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解説記事2014年06月02日 【税務マエストロ】 吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例(2014年6月2日号・№548)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例
#112 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#113 移転価格税制への対応③
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 品川克己 税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
  e-mail:ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  会社が組織の再編にあたり、事業の一部分を他の既存の会社に付け替えるような分割のことを「吸収分割」という。
 具体的には、図1のように、分割法人が小売部門を分離して小売業を営む別の法人(分割承継法人)に付け替えるようなケースで吸収分割の手法を活用することになるものと思われる。

 会社分割があった場合の納税義務免除の特例規定が設けられた趣旨から見た場合には、吸収分割の場合の分割法人と分割承継法人はまったく別の法人であり、本来であれば、特例判定などする必要はないものである。
 しかし、図2のように、大規模法人が事業の大半を切り離し、小規模法人に付け替えたような場合において、その事業を承継した小規模法人が、自社の基準期間中の課税売上高だけで納税義務を判定するのは明らかに不合理である。

 こういった理由から、吸収分割については、分割承継法人の吸収分割があった事業年度とその翌事業年度、つまり、承継した事業の実績が基準期間中の課税売上高に反映されない期間についてだけ、分割法人の売上規模により、特例判定をすることとしたものと思われる。したがって、吸収分割があった事業年度の翌々事業年度以降については特例判定はする必要がない。また、分割法人についても、特例規定は一切適用されないことになる。
 今号では、この吸収分割について、簡易課税制度との関係や分割承継法人の納税義務判定について確認する。

1 簡易課税制度との関係  納税義務の判定に用いる課税売上高と簡易課税制度の適用判定は、新設分割等の場合と吸収分割の場合で異なっている。分割(分割承継)法人の簡易課税制度の適用の有無については、分割承継(分割)法人の実績は一切考慮せずに、分割(分割承継)法人の基準期間における課税売上高のみによって判定することとされている(消基通13-1-2)。

2 分割承継法人の納税義務の判定  納税義務の判定に用いる課税売上高は、次の(1)(2)のように計算する。なお、判定に用いる課税売上高は暦に従って計算し、1ヶ月未満の端数は1ヶ月とする(消令23⑧)。
 また、分割等による事業承継があったことにより、分割承継法人が納税義務者となった場合には、「課税事業者届出書」とともに「相続・合併・分割等があったことにより納税義務者となる場合の付表」の提出が義務付けられている。
(1)吸収分割事業年度の取扱い  吸収分割事業年度においては、「分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高」が1,000万円を超える場合には、分割承継法人は、吸収分割があった日から吸収分割事業年度終了の日までの期間については課税事業者となる(消法12⑤、消令23⑥)。
 吸収分割の場合には、分割法人の課税売上高だけで納税義務を判定することとされており、分割承継法人の課税売上高は合算する必要はない。
 また、分割法人が2社以上ある場合には、最も大きい課税売上高により判定することとなるのであるから、分割法人同士の課税売上高も合算する必要はない。
 なお、分割承継法人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えていれば、特例判定をするまでもなく、分割承継法人は当然に課税事業者となる(図3参照)。

(2)吸収分割事業年度の翌事業年度の取扱い  分割承継法人の、納税義務判定の対象事業年度開始の日の1年前の日の前日からその事業年度開始の日の前日までの間に吸収分割があった場合において、「分割承継法人の基準期間に対応する期間における分割法人の課税売上高」が1,000万円を超える場合には、分割承継法人は課税事業者となる(消法12⑥、消令23⑦)。
 吸収分割の場合には、吸収分割があった事業年度の翌事業年度においても、分割法人の課税売上高だけで納税義務を判定することとされており、分割承継法人の課税売上高は合算する必要はない。
 また、分割法人が2社以上ある場合には、最も大きい課税売上高により判定することとなる。分割法人同士の課税売上高についても合算する必要はない(図4参照)。なお、具体的な計算については、図5参照。


(3)分割法人が2社以上ある場合の取扱い  分割法人と分割承継法人はまったく別の法人であり、本来であれば、特例判定などはする必要はないものである。しかし、図2のような租税回避スキームが想定されることから、これを防止するための手段として納税義務免除の特例規定が設けられたという立法上の背景があるように思われる。
 したがって、分割法人が2社以上あるようなケースであっても、あえてこれらの分割法人の課税売上高を合算する必要性もなく、いずれかの分割法人が課税事業者となる程度の規模であるならば、分割承継法人も課税事業者に取り込んでいくということではないだろうか(図6参照)。


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