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解説記事2012年06月18日 【税制改正解説】 我が国におけるポルトガル・ガーンジー・ジャージーとの租税条約及び税務行政執行共助条約について(2012年6月18日号・№455)

税制改正解説
我が国におけるポルトガル・ガーンジー・ジャージーとの租税条約及び税務行政執行共助条約について
 竹中茉莉子

Ⅰ.日本・ポルトガル租税条約の締結

 日本とポルトガル共和国(以下「ポルトガル」という。)の緊密化する経済関係を踏まえ、両国政府は、新たな租税条約を締結するため、平成23年(2011年)6月に正式交渉を開始し、同年12月に「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とポルトガル共和国との間の条約」(以下「条約」という。)の内容について基本合意に至った。その後、同年12月にポルトガルにおいて署名が行われ、我が国においては、第180回通常国会に提出された。
 条約は国際的な二重課税の調整のため、両国間の投資・経済活動に係る課税関係を明確化するとともに、脱税及び租税回避行為の防止等のための両国の税務当局間の協力関係を構築するものである。以下では、条約の主な内容について解説する。

1.対象となる者(第1条)  条約は、原則として我が国又はポルトガルの居住者及び双方の締約国の居住者について適用される。双方居住者については、いずれか一方の締約国の居住者として振り分けられた上で、条約が適用される。

2.対象となる租税(第2条)  条約は、「所得に対する租税」について適用され、我が国においては、所得税、法人税、復興特別所得税、復興特別法人税及び住民税が対象となる。

3.居住者(第4条・議定書2)  第4条は、「一方の締約国の居住者」の定義等を規定している。議定書2は、両締約国で課税上の取扱いが異なる事業体を通じて、一方の締約国内において所得を取得する場合には、源泉地国ではない方の締約国におけるその事業体に対する課税上の取扱いに応じて、その所得が当該締約国で課税される範囲内で条約の特典が認められるように、条約の適用を調整している。

4.恒久的施設(第5条)  本条は、「恒久的施設」の定義等を規定している。「恒久的施設」とは、「事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っているもの」をいい、事業の管理の場所、支店等が該当する。また、建築工事現場又は建設若しくは据付けの工事について、これらの工事現場又は工事が12箇月を超える期間存続する場合には、恒久的施設を構成するものとされる。ただし、事業を行う一定の場所であっても、企業が準備的・補助的な活動のみを行うことを目的として使用又は保有している場合には、恒久的施設とはされない。また、企業が代理人を通じて行う活動について、恒久的施設を有する場合についても規定している。

5.不動産所得(第6条)  本条1は、一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)については、その不動産が存在する他方の締約国において課税できることを規定している。本条1は、不動産の直接使用、賃貸その他の全ての形式による使用から生ずる所得について、適用される。

6.事業利得(第7条)  本条は、企業が事業活動によって取得する利得に対する課税に関して、二つの原則を規定している。
 1つは「恒久的施設なければ課税なし」の原則で、一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて他方の締約国において事業を行わない限り、一方の締約国においてのみ租税を課することをいう。
 もう1つは「帰属主義」の原則で、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて他方の締約国において事業を行う場合には、その企業の利得のうちその恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、他方の締約国において租税を課すことをいう。

7.関連企業(第9条)  本条は、特殊な関係にある企業間の取引価格を独立した企業間の取引において認められる価格に引き直して租税負担を求める、いわゆる独立企業原則に基づく課税のルールを定めている。本条1に基づき、一方の締約国が企業の利得を更正して課税した場合、更正された部分の利得は他方の締約国の関連企業の利得にも含まれて課税されていることから、同一の利得について二重課税が生ずる。本条2は、その二重課税を除去するため、双方の権限のある当局が合意することを前提に、他方の締約国による対応的調整を規定している。
 また、本条1に基づく利得の更正が認められる期間を企業の利得に係る課税年度の終了時から7年以内の期間に制限することが規定されている(ただし、不正に租税を免れた利得については、この制限は適用されない。)。

8.配 当(第10条)  配当に対する源泉地国における限度税率について、持株割合(配当を支払う法人が我が国の居住者の場合)又は資本割合(配当を支払う法人がポルトガルの居住者の場合)が10%以上の親子会社間配当については5%、それ以外の場合には10%とすることを規定している。

9.利 子(第11条)  利子に対する限度税率について、10%としつつ、銀行が受益者である場合は、限度税率を5%とすることを規定している。また、利子の受益者が政府等又は中央銀行の場合、及びポルトガル内において生ずる利子であって、輸出及び開発を促進することを目的とし、かつ、我が国が資本の全部を所有する機関(両締約国の権限のある当局が随時合意するものに限る。)が受益者の場合は、源泉地国免税とすることを規定している。

10.使用料(第12条)  使用料に対する限度税率について、5%とすることを規定している。

11.譲渡収益(第13条・議定書10)  原則として、財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる締約国においてのみ課税できることとし、例外として、不動産の譲渡、不動産化体株式の譲渡については、その不動産の所在地国である他方の締約国において課税できることを規定している。
 また、議定書10は、一方の締約国によって資金援助が行われた当該一方の締約国の金融機関の株式の譲渡収益に関して、一定の要件を満たす場合は、当該一方の締約国が課税できることとしている。

12.給与所得(第14条)  一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料等に対しては、その勤務が他方の締約国内で行われる場合には、その他方の締約国においても課税できることを規定している。ただし、一定の要件を満たす場合には、当該他方の締約国の租税が免除される。

13.二重課税の除去(第22条)  本条は、日本及びポルトガルが、各々の居住者に対する二重課税の除去について規定している。我が国における二重課税除去の方法は、以下のとおり。
① 我が国の居住者が条約の規定に従ってポルトガルにおいて課税される所得をポルトガル内から取得する場合、その所得について納付されるポルトガルの租税の額を、我が国の法令に従って、我が国の租税の額から控除する。ただし、その控除の額は、我が国の租税の額のうち、その所得に対応する部分を超えることはできない。
② また、我が国の居住者である法人(日本法人)が、ポルトガルの居住者である法人(ポルトガル法人)から支払を受ける配当について、日本法人がポルトガル法人の議決権のある株式又は発行済株式の25%以上をその配当の支払義務が確定する日に先立つ6箇月の期間を通じて所有する場合には、当該配当は、我が国の法令に従って、我が国の課税標準から除外される。
③ さらに、①と②の適用上、我が国の居住者が受益者である所得であって条約の規定に従ってポルトガルにおいて課税されるものは、ポルトガル内の源泉から生じたものとみなす。

14.相互協議手続(第24条)  本条は、条約の適用に関して生ずる問題を解決するための相互協議手続について規定しており、納税者は、条約の規定に適合しない課税について、権限のある当局に対して申立てをすることができる。
 また、権限のある当局間で一定の期間内に事案の解決ができない場合、納税者からの申立てにより、第三者から成る仲裁委員会により解決される。仲裁の対象となる事案は、第9条(関連企業)の対象となる事案に限られる。
 なお、ポルトガルが、条約の効力発生後、我が国以外の国と、仲裁に関する規定を、条約より広い範囲に適用する二重課税の回避のための二国間の協定を締結したときは、一定の手続きを経た後、当該協定と同じ範囲の事案に適用される。

15.情報の交換(第25条)  本条は、両締約国の税務当局が相互に課税のために必要な情報を交換することを規定している。第1条(対象となる者)及び第2条(対象となる租税)の規定にかかわらず、両締約国の居住者でない者に関する情報や、条約の対象税目以外の租税に関する情報も交換の対象となる。

16.効力発生(第28条)  我が国及びポルトガルにおいて国内法の手続に従って承認された後、外交上の経路を通じて、書面によりその手続の完了を確認する通告を相互に行う。当該手続の完了が遅い方の国の通告が受領された日の翌日から30日目の日に、条約は効力を生じ、我が国については、次のものについて適用される。
① 源泉徴収される租税:この条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に租税を課される額
② 源泉徴収されない所得に対する租税:この条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度の所得
③ その他の租税:この条約が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度の租税

17.匿名組合(議定書5)  議定書5では、匿名組合契約等に関する条約適用上の取扱いを定めている。
 条約のいかなる規定にもかかわらず、匿名組合契約(ポルトガルについては、参加型組合契約)又はこれに類する契約に基づいて取得される所得及び収益に対しては、当該所得及び収益が生ずる締約国が、当該締約国の法令に従って源泉課税できる。

Ⅱ.情報交換を主体とする租税協定の締結

日本・ジャージー租税協定の締結

 近時、国境を越える経済取引、資産の移転等が活発化する中、国際的な脱税及び租税回避行為を防止して適切に税収を確保する観点から、多数の国及び地域との間で租税に関する情報交換の枠組みを整備し、拡充することの重要性が増している。これらの情勢を踏まえ、我が国は、平成23年(2011年)12月2日、ロンドンにおいて、「脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とジャージー政府との間の協定」(以下「協定」という。)を署名した。
 協定の締結により、我が国とジャージーとの間で、租税に関する国際標準に基づく税務当局間の実効的な情報の交換の実施が可能となり、国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資することが期待される。以下では、協定の主な内容について解説する。

1.情報の交換(第2章)  被要請者の権限のある当局は、第2条(目的及び適用範囲)に定める目的のため、要請者の要請に応じて情報を提供することとされている。情報は、調査対象となる行為が被要請者の領域的管轄内において行われたとした場合に被要請者の法令の下において犯罪を構成するか否かを考慮することなく、提供される。
 ただし、被要請者は、要請者の権限のある当局が要請者の法令等に基づいて入手できない場合には、当該情報の入手及び提供は要求されない。また、営業上の秘密等を明らかにする情報の提供を行う義務も課されないが、銀行等が有する情報等であることのみを理由に、情報提供を拒否することはできない。

2.二重課税の回避(第3章)  第3章の規定は、人的交流を促進する観点から、退職年金、学生等の特定の個人の所得についての課税の免除を規定するとともに、二重課税の除去について規定している。我が国については、所得税及び住民税が対象税目とされている。

3.特別規定(第4章)  第3章の規定に適合しない課税について、納税者は、権限のある当局に対して申立てをすることができる。当該権限のある当局は、他方の締約者の権限のある当局との間の合意により事案を解決するよう努めることとされている。

4.最終規定(第5章)  協定は、それぞれの法令上の手続に従って承認された(わが国においては、第180回通常国会に提出。)後、その承認を通知する公文の交換の日の後30日目の日に効力を生じる。また、協定は、効力を生ずる日以後に課される租税について適用される。ただし、第3章の規定に関しては、以下のとおり適用される。
① 源泉徴収される租税:協定が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に租税を課される額
② 源泉徴収されない所得に対する租税:協定が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度の所得

日本・ガーンジー租税協定の締結
 日本・ジャージー租税協定の締結と同様、近年の情勢を踏まえ、我が国は、平成23年(2011年)12月6日、ロンドンにおいて「租税に関する情報の交換及び個人の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とガーンジー政府との間の協定」(以下「協定」という。)を署名した。以下では、協定の主な内容について解説する。

1.情報の交換(第2章)  被要請者の権限のある当局は、第2条(目的及び適用範囲)に定める目的のため、要請者の要請に応じて情報を提供することとされている。情報は、被要請者が当該情報を自己の課税目的のために必要とするか否か、また、調査の対象となる行為が被要請者の領域的管轄内において行われたとした場合に被要請者の法令の下において犯罪を構成するか否かを考慮することなく、提供される。
 交換される対象税目は、我が国については、所得税、法人税、住民税、相続税、贈与税及び消費税である。
 被要請者は、要請者の権限のある当局が要請者の法令等に基づいて入手することができない場合、当該情報の入手及び提供は要求されない。また、協定は、営業上の秘密等を明らかにする情報の提供を行う義務を課するものではないが、銀行等が有する情報等であることのみを理由に情報提供を拒否できない。

2.二重課税の回避(第3章)  第3章の規定は、人的交流を促進する観点から、学生等の個人の所得について課税の免除を規定するとともに、二重課税の除去についても規定している。我が国については、所得税及び住民税が対象税目とされている。

3.特別規定(第4章)  第3章の規定に適合しない課税について、納税者は権限のある当局に対し、申立てをすることができる。当該権限のある当局は、他方の締約者の権限のある当局との間の合意によってその事案を解決するよう努めることとされている。

4.最終規定(第5章)  協定は、それぞれの内部手続(我が国においては、第180回通常国会に提出。)を経た後、その手続の完了を相互に通知し、双方の通知の受領日のうちいずれか遅い日の後30日目の日に効力を生じる。また、協定は、対象税目ごとに以下のとおり適用される。
① 課税年度に基づいて課される租税:協定が効力を生ずる日以後に開始する各課税年度の租税
② 課税年度に基づかないで課される租税:協定が効力を生ずる日以後に課される租税
 ただし、第3章の規定に関しては、以下のとおり適用される。
① 源泉徴収される租税:協定が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に租税を課される額
② 源泉徴収されない所得に対する租税:協定が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度の所得

Ⅲ.租税に関する相互行政支援に関する条約の締結
 租税に関する相互行政支援に関する条約(以下、「税務行政執行共助条約」又は「改正前の条約」という。)は、条約の締約国の税務当局間における租税に関する情報の交換、徴収における支援(徴収の共助)及び文書の送達(送達共助)について定めた多数国間条約である。
 税務行政執行共助条約は、欧州評議会閣僚委員会及び経済協力開発機構(OECD)理事会によって作成され、昭和63年(1988年)1月に欧州評議会の加盟国及び経済協力開発機構の加盟国に対して開放され、平成7年(1995年)4月に効力を生じた。
 租税に関する相互行政支援に関する条約を改正する議定書(以下「改正議定書」という。)は、改正前の条約を改正する議定書であり、主な改正点は次のとおり。
① 情報交換に関する規定の国際標準化
② 欧州評議会の加盟国及び経済協力開発機構の加盟国以外の国にもこの条約の締結を可能とした。
 改正議定書は、平成23年(2011年)5月にその署名のために開放され、平成23年(2011年)6月に効力を生じた。
 近時、国境を越える経済取引、資産の移転等が活発化する中、国際的な脱税及び租税回避に対する取組が重要な課題となっていることを踏まえ、我が国は、平成23年(2011年)11月3日に、フランスのカンヌにおいて、改正前の条約及び改正議定書に署名した(以下、改正議定書によって改正された改正後の条約のことを「条約」という。)。
 条約は、署名した国において、批准、受諾、又は承認される必要があり(我が国においては、条約は、第180回通常国会に提出。)、批准書、受諾書又は承認書を寄託者に寄託した日の後3か月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
 以下では、条約の主な内容について解説する。なお、改正前の条約を改正議定書が改正した点については、改正議定書によって改正された内容について解説する。

1.条約の適用範囲(第1章)
(1)条約の目的及び対象となる者(条約第1条)
 行政支援は、①情報交換、②徴収における支援、③文書の送達から成る。
 締約国は、影響を受ける者が、締約国の居住者若しくは国民であるか、又は締約国以外の国の居住者若しくは国民であるかに関わらず、行政支援を行うこととされている。
(2)対象となる租税(条約第2条)  条約は、以下の租税について適用される。
① 締約国のために課される次に掲げる租税
(i)所得又は利得に対する租税
(ii)所得又は利得に対する租税とは別に課される譲渡収益に対する租税
(iii)純資産に対する租税
② 締約国の地方政府又は地方公共団体のために課される所得、利得、譲渡収益又は純資産に対する租税
③ 強制加入の社会保険に係る保険料であって、一般政府又は公法に基づいて設立された社会保障機関に対して支払われるもの
④ 締約国のために課されるその他の区分の租税(関税を除く。)
(i)遺産税、相続税又は贈与税
(ii)不動産に対する租税 
(iii)付加価値税、売上税等の一般消費税 
(iv)個別消費税等の物品及び役務に対する特定の租税
(v)自動車の使用又は所有に対する租税
(vi)自動車以外の動産の使用又は所有に対する租税
(vii)その他の租税
⑤ 締約国の地方政府又は地方公共団体のために課される上記④の(i)から(vii)までに掲げる区分の租税

2.支援の形態(第3章)
(1)情報の交換(第1節)
 ① 情報の交換
 締約国は、本章第1節(情報の交換)の規定に従って、この条約の対象となる租税に関する締約国の法令の運用又は執行に関連するあらゆる情報を交換することが規定されている(条約第4条)。
 被要請国は、要請国から要請があったときには、条約第4条に規定する情報であって特定の者又は取引に関するものを当該要請国に提供することとされている(条約第5条)。
 また、2以上の締約国は、当該締約国間の合意によって決定する区分の事案に関し、その合意によって決定する手続に従って、条約第4条に規定する情報を自動的に交換することとされている(条約第6条)。
 また、締約国は、第7条1に掲げるいずれかに該当する場合には、事前の要請がなくても、自国が保有する情報を他の締約国に提供することとされている(条約第7条)。
 ② 同時税務調査(条約第8条)  2以上の締約国は、同時税務調査の要請があったときには、当該同時税務調査の事案及び手続を決定するため、相互に協議することとされている。
 ③ 海外における租税に関する調査(条約第9条)  被要請国の権限のある当局は、要請国の権限のある当局から要請があったときは、被要請国における租税に関する調査の適当な部分に要請者の権限のある当局の代表者が立ち会うことを認めることができる。
(2)徴収における支援(第2節)
 ① 租税債権の徴収(条約第11条)
 被要請国は、要請国の要請があったときは、要請国の租税債権を自国の租税債権を徴収する場合と同様に徴収するため、必要な措置をとることが規定されている。この規定は、要請国において執行を許可する文書の対象となる租税債権であって、関係締約国間に別段の合意がある場合を除くほか、争われていないものについてのみ適用されるが、当該租税債権が要請国の居住者でない者に対するものである場合には、関係締約国間に別段の合意がある場合を除いて、当該租税債権がもはや争われることがないときにのみ適用される。
 ② 保全の措置(条約第12条)  被要請国は、要請国から要請があった場合には、租税債権について争われているとき又は執行を許可する文書の対象となっていないときであっても、保全の措置をとることとされている。
 ③ 期間制限(条約第14条)  本条1には、租税債権に係る期間であって、それを超えて当該租税債権を執行することができないものに関する問題は、要請国の法令によって規律されることが規定されている。また、支援の要請に従い被要請国がとった徴収のための措置であって、被要請国の法令によれば本条1に規定する期間について停止又は中断の効果を有することとなるものは、要請国の法令の下においても同様の効果を有することが規定されている。
 ④ 優先権(条約第15条)  徴収における支援が行われる租税債権は、用いられる徴収の手続がたとえ被要請国の租税債権について適用されるものであっても、被要請国において当該租税債権に特別に与えられるいかなる優先権も有しない。
(3)文書の送達(第3節)  被要請国は、要請国の要請があったときは、要請国から発出される文書であって、条約の対象となる租税に関するものを名宛人に送達することとされている。要請国から発出される文書には、司法上の決定に関する文書も含む。
 また、締約国は、他の締約国の領域内の者に対して、郵便により直接に文書の送達を実施することができる。

3.全ての形態の支援に関する規定(第4章)
(1)支援の要請への対応(条約第20条)
 被要請国が支援の要請に応じた場合には、要請国に対し、被要請国がとった措置及びその支援の結果を、被要請国が支援の要請を拒否する場合には、要請国に対し、その旨及び拒否の理由をできる限り速やかに通報することとされている。
(2)対象となる者の保護及び支援を行う義務の限度(条約第21条)  この条約のいかなる規定も、要請の対象となる者に対し被要請国の法令又は行政上の慣行によって保障される権利及び保護に影響を及ぼすものではないこととされている。
 また、条約第14条(期間制限)に定める場合を除き、法令又は行政上の慣行に抵触する措置をとること、公の秩序に反する措置をとること、同様の状況にある要請国の国民と比較して被要請国の国民を差別するものを運用し、又は執行するために行政支援を行うこと等の一定の場合には、共助義務を負わないこととされている。
(3)争訟の手続(条約第23条)  条約に基づき被要請国がとった措置についての争訟の手続は、被要請国の適当な機関にのみ提起することとされている。
 条約に基づき要請国がとった措置、特に徴収の分野に関連して、租税債権の存在若しくは額又はその執行を許可する文書に関してとられた措置についての争訟の手続は、要請国の適当な機関にのみ提起することとされている。

4.特別規定(第5章)  締約国は、それぞれの権限のある当局を通じ、この条約を実施するために相互に通信することとされている。また、特定の事案についてこの条約を適用することにより、重大、かつ、望ましくない結果をもたらすと被要請国が認める場合は、被要請国及び要請国の権限のある当局は、相互に協議しその状況を合意によって解決するよう努めることとされている(条約第24条)。

5.最終規定(第6章)  いずれの国も、署名の際若しくは批准書、受諾書、若しくは承認書の寄託の際又はその後いつでも、情報交換、徴収共助、文書送達(郵便送達を含む)に関して、特定の租税に関して共助を行わないことについて、権利を留保する旨を宣言することができる。
 条約の規定について留保を付している締約国は、他の締約国に対し、その規定の適用を要求することはできないが、当該留保が部分的なものである場合には、自国が受け入れている限りにおいて、当該規定の適用を要求することができる(条約第30条)。

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