税務ニュース2005年05月09日 信託方式のポイズン・ピルは課税上のリスクも…(2005年5月9日号・№113) 無価値と判断される SPCへの新株予約権の割当は非課税の可能性
信託方式のポイズン・ピルは課税上のリスクも…
無価値と判断される SPCへの新株予約権の割当は非課税の可能性
敵対的買収への防衛策の一つとして検討されている信託方式のポイズン・ピルだが、課税上のリスクがあるので慎重な対応が必要だ。ただ、税務当局は、敵対的買収防衛目的(平時導入、有事発動)のSPCに対して行う新株予約権の割当については、無価値と判断されるものであれば、非課税とすることも考慮に入れて検討している模様だ。
信託方式のポイズン・ピルとは?
現在、注目されている信託方式のポイズン・ピルの基本スキームを簡単に説明すると、発行会社がSPC(委託者)を設立し、新株予約権を割当て、信託銀行(受託者)に管理してもらう仕組み。例えば、20%以上の株式保有者または公開買付者が現れた場合、新株予約権が敵対的買収者を除く株主(受益者)に交付されるというものだ(右頁図参照)。
日本初のポイズン・ピルとして話題となったJASDAQ上場の株式会社ニレコが導入した「セキュリティ・プラン」は、3月末の株主全員に対し、1株につき2個の割合で新株予約権を無償で割当てるというもの。新株予約権の行使期間中に、ある者がニレコの発行済議決権付株式総数の20%以上が取得された場合に行使することが可能となる。
ポイズン・ピルではないが、インボイスが昨年行った全株主に対して、一律に新株予約権を交付した場合と同様に、譲渡時まで課税が繰延べられるメリットがある模様だ。ただ、このニレコ方式と呼ばれるポイズン・ピルは、事前に新株予約権を割当てるため、敵対的買収者が現れた時点の株主と新株予約権を持つ者とが一致しない点が難点となっている。
一方、この難点を解消するために考えられたスキームが前述した信託方式のポイズン・ピルだ。このスキームであれば、敵対的買収者が現れた時点での株主に新株予約権を交付するため、株主と新株予約権者が一致することになる。東証が公表した「敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について」及び経済産業省の企業価値研究会が公表した防衛策の論点公開でも認められている方式だ。
SPCと株主へのダブルで課税も…
しかしながら、信託方式を導入する場合の問題点として、税務上の取扱いが指摘されている。信託方式の場合、SPCに新株予約権を割当てることになるが、有利発行とした場合には、現行の取扱いによれば、時価と取得価額との差額について、低廉譲渡として課税される可能性が高いほか、株主に新株予約権を交付する場合についても、付与時又は行使時に課税されることになる。
従来、税務当局でも、契約書等の詳細が分からなければ一概には言えないとし、税務上の取扱いの判断に迷った場合には、事前照会制度を利用することも呼びかけていた。
商法上認められたスキームであれば
4月21日に開催された自民党の企業統治に関する委員会では、甘利明委員長が国税庁に対して、ポイズン・ピルに関する課税上の取扱いを明確にするよう要請している旨を明らかにした。ポイズン・ピルに対する課税上の取扱いについて、企業からの問い合わせが多いという事情を考慮したものだ。
これを受け、国税庁では、信託方式によるポイズン・ピルの課税上の取扱いについて検討を開始。今回、敵対的買収防衛目的のSPCに対して行う新株予約権の割当については、契約書などにより無価値と判断されることになれば、非課税とすることも考慮に入れて検討を行っている模様だ。また、株主に対しては、実際に新株予約権が交付される際に課税が行われることになる。
今回の取扱いは、敵対的買収者が現れ、実際に新株予約権が株主に対して交付されるかどうかの蓋然性が判断要素の一つになる。ただし、仮に非課税とされる場合でも、すべてのSPCに認められるわけではなく、一定の要件が求められるほか、商法上、認められたスキームに限られることになる。
企業価値防衛指針に従うことが必要
しかしながら、信託方式の場合、商法上における手続に難点があることも指摘されている。まず、SPCに有利発行で新株予約権を割当てる場合には、株主総会の特別決議が必要となり、実務上、手続が面倒であるという点が挙げられる。
また、敵対的買収者が現れた時点において、株主に新株予約権を交付することになるが、どのように実質株主を特定すべきかという問題点もある。現行では、直近の決算日、中間決算日の基準日でしか実質株主を判断できないからだ。このため、解決方法としては、例えば、株式分割を行い、基準日を設定することが考えられるが、この場合であっても敵対的買収者がTOBなどにより、株式を買い進める危険性があるからだ。
なお、敵対的買収者以外に新株予約権を交付する敵対的買収防衛策は、株主総会の承認を得るなど、経済産業省及び法務省が5月下旬にも公表する企業価値防衛指針を参考に行う必要がある。
無価値と判断される SPCへの新株予約権の割当は非課税の可能性
敵対的買収への防衛策の一つとして検討されている信託方式のポイズン・ピルだが、課税上のリスクがあるので慎重な対応が必要だ。ただ、税務当局は、敵対的買収防衛目的(平時導入、有事発動)のSPCに対して行う新株予約権の割当については、無価値と判断されるものであれば、非課税とすることも考慮に入れて検討している模様だ。
信託方式のポイズン・ピルとは?
現在、注目されている信託方式のポイズン・ピルの基本スキームを簡単に説明すると、発行会社がSPC(委託者)を設立し、新株予約権を割当て、信託銀行(受託者)に管理してもらう仕組み。例えば、20%以上の株式保有者または公開買付者が現れた場合、新株予約権が敵対的買収者を除く株主(受益者)に交付されるというものだ(右頁図参照)。
日本初のポイズン・ピルとして話題となったJASDAQ上場の株式会社ニレコが導入した「セキュリティ・プラン」は、3月末の株主全員に対し、1株につき2個の割合で新株予約権を無償で割当てるというもの。新株予約権の行使期間中に、ある者がニレコの発行済議決権付株式総数の20%以上が取得された場合に行使することが可能となる。
ポイズン・ピルではないが、インボイスが昨年行った全株主に対して、一律に新株予約権を交付した場合と同様に、譲渡時まで課税が繰延べられるメリットがある模様だ。ただ、このニレコ方式と呼ばれるポイズン・ピルは、事前に新株予約権を割当てるため、敵対的買収者が現れた時点の株主と新株予約権を持つ者とが一致しない点が難点となっている。
一方、この難点を解消するために考えられたスキームが前述した信託方式のポイズン・ピルだ。このスキームであれば、敵対的買収者が現れた時点での株主に新株予約権を交付するため、株主と新株予約権者が一致することになる。東証が公表した「敵対的買収防衛策の導入に際しての投資者保護上の留意事項について」及び経済産業省の企業価値研究会が公表した防衛策の論点公開でも認められている方式だ。
SPCと株主へのダブルで課税も…
しかしながら、信託方式を導入する場合の問題点として、税務上の取扱いが指摘されている。信託方式の場合、SPCに新株予約権を割当てることになるが、有利発行とした場合には、現行の取扱いによれば、時価と取得価額との差額について、低廉譲渡として課税される可能性が高いほか、株主に新株予約権を交付する場合についても、付与時又は行使時に課税されることになる。
従来、税務当局でも、契約書等の詳細が分からなければ一概には言えないとし、税務上の取扱いの判断に迷った場合には、事前照会制度を利用することも呼びかけていた。
商法上認められたスキームであれば
4月21日に開催された自民党の企業統治に関する委員会では、甘利明委員長が国税庁に対して、ポイズン・ピルに関する課税上の取扱いを明確にするよう要請している旨を明らかにした。ポイズン・ピルに対する課税上の取扱いについて、企業からの問い合わせが多いという事情を考慮したものだ。
これを受け、国税庁では、信託方式によるポイズン・ピルの課税上の取扱いについて検討を開始。今回、敵対的買収防衛目的のSPCに対して行う新株予約権の割当については、契約書などにより無価値と判断されることになれば、非課税とすることも考慮に入れて検討を行っている模様だ。また、株主に対しては、実際に新株予約権が交付される際に課税が行われることになる。
今回の取扱いは、敵対的買収者が現れ、実際に新株予約権が株主に対して交付されるかどうかの蓋然性が判断要素の一つになる。ただし、仮に非課税とされる場合でも、すべてのSPCに認められるわけではなく、一定の要件が求められるほか、商法上、認められたスキームに限られることになる。
企業価値防衛指針に従うことが必要
しかしながら、信託方式の場合、商法上における手続に難点があることも指摘されている。まず、SPCに有利発行で新株予約権を割当てる場合には、株主総会の特別決議が必要となり、実務上、手続が面倒であるという点が挙げられる。
また、敵対的買収者が現れた時点において、株主に新株予約権を交付することになるが、どのように実質株主を特定すべきかという問題点もある。現行では、直近の決算日、中間決算日の基準日でしか実質株主を判断できないからだ。このため、解決方法としては、例えば、株式分割を行い、基準日を設定することが考えられるが、この場合であっても敵対的買収者がTOBなどにより、株式を買い進める危険性があるからだ。
なお、敵対的買収者以外に新株予約権を交付する敵対的買収防衛策は、株主総会の承認を得るなど、経済産業省及び法務省が5月下旬にも公表する企業価値防衛指針を参考に行う必要がある。

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