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解説記事2015年11月23日 【SCOPE】 節税の事実がなくても土地保有特定会社の適用あり(2015年11月23日号・№619)

土地保有割合の計算式で借地権の扱いも問題に
節税の事実がなくても土地保有特定会社の適用あり

 土地保有割合が70%以上の大会社が発行する非上場株式を純資産価額方式で評価する旨を規定した評価通達189(3)等の合理性などが問題となった裁判事案で東京地裁は平成27年7月30日、同通達等による評価の合理性を認めたうえで、納税者の請求を棄却する判決を下した。裁判所は、本件会社が事業実体のある会社であり、土地取引に関し節税を図った事実がないとしても、それをもって評価通達189(3)等により純資産価額方式で評価することが不合理であるとみるべき特段の事情はないと判断。また、裁判所は、土地保有割合の計算式に関し、借地権の価額(本件会社が土地の無償返還届出書を提出して使用していた土地に関するもの)は「分子」にも算入されると判断したうえで、納税者の主張を斥ける判決を下した。

「無償返還届出書」提出による借地権の価額は「分子」にも算入と判断
 土地保有割合(土地評価額÷総資産評価額)が70%以上である非上場の大会社が発行する株式の相続税評価額は、大会社の原則的評価方法である類似業種比準方式ではなく、土地保有特定会社として純資産価額方式により評価される(参照)。今回紹介する裁判事案で問題となったのは、評価通達178の定めにより大会社に区分される本件会社(不動産の管理業務等を目的として設立された株式会社である)の発行株式に対し土地保有特定会社に関する評価通達189(3)を適用することができるか否かという点だ。(本件に関する裁決は本誌494号4頁以降参照)。

【表】土地保有特定会社、借地権(無償返還届出書の提出あり)に関する評価通達等の要旨
評価通達189(特定の評価会社の株式)
(3)土地保有特定会社の株式
 課税時期において、次のいずれかに該当する会社の株式の価額は、評価通達189-4の定めによる。
 イ 評価通達178の定めにより大会社に区分される会社で、その有する各資産をこの通達の定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める土地等の価額の合計額の割合(以下「土地保有割合」という)が70%以上である会社
 ロ 評価通達178の定めにより中会社に区分される会社で、土地保有割合が90%以上である会社
評価通達189-4(土地保有特定会社の株式)
 評価通達189の(3)の「土地保有特定会社の株式」の価額は、評価通達185(純資産価額)の本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。
相当地代通達5
 借地権が設定されている土地について、「無償返還届出書」が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として取り扱う。
相当地代通達8・相当地代貸宅地通達
 借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、当該土地の自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により評価し、その借地権の価額は被相続人所有の同族会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入する。

 裁決を不服とする納税者は、裁判のなかで、本件会社は実体のある事業会社であり、被相続人が本件会社に対する土地取引を利用して節税を図った事実がない点などを指摘し、本件会社の株式は大会社の原則的評価方法である類似業種比準方式により評価すべきであると主張した。
 また、納税者は、被相続人が本件会社(被相続人の同族関係者に該当)に貸し付けた土地(「無償返還届出書」の提出あり)に関する借地権の評価額について、土地保有割合の計算上「分母」(総資産評価額)に算入される一方で、「分子」(土地評価額)には算入されないため、土地保有割合は68.3%となると主張した。その理由として納税者は、相当地代通達5は無償返還届出書が提出されている場合の借地権の価額をゼロとする旨を規定する一方で、相当地代通達8および相当地代貸宅地通達は借地権の価額(自用地評価の20%)を被相続人所有の株式会社の評価上、同社の純資産価額に算入する旨を規定していることを指摘した(通達本文は参照)。
裁判所、通達による評価方法は合理的と判断  納税者の主張に対し裁判所は、土地保有割合が極めて高い評価会社はその資産価値をよく反映し得る純資産価額方式により評価することが適切であることなどを踏まえると、純資産価額方式により評価することは合理性があり、納税者が主張する事実をもって同方式により評価することが不合理であるとみるべき特段の事情ということはできないと判断した。また、土地保有割合の計算式に関し裁判所は、相当地代通達と相当地代貸宅地通達の内容および趣旨に鑑みれば、各通達は合理性を有するものというべきであり、相当地代通達8および相当地代貸宅地通達の適用がある場合には相当地代通達5の適用はないと解するのが相当であるとした。
 そのうえで、裁判所は、借地権相当額(自用地としての価額の20%に相当する金額)は土地保有割合の計算上、「分母」および「分子」のいずれにも算入されるため、本件会社(土地保有割合75.57%)は土地保有特定会社に該当すると判断した。

70%基準の形式的適用は合理的と判断
 裁判のなかで納税者は、土地保有割合が70%以上である大会社を一律に土地保有特定会社とする評価通達189(3)について、形式的基準により課税価格が大きく変動する可能性がある通達の定めはかえって租税負担の公平を害するため、合理性がないと主張していた。だが、これに対し裁判所は、大会社について一律の基準(70%)を設けることは相続財産の画一的評価という観点に照らしても合理性を有するなどと指摘したうえで、納税者の主張を斥けている。

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