解説記事2015年11月09日 【SCOPE】 海外取引への税務調査、申告漏れ発見の端緒は?(2015年11月9日号・№617)
国外財産調書未提出で加算税+5%加重適用も
海外取引への税務調査、申告漏れ発見の端緒は?
海外取引や海外資産保有者に対する税務調査は国税当局の重点課題の1つ。スコープでは、この海外取引調査をめぐり、国外送金等調書や租税条約等に基づく情報交換が申告漏れ発見の端緒となった2つの税務調査事例を紹介する。1つは、国外財産調書に記載がない海外金融機関からの預金・債券利子等の申告漏れが自動的情報交換により発覚したもの(加算税5%加重措置を適用)。もう1つは、現物出資した海外不動産に関する譲渡所得の申告漏れが国外送金等調書により発覚したものだ。
自動的情報交換が申告漏れ発見の端緒、利子等に対し追徴課税
海外取引に関し国税当局は、国外送金等調書や国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換などを活用した積極的な税務調査を展開している。このうち、租税条約等に基づく情報交換の1つである「自動的情報交換」は、提出された法定調書等から収集した情報(配当、給与・報酬、キャピタルゲインに関する情報など)を支払国の税務当局から受領国の税務当局に対し一括して送付するもの。最初に紹介する税務調査事例は、自動的情報交換が申告漏れ発見の端緒となったものだ(図1参照)。
具体的にみると、税務当局(税務署)は、自動的情報交換資料等により、調査対象者Aが海外で資産運用を行っていることが見込まれる一方で、その運用益の一部を申告していないことが想定されたことから調査に着手。この調査の結果、税務当局は、海外金融機関を介して得た債券利子の申告がなかったため、その債券利子に対し課税を行った。
また、税務当局は、期限内に提出された国外財産調書に利子に関する債券の記載がなかったため、加算税の5%加重措置を適用。さらに、税務当局は、調査対象者Aに関する調査のなかでその子Bも海外投資を行っている事実を把握。子Bについて税務当局は、海外金融機関を介して得た預金債券利子の収入を一切申告していないだけでなく、国外財産調書の提出がなかったため、利子に対する課税および加算税の5%加重措置を適用した。
国外送金等調書が端緒、海外不動産の譲渡所得申告漏れに対し追徴課税
国外送金等調書は、金融機関が税務署に提出する法定調書の1つ。金融機関は、100万円を超える国外への送金および国外からの送金の受領があった場合には、送金者等の氏名・住所、送金額などを記載した調書を税務署に提出しなければならない。次に紹介する税務調査事例は、「国外送金等調書」が申告漏れ発見の端緒となったものだ(図2参照)。
具体的にみると、税務当局(税務署)は、金融機関から提出された国外送金等調書により同族関係者Aが多額の海外送金を行っていた事実を把握し、その取引内容を解明するため調査に着手。この調査の結果、税務当局は、同族関係者Aが海外不動産を購入し、その海外不動産を海外法人に現物出資している事実を把握。税務当局は、同族関係者Aが現物出資による海外不動産の譲渡所得を申告していなかったため、譲渡所得課税を行った。
また、税務当局は、同族関係者Aが現物出資により取得した海外株式の時価が12月末時点で5,000万円を超えていたため、国外財産調書の提出指導を行っている。
今後も海外取引調査を積極的に実施 国税庁は、国外送金等調書や国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度などから海外資産の保有や取引に関する情報収集を行っている。国税庁は、今後も海外取引に関する税務調査を積極的に行う方針だ。
海外取引への税務調査、申告漏れ発見の端緒は?
海外取引や海外資産保有者に対する税務調査は国税当局の重点課題の1つ。スコープでは、この海外取引調査をめぐり、国外送金等調書や租税条約等に基づく情報交換が申告漏れ発見の端緒となった2つの税務調査事例を紹介する。1つは、国外財産調書に記載がない海外金融機関からの預金・債券利子等の申告漏れが自動的情報交換により発覚したもの(加算税5%加重措置を適用)。もう1つは、現物出資した海外不動産に関する譲渡所得の申告漏れが国外送金等調書により発覚したものだ。
自動的情報交換が申告漏れ発見の端緒、利子等に対し追徴課税
海外取引に関し国税当局は、国外送金等調書や国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換などを活用した積極的な税務調査を展開している。このうち、租税条約等に基づく情報交換の1つである「自動的情報交換」は、提出された法定調書等から収集した情報(配当、給与・報酬、キャピタルゲインに関する情報など)を支払国の税務当局から受領国の税務当局に対し一括して送付するもの。最初に紹介する税務調査事例は、自動的情報交換が申告漏れ発見の端緒となったものだ(図1参照)。

具体的にみると、税務当局(税務署)は、自動的情報交換資料等により、調査対象者Aが海外で資産運用を行っていることが見込まれる一方で、その運用益の一部を申告していないことが想定されたことから調査に着手。この調査の結果、税務当局は、海外金融機関を介して得た債券利子の申告がなかったため、その債券利子に対し課税を行った。
また、税務当局は、期限内に提出された国外財産調書に利子に関する債券の記載がなかったため、加算税の5%加重措置を適用。さらに、税務当局は、調査対象者Aに関する調査のなかでその子Bも海外投資を行っている事実を把握。子Bについて税務当局は、海外金融機関を介して得た預金債券利子の収入を一切申告していないだけでなく、国外財産調書の提出がなかったため、利子に対する課税および加算税の5%加重措置を適用した。
国外送金等調書が端緒、海外不動産の譲渡所得申告漏れに対し追徴課税
国外送金等調書は、金融機関が税務署に提出する法定調書の1つ。金融機関は、100万円を超える国外への送金および国外からの送金の受領があった場合には、送金者等の氏名・住所、送金額などを記載した調書を税務署に提出しなければならない。次に紹介する税務調査事例は、「国外送金等調書」が申告漏れ発見の端緒となったものだ(図2参照)。

具体的にみると、税務当局(税務署)は、金融機関から提出された国外送金等調書により同族関係者Aが多額の海外送金を行っていた事実を把握し、その取引内容を解明するため調査に着手。この調査の結果、税務当局は、同族関係者Aが海外不動産を購入し、その海外不動産を海外法人に現物出資している事実を把握。税務当局は、同族関係者Aが現物出資による海外不動産の譲渡所得を申告していなかったため、譲渡所得課税を行った。
また、税務当局は、同族関係者Aが現物出資により取得した海外株式の時価が12月末時点で5,000万円を超えていたため、国外財産調書の提出指導を行っている。
今後も海外取引調査を積極的に実施 国税庁は、国外送金等調書や国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度などから海外資産の保有や取引に関する情報収集を行っている。国税庁は、今後も海外取引に関する税務調査を積極的に行う方針だ。
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