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解説記事2011年12月05日 【ニュース特集】 積み残し部分の平成23年度税制改正のすべて(2011年12月5日号・№429)

国会で成立! 法人税関係は平成24年4月1日から適用
積み残し部分の平成23年度税制改正のすべて

 改正が実現していない積み残し部分の平成23年度税制改正法案が11月30日、一部修正が行われたうえ、ようやく今臨時国会で成立した。修正された法案については、個人所得課税、資産課税、地球温暖化対策のための税の導入が法案から削除された。最終的には、法人実効税率引下げおよび課税ベースの拡大のほか、国税通則法の一部見直しが改正されることにとどまった。
 特集では、積み残し部分の平成23年度税制改正について解説する。

実現するのは法人実効税率引下げと課税ベースの拡大  改正が実現していなかった積み残し部分の平成23年度税制改正法案がようやく今臨時国会で成立した。数奇な運命を辿った平成23年度税制改正法案の提出から成立までの経緯は以下のとおりだ(図表1参照)。

 平成23年度税制改正法案(「所得税法等の一部を改正する法律案」)については、衆参ねじれ国会のなか、3月末までに法案が国会で成立せず、いわゆるつなぎ法案(「国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法等の一部を改正する法律」)を成立させることにより、平成23年3月31日で期限切れとなる租税特別措置法の適用期限を3か月延長することで対応した。
 その後、政府は6月10日、民主党・自由民主党・公明党による「平成23年度税制改正法案等の処理について」(いわゆる3党合意)を受け、平成23年度税制改正法案を2つに分離。「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」については、6月22日に国会で成立し、6月30日に公布された。
 分離したもう1つの部分は、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」として、継続審議とされた。これが積み残し部分の平成23年度税制改正法案であり、一部修正を経て、今臨時国会で成立する運びとなったものである(修正案要綱は10頁参照)。
所得税・資産税関係は税制抜本改革へ  具体的には、個人所得課税、資産課税、地球温暖化対策のための税の導入のほか、納税者権利憲章の作成・公表などが見送られることになった。また、施行期日の修正も行われている。
 したがって、積み残し部分の平成23年度税制改正では、法人実効税率の引下げと課税ベースの拡大および税務調査手続や更正の請求期間の延長などの国税通則法の一部改正が行われることになる。
 以下、積み残し部分の平成23年度税制改正の主な内容をみることにする。

中小企業等の法人税率は15%に引下げ  法人課税に関しては、法人実効税率を5%引き下げるとともに、課税ベースの拡大がセットで行われることになる。
 法人税率については、普通法人の税率を25.5%(現行30%)に引き下げることにより、法人実効税率を5%引き下げる(図表2参照)。また、中小法人については、本則税率を19%(現行22%)に引き下げるとともに、特例として、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度の所得の金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税率が15%(現行18%)に引き下げられることになる(図表2・3参照)。



減価償却・欠損金の繰越控除見直しなどの課税ベースの拡大  課税ベースの拡大については、(1)減価償却制度の見直し(250%定率法から200%定率法に改正)、(2)欠損金の繰越控除制度の見直し、(3)貸倒引当金制度の見直しなどが挙げられる。
 (1)の減価償却制度に関しては、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した数(現行2.5倍した数)とする。
 適用は、平成24年4月1日以後取得する減価償却資産からとされるが、平成23年度税制改正大綱によれば、平成24年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度において、同日からその事業年度終了の日までの期間内に減価償却資産の取得をした場合には、250%定率法により償却することができる経過措置が講じられる予定となっている(図表4参照)。


Column 200%定率法への変更、監査上の取扱いは?
 日本公認会計士協会は平成23年4月14日、監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」を一部改正している。平成23年度税制改正により、減価償却制度について200%定率法に見直されることを踏まえたものだ。
 委員会報告によれば、既存資産に250%定率法を採用していた場合で、新規取得資産の定率法を200%定率法とした場合には、「同一種類で同一用途の減価償却資産について、類似の減価償却方法を採用するものと認められるため、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として取り扱うものとする」こととされた。
 一方、税制改正を契機に既存資産も新規取得資産と同様の方法に統一する目的で減価償却方法を変更する場合については、会計方針の変更として取り扱うことになる。しかし、この場合、単に法人税法の改正を理由とするだけでは正当な理由には該当しないため、変更理由の合理性に留意する必要があるとしている。

繰越期間が中小法人も含め9年に延長  (2)の欠損金の繰越控除制度に関しては、控除限度額が所得金額の8割となる(図表5参照)。ただ、欠損金発生年度の帳簿書類の保存を要件として、欠損金の繰越期間が現行の7年から9年に延長される。平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額について適用される。

 なお、控除限度額が所得金額の8割に制限されるのは大法人のみで、①普通法人のうち、資本金1億円以下であるもの(資本金5億円以上の100%子法人等を除く)、②公益法人等または協同組合等、③人格のない社団等については対象外となっている。
 適用は平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税からとされている。なお、平成24年4月1日前に更生手続等の開始の決定を受けた場合には、更生計画等の認可の決定の日以後7年を経過する日までの期間については、所得金額の8割制限は行わないこととされている。
貸引は中小法人と金融機関等のみが対象  貸倒引当金制度については、適用対象法人を限定する見直しが行われる。
 具体的には、①普通法人のうち、資本金1億円以下である普通法人(資本金5億円以上の100%子法人等を除く)等、公益法人等、協同組合等または人格のない社団等、②銀行、保険会社その他これに準ずる法人、③ファイナンス・リース取引に係るリース債権を有する法人等に限定されることになる。
 なお、法人の平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については、現行の損金算入限度額に対して、次の引当てを認める経過措置が講じられる。
・24.4.1~25.3.31開始事業年度……4分の3
・25.4.1~26.3.31開始事業年度……4分の2
・26.4.1~27.3.31開始事業年度……4分の1
エネ革税制等が廃止に  そのほか、①エネルギー需給構造改革推進投資促進税制の廃止、②事業革新設備等の特別償却制度の廃止、③試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度の見直し、④集積産業用資産の特別償却制度の見直し、⑤特定災害防止準備金制度の見直し、⑥特別修繕準備金制度の見直しなどが行われる。
 また、政令事項とはなるが、外国税額控除制度の適正化(本誌415号4頁参照)や一般寄附金の損金不算入制度の見直しが行われる。一般寄附金については、損金算入限度額を資本金等の額の1,000分の2.5相当額と所得の金額の100分の2.5相当額との合計額の4分の1(現行2分の1)に引き下げることとしている。

更正の請求期間が5年に延長  納税環境整備については、納税者権利憲章の作成・公表や「国税通則法」の題名変更、税務調査における書面での事前通知などが見送りとなっているほか、施行期日が修正されている。
課税庁の増額更正も5年に  国税通則法関係では、更正の請求期間については、5年(現行1年)に延長される一方、課税庁がする増額更正の期間制限についても、原則として5年(現行3年)となる(本誌387号9頁参照)。公布日から施行される(図表6参照)。

 なお、偽りの記載をした更正請求書を提出した者については、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する規定が手当てされる。公布の日から起算して2月を経過した日以後に行う更正の請求から適用される。
当初申告要件が見直し  また、当初申告要件の見直しも行われる。現行、確定申告書に適用金額を記載した場合に限り適用が可能な制度(当初申告要件がある制度)については、更正の請求により、事後的に適用することは認められないなどとされている。
 今回の改正では、(1)インセンティブ措置(設備投資に係る特別償却等)または利用するかしないかで有利にも不利にもなる操作可能な措置(各種引当金等)のいずれにも該当しない制度については、当初申告要件を廃止する、(2)法人税法における控除額の制限がある制度については、更正の請求により当初申告時の控除額を増額することができることとする。
 たとえば、①受取配当等の益金不算入(法法23、81の4)、②国等に対する寄附金、指定寄附金および特定公益増進法人に対する寄附金の損金算入(法法37、81の6)、③期限切れ欠損金の損金算入(法法59)、④協同組合等の事業分量配当の損金算入(法法60の2)、⑤所得税額の控除(法法68、81の14)などが見直しの対象となる。

法人住民税等の改正も平成24年4月1日に  継続審議となっている平成23年度税制改正における地方税法案(「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案」)についても一部修正が行われたうえ、11月24日に衆議院を通過、11月30日に国会で成立した。
 地方税関係では、法人税の税率引下げおよび課税ベースの拡大等に伴う法人住民税および法人事業税に係る措置について、施行時期が平成23年4月1日から平成24年4月1日とされている。また、地方税に関する税務調査手続等に関しては、国税関係と同様の見直しが行われている。たとえば、「書面」による事前通知や反面先への事前通知、また、調査終了時に非違内容・金額を記載した「書面」の交付は取り止めることとされている。

Column 復興財源確保法案も国会で成立
 復興財源確保法案(「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案」)についても、一部修正が行われたうえ、11月24日に衆議院を通過(修正案要綱は今号11頁参照)。11月30日に国会で成立した。
 具体的な内容としては、所得税額に対する付加税について25年間(平成25年1月~平成49年12月)、2.1%(当初の法案では10年間で4%)とされた。また、法人税額に対する付加税については、当初案どおり、平成24年度から26年度の3年間、10%課されることになる。平成23年度税制改正の法人税率の引下げと同時に実施されるため、平成26年度までは28.05%となる(本誌426号5頁参照)。
 なお、たばこ税の増税は法案から削除され、見送りとなっている。

参考資料

経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案要綱

 一 所得税法改正に係る一部の規定の削除
1 給与所得控除の見直しに係る規定を削除すること。(所得税法第28条、別表第2~別表第5関係)
2 給与所得者の特定支出の控除の特例の見直しに係る規定を削除すること。(所得税法第57条の2関係)
3 退職所得課税の見直しに係る規定を削除すること。(所得税法第30条、第201条、第203条関係)
4 扶養控除の見直しに係る規定を削除すること。(所得税法第84条、第85条、第120条、第190条、第194条、第195条の3関係)
 二 相続税法改正に係る一部の規定の削除
1 遺産に係る基礎控除の引下げに係る規定を削除すること。(相続税法第15条関係)
2 死亡保険金に係る非課税限度の引下げに係る規定を削除すること。(相続税法第12条関係)
3 相続税の税率構造の改正に係る規定を削除すること。(相続税法第16条関係)
4 未成年者控除に係る控除額の引上げに係る規定を削除すること。(相続税法第19条の3関係)
5 障害者控除に係る控除額の引上げに係る規定を削除すること。(相続税法第19条の4関係)
6 相続時精算課税制度の対象とならない贈与財産に係る贈与税の税率構造の改正に係る規定を削除すること。(相続税法第21条の7関係)
7 相続時精算課税制度の対象となる受贈者に係る贈与者の年齢要件の引下げに係る規定を削除すること。(相続税法第21条の9関係)
 三 租税特別措置法改正に係る一部の規定の削除
1 資産課税
(1)20歳以上の者が直系尊属から贈与により取得した相続時精算課税制度の対象とならない財産に係る贈与税の税率構造の緩和に係る規定を削除すること。(租税特別措置法第70条の2の3関係)
(2)相続時精算課税制度の対象となる受贈者の範囲の追加に係る規定を削除すること。(租税特別措置法第70条の2の4関係)
2 消費課税
  地球温暖化対策のための課税の特例に係る規定を削除すること。(租税特別措置法第6章第3節の2第1款関係)
 四 その他
 その他所要の規定の整備を行うこと。

経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案に対する修正案要綱

第一 題名の修正

 題名を「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法及び地方法人特別税等に関する暫定措置法の一部を改正する法律」に改めること。(題名関係)
第二 個人住民税における扶養控除の見直しに関する規定の削除
 個人住民税における扶養控除の見直しに関する規定を削除すること。(地方税法第23条、第34条、第292条、第314条の2等関係)
第三 その他
 その他所要の規定の整備を行うこと。

東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案に対する修正案要綱

 一 復興特別所得税の課税対象期間及び税率の変更

1 復興特別所得税の課税の対象となる期間を、平成25年から平成49年までの25年間に改めること。(第9条関係)
2 復興特別所得税の税率を、100分の4から100分の2.1に改めること。(第13条及び第27条関係)
 二 復興特別たばこ税に係る規定の削除
 復興特別たばこ税に係る規定を削除すること。(旧第6章関係)
 三 復興債等の償還期間の変更
 復興債及び当該復興債に係る借換国債については、平成49年度までの間に償還するものとすること。(新第71条関係)
 四 決算剰余金の償還費用の財源への活用
 政府は、平成23年度から平成27年度までの間の各年度の一般会計歳入歳出の決算上の剰余金を財政法第6条第1項に基づき公債又は借入金の償還財源に充てる場合においては、償還費用の財源に優先して充てるよう努めるものとすること。(新附則第15条関係)
 五 復興に係る特別会計の設置
 政府は、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するため、復興事業に係る歳入歳出を経理する特別会計を平成24年度において設置することとし、必要な法制上の措置を講ずるものとすること。(新附則第17条関係)
 六 その他
 その他所要の規定の整備を行うこと。

東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案に対する修正案要綱

第一 個人の道府県民税及び市長村民税の均等割の標準税率の特例の適用期間及び加算額の変更

 個人の道府県民税及び市町村民税の均等割の標準税率の特例について、いずれも適用期間を平成26年度から平成35年度までとし、標準税率に加算する額を500円とすること。(第二条関係)
第二 道府県たばこ税及び市町村たばこ税の税率の特例に関する規定の削除
 道府県たばこ税及び市町村たばこ税の税率の特例に関する規定を削除すること。(第三条及び附則第二条関係)
第三 その他
 その他所要の規定の整備を行うこと。

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