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解説記事2023年03月20日 SCOPE 電子決済手段の発行及び保有の会計処理の取扱いが明らかに(2023年3月20日号・№971)

実務対応報告の公表日から適用へ
電子決済手段の発行及び保有の会計処理の取扱いが明らかに


 企業会計基準委員会(ASBJ)が開発中の資金決済法上の「電子決済手段」の発行・保有の会計処理の取扱いを定めた実務対応報告案の概要が明らかとなった。第1号電子決済手段及び第2号電子決済手段、第3号電子決済手段の取得時の会計処理については、電子決済手段の受渡日に、券面額をもって資産計上し、取得価額と券面額が異なる場合には、その差額を当期の損益として計上することになる。改正資金決済法については、遅くとも2023年6月までに施行される予定であり、実務対応報告の公表は改正資金決済法の施行日よりも後になることが想定されている。このため、実務対応報告の適用時期は公表日以後とされている。

電子決済手段、券面額で資産計上

 今回の実務対応報告案は、令和4年6月10日に公布された「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」により改正された資金決済法の施行日(施行は公布から1年以内)に合わせ、企業会計基準委員会が開発を進めているもの。資金決済法2条5項に規定される電子決済手段のうち、第1号電子決済手段、第2号電子決済手段及び第3号電子決済手段(以下「電子決済手段」)を対象としている(ただし、外国電子決済手段は、利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものなどに限る)。また、第3号電子決済手段の発行者に係る会計処理及び開示に関しては、実務対応報告第23号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」を適用する(本誌955号12頁参照)。

電子決済手段とは
 資金決済法2条5項に規定される第1号電子決済手段とは、物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値のこと。当該財産的価値は、電子的方法により記録されている通貨建資産に限られる。また、第2号電子決済手段は、不特定の者を相手方として第1号電子決済手段と相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるものをいう。第3号電子決済手段とは、電子機器その他の物に電子的方法により記録され、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される金銭信託の受益権のことである。

 まず、電子決済手段を取得したときの会計処理は、その受渡日に、電子決済手段の券面額をもって電子決済手段を資産として計上し、電子決済手段の取得価額と電子決済手段の券面額との差額がある場合には、当該差額を当期の損益として処理する(本誌952号14頁参照)。また、電子決済手段を第三者に移転又は発行者から電子決済手段の金銭による払戻しを受けるときは、電子決済手段の帳簿価額と金銭の受取額又は払戻額との間に差額がある場合、その受渡日に、当該差額を当期の損益として処理することとされている。
 期末時における電子決済手段の貸借対照表価額は、電子決済手段の券面額とされる。ただし、電子決済手段について券面額で金銭による払戻しが行われることが困難となった場合など、将来の特定の損失が見込まれる時には、企業会計原則注解(注18)に従って引当金の計上の要否を判断することになる。
発行時は債務額を負債計上
 電子決済手段の発行時の会計処理については、その受渡日に、電子決済手段に係る払戻義務を債務額をもって負債として計上する。また、電子決済手段を払い戻すときは、その受渡日に、当該電子決済手段の券面額と同額の電子決済手段に係る払戻義務に関する負債を取り崩すことになる。期末時における電子決済手段に係る払戻義務に関する負債の貸借対照表価額は、債務額となる。
外貨建電子決済手段、決算時に円換算
 そのほか、外貨建電子決済手段は、期末時において、原則として、決算時の為替相場による円換算額を付すことになる(本誌958号13頁参照)。期末時における換算によって生じた差額は、原則として、当期の為替差損益として処理する。また、電子決済手段等取引業者等が、預託者との合意に基づいて当該預託者から預かった電子決済手段については資産として計上せず、預託者に対する電子決済手段の返還義務についても負債として計上しないことになる(本誌964号9頁参照)。
注記は金融商品会計基準の預金と同様
 電子決済手段に関する注記については、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」における預金に関する定めに準じることとされ、電子決済手段の払戻義務に係る負債に関する注記は、金融商品会計基準における金銭債務に関する定めに従う。
 適用時期については、実務対応報告の公表日以後適用することとし、早期適用については、遡及適用を求めるため不要とされている。また、特に経過措置も設けないとしている。電子決済手段については、実務対応報告の適用後における発行残高又は保有残高に対して同一の会計処理が行われている方が財務諸表の理解可能性が高まることや、遡及適用のコストも高くないからだとしている。

キャッシュ・フロー作成基準、「電子決済手段」を現金の範囲に追加へ
 企業会計基準委員会は、電子決済手段が要求払預金に類似する性格を有する資産であるということを踏まえ、「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」等に定められている資金の範囲の「現金」に「電子決済手段」を含める改正を行う方針だ。改正後の同作成基準の現金は、「手許現金、要求払預金及び特定の電子決済手段」となる。特定の電子決済手段とは、実務対応報告の対象範囲である資金決済法2条5項1号から3号の電子決済手段が該当する。

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