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コラム2015年04月27日 【SCOPE】 企業に衝撃走る BEPSのCFC税制見直し(2015年4月27日号・№592)

すべての所得に実質分析!?
企業に衝撃走る BEPSのCFC税制見直し

 OECD(経済協力開発機構)が進めるBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトの行動計画3(外国子会社合算税制の強化)の公開討議草案の内容に対して企業に衝撃が走っている。特定外国子会社等のすべての所得について事業活動に伴う能動的所得か事業活動の伴わない受動的所得かを実質分析により判定する必要に迫られ、日本のCFC税制の実務が180度変わる可能性があるからだ。このまま行動計画3が予定どおり今年9月に完了した場合には、近々日本でもOECDの勧告に沿った税制改正が行われる可能性が高い。日本の大手企業からはすでにOECDの提案では「実務が回らないのでは」といった懸念の声も挙がっている。また、今回の見直しは、大企業だけでなく、海外子会社がある中小企業も対象になってくるだけに今後の改正動向には留意しておくべきといえよう。

特定外国子会社等のすべての所得を判定、事務負担が増大に
 OECDは4月3日、BEPS行動計画3の公開討議草案を公表した(5月1日まで意見募集)。BEPS対策の観点から効果的なCFC税制(外国子会社合算税制)の見直し案を提示している。なかでも企業に衝撃が走っているのが「CFC所得の定義」の見直しである。まだ勧告に至っていない検討段階の案だが、これが実現すれば、日本のCFC税制の仕組みが根本から覆される恐れがあるからだ。
 日本の場合、特定外国子会社等(CFC:Controlled Foreign Company)は、適用除外基準を満たさない場合、その所得は能動的か、受動的かに関係なくすべて合算されることになる。いわゆる事業体アプローチ(Entity approach)だ。もちろん、適用除外基準を満たした場合でも資産性所得の合算課税があるという意味では、日本の制度は純粋な事業体アプローチではないが、まずは事業体ベースで合算の有無を判定するという建付けであることには変わりない。一方、公開討議草案では、日本の制度とは異なったアプローチが提案されている。取引アプローチ(Transactional approach)と呼ばれるものであり、事業体ではなく、個々の所得に着目し、実質分析を行なった上で、BEPSの懸念がある所得(①配当、②利子及び他の金融所得、③保険所得、④販売及び役務提供の所得、⑤ロイヤルティ及び他のIP(知的財産)所得)のみを合算するものである。
BEPS対策として効果的だが……  確かに、問題のある所得のみを合算するという意味で、理論的にはBEPS対策としては効果的とみられる取引アプローチだが、導入された場合には大きな問題がある。前述したとおり、すべての所得について1つ1つどのような内容の所得かを判定しなければならず、事務負担が増大し、課税当局との解釈を巡るトラブルが生じる恐れがあるからだ。
 現行の日本のCFC税制であれば、特定外国子会社等に該当したとしても事業基準などの要件をすべて満たせば適用除外とすることができる。その後、適用除外になったものでも、資産性所得については合算されることになるが、前述した④販売及び役務提供の所得のような広範な所得分類はなく、また、1つ1つの所得について「実質分析」を行うこともない。しかし、公開討議草案が提案する取引アプローチは、どこまでを実質分析の対象とするのか不透明であり、現在CFC税制の適用除外となっている法人であっても、少なからず影響を受ける可能性が生じている。
国際的な調和は困難  そもそもCFC税制については、各国間とりわけ米国と欧州において制度の隔たりが大きく、OECDとして統一的な基準を示すことは容易ではないと見られている。日本と同様に事業体アプローチを採用するフランスでも、産業界から公開討議草案の内容に強い疑問の声が上がっている。あるべき税制に関する国際的な合意がない中でOECDから勧告がなされれば、各国間の税制の違いが、さらなる二重課税を発生させることも予想される。

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