解説記事2013年07月29日 【ニュース特集】 リース取引と新消費税、新旧適用税率のポイント(2013年7月29日号・№509)
所有権移転外ファインス・リース取引の取扱いに注意
リース取引と新消費税、新旧適用税率のポイント
消費税率の引上げ(平成26年4月1日から8%、平成27年10月1日より10%)まで残すところ8か月余り。施行日をまたぐ取引を中心に、新旧どちらの税率が適用されるのかに頭を悩ます実務家は多い。改正消費税法等では、一定の取引について経過措置が設けられているが、基本的には前回の引上げ時(平成9年4月1日)に講じられたものと同じものだ。ただ、平成19年度税制改正により、「賃貸借取引」から「売買取引」とされた「所有権移転外ファイナンス・リース取引」については、前回の引上げ時とは部分的に異なる経過措置が盛り込まれている。特集では、この「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に関する経過措置について、貸手側・借手側双方の立場から、新旧適用税率のポイントを紹介する。
貸手側、リース延払基準・譲渡時期の特例について経過措置を手当て
資産の貸付けに関する経過措置は、事業者が平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、施行日(平成26年4月1日)前から引き続き行われている資産の貸付けで、その契約の内容について、一定の要件を満たす場合に適用される(改正消法附則5④)。
この資産の貸付けに関する経過措置の対象となる取引は、オペレーティング・リース取引やビル等の賃貸借契約が代表的だ。
資産の貸付けに係る経過措置の適用なし 一方で、前回の消費税率引上げ時には経過措置の対象とされていた所有権移転外ファイナンス・リース取引は、平成19年度税制改正により、かつては賃貸借取引とされていたものが、平成20年4月1日以後に締結するリース契約から、リース資産の引渡日においてリース資産の譲渡があったものとして取り扱われることになった。つまり、「賃貸借取引」から「売買取引」とされたわけだ。
したがって、平成20年4月1日以後に契約が締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引については、資産の貸付けに関する経過措置の適用がなく、原則として、リース資産の引渡しがあった時の税率が適用されることになる。つまり、施行日(平成26年4月1日)以後にリース資産の引渡しがあった場合は、新税率が適用されることになる。
この点が、前回の引上げ時とは取扱いが大きく異なる点だ。ただし、改正消令(消費税法施行令の一部を改正する政令(平成25年3月13日政令第56号))では、所有権移転外ファイナンス・リース取引であっても、「リース延払基準により経理したケース(法法63①、消令32の2①)」と「リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受けたケース(法法63②、消令36の2①)」については、実務に与える影響に配慮し、旧税率が適用される経過措置を新たに規定している。
適用をやめた場合の残額にも旧税率を適用 改正消令附則6条では、経過措置の対象となる経理方法の1つとして、「リース延払基準により経理したケース」が規定されている。
具体的には、事業者が、施行日前に行ったリース譲渡について、リース延払基準の方法により経理した場合の特例の適用を受けている場合には、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分は、経過措置の対象となり、旧税率が適用されることが明らかにされている(図参照)。
なお、この特例の適用を受けている事業者が、適用を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間において、その適用を受けないこととした場合には、リース譲渡に係る対価の額のうち、その適用を受けないこととした課税期間以後の各課税期間におけるリース譲渡延払収益額に係る部分は、適用を受けないこととした日の属する課税期間において資産の譲渡等を行ったものとみなすこととされている(消令32③、32の2③)。
しかし、この場合であっても、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分があることには変わりがないので、経過措置の対象となり、旧税率が適用される(経過措置QA問57参照)。
リース資産の譲渡時期の特例にも経過措置が 経過措置の対象となるもう1つの経理方法として、改正消令附則8条では、「リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受けたケース」が規定されている。
具体的には、事業者が、施行日前に行ったリース譲渡について、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分は、経過措置の対象となり、旧税率が適用されることが明らかにされている(図参照)。
なお、この特例の適用を受けている事業者が、適用を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間において、その適用を受けないこととした場合には、リース譲渡に係る対価の額のうち、その適用を受けないこととした課税期間以後の各課税期間におけるリース譲渡収益額に係る部分は、適用を受けないこととした日の属する課税期間おいて資産の譲渡等を行ったものとみなすこととされている(消令32③、36の2④)。
しかし、この場合であっても、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分があることに変わりがないので、経過措置の対象となり、旧税率が適用される(経過措置QA問58参照)。
借手側、「分割控除」のケースは施行日以後も旧税率を適用
平成20年4月1日以後に契約が締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引については、売買取引として、リース資産の引渡しがあった時の税率が適用される。
したがって、賃借人は、リース資産の引渡しが施行日前であれば、原則として、その引渡しの日の属する課税期間において、旧税率により一括して仕入税額控除を行うこととなる。
ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人が、賃貸借処理として会計処理を行っている場合には、分割控除を行うことが認められている。分割控除とは、毎回のリース料の支払時に課税仕入れとする方法のことであり、経理実務の簡便性という観点から認められているものだ(国税庁質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」下記参照)。
この分割控除のケースについて、改正消法附則や改正消令附則には経過措置は規定されていない。しかし、施行日前に行われた所有権移転外ファイナンス・リース取引(旧税率が適用される取引)で、その賃借人が施行日以後に分割控除を行う部分については、旧税率により仕入税額控除の計算を行うことが当局への取材により明らかとなっている。分割控除を採用する事業者は、施行日以後に支払うリース料について、新税率により仕入税額控除を行うことができない点に注意したい(図参照)。
(国税庁ホームページから一部抜粋)
リース取引と新消費税、新旧適用税率のポイント
消費税率の引上げ(平成26年4月1日から8%、平成27年10月1日より10%)まで残すところ8か月余り。施行日をまたぐ取引を中心に、新旧どちらの税率が適用されるのかに頭を悩ます実務家は多い。改正消費税法等では、一定の取引について経過措置が設けられているが、基本的には前回の引上げ時(平成9年4月1日)に講じられたものと同じものだ。ただ、平成19年度税制改正により、「賃貸借取引」から「売買取引」とされた「所有権移転外ファイナンス・リース取引」については、前回の引上げ時とは部分的に異なる経過措置が盛り込まれている。特集では、この「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に関する経過措置について、貸手側・借手側双方の立場から、新旧適用税率のポイントを紹介する。
貸手側、リース延払基準・譲渡時期の特例について経過措置を手当て
資産の貸付けに関する経過措置は、事業者が平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、施行日(平成26年4月1日)前から引き続き行われている資産の貸付けで、その契約の内容について、一定の要件を満たす場合に適用される(改正消法附則5④)。
この資産の貸付けに関する経過措置の対象となる取引は、オペレーティング・リース取引やビル等の賃貸借契約が代表的だ。
資産の貸付けに係る経過措置の適用なし 一方で、前回の消費税率引上げ時には経過措置の対象とされていた所有権移転外ファイナンス・リース取引は、平成19年度税制改正により、かつては賃貸借取引とされていたものが、平成20年4月1日以後に締結するリース契約から、リース資産の引渡日においてリース資産の譲渡があったものとして取り扱われることになった。つまり、「賃貸借取引」から「売買取引」とされたわけだ。
したがって、平成20年4月1日以後に契約が締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引については、資産の貸付けに関する経過措置の適用がなく、原則として、リース資産の引渡しがあった時の税率が適用されることになる。つまり、施行日(平成26年4月1日)以後にリース資産の引渡しがあった場合は、新税率が適用されることになる。
この点が、前回の引上げ時とは取扱いが大きく異なる点だ。ただし、改正消令(消費税法施行令の一部を改正する政令(平成25年3月13日政令第56号))では、所有権移転外ファイナンス・リース取引であっても、「リース延払基準により経理したケース(法法63①、消令32の2①)」と「リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受けたケース(法法63②、消令36の2①)」については、実務に与える影響に配慮し、旧税率が適用される経過措置を新たに規定している。
適用をやめた場合の残額にも旧税率を適用 改正消令附則6条では、経過措置の対象となる経理方法の1つとして、「リース延払基準により経理したケース」が規定されている。
具体的には、事業者が、施行日前に行ったリース譲渡について、リース延払基準の方法により経理した場合の特例の適用を受けている場合には、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分は、経過措置の対象となり、旧税率が適用されることが明らかにされている(図参照)。

なお、この特例の適用を受けている事業者が、適用を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間において、その適用を受けないこととした場合には、リース譲渡に係る対価の額のうち、その適用を受けないこととした課税期間以後の各課税期間におけるリース譲渡延払収益額に係る部分は、適用を受けないこととした日の属する課税期間において資産の譲渡等を行ったものとみなすこととされている(消令32③、32の2③)。
しかし、この場合であっても、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分があることには変わりがないので、経過措置の対象となり、旧税率が適用される(経過措置QA問57参照)。
リース資産の譲渡時期の特例にも経過措置が 経過措置の対象となるもう1つの経理方法として、改正消令附則8条では、「リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受けたケース」が規定されている。
具体的には、事業者が、施行日前に行ったリース譲渡について、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分は、経過措置の対象となり、旧税率が適用されることが明らかにされている(図参照)。
なお、この特例の適用を受けている事業者が、適用を受けた課税期間の翌課税期間以後の課税期間において、その適用を受けないこととした場合には、リース譲渡に係る対価の額のうち、その適用を受けないこととした課税期間以後の各課税期間におけるリース譲渡収益額に係る部分は、適用を受けないこととした日の属する課税期間おいて資産の譲渡等を行ったものとみなすこととされている(消令32③、36の2④)。
しかし、この場合であっても、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分があることに変わりがないので、経過措置の対象となり、旧税率が適用される(経過措置QA問58参照)。


借手側、「分割控除」のケースは施行日以後も旧税率を適用
平成20年4月1日以後に契約が締結された所有権移転外ファイナンス・リース取引については、売買取引として、リース資産の引渡しがあった時の税率が適用される。
したがって、賃借人は、リース資産の引渡しが施行日前であれば、原則として、その引渡しの日の属する課税期間において、旧税率により一括して仕入税額控除を行うこととなる。
ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人が、賃貸借処理として会計処理を行っている場合には、分割控除を行うことが認められている。分割控除とは、毎回のリース料の支払時に課税仕入れとする方法のことであり、経理実務の簡便性という観点から認められているものだ(国税庁質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」下記参照)。
この分割控除のケースについて、改正消法附則や改正消令附則には経過措置は規定されていない。しかし、施行日前に行われた所有権移転外ファイナンス・リース取引(旧税率が適用される取引)で、その賃借人が施行日以後に分割控除を行う部分については、旧税率により仕入税額控除の計算を行うことが当局への取材により明らかとなっている。分割控除を採用する事業者は、施行日以後に支払うリース料について、新税率により仕入税額控除を行うことができない点に注意したい(図参照)。
所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い 【照会要旨】 所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「リース取引」をいい、以下「移転外リース取引」といいます。)につき、賃借人が賃貸借処理(通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理をいいます。以下同じです。)をしている場合には、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとする処理(以下「分割控除」といいます。)は認められるでしょうか。 【回答要旨】 移転外リース取引につき、事業者(賃借人)が賃貸借処理をしている場合で、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れ等として消費税の申告をしているときは、これによって差し支えありません。 (理由等) 移転外リース取引については、リース資産の譲渡として取り扱われ、消費税の課税仕入れの時期は、課税仕入れを行った日の属する課税期間において控除(以下「一括控除」といいます。)するのが原則ですから、移転外リース取引によりリース資産を賃借した賃借人においては、当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において一括控除することになります。 しかしながら、消費税の仕入税額控除については、事業者の経理実務を考慮して、その時期についてはこれまでも各種の特例を認めているところであり、これと同様の趣旨から、会計基準に基づいた経理処理を踏まえ、経理実務の簡便性という観点から、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、分割控除を行っても差し支えないとしたものです。 |
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