、123の9⑧)。
(3)移転資産に移転を受けた法人の株式又は出資とそれ以外の資産とが含まれる場合にこの特例を適用するために保存すべき書類から、移転を受けた法人の株式又は出資(すなわち移転を受ける法人にとっての自己株式)のその移転の直前等における価額及び帳簿価額を記載した書類が除外された(法規26の4②一、27の15の2②一)。
5 外国法人が行う現物出資
(1)外国法人が行う現物出資における課税繰延べ要件及び適格要件の見直し 次の改正が行われた。
イ 日本に支店等を有しない外国法人が内国法人に対して行う現物出資について課税繰延べが認められない旨の規定が廃止された(旧法令188①十八)。
ロ 上記イの改正に伴い、外国法人が内国法人に対して国外にある資産等の移転を行う現物出資が適格現物出資に該当しないこととされた(法法2十二の十四)。
ハ 日本に支店等を有する外国法人が内国法人に対して行う現物出資に係る追加的な課税繰延べ要件である事業継続要件及び株式管理要件が廃止されるとともに、現物出資後にこれらの要件を満たさなくなった場合の取戻し課税が廃止された。
上記ロの、「国外にある資産等」とは、国外にある事業所に属する資産又は負債をいう(法令4の3⑨)。ただし、国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権は、国外にある資産等から除かれている。
(2)その他の整備 上記(1)の改正に伴い、外国法人から適格現物出資により移転を受けた資産及び負債の取得価額は、その移転した資産及び負債のその移転の直前の帳簿価額に相当する金額とすることが明確化された(法令123の5)。なお、適格合併、適格分割、適格現物分配についても同様の整備が行われている(法令123の3、123の4、123の6)。
(注)上記の「帳簿価額に相当する金額」は、その取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とし、その資産又は負債が現物出資法人(公益法人等又は人格のない社団等に限る。)の収益事業以外の事業に属する資産又は負債であった場合にはその資産又は負債の価額として被現物出資法人の帳簿に記載された金額とする。
6 中小企業向け特例措置が適用されない大法人の100%子法人の範囲 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においてそのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人については、各事業年度の所得に対する法人税率及び特定同族会社の特別税率の中小企業向け特例措置を適用しないこととされた(法法66⑥三、67①、81の12、81の13)。
なお、貸倒引当金の法定繰入率等の租税特別措置法における中小企業向け特例措置についても、同様の改正が行われている。
7 その他
(1)利益積立金額の計算 適格合併による合併法人の利益積立金額の増加額について、被合併法人が公益法人等である場合には、その被合併法人のその適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の利益積立金額に相当する金額とされた(法令9①二)。
(2)連結子法人株式の投資簿価修正 連結子法人株式の投資簿価修正について、その連結子法人を合併法人又は分割承継法人若しくは分割法人とする適格合併又は適格分割型分割が行われていた場合に既修正額に調整を加える金額は、みなし配当の基因となる事由による投資簿価修正の場合には、その適格合併又は適格分割型分割に係る被合併法人又は分割法人若しくは分割承継法人の既修正額に相当する金額のみとし、これらの法人の最終利益積立金額に相当する金額は調整の対象としないこととされた(法令9④)。
(3)株式交換等により取得した株式交換完全子法人等の株式の取得価額 100%グループ内の非適格株式交換(すなわち、株式交換完全子法人の資産の時価評価課税がされないもの)で、株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人又はその親法人のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないもの(すなわち、株主の旧株の譲渡損益課税が繰り延べられるもの)により株式交換完全親法人が取得をした株式交換完全子法人の株式の取得価額が、適格株式交換により取得をした株式交換完全子法人の株式の取得価額と同様に、旧株主が50人未満である場合には旧株主が有していたその株式交換完全子法人の株式のその株式交換の直前の帳簿価額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)と、旧株主が50人以上である場合にはその株式交換完全子法人の簿価純資産価額に相当する金額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)とされた(法令119①九)。
株式移転の場合についても同様とされている(法令119①十一)。
(4)欠損金の引継ぎに係る制限 適格合併による欠損金の引継ぎについて、その適格合併の日と同日に、その適格合併に係る被合併法人を合併法人とする別の適格合併が行われていた場合、その適格合併に係る被合併法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の残余財産が確定していた場合又は、その適格合併に係る合併法人を合併法人等とする適格組織再編成等が行われていた場合にも、その適格合併に係る合併法人又は被合併法人の設立の日から継続して支配関係がある場合の引継ぎ制限の適用除外措置の対象外とされ、引継ぎ制限の適用対象とされた(法令112④二)。
連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法令155の19⑦二)。
(5)特定同族会社の留保金額から控除する住民税の額 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の留保所得の計算上留保金額から控除する住民税の額の計算の基礎となる法人税の額について、租税特別措置法の一部改正に伴い、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除制度(措法42の5の2)による控除税額及び追加課税額並びに雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(措法42の12)による控除税額を控除する(追加課税額は加算する)こととされた(法令139の10)。
(注)雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度にあっては、中小企業者(措法42の12①)が適用を受ける場合に限る。
また、留保金額から控除する住民税の額の計算の基礎となる法人税の額について、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度のうち中小企業技術基盤強化税制(措法42の4⑥)及び試験研究費の増加額又は平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る税額控除制度(措法42の4⑨)並びに中小企業等基盤強化税制のうち教育訓練費の総額に係る税額控除制度(措法42の7⑤)による税額控除額を控除することとされた。
(注)試験研究費の増加額又は平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る税額控除制度にあっては、中小企業技術基盤強化税制の適用を受ける中小企業者(措法42の4⑥)が適用を受ける場合に限る。
連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法令155の25)。
(6)みなし連結欠損金の帰属連結事業年度の整備 特定連結子法人の連結加入前の欠損金額等のうち連結欠損金額とみなされるものの帰属連結事業年度について、適格合併の場合のみなし連結欠損金額と同様に、その特定連結子法人の最初連結事業年度開始の日(加入日)の属する連結親法人の連結事業年度開始の日以後に開始したその特定連結子法人の事業年度において生じた欠損金額等の帰属連結事業年度が、連結親法人のその加入日の属する連結事業年度の前連結事業年度となることが明確化された(法令155の19①)。
Ⅲ 減価償却資産の範囲の見直し
公共施設等運営権が、減価償却資産(無形固定資産)とされた(法令13八ル)。
Ⅳ 棚卸資産の評価方法の見直し
切放し低価法が廃止された(旧法令28②)。
Ⅴ 仮決算の中間申告の見直し
次の場合には、仮決算による中間申告書を提出することができないこととされた(法法72①ただし書)。
(1)前事業年度の確定法人税額の6月分相当額の金額が10万円以下である場合又は前事業年度の確定法人税額の6月分相当額の金額がない場合
(2)仮決算による中間税額の金額が前事業年度の確定法人税額の6月分相当額の金額を超える場合
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法法81の20①ただし書)。
Ⅵ 更正による還付加算金の計算期間の見直し
(1)確定申告に係る更正による所得税額等の還付
① 還付加算金の計算期間の見直し 確定申告に係る更正による所得税額等の還付金について、確定申告書の提出期限(その申告書が期限後申告書である場合には、その申告書を提出した日)の翌日から更正の日の翌日以後1月を経過する日(注)までの期間が、還付加算金の計算期間から除外された(法法133②)。
(注)更正の請求に基づく更正である場合には、更正の請求の日の翌日以後3月を経過する日と更正の日の翌日以後1月を経過する日とのいずれか早い日となる。
② その他の明確化 次の事由により所得税額等の控除不足額が増加した場合についても、更正の請求に基づく更正の場合と同様に、その増加額を還付すべきこと及び還付加算金を計算すべきことが明確化された(法法133①)。
イ 更正の請求に対する処分に係る不服申立てについての決定又は裁決
ロ 更正の請求に対する処分に係る訴えについての判決
(注)不服申立て又は訴えの対象となる更正の請求に対する処分は、具体的には、更正すべき理由がない旨の通知処分又は一部認容の更正処分がこれに該当する。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法法133①②)。
(2)確定申告に係る更正又は決定による中間納付額の還付
① 還付加算金の計算期間の見直し イ 更正(ロに該当する場合の更正を除く。)により中間納付額の控除不足額が増加した場合の還付金について、確定申告書の提出期限の翌日から更正の日の翌日以後1月を経過する日(注)と還付金の支払決定日又は充当日とのいずれか早い日までの期間を、還付加算金の計算期間から除外することとされた(法法134④)。
(注)更正の請求に基づく更正である場合には、更正の請求の日の翌日以後3月を経過する日と更正の日の翌日以後1月を経過する日とのいずれか早い日となる。
ロ 決定に係る更正(更正の請求に基づく更正を除きます。)により中間納付額の控除不足額が増加した場合の還付金について、その更正が後発的事由(注)に基づき行われた更正である場合には、確定申告書の提出期限の翌日から更正の日の翌日以後1月を経過する日と還付金の支払決定日又は充当日とのいずれか早い日までの期間を、還付加算金の計算期間から除外することとされた(法法134④)。
(注)後発的事由とは、所得の金額の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたこと、その事実のうちに含まれていた取り消し得べき行為が取り消されたこと及び国税通則法第58条第5項(還付加算金)に規定する政令で定める理由をいう(法法134④二イ(2)、法令174②)。
② その他の明確化 イ 次の事由により中間納付額の控除不足額が増加した場合についても、更正の請求に基づく更正の場合と同様に、その増加額を還付すべきこと及び還付加算金を計算すべきことが明確化された(法法134②)。
(イ)更正の請求に対する処分に係る不服申立てについての決定又は裁決
(ロ)更正の請求に対する処分に係る訴えについての判決
ロ 次の事由により中間納付額の控除不足額が増加した場合についても、決定に係る更正の場合と同様に、その増加額を還付すべきこと及び還付加算金を計算すべきことが明確化された(法法134②)。
(イ)決定に係る不服申立てについての決定又は裁決
(ロ)決定に係る訴えについての判決
ハ 確定申告書の提出期限後に中間納付額が納付された場合には、還付加算金の計算の基礎となる期間に算入しない期間の開始の日を、中間納付額の納付の日の翌日とすることが明確化された(法法134④一・二)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法法134①②④)。
Ⅶ 取引先等に対する調査の対象物件の見直し
法人税の取引先等に対する調査の対象に、「帳簿書類以外の物件」が含まれることが明確化された(法法154①②)。
Ⅷ 罰則の見直し
故意に「納税申告書を法定申告期限までに提出しないことにより税を免れた者」について、5年以下の懲役若しくは500万円以下(脱税額が500万円を超える場合には、情状により脱税額以下)の罰金に処し、又はこれを併科することとされた(法法159③④)。
租税特別措置法(法人税)関係
Ⅰ 法人税率の特例関係
中小企業者等の法人税率の特例制度の適用期限が平成24年3月31日まで延長された(措法42の3の2①②)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の8①②)。
Ⅱ 税額控除関係
1 エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制)
(1)適用期限の延長 即時償却措置の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された(措法42の5⑥)。
(2)繰越税額控除限度超過額の控除限度額の調整 繰越税額控除限度超過額の税額控除について、後述の「2 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」制度の創設に伴い、同制度における税額控除の適用を受けることにより控除される金額がある場合には、税額控除限度額は、当期の法人税額の20%に相当する金額からその控除される金額を控除した残額を限度とすることとされた(措法42の5③)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の10③⑥)。
2 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(環境関連投資促進税制)(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人が、現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律(平成23年法律第82号)の施行の日(平成23年6月30日)から平成26年3月31日までの間に、エネルギー環境負荷低減推進設備等(新エネルギー利用設備等、二酸化炭素排出抑制設備等及び省エネビルシステム(エネルギー使用合理化設備及びエネルギー使用制御設備をいう。)をいう。)の取得又は製作若しくは建設(以下「取得等」という。)をし、その取得等の日から1年以内にその法人の事業の用に供した場合には、一定の要件の下に、エネルギー環境負荷低減推進設備等の取得価額の30%の特別償却(中小企業者等については、30%の特別償却と7%の税額控除(特別控除税額は当期の法人税額の20%を限度とし、税額控除限度超過額は1年間の繰越しができる。)とのいずれかの選択適用)ができるというものである(措法42の5の2)。
国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は
3 法人税額の特別控除(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人で総合特別区域法(平成23年法律第81号)に規定する指定法人に該当するものが、同法の施行の日から平成26年3月31日までの間に、国際戦略総合特別区域内において、特定機械装置等の取得又は製作若しくは建設(以下「取得等」という。)をして、特定国際戦略事業の用に供した場合には、その特定機械装置等の取得価額の50%(建物等については、25%)の特別償却と15%(建物等については、8%)の税額控除(特別控除税額は当期の法人税額の20%を限度とし、税額控除限度超過額は、1年間の繰越しができる。)との選択適用を行うことができるというものである(措法42の11)。
ただし、この制度は、国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例(措法60の2)との選択適用とされている(措法60の2①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の15)。
4 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除(雇用促進税制)(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人のうちこの制度の適用を受けようとする事業年度等における離職者についての要件を満たすものが、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、雇用者数の増加等についての要件を満たす場合において、その法人が雇用保険法の適用事業を行っているときは、その事業年度の所得に対する法人税額から、20万円にその法人の増加雇用者数を乗じて計算した金額を控除することができるというものである(措法42の12①)。ただし、この場合の特別控除税額は、当期の法人税額の10%(その法人が中小企業者等である場合には、20%)を限度とすることとされている(措法42の12①後段)。
5 その他の税額控除 次の制度の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された。
① 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例(措法42の4の2、68の9の2)
② 事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業等基盤強化税制)(措法42の7、68の12)
Ⅲ 特別償却関係
1 特定高度通信設備の特別償却(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人で中小企業者に該当するもののうち電気通信基盤充実臨時措置法に規定する実施計画の認定を受けたものが、電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律(平成23年法律第59号)の施行の日(平成23年8月31日)から平成25年3月31日までの間に、その実施計画に記載された特定高度通信設備でその製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得等をして、これを過疎地域等の条件不利地域において当該法人の事業の用に供した場合には、初年度において取得価額の15%の特別償却を行うことができるというものである(措法44の5)。
2 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却等
(1)障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度に係る適用要件の追加 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度について、現行の適用要件との選択適用で、次の適用要件が追加された(措法46の2①)。
・ 次の①及び②の要件を満たしていること。
① 基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が50%以上であること。
基準雇用障害者数とは、当該事業年度終了の日における公共職業安定所長の証明を受けたその法人の常時雇用する障害者の数を合計した数をいう(措法46の2②四、措令29の2⑥)。
また、重度障害者割合とは、基準雇用障害者数に対する当該事業年度終了の日における公共職業安定所長の証明を受けたその法人の常時雇用する重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者を合計した数の割合をいう(措法46の2②五、措令29の2⑦)。
なお、現行の適用要件における短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については1人を2人とする、いわゆるダブルカウントで計算するが、今回追加された適用要件では、ダブルカウントなしで計算する。また、短時間労働者については、1人を0.5人として計算する(措規20の17)。
② 当該事業年度終了の日における雇用障害者数が障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第1項に規定する法定雇用障害者数以上であること。
法定雇用障害者数とは、その雇用する労働者の数に1.8を乗じて得た数をいう。
(2)障害者対応設備等の特別償却制度の廃止 障害者対応設備等の特別償却制度が廃止された(旧措法46の2②、旧措令29の2③~⑦、旧措規20の18①~③)。
(3)適用期限の延長 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度の適用期限が、平成26年3月31日まで延長された(措法46の2①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の31、措令39の60、旧措規22の39、措規22の38)。
3 次世代育成支援対策に係る基準適合認定を受けた場合の建物等の割増償却(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人が、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に開始する各事業年度において、次世代育成支援対策推進法の次世代育成支援対策に係る基準に適合するものである旨の認定(その期間内において最初に受けるものに限る。)を受けた場合には、その認定を受けた日を含む事業年度終了の日において有する建物等で事業の用に供されているもの(その認定に係る同法の一般事業主行動計画の計画期間開始の日からその事業年度終了の日までの期間内において取得等をしたものに限る。)について、その普通償却限度額の32%の割増償却ができるというものである(措法46の4)。
4 その他の特別償却
(1)次の制度の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された。
① 集積区域における集積産業用資産の特別償却(措法44、68の20)
② 資源需給構造変化対応設備等の特別償却(措法44の2、68の21)
(2)次の制度について、所要の整備を講じた上、適用期限が平成24年3月31日まで延長された。
① 公害防止用設備の特別償却(措法43、68の16)
② 事業革新設備の特別償却(措法44の2、68の21)
③ 共同利用施設の特別償却(措法44の3、68の24)
(3)次の制度について、所要の整備を講じた上、適用期限が平成25年3月31日まで延長された。
① 船舶の特別償却(措法43、68の16)
② 関西文化学術研究都市の文化学術研究地区における文化学術研究施設の特別償却(措法43の2、68の17)
③ 新用途米穀加工品等製造設備の特別償却(措法44の4、68の25)
④ 医療用機器等の特別償却(措法45の2、68の29)
⑤ 高齢者向け優良賃貸住宅の割増償却(措法47、68の34)
⑥ 特定再開発建築物等の割増償却(措法47の2、68の35)
⑦ 倉庫用建物等の割増償却(措法48、68の36)
(4)次の制度について、所要の経過措置を講じた上、廃止することとされた。
① 地震防災対策用資産の特別償却(旧措法44、68の19)
② 障害者対応設備等の特別償却(旧措法46の2、68の13)
③ 事業所内託児施設等の割増償却(旧措法46の4、68の33)
④ 植林費の損金算入の特例(旧措法52、68の38)
Ⅳ 準備金等関係
1 中小企業等の貸倒引当金の特例 公益法人等又は協同組合等の割増率の適用に関する特例の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された(措法57の10)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の59)。
2 その他の準備金
(1)石採取場及び露天石炭採掘場に係る特定災害防止準備金制度の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された(措法55の6、68の45)。
(2)農業経営基盤強化準備金制度について、所要の整備を講じた上、適用期限が平成25年3月31日まで延長された(措法61の2、68の64)。
Ⅴ 土地税制関係
1 収用等に伴い代替資産を取得した場合等の課税の特例 土地等が農地法の規定に基づいて買収され、対価を取得する場合の措置が廃止された(旧措法64①四)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の70)。
2 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除(1,500万円特別控除) 適用対象に、総合特別区域法第2条第2項第5号イ又は第3項第5号イに規定する共同して又は一の団地若しくは主として一の建物に集合して行う事業の用に供する土地の造成に関する事業で、都市計画その他の土地利用に関する国又は地方公共団体の計画に適合した計画に従って行われるものであることその他の一定要件に該当するものとして市町村長又は特別区の区長が指定したものの用に供するために買い取られる場合が追加された(措法65の4①十四の二)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の75)。
3 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例
(1)既成市街地等の内から外への買換えに係る措置の見直し 既成市街地等の内から外への買換えに係る措置について、次の見直しが行われた。
① 譲渡資産の除外 譲渡資産の範囲から店舗が除外された(旧措令39の7②)。
② 買換資産の見直し 買換資産のうち農業及び林業以外の事業の用に供されるものを都市計画法第7条第1項の市街化区域と定められた区域のうち同項ただし書の規定により区域区分を定めるものとされている区域内にあるものに限定することとされた(措法65の7①表一)。
(2)都市開発区域等及び誘致区域の外から内への買換えに係る措置の見直し 都市開発区域等及び誘致区域の外から都市開発区域等の内への買換えに係る措置について、次の見直しが行われた。
① 対象区域の除外 都市開発区域等の範囲から、半島振興対策実施地域及び離島振興対策実施地域が除外された(旧措令39の7⑥二ハ・ニ)。
② 譲渡資産の見直し 都市開発区域のうち次の区域内にあるものについては、事務所、工場、作業場、研究所、営業所、倉庫その他これらに類する施設として使用されている建物又はその敷地の用に供されている土地等に限定することとされた(措法65の7①表五、措令39の7④)。なお、福利厚生施設については、これらに類する施設には含まれない。
イ 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地
ロ 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域
ハ 首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律施行令別表に掲げる区域
(3)内航海運業用以外の日本船舶から日本船舶への買換えに係る措置の見直し 買換資産となる日本船舶について、次の船舶とすることとされた(措法65の7①表十、措令39の7⑨、平23.6.30農林水産省・国土交通省告示3、平23.6.30国土交通省告示695)。
① 建造の後事業の用に供されたことのない船舶のうち環境への負荷の低減に資する船舶として国土交通大臣及び農林水産大臣が財務大臣と協議して指定するもの
環境への負荷の低減に係る要件については、これまでは漁船以外の日本船舶のうち中古船にのみ課されていたが、新造船を含めたすべての日本船舶に対して、この要件を課すこととされた。
② 買換資産に該当する船舶(以下「買換船舶」という。)の進水の日からその買換船舶の取得の日までの期間がその買換船舶に係る譲渡資産に該当する船舶(以下「譲渡船舶」という。)の進水の日からその譲渡船舶の譲渡の日までの期間未満である場合のその買換船舶のうち環境への負荷の低減に資する船舶として国土交通大臣及び農林水産大臣が財務大臣と協議して指定するもの(①に該当するものを除く。)
すべての中古船に対して、買換船舶の船齢が譲渡船舶の船齢を下回っていることとする要件を課すこととされた。また、外航船舶及び内航船舶の環境への負荷の低減に係る要件が厳格化されるとともに、漁船に対してもこの要件を課すこととされた。
なお、上記①及び②の環境への負荷の低減に係る要件の具体的な内容については、外航船舶、内航船舶及び漁船の区分に応じて、農林水産大臣・国土交通大臣告示により定められている(平23.6.30農林水産省・国土交通省告示3)。
(4)適用措置の除外 次の買換えに係る措置について除外された。
① 大気汚染規制区域の内から外へのばい煙発生施設の買換えに係る措置(旧措法65の7①表二)
② 騒音規制地域の内から外への騒音発生施設の買換えに係る措置(旧措法65の7①表三)
③ 水質汚濁規制水域の特定施設等及び公共用水域の湖沼特定施設等の買換えに係る措置(旧措法65の7①表四)
④ 市街化区域又は既成市街地等の内から外への農林業用資産の買換えに係る措置のうち、林業用資産の買換え(旧措法65の7①表五)
⑤ 誘致区域の外から内への買換えに係る措置のうち、次の区域に係るもの
イ 流通業務市街地の整備に関する法律の流通業務地区(旧措法65の7①表七)
ロ 中小企業高度化事業により整備される区域(旧措令39の7⑤二)
ハ 港湾法の臨港地区又は港湾区域内の公有水面の埋立てに係る埋立地の区域(旧措令39の7⑤三)
ニ 卸売市場法の都道府県卸売市場整備計画において近代的な地方卸売市場を開設すべき地区として定められた区域(旧措令39の7⑤四)
ホ 農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められている区域(旧措令39の7⑤五)
ヘ 沖縄県の区域のうち農業振興地域内にある農用地等の区域(旧措令39の7⑤六)
ト 国又は都道府県が行う土地改良法の土地改良事業により造成された埋立地又は干拓地の区域(旧措令39の7⑤七)
チ 中心市街地の活性化に関する法律の認定中心市街地の区域(旧措令39の7⑤八)
⑥ 農村地域及び誘致区域の外から農村地域工業等導入地区の内への買換えに係る措置(旧措法65の7①表八)
⑦ 既成市街地等内における土地の計画的かつ効率的な利用に資する買換えに係る措置のうち、都市再開発法の認定再開発事業計画に係るもの(旧措令39の7⑦)
⑧ 市街化区域又は既成市街地等内における建物の高層化に伴う買換えに係る措置(旧措法65の7①表十一)
⑨ 既成市街地等内における特定民間再開発事業の施行による中高層耐火建築物への買換えに係る措置(旧措法65の7①表十二)
⑩ 特定整備区域内にある木造貸家住宅から中高層貸家住宅への買換えに係る措置(旧措法65の7①表十三)
⑪ 防災再開発促進地区内における認定建替計画による買換えに係る措置(旧措法65の7①表十六)
⑫ 内航日本船舶から内航日本船舶以外の減価償却資産への買換えに係る措置(旧措法65の7①表十八)
(5)適用期限の延長 制度(国内にある土地等、建物又は構築物で、所有期間が10年を超えるものから国内にある土地等、建物、構築物若しくは機械装置又は鉄道事業用車両運搬具への買換えを除く。)の適用期限が、平成26年3月31日まで延長された(措法65の7①、65の8①、65の9)。
なお、連結納税制度の場合についても、上記(1)~(5)と同様の改正が行われている(措法68の78~68の80、措令39の106)。
4 認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内にある土地等の交換等の場合等の課税の特例
(1)圧縮限度額の引下げ 圧縮限度額が、交換取得資産等の取得価額から所有隣接土地等の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額の80%(改正前:100%)に引き下げられた(措法65の13①)。
なお、圧縮予定限度額についても、同様に引き下げられている(措法65の14①)。
(2)対象区域の見直し 適用対象となる認定事業用地の区域が、都市再生特別措置法第2条第3項に規定する都市再生緊急整備地域内に限定された(措令39の9の2①一)。
(3)適用期限の延長 特例の適用期限が、平成25年3月31日まで延長された(措法65の13①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の84①、68の85①、措令39の109)。
Ⅵ その他の特別措置関係
1 国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例(創設) この制度は、青色申告書を提出する内国法人で総合特別区域法の施行の日(平成23年8月1日)から平成26年3月31日までの間に同法の指定を受けた指定特定事業法人に該当するものが、国際戦略総合特別区域内において行われる特定国際戦略事業のうち規制の特例措置等の適用を受けて行われる事業に係る所得の金額を有する場合には、その指定の日から5年間、その金額の20%の所得控除ができるというものである(措法60の2)。ただし、国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11)との選択適用とされており、また、認定研究開発事業法人等の課税の特例(措法60の3)の適用を受ける法人は、この制度の適用を受けることができない。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の63の2)。
2 認定研究開発事業法人等の課税の特例(創設) この制度は、青色申告書を提出する内国法人で、各事業年度終了の日において特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法の施行の日から平成26年3月31日までの間に同法の研究開発事業計画又は統括事業計画の認定を受けた認定研究開発事業法人又は認定統括事業法人に該当するものが、これらの計画に記載された研究開発事業又は統括事業に係る所得の金額を有する場合には、その認定の日から5年間、その金額の20%の所得控除ができるというものである(措法60の3)。
ただし、認定研究開発事業法人については、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(措法42の4)又は国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11)との選択適用とされており、認定統括事業法人については、国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11)との選択適用とされている。また、この制度の適用を受ける法人は、国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例(措法60の2)の適用を受けることができない。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の63の3)。
(注)特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案は、現在、国会において審議中である。
3 技術研究組合の所得計算の特例
(1)試験研究用資産の範囲の見直し 試験研究用資産の範囲から、土地並びに建物及びその附属設備が除外された(措令39の21)。
(2)適用期限の延長 制度の適用期限が、平成25年3月31日まで延長された(措法66の10①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の94①)。
4 農林中央金庫の合併等に係る課税の特例〔農林中央金庫等の合併に係る課税の特例〕 消費生活協同組合等の現物出資に係る措置が除外された(旧措法68の2②、旧措令39の34の2②③、旧措規22の19の5②)。
5 中小企業向け特例措置が適用されない大法人の100%子法人の範囲 法人税法の改正に伴い、普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において、そのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人については、次の措置を適用しないこととされた。
① 中小企業等の貸倒引当金の特例における貸倒引当金の法定繰入率(措法57の10、68の59)
② 交際費等の損金不算入制度における中小企業者に係る600万円の定額控除(措法61の4、68の66)
③ 中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置における中小企業者等の適用除外(措法66の13、68の98)
6 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対する寄附金の損金算入等の特例
(1)認定NPO法人が認定を取り消された場合の取戻し課税の創設 認定NPO法人がその認定を取り消された場合には、取消しの基因となった事実が生じた日を含む事業年度からその取消しの日を含む事業年度の前事業年度までの各事業年度においてその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額で各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額に相当する金額の合計額は、認定を取り消された法人のその取消しの日を含む事業年度において行う収益事業から生じた収益の額とみなすこととされた(措法66の11の2⑨)。すなわち、認定を取り消されたNPO法人がその取消しの基因となる事実が生じた日を含む事業年度から認定の取消しの日を含む事業年度の前事業年度までの間に損金算入したみなし寄附金の額は、その取消しの日を含む事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されることとなる。
認定を取り消されたNPO法人がその取消しの日に収益事業を行っていないときは、そのNPO法人がその取消しの日において新たに収益事業を開始したものとみなすこととされている。この場合には、その取消しの日を含む事業年度とみなされる期間が1年に満たないときであっても、その期間の税額の計算における800万円までの軽減税率の適用については、800万円をその期間の月数に応じて按分しないこととされている(措法66の11の2⑩)。すなわち、そのNPO法人のみなし寄附金相当の取戻しによる所得金額の800万円以下の部分については、軽減税率が適用されることとなる。
なお、認定を取り消されたNPO法人がその取消しの日において収益事業を行っておらず、その後同日を含む事業年度終了の日までの間に収益事業を開始したときは、法人税法第13条及び第14条の規定にかかわらず、その取消しの日からその開始した日の前日までの期間及びその開始した日からその事業年度終了の日までの期間をそれぞれそのNPO法人の事業年度とみなすこととされている(措法66の11の2⑪)。
(2)認定要件の見直し ① パブリック・サポート・テストについて、経常収入金額のうちに寄附金等収入金額の占める割合が5分の1以上であることとされた(措令39の23①一イ)。
(注)経常収入金額のうちに寄附金等収入金額に占める割合については、原則として3分の1とされていたが、NPO法人が平成15年4月1日から平成23年6月30日までの間に申請書を提出した場合には特例として5分の1とすることとされていた。今回の改正において、この特例を廃止し、原則として5分の1とすることとされたものである。
② パブリック・サポート・テストについて、次の要件を追加し、選択して適用できることとされた。
イ 実績判定期間内の各事業年度における判定基準寄附者の数の合計数に12を乗じてこれを実績判定期間の月数で除して得た数が100以上であること
判定基準寄附者とは、実績判定期間内の各事業年度における同一の者からの寄附金(寄附者の氏名及び住所又は名称及び主たる事務所の所在地が明らかな寄附金に限る。)の総額が3,000円以上である場合のその同一の者をいい、その法人の役員である者及び役員と生計を一にするものは判定基準寄附者には含まないこととされている。このとき、寄附者が個人である場合にその事業年度の寄附金の総額が3,000円以上であるかどうかの判定に当たっては、その寄附者と生計を一にする者からの寄附金の額を含めて判定することとされている。
また、判定基準寄附者の数は、その事業年度における個人である判定基準寄附者とその判定基準寄附者と生計を一にする他の判定基準寄附者とを1人として計算することとされている(措令39の23①一ロ、措規22の12⑥)。
なお、実績判定期間の月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とすることとされている(措令39の23⑳)。
ロ 認定を受けようとするNPO法人が、認定の申請書を提出した日の前日において、地方税法第37条の2第1項第4号に掲げる道府県民税の寄附金税額控除の対象となる寄附金又は同法第314条の7第1項第4号に掲げる市町村民税の寄附金税額控除の対象となる寄附金を受け入れる特定非営利活動法人として都道府県又は市区町村の条例で指定されている法人(その条例を制定した都道府県又は市区町村の区域内に事務所を有するNPO法人に限る。)であること(措令39の23①一ハ)
また、認定を受けようとするNPO法人がこの要件を満たす場合には、「実績判定期間における共益的活動割合が50%未満であること」の要件について、その共益的活動の範囲から「便益の及ぶ者が特定の地域に居住する者等である活動」を除くこととされた(措令39の23①二ロ)。
③ 経常収入金額のうちに寄附金等収入金額の占める割合を簡易な計算式により判定することができる小規模法人の特例について、適用期限の定めのない措置とされた(措令39の23⑰)。
④ 認定を受けたことのない法人が認定を受けようとする場合には、その法人の実績判定期間は、直前に終了した事業年度終了の日以前2年内に終了した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日からその終了の日までの期間とされた(措令39の23③)。
⑤ その他規定の整備が行われている。
7 その他 次の制度の適用期限が、それぞれ次の期限まで延長された。
① 商工組合等の留保所得の特別控除(措法61) 平成24年3月31日
② 退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止(措法68の4) 平成26年3月31日
震災特例法関係
Ⅰ 震災損失の繰戻しによる法人税額の還付
この制度は、法人の平成23年3月11日から平成24年3月10日までの間に終了する各事業年度又は平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間において生じた欠損金額のうち、繰戻対象震災損失金額がある場合には、その開始の日前2年以内に開始した事業年度の法人税額のうちその繰戻対象震災損失金額に対応する部分の金額の還付を受けることができるというものである(震災特例法15)。連結納税制度においても、同様の措置が講じられている(震災特例法23)。
Ⅱ 仮決算の中間申告による所得税額の還付
この制度は、法人の平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間において生じた震災損失金額がある場合には、その中間期間に係る仮決算の中間申告において、その震災損失金額を限度として、その課された所得税の額で法人税の額から控除しきれなかった金額を還付するというものである(震災特例法16)。連結納税制度においても、同様の措置が講じられている(震災特例法24)。
Ⅲ 中間申告書の提出不要
東日本大震災に係る国税通則法第11条の規定による申告期限の延長により、中間申告書の提出期限とその中間申告書に係る確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合には、その中間申告書の提出を要しないこととされた(震災特例法17)。連結中間申告の場合も同様とされている(震災特例法25)。
この国税通則法第11条の規定による申告期限の延長は、国税通則法施行令第3条第1項の規定による国税庁長官の告示(平成23年国税庁告示第8号)によるもののほか、納税者の申請に基づき税務署長がする同条第2項の規定による個別の期限延長もこれに該当する。
Ⅳ 被災代替資産等の特別償却
この制度は、法人が、平成23年3月11日から平成28年3月31日までの間に、
① 東日本大震災により滅失し、又は損壊した一定の建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機又は車両及び運搬具に代わるもので、その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得等をして、これらの資産をその法人の事業の用に供した場合
② 建物若しくは構築物又は機械及び装置で、その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得等をして、被災区域及びその被災区域である土地に付随して一体的に使用される土地の区域内において、これらの資産をその法人の事業の用に供した場合
に、特別償却ができるというものである(震災特例法18)。連結納税制度の場合についても、同様の制度が創設されている(震災特例法26)。
Ⅴ 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例
この制度は、法人が、平成23年3月11日から平成28年3月31日までの期間内に、
① 被災区域内にある土地又はこれとともに建物若しくは構築物の譲渡をして、その譲渡の日を含む事業年度において国内にある土地又は減価償却資産の取得をした場合
② 被災区域外にある土地、建物又は構築物の譲渡をして、その譲渡の日を含む事業年度において被災区域内にある土地又は減価償却資産の取得をした場合
で、かつ、その取得の日から1年以内にその取得をした資産(以下「買換資産」という。)を事業の用に供したとき又は供する見込みであるときは、その買換資産につき、譲渡益の額(圧縮限度額)の範囲内で、その買換資産の帳簿価額を損金経理により減額したとき等について、圧縮記帳を行うことができるというものである(震災特例法19)。買換えの態様、課税繰延割合等を除いては、租税特別措置法の特定の資産の買換えの場合等の課税の特例(措法65の7)と同様の仕組みとなっている。
また、特別勘定を設けた場合(震災特例法20)及びこの制度の対象となる譲渡資産を交換した場合(震災特例法21)についても、同様の措置が講じられており、これらの取扱いについても現行制度に倣ったものとなっている。連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(震災特例法27~29)。
Ⅵ 代替資産の取得期間等の延長の特例
法人が、東日本大震災に起因するやむを得ない事情により、収用等に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例(措法64の2)の規定の適用を受けた場合の代替資産又は特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例(措法65の8)の規定の適用を受けた場合の買換資産の取得をすべき期間(その期間の末日が平成23年3月11日から平成24年3月31日までの間にあるものに限られる。)内に取得することが困難となった場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、その期間を経過した日以後2年以内で税務署長が認定した日まで、取得をすべき期間の延長をすることができることとされた(震災特例法22)。連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(震災特例法30)。
平成23年度税制改正における法人税関係の改正について
浅野健次
はじめに
本稿は、平成23年4月27日に平成23年法律第29号として公布された「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「震災特例法」という。)」及び同年6月30日に平成23年法律第82号として公布された「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」による改正のうち法人税関係に関する部分について、その内容を紹介するものである。
法人税法関係
Ⅰ 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の導入に伴う改正
1 耐用年数の短縮特例 耐用年数の短縮特例について、国税局長の承認を受けた未経過使用可能期間をもって法定耐用年数とみなすことにより、その承認後は未経過使用可能期間で償却できる制度とされた(法令57)。
2 陳腐化償却 陳腐化償却制度が廃止された(旧法令60の2)。
3 確定申告書等の添付書類 確定申告書等の添付書類に、過年度事項の修正の内容を記載した書類が追加された(法規33一、35二、37の10一、37の12二、37の17二)。
Ⅱ 資本に関係する取引等に係る税制の見直し
1 100%グループ内の他の内国法人の株式の評価損
(1)資産の評価損 内国法人が、その内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人で次のものの株式又は出資を有する場合におけるその株式又は出資については、評価損の額を損金の額に算入しないこととされた(法法33⑤、法令68の3)。
イ 清算中の内国法人
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれる内国法人
ハ 内国法人でその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(2)連結納税の開始等に伴う資産の時価評価 連結子法人となる内国法人との間に完全支配関係がある次の内国法人の株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないものが、時価評価の対象外とされた(法令122の12①五)。
イ 清算中のもの
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれるもの
ハ その内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(3)非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価 株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人との間に完全支配関係がある次の内国法人の株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないものが、時価評価の対象外とされた(法令123の11①五)。
イ 清算中のもの
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれるもの
ハ その内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
(4)その他 上記(1)の改正に伴い、連結子法人株式の投資簿価修正の事由となる評価換えについて評価損の額が損金算入されるものに限定する等の整備が行われた(法令9②二、33①二、48⑤、118の6②、119の3①二、122の2)。
2 解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入 適用年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、そのマイナスの資本金等の額を欠損金額と同様に損金算入の対象とすることとされた。具体的には、適用年度終了の時における資本金等の額が零以下である場合には、適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額の金額は、適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額から適用年度終了の時における資本金等の額を減算した金額とされた(法令118一)。
連結納税制度の場合には、連結事業年度終了の時におけるその解散した連結法人の連結個別資本金等の額が零以下である場合には、そのマイナスの連結個別資本金等の額を欠損金額と同様に損金算入の対象とすることとされた(法令155の2③)。
3 連結納税における期限切れ欠損金の損金算入 (1)会社更生等による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入 会社更生による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入及び民事再生による債務免除等があった場合(一定の評価を行う場合)の期限切れ欠損金の損金算入の制度について、損金算入の対象となる欠損金額から期限内の連結欠損金個別帰属額を控除しないこととされた(法令155の2①②)。
(2)連結欠損金からないものとする金額 会社更生による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入、民事再生による債務免除等があった場合の期限切れ欠損金の損金算入及び解散の場合の期限切れ欠損金の損金算入の制度について、これらの制度による欠損金の損金算入額のうち期限内の連結欠損金個別帰属額から成る金額は、連結欠損金額から切り捨てることとされた(法法81の9⑤四、法令155の20⑨)。
4 適格組織再編成等の場合の欠損金の制限措置等 欠損金及び特定資産譲渡等損失額の制限額を移転資産の含み益の額までとする特例について、次の見直しが行われている。
(1)移転資産のうち移転を受けた法人の株式又は出資(すなわち移転を受ける法人にとっての自己株式)は、含み益の額の計算の基礎となる資産から除外することが明確化された(法令113⑤、123の9⑦)。
(2)移転資産が移転を受けた法人の株式又は出資のみである場合には、この特例を適用することによって欠損金及び特定資産譲渡等損失額の制限がないこととなるが、この特例を適用するための確定申告書への明細書の添付及び書類の保存は不要とされた(法令113⑥、123の9⑧)。
(3)移転資産に移転を受けた法人の株式又は出資とそれ以外の資産とが含まれる場合にこの特例を適用するために保存すべき書類から、移転を受けた法人の株式又は出資(すなわち移転を受ける法人にとっての自己株式)のその移転の直前等における価額及び帳簿価額を記載した書類が除外された(法規26の4②一、27の15の2②一)。
5 外国法人が行う現物出資
(1)外国法人が行う現物出資における課税繰延べ要件及び適格要件の見直し 次の改正が行われた。
イ 日本に支店等を有しない外国法人が内国法人に対して行う現物出資について課税繰延べが認められない旨の規定が廃止された(旧法令188①十八)。
ロ 上記イの改正に伴い、外国法人が内国法人に対して国外にある資産等の移転を行う現物出資が適格現物出資に該当しないこととされた(法法2十二の十四)。
ハ 日本に支店等を有する外国法人が内国法人に対して行う現物出資に係る追加的な課税繰延べ要件である事業継続要件及び株式管理要件が廃止されるとともに、現物出資後にこれらの要件を満たさなくなった場合の取戻し課税が廃止された。
上記ロの、「国外にある資産等」とは、国外にある事業所に属する資産又は負債をいう(法令4の3⑨)。ただし、国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利、鉱業法の規定による鉱業権及び採石法の規定による採石権は、国外にある資産等から除かれている。
(2)その他の整備 上記(1)の改正に伴い、外国法人から適格現物出資により移転を受けた資産及び負債の取得価額は、その移転した資産及び負債のその移転の直前の帳簿価額に相当する金額とすることが明確化された(法令123の5)。なお、適格合併、適格分割、適格現物分配についても同様の整備が行われている(法令123の3、123の4、123の6)。
(注)上記の「帳簿価額に相当する金額」は、その取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とし、その資産又は負債が現物出資法人(公益法人等又は人格のない社団等に限る。)の収益事業以外の事業に属する資産又は負債であった場合にはその資産又は負債の価額として被現物出資法人の帳簿に記載された金額とする。
6 中小企業向け特例措置が適用されない大法人の100%子法人の範囲 普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合においてそのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人については、各事業年度の所得に対する法人税率及び特定同族会社の特別税率の中小企業向け特例措置を適用しないこととされた(法法66⑥三、67①、81の12、81の13)。
なお、貸倒引当金の法定繰入率等の租税特別措置法における中小企業向け特例措置についても、同様の改正が行われている。
7 その他
(1)利益積立金額の計算 適格合併による合併法人の利益積立金額の増加額について、被合併法人が公益法人等である場合には、その被合併法人のその適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の利益積立金額に相当する金額とされた(法令9①二)。
(2)連結子法人株式の投資簿価修正 連結子法人株式の投資簿価修正について、その連結子法人を合併法人又は分割承継法人若しくは分割法人とする適格合併又は適格分割型分割が行われていた場合に既修正額に調整を加える金額は、みなし配当の基因となる事由による投資簿価修正の場合には、その適格合併又は適格分割型分割に係る被合併法人又は分割法人若しくは分割承継法人の既修正額に相当する金額のみとし、これらの法人の最終利益積立金額に相当する金額は調整の対象としないこととされた(法令9④)。
(3)株式交換等により取得した株式交換完全子法人等の株式の取得価額 100%グループ内の非適格株式交換(すなわち、株式交換完全子法人の資産の時価評価課税がされないもの)で、株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人又はその親法人のいずれか一方の株式以外の資産が交付されないもの(すなわち、株主の旧株の譲渡損益課税が繰り延べられるもの)により株式交換完全親法人が取得をした株式交換完全子法人の株式の取得価額が、適格株式交換により取得をした株式交換完全子法人の株式の取得価額と同様に、旧株主が50人未満である場合には旧株主が有していたその株式交換完全子法人の株式のその株式交換の直前の帳簿価額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)と、旧株主が50人以上である場合にはその株式交換完全子法人の簿価純資産価額に相当する金額(交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)とされた(法令119①九)。
株式移転の場合についても同様とされている(法令119①十一)。
(4)欠損金の引継ぎに係る制限 適格合併による欠損金の引継ぎについて、その適格合併の日と同日に、その適格合併に係る被合併法人を合併法人とする別の適格合併が行われていた場合、その適格合併に係る被合併法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の残余財産が確定していた場合又は、その適格合併に係る合併法人を合併法人等とする適格組織再編成等が行われていた場合にも、その適格合併に係る合併法人又は被合併法人の設立の日から継続して支配関係がある場合の引継ぎ制限の適用除外措置の対象外とされ、引継ぎ制限の適用対象とされた(法令112④二)。
連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法令155の19⑦二)。
(5)特定同族会社の留保金額から控除する住民税の額 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の留保所得の計算上留保金額から控除する住民税の額の計算の基礎となる法人税の額について、租税特別措置法の一部改正に伴い、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除制度(措法42の5の2)による控除税額及び追加課税額並びに雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(措法42の12)による控除税額を控除する(追加課税額は加算する)こととされた(法令139の10)。
(注)雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度にあっては、中小企業者(措法42の12①)が適用を受ける場合に限る。
また、留保金額から控除する住民税の額の計算の基礎となる法人税の額について、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度のうち中小企業技術基盤強化税制(措法42の4⑥)及び試験研究費の増加額又は平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る税額控除制度(措法42の4⑨)並びに中小企業等基盤強化税制のうち教育訓練費の総額に係る税額控除制度(措法42の7⑤)による税額控除額を控除することとされた。
(注)試験研究費の増加額又は平均売上金額の10%を超える試験研究費の額に係る税額控除制度にあっては、中小企業技術基盤強化税制の適用を受ける中小企業者(措法42の4⑥)が適用を受ける場合に限る。
連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法令155の25)。
(6)みなし連結欠損金の帰属連結事業年度の整備 特定連結子法人の連結加入前の欠損金額等のうち連結欠損金額とみなされるものの帰属連結事業年度について、適格合併の場合のみなし連結欠損金額と同様に、その特定連結子法人の最初連結事業年度開始の日(加入日)の属する連結親法人の連結事業年度開始の日以後に開始したその特定連結子法人の事業年度において生じた欠損金額等の帰属連結事業年度が、連結親法人のその加入日の属する連結事業年度の前連結事業年度となることが明確化された(法令155の19①)。
Ⅲ 減価償却資産の範囲の見直し
公共施設等運営権が、減価償却資産(無形固定資産)とされた(法令13八ル)。
Ⅳ 棚卸資産の評価方法の見直し
切放し低価法が廃止された(旧法令28②)。
Ⅴ 仮決算の中間申告の見直し
次の場合には、仮決算による中間申告書を提出することができないこととされた(法法72①ただし書)。
(1)前事業年度の確定法人税額の6月分相当額の金額が10万円以下である場合又は前事業年度の確定法人税額の6月分相当額の金額がない場合
(2)仮決算による中間税額の金額が前事業年度の確定法人税額の6月分相当額の金額を超える場合
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法法81の20①ただし書)。
Ⅵ 更正による還付加算金の計算期間の見直し
(1)確定申告に係る更正による所得税額等の還付
① 還付加算金の計算期間の見直し 確定申告に係る更正による所得税額等の還付金について、確定申告書の提出期限(その申告書が期限後申告書である場合には、その申告書を提出した日)の翌日から更正の日の翌日以後1月を経過する日(注)までの期間が、還付加算金の計算期間から除外された(法法133②)。
(注)更正の請求に基づく更正である場合には、更正の請求の日の翌日以後3月を経過する日と更正の日の翌日以後1月を経過する日とのいずれか早い日となる。
② その他の明確化 次の事由により所得税額等の控除不足額が増加した場合についても、更正の請求に基づく更正の場合と同様に、その増加額を還付すべきこと及び還付加算金を計算すべきことが明確化された(法法133①)。
イ 更正の請求に対する処分に係る不服申立てについての決定又は裁決
ロ 更正の請求に対する処分に係る訴えについての判決
(注)不服申立て又は訴えの対象となる更正の請求に対する処分は、具体的には、更正すべき理由がない旨の通知処分又は一部認容の更正処分がこれに該当する。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法法133①②)。
(2)確定申告に係る更正又は決定による中間納付額の還付
① 還付加算金の計算期間の見直し イ 更正(ロに該当する場合の更正を除く。)により中間納付額の控除不足額が増加した場合の還付金について、確定申告書の提出期限の翌日から更正の日の翌日以後1月を経過する日(注)と還付金の支払決定日又は充当日とのいずれか早い日までの期間を、還付加算金の計算期間から除外することとされた(法法134④)。
(注)更正の請求に基づく更正である場合には、更正の請求の日の翌日以後3月を経過する日と更正の日の翌日以後1月を経過する日とのいずれか早い日となる。
ロ 決定に係る更正(更正の請求に基づく更正を除きます。)により中間納付額の控除不足額が増加した場合の還付金について、その更正が後発的事由(注)に基づき行われた更正である場合には、確定申告書の提出期限の翌日から更正の日の翌日以後1月を経過する日と還付金の支払決定日又は充当日とのいずれか早い日までの期間を、還付加算金の計算期間から除外することとされた(法法134④)。
(注)後発的事由とは、所得の金額の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたこと、その事実のうちに含まれていた取り消し得べき行為が取り消されたこと及び国税通則法第58条第5項(還付加算金)に規定する政令で定める理由をいう(法法134④二イ(2)、法令174②)。
② その他の明確化 イ 次の事由により中間納付額の控除不足額が増加した場合についても、更正の請求に基づく更正の場合と同様に、その増加額を還付すべきこと及び還付加算金を計算すべきことが明確化された(法法134②)。
(イ)更正の請求に対する処分に係る不服申立てについての決定又は裁決
(ロ)更正の請求に対する処分に係る訴えについての判決
ロ 次の事由により中間納付額の控除不足額が増加した場合についても、決定に係る更正の場合と同様に、その増加額を還付すべきこと及び還付加算金を計算すべきことが明確化された(法法134②)。
(イ)決定に係る不服申立てについての決定又は裁決
(ロ)決定に係る訴えについての判決
ハ 確定申告書の提出期限後に中間納付額が納付された場合には、還付加算金の計算の基礎となる期間に算入しない期間の開始の日を、中間納付額の納付の日の翌日とすることが明確化された(法法134④一・二)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(法法134①②④)。
Ⅶ 取引先等に対する調査の対象物件の見直し
法人税の取引先等に対する調査の対象に、「帳簿書類以外の物件」が含まれることが明確化された(法法154①②)。
Ⅷ 罰則の見直し
故意に「納税申告書を法定申告期限までに提出しないことにより税を免れた者」について、5年以下の懲役若しくは500万円以下(脱税額が500万円を超える場合には、情状により脱税額以下)の罰金に処し、又はこれを併科することとされた(法法159③④)。
租税特別措置法(法人税)関係
Ⅰ 法人税率の特例関係
中小企業者等の法人税率の特例制度の適用期限が平成24年3月31日まで延長された(措法42の3の2①②)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の8①②)。
Ⅱ 税額控除関係
1 エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制)
(1)適用期限の延長 即時償却措置の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された(措法42の5⑥)。
(2)繰越税額控除限度超過額の控除限度額の調整 繰越税額控除限度超過額の税額控除について、後述の「2 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」制度の創設に伴い、同制度における税額控除の適用を受けることにより控除される金額がある場合には、税額控除限度額は、当期の法人税額の20%に相当する金額からその控除される金額を控除した残額を限度とすることとされた(措法42の5③)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の10③⑥)。
2 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(環境関連投資促進税制)(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人が、現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律(平成23年法律第82号)の施行の日(平成23年6月30日)から平成26年3月31日までの間に、エネルギー環境負荷低減推進設備等(新エネルギー利用設備等、二酸化炭素排出抑制設備等及び省エネビルシステム(エネルギー使用合理化設備及びエネルギー使用制御設備をいう。)をいう。)の取得又は製作若しくは建設(以下「取得等」という。)をし、その取得等の日から1年以内にその法人の事業の用に供した場合には、一定の要件の下に、エネルギー環境負荷低減推進設備等の取得価額の30%の特別償却(中小企業者等については、30%の特別償却と7%の税額控除(特別控除税額は当期の法人税額の20%を限度とし、税額控除限度超過額は1年間の繰越しができる。)とのいずれかの選択適用)ができるというものである(措法42の5の2)。
国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は
3 法人税額の特別控除(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人で総合特別区域法(平成23年法律第81号)に規定する指定法人に該当するものが、同法の施行の日から平成26年3月31日までの間に、国際戦略総合特別区域内において、特定機械装置等の取得又は製作若しくは建設(以下「取得等」という。)をして、特定国際戦略事業の用に供した場合には、その特定機械装置等の取得価額の50%(建物等については、25%)の特別償却と15%(建物等については、8%)の税額控除(特別控除税額は当期の法人税額の20%を限度とし、税額控除限度超過額は、1年間の繰越しができる。)との選択適用を行うことができるというものである(措法42の11)。
ただし、この制度は、国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例(措法60の2)との選択適用とされている(措法60の2①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の15)。
4 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除(雇用促進税制)(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人のうちこの制度の適用を受けようとする事業年度等における離職者についての要件を満たすものが、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、雇用者数の増加等についての要件を満たす場合において、その法人が雇用保険法の適用事業を行っているときは、その事業年度の所得に対する法人税額から、20万円にその法人の増加雇用者数を乗じて計算した金額を控除することができるというものである(措法42の12①)。ただし、この場合の特別控除税額は、当期の法人税額の10%(その法人が中小企業者等である場合には、20%)を限度とすることとされている(措法42の12①後段)。
5 その他の税額控除 次の制度の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された。
① 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例(措法42の4の2、68の9の2)
② 事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業等基盤強化税制)(措法42の7、68の12)
Ⅲ 特別償却関係
1 特定高度通信設備の特別償却(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人で中小企業者に該当するもののうち電気通信基盤充実臨時措置法に規定する実施計画の認定を受けたものが、電気通信基盤充実臨時措置法の一部を改正する法律(平成23年法律第59号)の施行の日(平成23年8月31日)から平成25年3月31日までの間に、その実施計画に記載された特定高度通信設備でその製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得等をして、これを過疎地域等の条件不利地域において当該法人の事業の用に供した場合には、初年度において取得価額の15%の特別償却を行うことができるというものである(措法44の5)。
2 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却等
(1)障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度に係る適用要件の追加 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度について、現行の適用要件との選択適用で、次の適用要件が追加された(措法46の2①)。
・ 次の①及び②の要件を満たしていること。
① 基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が50%以上であること。
基準雇用障害者数とは、当該事業年度終了の日における公共職業安定所長の証明を受けたその法人の常時雇用する障害者の数を合計した数をいう(措法46の2②四、措令29の2⑥)。
また、重度障害者割合とは、基準雇用障害者数に対する当該事業年度終了の日における公共職業安定所長の証明を受けたその法人の常時雇用する重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者を合計した数の割合をいう(措法46の2②五、措令29の2⑦)。
なお、現行の適用要件における短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については1人を2人とする、いわゆるダブルカウントで計算するが、今回追加された適用要件では、ダブルカウントなしで計算する。また、短時間労働者については、1人を0.5人として計算する(措規20の17)。
② 当該事業年度終了の日における雇用障害者数が障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第1項に規定する法定雇用障害者数以上であること。
法定雇用障害者数とは、その雇用する労働者の数に1.8を乗じて得た数をいう。
(2)障害者対応設備等の特別償却制度の廃止 障害者対応設備等の特別償却制度が廃止された(旧措法46の2②、旧措令29の2③~⑦、旧措規20の18①~③)。
(3)適用期限の延長 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度の適用期限が、平成26年3月31日まで延長された(措法46の2①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の31、措令39の60、旧措規22の39、措規22の38)。
3 次世代育成支援対策に係る基準適合認定を受けた場合の建物等の割増償却(創設) この制度は、青色申告書を提出する法人が、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に開始する各事業年度において、次世代育成支援対策推進法の次世代育成支援対策に係る基準に適合するものである旨の認定(その期間内において最初に受けるものに限る。)を受けた場合には、その認定を受けた日を含む事業年度終了の日において有する建物等で事業の用に供されているもの(その認定に係る同法の一般事業主行動計画の計画期間開始の日からその事業年度終了の日までの期間内において取得等をしたものに限る。)について、その普通償却限度額の32%の割増償却ができるというものである(措法46の4)。
4 その他の特別償却
(1)次の制度の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された。
① 集積区域における集積産業用資産の特別償却(措法44、68の20)
② 資源需給構造変化対応設備等の特別償却(措法44の2、68の21)
(2)次の制度について、所要の整備を講じた上、適用期限が平成24年3月31日まで延長された。
① 公害防止用設備の特別償却(措法43、68の16)
② 事業革新設備の特別償却(措法44の2、68の21)
③ 共同利用施設の特別償却(措法44の3、68の24)
(3)次の制度について、所要の整備を講じた上、適用期限が平成25年3月31日まで延長された。
① 船舶の特別償却(措法43、68の16)
② 関西文化学術研究都市の文化学術研究地区における文化学術研究施設の特別償却(措法43の2、68の17)
③ 新用途米穀加工品等製造設備の特別償却(措法44の4、68の25)
④ 医療用機器等の特別償却(措法45の2、68の29)
⑤ 高齢者向け優良賃貸住宅の割増償却(措法47、68の34)
⑥ 特定再開発建築物等の割増償却(措法47の2、68の35)
⑦ 倉庫用建物等の割増償却(措法48、68の36)
(4)次の制度について、所要の経過措置を講じた上、廃止することとされた。
① 地震防災対策用資産の特別償却(旧措法44、68の19)
② 障害者対応設備等の特別償却(旧措法46の2、68の13)
③ 事業所内託児施設等の割増償却(旧措法46の4、68の33)
④ 植林費の損金算入の特例(旧措法52、68の38)
Ⅳ 準備金等関係
1 中小企業等の貸倒引当金の特例 公益法人等又は協同組合等の割増率の適用に関する特例の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された(措法57の10)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の59)。
2 その他の準備金
(1)石採取場及び露天石炭採掘場に係る特定災害防止準備金制度の適用期限が、平成24年3月31日まで延長された(措法55の6、68の45)。
(2)農業経営基盤強化準備金制度について、所要の整備を講じた上、適用期限が平成25年3月31日まで延長された(措法61の2、68の64)。
Ⅴ 土地税制関係
1 収用等に伴い代替資産を取得した場合等の課税の特例 土地等が農地法の規定に基づいて買収され、対価を取得する場合の措置が廃止された(旧措法64①四)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の70)。
2 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除(1,500万円特別控除) 適用対象に、総合特別区域法第2条第2項第5号イ又は第3項第5号イに規定する共同して又は一の団地若しくは主として一の建物に集合して行う事業の用に供する土地の造成に関する事業で、都市計画その他の土地利用に関する国又は地方公共団体の計画に適合した計画に従って行われるものであることその他の一定要件に該当するものとして市町村長又は特別区の区長が指定したものの用に供するために買い取られる場合が追加された(措法65の4①十四の二)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の75)。
3 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例
(1)既成市街地等の内から外への買換えに係る措置の見直し 既成市街地等の内から外への買換えに係る措置について、次の見直しが行われた。
① 譲渡資産の除外 譲渡資産の範囲から店舗が除外された(旧措令39の7②)。
② 買換資産の見直し 買換資産のうち農業及び林業以外の事業の用に供されるものを都市計画法第7条第1項の市街化区域と定められた区域のうち同項ただし書の規定により区域区分を定めるものとされている区域内にあるものに限定することとされた(措法65の7①表一)。
(2)都市開発区域等及び誘致区域の外から内への買換えに係る措置の見直し 都市開発区域等及び誘致区域の外から都市開発区域等の内への買換えに係る措置について、次の見直しが行われた。
① 対象区域の除外 都市開発区域等の範囲から、半島振興対策実施地域及び離島振興対策実施地域が除外された(旧措令39の7⑥二ハ・ニ)。
② 譲渡資産の見直し 都市開発区域のうち次の区域内にあるものについては、事務所、工場、作業場、研究所、営業所、倉庫その他これらに類する施設として使用されている建物又はその敷地の用に供されている土地等に限定することとされた(措法65の7①表五、措令39の7④)。なお、福利厚生施設については、これらに類する施設には含まれない。
イ 首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地
ロ 近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域
ハ 首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律施行令別表に掲げる区域
(3)内航海運業用以外の日本船舶から日本船舶への買換えに係る措置の見直し 買換資産となる日本船舶について、次の船舶とすることとされた(措法65の7①表十、措令39の7⑨、平23.6.30農林水産省・国土交通省告示3、平23.6.30国土交通省告示695)。
① 建造の後事業の用に供されたことのない船舶のうち環境への負荷の低減に資する船舶として国土交通大臣及び農林水産大臣が財務大臣と協議して指定するもの
環境への負荷の低減に係る要件については、これまでは漁船以外の日本船舶のうち中古船にのみ課されていたが、新造船を含めたすべての日本船舶に対して、この要件を課すこととされた。
② 買換資産に該当する船舶(以下「買換船舶」という。)の進水の日からその買換船舶の取得の日までの期間がその買換船舶に係る譲渡資産に該当する船舶(以下「譲渡船舶」という。)の進水の日からその譲渡船舶の譲渡の日までの期間未満である場合のその買換船舶のうち環境への負荷の低減に資する船舶として国土交通大臣及び農林水産大臣が財務大臣と協議して指定するもの(①に該当するものを除く。)
すべての中古船に対して、買換船舶の船齢が譲渡船舶の船齢を下回っていることとする要件を課すこととされた。また、外航船舶及び内航船舶の環境への負荷の低減に係る要件が厳格化されるとともに、漁船に対してもこの要件を課すこととされた。
なお、上記①及び②の環境への負荷の低減に係る要件の具体的な内容については、外航船舶、内航船舶及び漁船の区分に応じて、農林水産大臣・国土交通大臣告示により定められている(平23.6.30農林水産省・国土交通省告示3)。
(4)適用措置の除外 次の買換えに係る措置について除外された。
① 大気汚染規制区域の内から外へのばい煙発生施設の買換えに係る措置(旧措法65の7①表二)
② 騒音規制地域の内から外への騒音発生施設の買換えに係る措置(旧措法65の7①表三)
③ 水質汚濁規制水域の特定施設等及び公共用水域の湖沼特定施設等の買換えに係る措置(旧措法65の7①表四)
④ 市街化区域又は既成市街地等の内から外への農林業用資産の買換えに係る措置のうち、林業用資産の買換え(旧措法65の7①表五)
⑤ 誘致区域の外から内への買換えに係る措置のうち、次の区域に係るもの
イ 流通業務市街地の整備に関する法律の流通業務地区(旧措法65の7①表七)
ロ 中小企業高度化事業により整備される区域(旧措令39の7⑤二)
ハ 港湾法の臨港地区又は港湾区域内の公有水面の埋立てに係る埋立地の区域(旧措令39の7⑤三)
ニ 卸売市場法の都道府県卸売市場整備計画において近代的な地方卸売市場を開設すべき地区として定められた区域(旧措令39の7⑤四)
ホ 農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められている区域(旧措令39の7⑤五)
ヘ 沖縄県の区域のうち農業振興地域内にある農用地等の区域(旧措令39の7⑤六)
ト 国又は都道府県が行う土地改良法の土地改良事業により造成された埋立地又は干拓地の区域(旧措令39の7⑤七)
チ 中心市街地の活性化に関する法律の認定中心市街地の区域(旧措令39の7⑤八)
⑥ 農村地域及び誘致区域の外から農村地域工業等導入地区の内への買換えに係る措置(旧措法65の7①表八)
⑦ 既成市街地等内における土地の計画的かつ効率的な利用に資する買換えに係る措置のうち、都市再開発法の認定再開発事業計画に係るもの(旧措令39の7⑦)
⑧ 市街化区域又は既成市街地等内における建物の高層化に伴う買換えに係る措置(旧措法65の7①表十一)
⑨ 既成市街地等内における特定民間再開発事業の施行による中高層耐火建築物への買換えに係る措置(旧措法65の7①表十二)
⑩ 特定整備区域内にある木造貸家住宅から中高層貸家住宅への買換えに係る措置(旧措法65の7①表十三)
⑪ 防災再開発促進地区内における認定建替計画による買換えに係る措置(旧措法65の7①表十六)
⑫ 内航日本船舶から内航日本船舶以外の減価償却資産への買換えに係る措置(旧措法65の7①表十八)
(5)適用期限の延長 制度(国内にある土地等、建物又は構築物で、所有期間が10年を超えるものから国内にある土地等、建物、構築物若しくは機械装置又は鉄道事業用車両運搬具への買換えを除く。)の適用期限が、平成26年3月31日まで延長された(措法65の7①、65の8①、65の9)。
なお、連結納税制度の場合についても、上記(1)~(5)と同様の改正が行われている(措法68の78~68の80、措令39の106)。
4 認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内にある土地等の交換等の場合等の課税の特例
(1)圧縮限度額の引下げ 圧縮限度額が、交換取得資産等の取得価額から所有隣接土地等の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額の80%(改正前:100%)に引き下げられた(措法65の13①)。
なお、圧縮予定限度額についても、同様に引き下げられている(措法65の14①)。
(2)対象区域の見直し 適用対象となる認定事業用地の区域が、都市再生特別措置法第2条第3項に規定する都市再生緊急整備地域内に限定された(措令39の9の2①一)。
(3)適用期限の延長 特例の適用期限が、平成25年3月31日まで延長された(措法65の13①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の84①、68の85①、措令39の109)。
Ⅵ その他の特別措置関係
1 国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例(創設) この制度は、青色申告書を提出する内国法人で総合特別区域法の施行の日(平成23年8月1日)から平成26年3月31日までの間に同法の指定を受けた指定特定事業法人に該当するものが、国際戦略総合特別区域内において行われる特定国際戦略事業のうち規制の特例措置等の適用を受けて行われる事業に係る所得の金額を有する場合には、その指定の日から5年間、その金額の20%の所得控除ができるというものである(措法60の2)。ただし、国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11)との選択適用とされており、また、認定研究開発事業法人等の課税の特例(措法60の3)の適用を受ける法人は、この制度の適用を受けることができない。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の63の2)。
2 認定研究開発事業法人等の課税の特例(創設) この制度は、青色申告書を提出する内国法人で、各事業年度終了の日において特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法の施行の日から平成26年3月31日までの間に同法の研究開発事業計画又は統括事業計画の認定を受けた認定研究開発事業法人又は認定統括事業法人に該当するものが、これらの計画に記載された研究開発事業又は統括事業に係る所得の金額を有する場合には、その認定の日から5年間、その金額の20%の所得控除ができるというものである(措法60の3)。
ただし、認定研究開発事業法人については、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(措法42の4)又は国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11)との選択適用とされており、認定統括事業法人については、国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の11)との選択適用とされている。また、この制度の適用を受ける法人は、国際戦略総合特別区域における指定特定事業法人の課税の特例(措法60の2)の適用を受けることができない。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の63の3)。
(注)特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案は、現在、国会において審議中である。
3 技術研究組合の所得計算の特例
(1)試験研究用資産の範囲の見直し 試験研究用資産の範囲から、土地並びに建物及びその附属設備が除外された(措令39の21)。
(2)適用期限の延長 制度の適用期限が、平成25年3月31日まで延長された(措法66の10①)。
なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の94①)。
4 農林中央金庫の合併等に係る課税の特例〔農林中央金庫等の合併に係る課税の特例〕 消費生活協同組合等の現物出資に係る措置が除外された(旧措法68の2②、旧措令39の34の2②③、旧措規22の19の5②)。
5 中小企業向け特例措置が適用されない大法人の100%子法人の範囲 法人税法の改正に伴い、普通法人との間に完全支配関係がある全ての大法人が有する株式及び出資の全部をその全ての大法人のうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合において、そのいずれか一の法人とその普通法人との間にそのいずれか一の法人による完全支配関係があることとなるときのその普通法人については、次の措置を適用しないこととされた。
① 中小企業等の貸倒引当金の特例における貸倒引当金の法定繰入率(措法57の10、68の59)
② 交際費等の損金不算入制度における中小企業者に係る600万円の定額控除(措法61の4、68の66)
③ 中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置における中小企業者等の適用除外(措法66の13、68の98)
6 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対する寄附金の損金算入等の特例
(1)認定NPO法人が認定を取り消された場合の取戻し課税の創設 認定NPO法人がその認定を取り消された場合には、取消しの基因となった事実が生じた日を含む事業年度からその取消しの日を含む事業年度の前事業年度までの各事業年度においてその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額で各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額に相当する金額の合計額は、認定を取り消された法人のその取消しの日を含む事業年度において行う収益事業から生じた収益の額とみなすこととされた(措法66の11の2⑨)。すなわち、認定を取り消されたNPO法人がその取消しの基因となる事実が生じた日を含む事業年度から認定の取消しの日を含む事業年度の前事業年度までの間に損金算入したみなし寄附金の額は、その取消しの日を含む事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入されることとなる。
認定を取り消されたNPO法人がその取消しの日に収益事業を行っていないときは、そのNPO法人がその取消しの日において新たに収益事業を開始したものとみなすこととされている。この場合には、その取消しの日を含む事業年度とみなされる期間が1年に満たないときであっても、その期間の税額の計算における800万円までの軽減税率の適用については、800万円をその期間の月数に応じて按分しないこととされている(措法66の11の2⑩)。すなわち、そのNPO法人のみなし寄附金相当の取戻しによる所得金額の800万円以下の部分については、軽減税率が適用されることとなる。
なお、認定を取り消されたNPO法人がその取消しの日において収益事業を行っておらず、その後同日を含む事業年度終了の日までの間に収益事業を開始したときは、法人税法第13条及び第14条の規定にかかわらず、その取消しの日からその開始した日の前日までの期間及びその開始した日からその事業年度終了の日までの期間をそれぞれそのNPO法人の事業年度とみなすこととされている(措法66の11の2⑪)。
(2)認定要件の見直し ① パブリック・サポート・テストについて、経常収入金額のうちに寄附金等収入金額の占める割合が5分の1以上であることとされた(措令39の23①一イ)。
(注)経常収入金額のうちに寄附金等収入金額に占める割合については、原則として3分の1とされていたが、NPO法人が平成15年4月1日から平成23年6月30日までの間に申請書を提出した場合には特例として5分の1とすることとされていた。今回の改正において、この特例を廃止し、原則として5分の1とすることとされたものである。
② パブリック・サポート・テストについて、次の要件を追加し、選択して適用できることとされた。
イ 実績判定期間内の各事業年度における判定基準寄附者の数の合計数に12を乗じてこれを実績判定期間の月数で除して得た数が100以上であること
判定基準寄附者とは、実績判定期間内の各事業年度における同一の者からの寄附金(寄附者の氏名及び住所又は名称及び主たる事務所の所在地が明らかな寄附金に限る。)の総額が3,000円以上である場合のその同一の者をいい、その法人の役員である者及び役員と生計を一にするものは判定基準寄附者には含まないこととされている。このとき、寄附者が個人である場合にその事業年度の寄附金の総額が3,000円以上であるかどうかの判定に当たっては、その寄附者と生計を一にする者からの寄附金の額を含めて判定することとされている。
また、判定基準寄附者の数は、その事業年度における個人である判定基準寄附者とその判定基準寄附者と生計を一にする他の判定基準寄附者とを1人として計算することとされている(措令39の23①一ロ、措規22の12⑥)。
なお、実績判定期間の月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とすることとされている(措令39の23⑳)。
ロ 認定を受けようとするNPO法人が、認定の申請書を提出した日の前日において、地方税法第37条の2第1項第4号に掲げる道府県民税の寄附金税額控除の対象となる寄附金又は同法第314条の7第1項第4号に掲げる市町村民税の寄附金税額控除の対象となる寄附金を受け入れる特定非営利活動法人として都道府県又は市区町村の条例で指定されている法人(その条例を制定した都道府県又は市区町村の区域内に事務所を有するNPO法人に限る。)であること(措令39の23①一ハ)
また、認定を受けようとするNPO法人がこの要件を満たす場合には、「実績判定期間における共益的活動割合が50%未満であること」の要件について、その共益的活動の範囲から「便益の及ぶ者が特定の地域に居住する者等である活動」を除くこととされた(措令39の23①二ロ)。
③ 経常収入金額のうちに寄附金等収入金額の占める割合を簡易な計算式により判定することができる小規模法人の特例について、適用期限の定めのない措置とされた(措令39の23⑰)。
④ 認定を受けたことのない法人が認定を受けようとする場合には、その法人の実績判定期間は、直前に終了した事業年度終了の日以前2年内に終了した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日からその終了の日までの期間とされた(措令39の23③)。
⑤ その他規定の整備が行われている。
7 その他 次の制度の適用期限が、それぞれ次の期限まで延長された。
① 商工組合等の留保所得の特別控除(措法61) 平成24年3月31日
② 退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止(措法68の4) 平成26年3月31日
震災特例法関係
Ⅰ 震災損失の繰戻しによる法人税額の還付
この制度は、法人の平成23年3月11日から平成24年3月10日までの間に終了する各事業年度又は平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間において生じた欠損金額のうち、繰戻対象震災損失金額がある場合には、その開始の日前2年以内に開始した事業年度の法人税額のうちその繰戻対象震災損失金額に対応する部分の金額の還付を受けることができるというものである(震災特例法15)。連結納税制度においても、同様の措置が講じられている(震災特例法23)。
Ⅱ 仮決算の中間申告による所得税額の還付
この制度は、法人の平成23年3月11日から同年9月10日までの間に終了する中間期間において生じた震災損失金額がある場合には、その中間期間に係る仮決算の中間申告において、その震災損失金額を限度として、その課された所得税の額で法人税の額から控除しきれなかった金額を還付するというものである(震災特例法16)。連結納税制度においても、同様の措置が講じられている(震災特例法24)。
Ⅲ 中間申告書の提出不要
東日本大震災に係る国税通則法第11条の規定による申告期限の延長により、中間申告書の提出期限とその中間申告書に係る確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合には、その中間申告書の提出を要しないこととされた(震災特例法17)。連結中間申告の場合も同様とされている(震災特例法25)。
この国税通則法第11条の規定による申告期限の延長は、国税通則法施行令第3条第1項の規定による国税庁長官の告示(平成23年国税庁告示第8号)によるもののほか、納税者の申請に基づき税務署長がする同条第2項の規定による個別の期限延長もこれに該当する。
Ⅳ 被災代替資産等の特別償却
この制度は、法人が、平成23年3月11日から平成28年3月31日までの間に、
① 東日本大震災により滅失し、又は損壊した一定の建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機又は車両及び運搬具に代わるもので、その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得等をして、これらの資産をその法人の事業の用に供した場合
② 建物若しくは構築物又は機械及び装置で、その製作又は建設の後事業の用に供されたことのないものの取得等をして、被災区域及びその被災区域である土地に付随して一体的に使用される土地の区域内において、これらの資産をその法人の事業の用に供した場合
に、特別償却ができるというものである(震災特例法18)。連結納税制度の場合についても、同様の制度が創設されている(震災特例法26)。
Ⅴ 特定の資産の買換えの場合等の課税の特例
この制度は、法人が、平成23年3月11日から平成28年3月31日までの期間内に、
① 被災区域内にある土地又はこれとともに建物若しくは構築物の譲渡をして、その譲渡の日を含む事業年度において国内にある土地又は減価償却資産の取得をした場合
② 被災区域外にある土地、建物又は構築物の譲渡をして、その譲渡の日を含む事業年度において被災区域内にある土地又は減価償却資産の取得をした場合
で、かつ、その取得の日から1年以内にその取得をした資産(以下「買換資産」という。)を事業の用に供したとき又は供する見込みであるときは、その買換資産につき、譲渡益の額(圧縮限度額)の範囲内で、その買換資産の帳簿価額を損金経理により減額したとき等について、圧縮記帳を行うことができるというものである(震災特例法19)。買換えの態様、課税繰延割合等を除いては、租税特別措置法の特定の資産の買換えの場合等の課税の特例(措法65の7)と同様の仕組みとなっている。
また、特別勘定を設けた場合(震災特例法20)及びこの制度の対象となる譲渡資産を交換した場合(震災特例法21)についても、同様の措置が講じられており、これらの取扱いについても現行制度に倣ったものとなっている。連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(震災特例法27~29)。
Ⅵ 代替資産の取得期間等の延長の特例
法人が、東日本大震災に起因するやむを得ない事情により、収用等に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例(措法64の2)の規定の適用を受けた場合の代替資産又は特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例(措法65の8)の規定の適用を受けた場合の買換資産の取得をすべき期間(その期間の末日が平成23年3月11日から平成24年3月31日までの間にあるものに限られる。)内に取得することが困難となった場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、その期間を経過した日以後2年以内で税務署長が認定した日まで、取得をすべき期間の延長をすることができることとされた(震災特例法22)。連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(震災特例法30)。
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