コラム2012年06月18日 【税実務Q&A】 事業譲渡における退職金債務の取扱い(2012年6月18日号・№455)

税実務Q&A
No.123 法人税>組織再編成>事業譲渡
事業譲渡における退職金債務の取扱い
 公認会計士緑川事務所 税理士 鈴木健太郎

 内国法人A社は、経営基盤の強化・拡大を図ることを目的に、第三者である内国法人B社の営む事業のうち、A社において営む事業と同種事業を買収することになりました。
 なお、買収対象事業に従事する従業者は、この買収にあたりすべてA社に引継ぐこととし、これにあわせて退職金債務(退職給付引当金)も同様に引継ぐことになりました。
 この場合、事業譲渡に伴い引継がれる退職給付引当金の取扱いはどのようになりますか。


(1)退職金債務の取扱いに係る経緯
 事業譲渡等に係る退職金債務の取扱いについて、平成18年度税制改正前は、事業譲渡時に、事業譲渡法人において事業譲渡に係る譲渡益から退職給付引当金相当額が控除され、さらに、引継ぎを受けた従業者の退職時に、事業譲受法人において、退職金として控除されることにより、結果として、退職金相当額の二重控除が発生する結果となっていました。
 そのため、この退職給付引当金に係る実務的な問題に対処するため、平成18年度税制改正において、次の(2)に掲げる措置が講じられています。
(2)事業譲受法人A社の取扱い
 ① 退職給付引当金
 内国法人が事業の譲受けにより資産又は負債の移転を受けた場合において、事業の譲受けをした法人から引継ぎを受けた従業者につき退職給与債務引受けをした場合は、その退職給与債務引受けに係る金額を負債調整勘定とします(法法62の8②一)。
 なお、事業の譲受けとは、その事業の譲受けの直前において営む事業及びその事業
に係る主要な資産又は負債のおおむね全部が譲受け法人に移転するものをいいます
(法令123の10①)。
 したがって、買収対象事業に従事する従事者に係る退職金債務である退職給付引当金に相当する額は、基本的に、A社において負債調整勘定として計上されることになります。
 ② 負債調整勘定の取崩し  上記において計上された負債調整勘定の金額は、退職金の支給その他一定の場合
に該当した時に、一定の金額を減額し、その減額をした事業年度の益金の額に算入し
ます(法法62の8⑥⑧)。
 これにより、引継ぎを受けた従業者の退職時に、負債調整勘定の取崩しが行われることになるため、上記(1)に掲げる二重控除が制限されることになります。
(3)事業譲渡法人B社の取扱い  事業譲渡法人であるB社については、移転する資産及び負債に係る時価純資産価額と簿価純資産価額との差額を譲渡損益として認識することになります。
 したがって、従前の取扱いと同様に、上記退職給付引当金相当額は、事業譲渡に係る譲渡益から控除されることになります。

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