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解説記事2011年10月24日 【ニュース特集】 積み残しの平成23年度税制改正、実現に黄信号(2011年10月24日号・№424)

復興増税案は法人・所得・相続税改正等の実施前提も……
積み残しの平成23年度税制改正、実現に黄信号

 平成23年度税制改正の一部が継続審議となっているなか、10月11日には“復興税制大綱”が政府から公表された。今後は、平成24年度税制改正、消費税率引上げを含む税制抜本改革が議論に上ってくることになる。
 これほどの税制改正がほぼ同時に進行することはかつてないうえ、各税制改正は有機的につながっているため、相互に影響を及ぼし合う。たとえば、平成23年度税制改正のある項目の実施が流れれば、税制抜本改革にも影響を与えることになる。
 現在進行中の税制改正を整理するとともに、取材に基づく今後の改正動向をレポートする。

「積み残しの23年度改正はすべて実施」が復興増税の前提に  現在俎上に上っている税制改正が図表1に示した5つだ。これら5つの税制改正は有機的につながっており、各税制改正の動向が相互に影響を及ぼし合う。たとえば、政府が10月11日に示した復興税制大綱(本誌423号12頁参照)は、財源確保の観点から、積み残しの平成23年度税制改正案、すなわち法人税率引下げ・課税ベース拡大、個人所得課税の諸控除の見直しおよび退職所得課税の見直しといった所得税の改正、相続税の基礎控除および税率構造の見直し、贈与税の税率構造の見直しおよび相続時精算課税の見直しといった相続・贈与税の改正などはすべて実施することが前提となっている(ただし、納税者権利憲章および税務調査手続の一部は与野党の合意で見送り決定)。

 この点は、“復興税制大綱”にも明記されている(「東日本大震災からの復興のための事業及びB型肝炎対策の財源等に係る税制改正大綱」参照)。
 一部には、政府が示した復興増税案の対象から相続税が外れたとの報道などを受け、平成23年度税制改正案における相続税の増税が見送られたとの誤解があるようだが、復興増税案から外れたのは相続税の「付加税」であり、平成23年度税制改正における相続税増税は、復興増税の前提として実施することになっているので留意したい。

24年度税制改正は小粒に  このように、積み残しの平成23年度税制改正法案は、復興に充てる第3次補正予算の財源となる復興増税案とセットで、今月20日に召集された臨時国会において、会期中(12月9日まで)の成立を目指すことになる。そして、これらと並行して、12月中旬の平成24年度税制改正大綱のとりまとめに向けた議論が行われる。
 ただ、平成24年度税制改正については、積み残しの平成23年度税制改正の施行日が平成24年度税制改正と相当程度重なることや(図表2参照)、同時並行で、消費税率の引上げなどを含む税制抜本改革の議論が行われることから、その狭間でどうしても小粒にならざるを得ない。主な税制改正要望項目は図表1に示したとおりだが、たとえば経済産業省が単独で行った国税関係の要望では、要望が実現した場合の減収総額7,257億円余りの大部分を自動車重量税、自動車取得税が占めている。

 税制抜本改革については、施行日の違いやそのインパクトの大きさから、平成24年度税制改正法案とは別法案が出てくるはずだ。そして、平成21年度税制改正附則104条にて「平成23年度中の法案提出」が政府に義務付けられており、また、附則104条は自公政権時代に法制化されたものであることから、野党も今年度中の法案提出には協力する姿勢をみせるものと思われる。
 今年1月25日の平成23年度税制改正法案の国会提出から平成23年度末までの税制改正の流れをまとめれば図表3のとおりとなる。


自民党など、法人税改正は消費税率引上げと一体で  ただ、積み残しの平成23年度税制改正法案および復興増税案は、あくまで政府・与党案に過ぎない。
 与党が参議院で過半数を割り、さらに衆議院で2/3の議席を持っていない以上(衆議院で2/3の議席があれば、参議院で否決されても、衆議院で再可決が可能)、野党が反対に回れば、法案を成立させることはできない。
 積み残しの平成23年度税制改正法案における所得税や相続税の改正、さらに石油石炭税の税率上乗せによる「環境税制」に対しては、自民党をはじめとする野党、中小企業団体がかねてから強く反対している。
 また、法人税率引下げ・課税ベース拡大を中心とする法人税改正だが、自民党は元々、こうした税制抜本改革は「消費税率引上げ」とあわせてやるべきと主張しており、たとえば民主党が進めた法人税課税ベースの拡大についても、「法人税率の引下げの財源を法人税の中だけで工面しようとするから無理な課税ベース拡大が必要になる」(党幹部)と批判してきた。
 また、与党の復興増税案では、平成23年度法人税改正による減税分を相殺する形で付加税が導入されることになっているが、自民党などは、そもそも復興増税と平成23年度税制改正を切り分けたいと考えており、この点でも与党とはスタンスがまったく違う。
 こうしたなか、関係者の間では、積み残しとなった平成23年度税制改正法案の成立を危ぶむ声が出始めている。

23年度税制改正および復興増税の行方、3つのシナリオ  前述のとおり、復興増税案は積み残しの平成23年度税制改正法案のうち税収に影響のある項目をすべて実施することが前提となっていることから、仮に積み残しの平成23年度税制改正法案に大幅な修正が入ったり、場合によっては見送りという事態となり、それによって減収が発生するようであれば、新たな財源確保が求められることになる。また、自民党は、復興増税のうち、たばこ税の増税には強硬に反対しているほか、所得税の付加税についても税率(4%)を引き下げたい意向を持っている。そこで、税負担を増やすことなく復興財源を確保するため、復興費用(復興債)の償還期間の大幅な延長が実施される可能性は十分にあろう。すなわち、平成23年度税制改正項目の見送りや、復興増税案の縮小による減収分を、復興債の償還期間の延長によって吸収するわけだ。
 以上を整理すると、平成23年度税制改正および復興増税の行方については上の表のようなシナリオが考えられる。自民党など野党が平成23年度税制改正および復興増税項目の多くに反対している状況を踏まえれば、ともにシナリオ3の可能性は低いといえそうだ。

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