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コラム2015年06月15日 【SCOPE】 オリンパス社の粉飾決算事件で同社に損害賠償を命じる初判決(2015年6月15日号・№598)

個人投資家の請求を一部認容も損害額減額
オリンパス社の粉飾決算事件で同社に損害賠償を命じる初判決

 オリンパス社の粉飾決算事件をめぐり、個人投資家がオリンパス社に対し損害賠償を請求していた裁判で東京地裁は今年3月19日、オリンパス社に対し4,818万円の支払いを命じた。裁判で個人投資家は、株式の取得価額と処分価額の差額(約1億円)をオリンパス社に対して請求していた。しかし、裁判所は、英国人元社長解任以降の株価下落分のすべてが虚偽記載と相当因果関係がある損害とは認められないと指摘。この点を踏まえ裁判所は、金商法21条の2第2項により算出される推定損害額のうち、その2割相当額を虚偽記載と相当因果関係がない損害と認定したうえで、オリンパス社に対し4,818万円の損害賠償を命じた。

英国人元社長解任後の株価下落の一部は虚偽記載と因果関係なし
 個人投資家(原告)は、オリンパス社(被告)の当時の英国人社長(以下「英国人元社長」)が解任された平成23年10月14日から同月18日までの間に、オリンパス社の株式10万株を取得していた(参照)。

 ところが、オリンパス社は同年11月8日、「過去の損失計上先送りに関するお知らせ」を開示し、虚偽記載のある四半期報告書を提出していたことを公表。この開示の影響で、オリンパス社の株価が大きく下落するなか、個人投資家は保有株式10万株を同年11月11日の始値436円で売却したことにより、約1億円の譲渡損を計上することになった。
 個人投資家は、虚偽記載のある四半期報告書を提出していたオリンパス社に対して、虚偽記載がなければ同社株式を取得していなかったと主張して、約1億円(譲渡損失相当額)の損害賠償を請求していた。
裁判所、推定損害額から2割を減額  個人投資家の請求に対し裁判所は、粉飾決算を行っていたオリンパス社が上場廃止基準に抵触する債務超過状態ではなかったことなどを踏まえ、虚偽記載がなければ個人投資家がオリンパス社株式を取得することがなかったとはいえないため、約1億円の損害賠償を請求する部分については個人投資家の主張を斥ける判断を示した。一方で裁判所は、金商法21条の2第2項(虚偽記載等のある書類の提出者の賠償責任)に基づき具体的な損害額を認定したうえで、オリンパス社に損害賠償を命じる判断を下している。
 具体的にみると、裁判所は、金商法21条の2第2項より算出される推定損害額は1株当たり602.2円と認定した。一方で裁判所は、英国人元社長解任以降の株価下落分のすべてを虚偽記載と相当因果関係がある損害と認めることはできないと指摘したうえで、英国人元社長解任以降の株価のうち一定部分は推定損害額から減額すべきと判断した。
 そして、この減額に関し裁判所は、虚偽記載と関係がない値下がり部分の証明が極めて困難であるため、金商法21条の2第5項(裁判所の裁量で賠償すべき損害額を減額できる旨を規定)を適用して、推定損害額のうち賠償の責めに任じない額としてその2割に当たる1株当たり120.4円を認定し、これを原告損害額から減額するのが相当であるとした。
 そのうえで、裁判所は、虚偽記載により原告に生じた損害額は「4,818万円(〔推定損害額602.2円-減額分120.4円〕×10万株)」と認定し、オリンパス社に対し同額の損害賠償を命じる判決を言い渡した。

推定損害額の算定に関する“公表日前後1月間”は暦に従って計算
 今回紹介した裁判のなかで個人投資家は、虚偽記載に係る推定損害額を算出する際の「公表日前1月間および公表日後1月間の株価」(金商法21の2②)は、「暦」ではなく「取引日(営業日)」に従って計算すべきである旨を主張していた。だが、この主張に対し裁判所は、「公表日前1月間および公表日後1月間」とは、それぞれ公表日前後の暦に従って1か月間を計算すべきであると指摘したうえで、個人投資家が主張する計算方法は採用できないと判断した。

海外機関投資家との間では最大110億円を支払う内容で和解
 オリンパス社の粉飾決算事件をめぐっては、個人投資家だけでなく、国内外の機関投資家などもオリンパス社に対し損害賠償を請求する訴訟を複数提起しているが、和解が成立した訴訟も存在する。たとえば、海外の機関投資家(合計86社)がオリンパス社に対し損害賠償を請求していた訴訟では、平成27年3月27日付けで裁判外の和解が成立している(オリンパス社が最大110億円を海外投資家などに支払う内容)。また、国内の機関投資家(信託銀行など)もオリンパス社に対し損害賠償を請求する訴訟を提起しているが、こちらはまだ和解や判決には至っていない模様だ。

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