解説記事2015年11月16日 【未公開裁決事例紹介】 非常勤役員への日当給与を定期同額給与と認めず(2015年11月16日号・№618)
未公開裁決事例紹介
非常勤役員への日当給与を定期同額給与と認めず
各月支給額が同額でない点などから損金算入を否定
○請求人が非常勤役員(理事および監事)に支給した本件日当は定期同額給与に該当しないため、損金に算入することはできないと判断された事例(平成27年4月27日裁決・熊裁(法)平26第7号)。審判所は、本件日当が月以下の期間を単位として規則的に継続支給されていないこと(各月の支給回数は零回ないし5回)、各月の支給額が同額でないこと(非常勤理事に限ってみても各月の支給額は零円ないし24,000円)などを指摘し、本件日当は定期同額給与には該当しないと判断した(本誌614号8頁参照)。
基礎事実等
(1)事案の概要 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という)が非常勤役員に対して日当として支給した金員は、当該役員に対する給与に該当するが、法人税法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ)第34条(役員給与の損金不算入)第1項第1号に規定する給与に該当しないことから損金の額に算入することはできないなどとして、法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分には法令の適用に誤りがあるなどとして、その一部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯等(略)
(3)関係法令等の要旨 イ 法人税法第34条第1項は、内国法人がその役員に対して支給する給与のうち、次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。
(イ)その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(次の(ロ)において「定期給与」という)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(以下「定期同額給与」という)(第1号)
(ロ)その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与および利益連動給与(利益に関する指標を基礎として算定される給与をいう。次の(ハ)において同じ)を除くものとし、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給するものに限る)以外の給与にあっては政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合における当該給与(以下「事前確定届出給与」という)に限る)(第2号)
(ハ)同族会社に該当しない内国法人がその業務執行役員に対して支給する利益連動給与で所定の要件を満たすもの(第3号)
ロ 法人税法第34条第4項は、上記イの給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする旨規定している。
ハ 法人税法施行令第69条(定期同額給与の範囲)第1項第2号は、法人税法第34条第1項第1号に規定する政令で定める給与とは、継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものをいう旨規定している。
ニ 所得税法第9条(非課税所得)第1項は、所得税を課さない所得を列挙しており、同項第4号において、給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるために支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるものと規定している。
ホ 所得税基本通達9-5(非常勤役員等の出勤のための費用)は、給与所得を有する者で常には出勤を要しない会社その他の団体の役員、顧問、相談役または参与等に対し、その勤務する場所に出勤するために行う旅行に必要な運賃、宿泊料等の支出に充てるものとして支給される金品で、社会通念上合理的な理由があると認められる場合に支給されるものについては、その支給される金品のうちその出勤のために直接必要であると認められる部分に限り、所得税法第9条第1項第4号に掲げる金品に準じて課税しなくて差し支えない旨定めている。
へ~ヲ(略)
(4)基礎事実 イ 請求人は、×××××××設立された×××である。
ロ 請求人の旅費規程(以下「本件旅費規程」という)には、要旨、次のとおり定められている。
(イ)職員の旅費は、①交通費、②日当、③宿泊料とする。(第5条)
(ロ)実費弁償は、非常勤役員が理事会、監事会に出席および監査の実施その他×××の業務に従事したときに支給する。(第20条)
(ハ)実費弁償の支給区分は、交通費、日当および宿泊料とする。
なお、交通費は実費とし、日当は表1のとおり支給し、宿泊料は用務の都合により宿泊するときに支給する。(第21条)
ハ 請求人は、本件各事業年度において、非常勤理事および非常勤監事(以下、併せて「本件非常勤理事等」という)に対して、毎月定額の役員報酬を支給しているほか、本件非常勤理事等が理事会等に出席した場合または監査業務等に従事した場合には、本件旅費規程に従って日当を支給している(以下、この支給された日当を「本件日当」という)。
そして、請求人は、本件日当について、本件各事業年度の所得金額の計算上、その一部の支出については本件日当の額から仮払消費税の額を控除した金額を損金の額に算入する会計処理をし、その他の支出については本件日当の全額を損金の額に算入する会計処理を行っていた。
ニ・ホ(略)
へ 平成21年1月期の更正処分に係る更正通知書には、役員給与に関する更正の理由として、「×××は、本件非常勤理事等に対して本件非常勤理事等が理事会、監事会等の会議等に出席するための費用(交通費実費相当額)を旅費として支給するほか別紙のとおり日当として計4,783,500円を支給していますが、当該日当についてはその出席のために直接必要である費用とは認められませんので、本件非常勤理事等に対する役員給与となります。また、当該日当は、本件非常勤理事等に対し定期的に毎月同額が支給されているものではなく、会議等への出席の都度日当額を計算し現金で支給していることから、法人税法第34条第1項第1号で規定する定期同額給与にも該当しません。したがって、当該日当支給額4,783,500円を役員給与の損金不算入額として、当事業年度の所得金額に加算しました。」と記載されている。そして、平成22年1月期ないし平成25年1月期の各更正処分に係る各更正通知書(以下、平成21年1月期の更正通知書と併せて「本件各更正通知書」という)の更正の理由は、金額部分を除き、当該記載内容と同一である。また、本件各更正通知書の別紙には、日当の支給先としての本件非常勤理事等の氏名、各人ごとの月別支給額および年間支給額ならびに月別支給額の合計額および年間支給額の合計額が記載されている。
ト・チ(略)
争点および主張 本件日当は、法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与に該当するか否か。当事者の主張は、表2のとおり(編集部注・本件における他の争点に関する主張などは省略している)。
審判所の判断
イ 法令等解釈 (イ)所得税法第9条第1項第4号は、給与所得者に支給される出張旅費で、通常必要であると認められる範囲内のものについては、実費弁償的性格を考慮し、所得税を課さないこととしている。
そして、所得税基本通達9-5は、いわゆる非常勤の役員等に対し、その勤務する場所に出勤するために必要な運賃等の支出に充てるものとして支給される金品で、社会通念上合理的な理由があると認められる場合に支給されるものについては、その出勤のために直接必要であると認められる部分に限り、上記の非課税規定に準じて課税しなくて差し支えない旨定めているところ、これは、いわゆる非常勤役員等の出勤日数は一般の常勤者に比較して著しく少なく、その出勤状態が通勤といえるものではないことや、これらの者の住所がその出勤する場所からかなり遠隔の地にある場合も多く、その出勤の費用も多額に上ることなどの事情から、これを一般の通勤手当と同様に取り扱うことは実情にそぐわないため、旅費に準ずるものとして取り扱うこととしたものであり、当該取扱いは、実費弁償的性格を考慮した所得税法第9条第1項第4号の規定の趣旨に沿ったものであって、当審判所においても相当と認められる。
(ロ)また、法人税法第34条第1項は、損金算入となる役員給与として、定期同額給与、すなわち、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与が該当する旨規定しているところ、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与とは、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものをいうものと解するのが相当である。そして、これに準ずるものとして政令で定める給与とは、法人税法施行令第69条第1項は、毎月おおむね一定に供与される経済的な利益が該当する旨規定している。
ロ 認定事実 (イ)本件非常勤理事等の勤務内容
本件各事業年度における本件非常勤理事等の勤務内容は、非常勤理事については、理事会および各種委員会等への出席であり、非常勤監事については、理事会への出席および各種監査業務であった。
なお、本件非常勤理事等は、自宅から直接用務先へ出向いており、宿泊を要する出勤ではなかった。
(ロ)交通費の支給
請求人は、本件各事業年度において、本件非常勤理事等に対し、本件旅費規程に従って、実費の交通費として、ガソリン代を基に、自宅から用務先までの距離について1キロメートル当たり17円で算定した額を本件日当と併せて支給していた(以下、この支給された交通費を「本件交通費」という)。
(ハ)本件日当の支給日
請求人は、本件日当を、非常勤理事の理事会および各種委員会等への出席に係るものについては、当該理事会および各種委員会等の開催日に支給し、非常勤監事の理事会への出席に係るものについては、当該理事会の開催日に支給し、各種監査業務に係るものについては、数日分をまとめて支給していた。
(ニ)本件日当の支給状況等
本件日当の支給状況は別表3(略)および別表4(略)のとおりであり、請求人が本件日当について損金の額に算入した金額は、別表5(略)のとおりである。
(ホ)本件各事業年度における×××の1リットル当たりのガソリン小売価格は、別表6の(略)とおりである。また、本件交通費と実費相当額を比較すると別表7(略)のとおりである。
(へ)平成23年1月期および平成25年1月期の法人税の各更正処分において、役員給与の損金不算入額の対象とされた日当のうち、次表(略)の金額については、本件非常勤理事等が理事会に欠席したため支給されなかったものであり、請求人の損金の額に算入されていなかった。
その一方で、次表(略)の日当については、本件非常勤理事等が理事会に出席し日当が支給され、請求人の損金の額に算入されていたにもかかわらず、平成22年1月期の法人税の更正処分において、役員給与の損金不算入額の対象とされていなかった。
ハ 当てはめおよび請求人の主張について (イ)本件日当の役員給与該当性について
本件は、まず、本件日当が非課税とされる通勤のための費用に充てるために支給された金員に該当するのか、それとも、これを超えるものとして本件非常勤理事等に対する役員給与とされるのか、という点に争いがあるので、この点について審理すると、次のとおりである。
A 上記ロの(ロ)のとおり、請求人は、本件各事業年度において、本件非常勤理事等に対して、本件非常勤理事等が理事会等に出席した場合または監査業務等に従事した場合には、自宅から用務先までの距離について1キロメートル当たり17円を算定基準とした本件交通費を支給しているところ、当該算定基準は、別表7(略)の実費相当額と照らし合わせると、×××のガソリン小売価格の実勢を反映したものであるといえることから、本件交通費の算定は、実費相当額として合理的な基準に基づいており、交通費として不足はないものと認められる。
また、本件各事業年度における本件非常勤理事等の勤務内容は、理事会および各種委員会等への出席または各種監査業務であるところ、上記ロの(イ)のとおり、本件非常勤理事等は理事会および各種委員会等の開催場所または監査対象場所等の用務先へ自宅から直接出勤しており、宿泊を要しなかったことから、その出勤のために直接必要な費用は、実費としての本件交通費のみであると認められる。そうすると、非常勤役員等に対し、その勤務する場所に出勤するために行う旅行に必要な運賃等の支出に充てるものとして支給される金品のうちその出勤のために直接必要であると認められる部分に限り課税しなくて差し支えない旨の所得税基本通達9-5の定めからすれば、非課税とされるべき金額は、本件交通費に限られるというべきである。
したがって、本件交通費以外に支給された本件日当は、出勤のために直接必要な費用とは認められず、理事会等への出席等という労務に対する報酬であると認められるから、本件非常勤理事等に対する役員給与に該当する。
B この点に関し、請求人は、本件非常勤理事等に対する旅費の実費額は、交通費として公共交通機関の運賃額、交通費以外に外食代、通信費および雑費の合計額となるから、本件交通費および本件日当の合計額から上記実費額を控除した額が役員給与に該当する旨主張する。
しかしながら、本件非常勤理事等が公共交通機関を利用していた事実を裏付ける証拠は認められず、本件交通費が実費相当額として不足がないことは上記Aのとおりであり、また、交通費以外の費用については、仮に、本件非常勤理事等が外食代、通信費等を負担していたとしても、それは給与所得者に係る給与所得控除の適用により捨象されるものであって、所得税基本通達9-5に定める出勤のために直接必要であるものと認めることはできない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ロ)定期同額給与該当性について
上記(イ)のとおり、本件日当は役員給与に該当するところ、次に、本件日当が法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与に該当するか否かについて審理すると、次のとおりである。
A 定期同額給与とは、上記イの(ロ)のとおり、その支給時期が毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給され、各支給時期における支給額が同額であるものをいうものと解されるところ、上記ロの(ハ)のとおり、本件日当は、理事会等への出席に係るものについてはその開催日に支給され、各種監査業務に係るものについては数日分がまとめて支給されていたことが認められ、本件各事業年度における各月の支給回数も、別表3(略)および別表4(略)のとおり、零回ないし5回と各月でまちまちであった。
そうすると、本件日当は、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものとは認められない上、各月の支給額も同額でないことは明らかであるから、法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与には該当しないというべきである。
したがって、本件日当は、法人税法第34条第1項の規定により、本件各事業年度における所得金額の計算上、損金の額に算入することはできない。
B 請求人は、本件日当について、実費相当額を超える部分の額は法人税法施行令第69条第1項第2号に規定する経済的な利益に該当し、非常勤監事に対する定期監査時以外の支給額は毎月おおむね一定であるから、定期同額給与に該当する旨主張する。
しかしながら、上記Aで述べたとおり、本件日当の各月の支給状況は、回数にして零回ないし5回であり、各月の支給金額は、定期監査のない非常勤理事に限ってみても零円ないし24,000円であり、おおむね一定であるといえないことは明らかである。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ハ)ところで、請求人は、本件日当の一部について、本件日当の額から仮払消費税の額を控除した金額を、本件各事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入する会計処理を行っているところ、上記(イ)のとおり、本件日当は本件非常勤理事等に対する役員給与に該当し、消費税の課税対象とはならないから、当該仮払消費税の額を控除したことは誤りであると認められる。これに対し本件各更正処分においては、仮払消費税の額を含む本件日当の全額について損金不算入とされているのみで、請求人が本件日当の額から控除した仮払消費税の額に相当する金額について何ら考慮していないため、当該仮払消費税の額に相当する金額を所得金額の計算上減算する必要がある。また、上記ロの(へ)のとおり、原処分庁は、本件非常勤理事等が理事会に欠席したため日当が支給されず、請求人が損金の額に算入していない金額についても、本件日当の額として損金不算入とする原処分を行っている一方で、本件非常勤理事等が理事会に出席し日当が支給され、請求人が損金の額に算入している金額について、役員給与の損金不算入額の対象としていない。したがって、本件日当に係る原処分庁の認定額には誤りが認められ、これを補正すると、本件日当に関し、本件各事業年度における請求人の所得金額の計算上、損金の額に算入できない金額は、別表8(略)の「役員給与の損金不算入額」欄のとおりとなり、また、所得金額から減算すべき金額は、同表(略)の「仮払消費税の役員給与認容額」欄のとおりとなる。
非常勤役員への日当給与を定期同額給与と認めず
各月支給額が同額でない点などから損金算入を否定
○請求人が非常勤役員(理事および監事)に支給した本件日当は定期同額給与に該当しないため、損金に算入することはできないと判断された事例(平成27年4月27日裁決・熊裁(法)平26第7号)。審判所は、本件日当が月以下の期間を単位として規則的に継続支給されていないこと(各月の支給回数は零回ないし5回)、各月の支給額が同額でないこと(非常勤理事に限ってみても各月の支給額は零円ないし24,000円)などを指摘し、本件日当は定期同額給与には該当しないと判断した(本誌614号8頁参照)。
基礎事実等
(1)事案の概要 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という)が非常勤役員に対して日当として支給した金員は、当該役員に対する給与に該当するが、法人税法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下同じ)第34条(役員給与の損金不算入)第1項第1号に規定する給与に該当しないことから損金の額に算入することはできないなどとして、法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、原処分には法令の適用に誤りがあるなどとして、その一部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯等(略)
(3)関係法令等の要旨 イ 法人税法第34条第1項は、内国法人がその役員に対して支給する給与のうち、次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。
(イ)その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(次の(ロ)において「定期給与」という)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(以下「定期同額給与」という)(第1号)
(ロ)その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与および利益連動給与(利益に関する指標を基礎として算定される給与をいう。次の(ハ)において同じ)を除くものとし、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない内国法人が支給するものに限る)以外の給与にあっては政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしている場合における当該給与(以下「事前確定届出給与」という)に限る)(第2号)
(ハ)同族会社に該当しない内国法人がその業務執行役員に対して支給する利益連動給与で所定の要件を満たすもの(第3号)
ロ 法人税法第34条第4項は、上記イの給与には、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むものとする旨規定している。
ハ 法人税法施行令第69条(定期同額給与の範囲)第1項第2号は、法人税法第34条第1項第1号に規定する政令で定める給与とは、継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものをいう旨規定している。
ニ 所得税法第9条(非課税所得)第1項は、所得税を課さない所得を列挙しており、同項第4号において、給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるために支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるものと規定している。
ホ 所得税基本通達9-5(非常勤役員等の出勤のための費用)は、給与所得を有する者で常には出勤を要しない会社その他の団体の役員、顧問、相談役または参与等に対し、その勤務する場所に出勤するために行う旅行に必要な運賃、宿泊料等の支出に充てるものとして支給される金品で、社会通念上合理的な理由があると認められる場合に支給されるものについては、その支給される金品のうちその出勤のために直接必要であると認められる部分に限り、所得税法第9条第1項第4号に掲げる金品に準じて課税しなくて差し支えない旨定めている。
へ~ヲ(略)
(4)基礎事実 イ 請求人は、×××××××設立された×××である。
ロ 請求人の旅費規程(以下「本件旅費規程」という)には、要旨、次のとおり定められている。
(イ)職員の旅費は、①交通費、②日当、③宿泊料とする。(第5条)
(ロ)実費弁償は、非常勤役員が理事会、監事会に出席および監査の実施その他×××の業務に従事したときに支給する。(第20条)
(ハ)実費弁償の支給区分は、交通費、日当および宿泊料とする。
なお、交通費は実費とし、日当は表1のとおり支給し、宿泊料は用務の都合により宿泊するときに支給する。(第21条)

ハ 請求人は、本件各事業年度において、非常勤理事および非常勤監事(以下、併せて「本件非常勤理事等」という)に対して、毎月定額の役員報酬を支給しているほか、本件非常勤理事等が理事会等に出席した場合または監査業務等に従事した場合には、本件旅費規程に従って日当を支給している(以下、この支給された日当を「本件日当」という)。
そして、請求人は、本件日当について、本件各事業年度の所得金額の計算上、その一部の支出については本件日当の額から仮払消費税の額を控除した金額を損金の額に算入する会計処理をし、その他の支出については本件日当の全額を損金の額に算入する会計処理を行っていた。
ニ・ホ(略)
へ 平成21年1月期の更正処分に係る更正通知書には、役員給与に関する更正の理由として、「×××は、本件非常勤理事等に対して本件非常勤理事等が理事会、監事会等の会議等に出席するための費用(交通費実費相当額)を旅費として支給するほか別紙のとおり日当として計4,783,500円を支給していますが、当該日当についてはその出席のために直接必要である費用とは認められませんので、本件非常勤理事等に対する役員給与となります。また、当該日当は、本件非常勤理事等に対し定期的に毎月同額が支給されているものではなく、会議等への出席の都度日当額を計算し現金で支給していることから、法人税法第34条第1項第1号で規定する定期同額給与にも該当しません。したがって、当該日当支給額4,783,500円を役員給与の損金不算入額として、当事業年度の所得金額に加算しました。」と記載されている。そして、平成22年1月期ないし平成25年1月期の各更正処分に係る各更正通知書(以下、平成21年1月期の更正通知書と併せて「本件各更正通知書」という)の更正の理由は、金額部分を除き、当該記載内容と同一である。また、本件各更正通知書の別紙には、日当の支給先としての本件非常勤理事等の氏名、各人ごとの月別支給額および年間支給額ならびに月別支給額の合計額および年間支給額の合計額が記載されている。
ト・チ(略)
争点および主張 本件日当は、法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与に該当するか否か。当事者の主張は、表2のとおり(編集部注・本件における他の争点に関する主張などは省略している)。
【表2】本件日当は、定期同額給与(法法34①一)に該当するか否か |
原処分庁 | 請 求 人 |
イ 役員給与の額について 請求人が主張するバス運賃については、本件旅費規程第20条および第21条において、交通費を実費として支給する旨定め、別途交通費を支給していることから、本件日当に当該バス運賃が含まれているとは認められない。また、請求人が主張する外食代1,200円、通信費100円および雑費200円は一律に計算されており、本件非常勤理事等が理事会等に出席した際の個別の実費相当額であるとは認められないから、本件日当に当該金額が含まれているとは認められない。そうすると、本件日当は、本件非常勤理事等の理事会等への出席のために必要な旅行の費用とは認められないことから、請求人が本件非常勤理事等の職務執行の対価として支給したものと認められ、役員給与に該当する。 ロ 定期同額給与該当性 法人税法第34条第1項第1号は、損金の額に算入される役員給与として、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で各支給時期における支給額が同額のものである旨規定しているところ、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与とは、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものをいうものと解されている。 本件旅費規程においては、本件日当の支給の基因が本件非常勤理事等の理事会等への出席および監査の実施等であることならびにその日当の額が定められているにとどまり、本件日当の支給時期について定められているとは認められないため、本件旅費規程の定めが存することをもって、本件日当が月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものであるとは認められない。また、支給状況からみても、本件非常勤理事等に対して、複数回に及ぶ理事会等への出席に係る本件日当がまとめて支給されていることが認められ、また、各種委員会への出席に係る本件日当がその開催ごとに支給されていることが認められることからすると、本件日当が月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものであるとは認められない。 そうすると、本件各事業年度において、請求人から、本件非常勤理事等に対し理事会等への出席を基因として支給される本件日当は、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものとは認められないことから、法人税法第34条第1項第1号に規定するその支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与には該当しない。そして、法人税法施行令第69条第1項各号に規定する給与が、法人税法第34条第1項第1号本文の給与に準ずる給与として並列的に規定されていることからすれば、本件日当は、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給される給与に準ずる「継続的に供与される経済的な利益」に該当しない。 | イ 役員給与の額について 本件非常勤理事等に対する出席旅費については、本件旅費規程第20条および第21条に基づき、理事会等の1回の出席につき交通費(@17円/1km×通勤距離)および本件日当を支給しているが、当該交通費はガソリン代をベースにした算定基準になっており、実際にはそれ以上の額が本人負担になっている。旅費の合理的な実費額は、交通費については、今となっては本件非常勤理事等の各人が用務先まで自家用車で出向いたかバスで出向いたか等は確認できないため、最寄りの交通機関×××の運賃額により算定した金額、その他の費用については、平均支出額として外食代1,200円、通信費100円、雑費200円として算定した金額の合計額となる。 非常勤役員等の出勤のための費用については、所得税基本通達9- 5において通常旅費に準ずるものとして取り扱うことを明らかにしており、社会通念上合理的な理由があるもので出勤のために直接必要と認められる部分の金額は非課税としてもよい旨説明している。 したがって、請求人が実際に支給した交通費および本件日当の合計額から上記バスの運賃額、外食代、通信費および雑費の合計額を控除した額が経済的利益として役員給与に該当する。 ロ 定期同額給与該当性 損金の額に算入される役員給与の範囲については、法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与に該当する給与として、法人税法施行令第69条第1項第2号に「継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」と規定しており、法人税基本通達9- 2- 11(継続的に供与される経済的利益の意義)でその範囲を例示しており、その逐条解説の中で「その供与される利益の額が毎月おおむね一定かどうか」は、法人が負担した費用の支出時期によるのではなく、その役員が現に受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるかどうかにより判定することを明らかにしている。 したがって、本件日当は、月によって理事会等の開催回数が変動するため支給額は必ずしも毎月一定ではないが、上記イの役員給与に該当する金額のうち、非常勤監事の定期監査時の旅費を除いた部分は、毎月おおむね同額であるから定期同額給与に該当する。 |
審判所の判断
イ 法令等解釈 (イ)所得税法第9条第1項第4号は、給与所得者に支給される出張旅費で、通常必要であると認められる範囲内のものについては、実費弁償的性格を考慮し、所得税を課さないこととしている。
そして、所得税基本通達9-5は、いわゆる非常勤の役員等に対し、その勤務する場所に出勤するために必要な運賃等の支出に充てるものとして支給される金品で、社会通念上合理的な理由があると認められる場合に支給されるものについては、その出勤のために直接必要であると認められる部分に限り、上記の非課税規定に準じて課税しなくて差し支えない旨定めているところ、これは、いわゆる非常勤役員等の出勤日数は一般の常勤者に比較して著しく少なく、その出勤状態が通勤といえるものではないことや、これらの者の住所がその出勤する場所からかなり遠隔の地にある場合も多く、その出勤の費用も多額に上ることなどの事情から、これを一般の通勤手当と同様に取り扱うことは実情にそぐわないため、旅費に準ずるものとして取り扱うこととしたものであり、当該取扱いは、実費弁償的性格を考慮した所得税法第9条第1項第4号の規定の趣旨に沿ったものであって、当審判所においても相当と認められる。
(ロ)また、法人税法第34条第1項は、損金算入となる役員給与として、定期同額給与、すなわち、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与が該当する旨規定しているところ、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与とは、あらかじめ定められた支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものをいうものと解するのが相当である。そして、これに準ずるものとして政令で定める給与とは、法人税法施行令第69条第1項は、毎月おおむね一定に供与される経済的な利益が該当する旨規定している。
ロ 認定事実 (イ)本件非常勤理事等の勤務内容
本件各事業年度における本件非常勤理事等の勤務内容は、非常勤理事については、理事会および各種委員会等への出席であり、非常勤監事については、理事会への出席および各種監査業務であった。
なお、本件非常勤理事等は、自宅から直接用務先へ出向いており、宿泊を要する出勤ではなかった。
(ロ)交通費の支給
請求人は、本件各事業年度において、本件非常勤理事等に対し、本件旅費規程に従って、実費の交通費として、ガソリン代を基に、自宅から用務先までの距離について1キロメートル当たり17円で算定した額を本件日当と併せて支給していた(以下、この支給された交通費を「本件交通費」という)。
(ハ)本件日当の支給日
請求人は、本件日当を、非常勤理事の理事会および各種委員会等への出席に係るものについては、当該理事会および各種委員会等の開催日に支給し、非常勤監事の理事会への出席に係るものについては、当該理事会の開催日に支給し、各種監査業務に係るものについては、数日分をまとめて支給していた。
(ニ)本件日当の支給状況等
本件日当の支給状況は別表3(略)および別表4(略)のとおりであり、請求人が本件日当について損金の額に算入した金額は、別表5(略)のとおりである。
(ホ)本件各事業年度における×××の1リットル当たりのガソリン小売価格は、別表6の(略)とおりである。また、本件交通費と実費相当額を比較すると別表7(略)のとおりである。
(へ)平成23年1月期および平成25年1月期の法人税の各更正処分において、役員給与の損金不算入額の対象とされた日当のうち、次表(略)の金額については、本件非常勤理事等が理事会に欠席したため支給されなかったものであり、請求人の損金の額に算入されていなかった。
その一方で、次表(略)の日当については、本件非常勤理事等が理事会に出席し日当が支給され、請求人の損金の額に算入されていたにもかかわらず、平成22年1月期の法人税の更正処分において、役員給与の損金不算入額の対象とされていなかった。
ハ 当てはめおよび請求人の主張について (イ)本件日当の役員給与該当性について
本件は、まず、本件日当が非課税とされる通勤のための費用に充てるために支給された金員に該当するのか、それとも、これを超えるものとして本件非常勤理事等に対する役員給与とされるのか、という点に争いがあるので、この点について審理すると、次のとおりである。
A 上記ロの(ロ)のとおり、請求人は、本件各事業年度において、本件非常勤理事等に対して、本件非常勤理事等が理事会等に出席した場合または監査業務等に従事した場合には、自宅から用務先までの距離について1キロメートル当たり17円を算定基準とした本件交通費を支給しているところ、当該算定基準は、別表7(略)の実費相当額と照らし合わせると、×××のガソリン小売価格の実勢を反映したものであるといえることから、本件交通費の算定は、実費相当額として合理的な基準に基づいており、交通費として不足はないものと認められる。
また、本件各事業年度における本件非常勤理事等の勤務内容は、理事会および各種委員会等への出席または各種監査業務であるところ、上記ロの(イ)のとおり、本件非常勤理事等は理事会および各種委員会等の開催場所または監査対象場所等の用務先へ自宅から直接出勤しており、宿泊を要しなかったことから、その出勤のために直接必要な費用は、実費としての本件交通費のみであると認められる。そうすると、非常勤役員等に対し、その勤務する場所に出勤するために行う旅行に必要な運賃等の支出に充てるものとして支給される金品のうちその出勤のために直接必要であると認められる部分に限り課税しなくて差し支えない旨の所得税基本通達9-5の定めからすれば、非課税とされるべき金額は、本件交通費に限られるというべきである。
したがって、本件交通費以外に支給された本件日当は、出勤のために直接必要な費用とは認められず、理事会等への出席等という労務に対する報酬であると認められるから、本件非常勤理事等に対する役員給与に該当する。
B この点に関し、請求人は、本件非常勤理事等に対する旅費の実費額は、交通費として公共交通機関の運賃額、交通費以外に外食代、通信費および雑費の合計額となるから、本件交通費および本件日当の合計額から上記実費額を控除した額が役員給与に該当する旨主張する。
しかしながら、本件非常勤理事等が公共交通機関を利用していた事実を裏付ける証拠は認められず、本件交通費が実費相当額として不足がないことは上記Aのとおりであり、また、交通費以外の費用については、仮に、本件非常勤理事等が外食代、通信費等を負担していたとしても、それは給与所得者に係る給与所得控除の適用により捨象されるものであって、所得税基本通達9-5に定める出勤のために直接必要であるものと認めることはできない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ロ)定期同額給与該当性について
上記(イ)のとおり、本件日当は役員給与に該当するところ、次に、本件日当が法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与に該当するか否かについて審理すると、次のとおりである。
A 定期同額給与とは、上記イの(ロ)のとおり、その支給時期が毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給され、各支給時期における支給額が同額であるものをいうものと解されるところ、上記ロの(ハ)のとおり、本件日当は、理事会等への出席に係るものについてはその開催日に支給され、各種監査業務に係るものについては数日分がまとめて支給されていたことが認められ、本件各事業年度における各月の支給回数も、別表3(略)および別表4(略)のとおり、零回ないし5回と各月でまちまちであった。
そうすると、本件日当は、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給されるものとは認められない上、各月の支給額も同額でないことは明らかであるから、法人税法第34条第1項第1号に規定する定期同額給与には該当しないというべきである。
したがって、本件日当は、法人税法第34条第1項の規定により、本件各事業年度における所得金額の計算上、損金の額に算入することはできない。
B 請求人は、本件日当について、実費相当額を超える部分の額は法人税法施行令第69条第1項第2号に規定する経済的な利益に該当し、非常勤監事に対する定期監査時以外の支給額は毎月おおむね一定であるから、定期同額給与に該当する旨主張する。
しかしながら、上記Aで述べたとおり、本件日当の各月の支給状況は、回数にして零回ないし5回であり、各月の支給金額は、定期監査のない非常勤理事に限ってみても零円ないし24,000円であり、おおむね一定であるといえないことは明らかである。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
(ハ)ところで、請求人は、本件日当の一部について、本件日当の額から仮払消費税の額を控除した金額を、本件各事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入する会計処理を行っているところ、上記(イ)のとおり、本件日当は本件非常勤理事等に対する役員給与に該当し、消費税の課税対象とはならないから、当該仮払消費税の額を控除したことは誤りであると認められる。これに対し本件各更正処分においては、仮払消費税の額を含む本件日当の全額について損金不算入とされているのみで、請求人が本件日当の額から控除した仮払消費税の額に相当する金額について何ら考慮していないため、当該仮払消費税の額に相当する金額を所得金額の計算上減算する必要がある。また、上記ロの(へ)のとおり、原処分庁は、本件非常勤理事等が理事会に欠席したため日当が支給されず、請求人が損金の額に算入していない金額についても、本件日当の額として損金不算入とする原処分を行っている一方で、本件非常勤理事等が理事会に出席し日当が支給され、請求人が損金の額に算入している金額について、役員給与の損金不算入額の対象としていない。したがって、本件日当に係る原処分庁の認定額には誤りが認められ、これを補正すると、本件日当に関し、本件各事業年度における請求人の所得金額の計算上、損金の額に算入できない金額は、別表8(略)の「役員給与の損金不算入額」欄のとおりとなり、また、所得金額から減算すべき金額は、同表(略)の「仮払消費税の役員給与認容額」欄のとおりとなる。
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