コラム2014年09月01日 【税実務Q&A】 海外出向者に係る現物給与課税(2014年9月1日号・№560)

税実務Q&A
No.228 所得税>非居住者及び法人の納税義務
海外出向者に係る現物給与課税
 パートナーズ綜合税理士法人 税理士 藤村浩一郎

 当社の社員Aは、来月から米国にある駐在所へ出向することになりました。期間は3年
間を予定しています。
 社員Aの出向にあたり、社員Aの子弟を現地の日本人学校へ通学させるための授業料、通学費用は当社が負担することにしました。
 この当社が負担することになる授業料、通学費用については、当社で現物給与としての所得税の源泉徴収が必要でしょうか。


1.現物給与
 会社が社員の個人的な費用を負担した場合、それは会社から個人に対する経済的利益の供与とされ、給与が支給されたことになります(所法28)。
 ご質問の場合、社員Aの子弟が日本人学校に通学するための授業料、通学費用については、本来は社員Aが個人的に負担すべきものだと考えられますので、会社から社員Aに対して経済的利益の供与があったものとされ、給与が支給されたことになります。
2.居住者と非居住者の判定  国外において事業を営み若しくは職業に従事するため国外に居住することとなった者は、その地における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められる場合を除いて、日本国内に住所を有しない者と推定され、日本の非居住者として取り扱われます(所令15、所基通3-3)。
 社員Aは、3年間の予定で米国の駐在所へ出向することから、日本国内に住所を有しない者と推定され、出国日の翌日から日本の非居住者として取り扱われます。
3.国内源泉所得  非居住者に対する給与については、国内源泉所得に該当するものについて日本で所得税が課され、給与を支給する法人においても源泉徴収義務が生じます(所法7、212)。
 給与のうち、国内源泉所得に該当するものは、国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するものとなります(所法161八イ、日米租税条約14)。
 ご質問の場合、海外勤務となった社員Aが受ける経済的利益については、通常、国内において行う勤務その他の人的役務の提供に起因するものとは認められないと考えられますので、国内源泉所得には該当しません。
 このため、貴社において負担する授業料、通学費用の支払いについては、貴社で所得税の源泉徴収は不要であると考えられます。
4.出向者が役員である場合  出向者が仮に役員である場合、使用人とは国内勤務の考え方が異なり、内国法人の役員の国外勤務については、その勤務する場所にかかわらず国内における勤務とみなされますので留意が必要です(所法161八イ、日米租税条約15)。

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