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解説記事2015年07月27日 【SCOPE】 外国事業体の法人該当性で最高裁が判断基準を示す(2015年7月27日号・№604)

米国LPS訴訟、最高裁で納税者が逆転敗訴
外国事業体の法人該当性で最高裁が判断基準を示す

 米国デラウェア州のLPSが日本の租税法上、法人に該当するか否かが問題となっていた事件で最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は平成27年7月17日、同州LPSは日本の租税法上、法人に該当するとの初判断を示した(国側の逆転勝訴、今号36頁参照)。今回の判決は、外国事業体の法人該当性について最高裁が初めての判断基準を示したうえで、その判断基準をもとに米国デラウェア州のLPSが日本の租税法上、法人に該当すると判断した点が注目されるもの。最高裁が示した判断基準(権利義務の帰属主体と認められるか否かなど)は、ほかの外国法令に基づき設立された外国事業体の法人該当性の判断にも影響を与えそうだ。

最高裁、権利義務の帰属主体と認められるか否かなどを判断基準に
 今回の裁判事案で問題となっていたのは、米国デラウェア州のLPS(以下「本件LPS」)が利用された節税スキームに関し、本件LPSが日本の租税法上、法人に該当するか否かという点だ。本件LPSを利用した節税スキームの概要は【】のとおり。本件LPSが日本の租税法上、法人に該当しないのであれば、LPSの事業から生じた損失は、納税者に直接帰属(パススルー課税)するため、たとえば納税者の給与所得と損益通算することで納税者は節税メリットを享受することができる。一方で、本件LPSが法人に該当するのであれば、LPSの事業から生じた損失はLPS本体に帰属するため、納税者は損失を計上することができない。本件LPSを利用した節税メリットを享受できる否かは、本件LPSが法人に該当するか否かに左右される。そのため、今回の裁判事案では、本件LPSが日本の租税法上、法人に該当するか否かが最大の争点となった。

一審・控訴審、本件LPSは法人に該当せず  この争点について名古屋地裁(平成23年12月14日判決)および名古屋高裁(平成25年1月24日判決)は、本件LPSが日本の租税法上、法人に該当しないと判断し、納税者勝訴の判決を下していた(本誌437号4頁、493号6頁参照)。今回の最高裁判決は、地裁判決を支持した高裁判決を不服とする国側の上告受理申立てを受けてのものだ。
最高裁、事業で生じた損失はLPSに帰属  最高裁第二小法廷の千葉裁判長は、外国事業体の法人該当性の判断基準について、①外国事業体が外国法令で日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることまたは付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討し、これができない場合には、②外国事業体が権利義務の帰属主体であると認められるか否か(外国事業体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果がその事業体に帰属すると認められるか否か)を検討すべきであるとする判断の枠組みを示した。
 これを踏まえ千葉裁判長は、まず、判断基準①に関しデラウェア州LPS法などを参照しても本件LPSが同州法で日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることまたは付与されていないことが疑義のない程度に明白であるとはいい難いと判断。また、判断基準②に関し千葉裁判長は、州LPS法の定めなどに鑑みると、本件LPSは自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が本件LPSに帰属するものということができるため、本件LPSは権利義務の帰属主体であると判断した。
 そのうえで、千葉裁判長は、本件LPSは権利義務の帰属主体であると認められるため、日本の租税法(所法2①七、法法2④)に定める外国法人に該当すると判断。千葉裁判長は、本件LPSの事業により生じた所得は本件LPSに帰属するため、出資者である納税者は本件LPSの事業により生じた損失を損益通算することはできないと判断した。

米国デラウェア州LPS訴訟、控訴審では国側の2勝1敗
 米国デラウェア州のLPSが日本の租税法上、法人に該当するか否かが問題となった訴訟事案は、今回の名古屋地裁・名古屋高裁の事件だけではない。東京地裁(平成23年7月19日判決)・東京高裁(平成25年3月13日判決)の事件、大阪地裁(平成22年12月17日判決)・大阪高裁(平成25年4月25日判決)の事件の2つでも同州LPSの法人該当性が問題となった。このデラウェア州LPSに関し名古屋高裁が法人に該当しないと判断する一方で、東京高裁および大阪高裁は同州LPSは法人に該当すると判断したうえで、納税者の請求を棄却する判決を下していた(本誌493号6頁等参照)。

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