コラム2013年04月08日 【税実務Q&A】 営利型一般法人へ移行する際の課税関係(2013年4月8日号・№494)

税実務Q&A
No.162 法人税>公益法人等
営利型一般法人へ移行する際の課税関係
 公認会計士緑川事務所 税理士 村田道生

 当法人(特例民法法人である社団に該当)は、いわゆる営利型の一般社団法人への移行を検討しています。そこで、この移行に関して、法人税の課税関係で注意すべき事項を教えて下さい。

 特例民法法人から営利型一般法人へ移行した場合には、法人税法上、法人区分が変更するため、課税所得の範囲や適用税率が変わります。また、みなし寄附金制度が適用対象外となるなどの影響もあります。
 中でも、注意を要するのが、移行時の累積所得金額に対する課税です。すなわち、移行前の非収益事業に係る所得の累積額が存在する場合、移行に際しては、次のように、税負担が生ずる可能性があります。したがって、営利型一般法人へ移行する場合には、その課税関係を事前によく検討する必要があります。
(1)課税所得の範囲・税率  移行前は、法人税法上、特例民法法人として公益法人等とみなされるため(所得税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第23号)附則10)、収益事業から生じた所得について課税され、かつ、軽減税率(19%)の適用があります(法66③)。
 しかし、営利型一般社団法人への移行後は、普通法人に該当するため、全所得課税が適用され、原則として本則税率(25.5%)が適用されます(法66①②)。
(2)累積所得金額の算定  移行後に、一般社団・財団法人等(公益法人等に限る)が普通法人に該当することとなった場合には、移行日の属する事業年度の所得金額の計算上、移行前の収益事業以外の事業から生じた所得の累積額を益金の額に算入することとなります。具体的には、次の算式により、その金額が計算されます(法64の4①③、法令131の4①、法令131の5①)。
【算式】 
(移行日における資産の帳簿価額-負債の帳簿価額-利益積立金額)-当初調整公益目的財産残額(※)
※当初調整公益目的財産残額は、次の①、②のいずれか少ない金額になります。
 ① 公益目的財産残額+公益目的収支差額の収入超過額+時価評価損の額-時価評価益の額
 ② 移行日における資産の帳簿価額-負債の帳簿価額-利益積立金額
(3)営利型法人へ移行時の課税関係  上記算式の括弧内は、税務上の帳簿価額によりますが、そこから控除される「当初調整公益目的財産残額」の計算要素①は貸借対照表上の純資産額を基礎として計算されます。
 したがって、例えば、会計上、退職給付引当金を計上していた場合には、移行時に、累積所得金額に対する課税が生ずる可能性があるため、注意が必要となります(参考:国税庁質疑応答事例:「公益法人等が普通法人に移行する場合の法人税の取扱い(特例民法法人・累積所得金額の計算)」)。

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