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解説記事2016年02月15日 【税理士のための相続法講座】 相続分(6)-具体的相続分の算定(2016年2月15日号・№630)

税理士のための相続法講座
第12回
相続分(6)-具体的相続分の算定
 弁護士 間瀬まゆ子

 前回までの寄与分や特別受益の知識を踏まえ、今回は、具体的相続分をどのように算出するかを確認します。
 相続人の一部に寄与分や特別受益がある場合、まず、相続開始時に現存する被相続人の財産から寄与分を控除し、また、特別受益にあたる生前贈与を加算したものを相続財産とみなします。その上で、このみなし相続財産に各相続人の法定相続分または指定相続分を乗じて一応の相続分を導き出し、寄与相続人については、この一応の相続分に寄与分を加え、特別受益者については特別受益たる贈与または遺贈を控除して、各相続人が取得すべき財産の価額すなわち具体的相続分を算出します。
・みなし相続財産=相続開始時の相続財産の評価額-寄与分+特別受益
・具体的相続分=みなし相続財産×各相続人の法定・指定相続分+各相続人の寄与分-各相続人の特別受益
 以下、具体的な事例に基づいて具体的相続分の計算方法を説明します。
 Aが遺言を残さずに亡くなった。相続人は配偶者のBと子C・Dの3人。遺産は不動産(相続開始時における評価額は5000万円)のみだが、Aは生前、Cに現金1500万円を贈与していた。また、Dには500万円の寄与分が認めれることになった。 
 なお、遺産分割時の上記不動産の評価額は5500万円だった。

 上記の事例の場合、各相続人の具体的相続分は、次のとおりとなります。
・みなし相続財産=相続開始時の相続財産5000万円+特別受益1500万円- 寄与分500万円=6000万円
・Bの具体的相続分=みなし相続財産6000万円×法定相続分1/2=3000万円
・Cの具体的相続分=6000万円×1/4-特別受益1500万円=0円(贈与分1500万円は含まれず)
・Dの具体的相続分=6000万円×1/4+寄与分500万円=2000万円
 上記のとおり、生前贈与を受けていたCの具体的相続分は0となりますので、CはAの相続財産から何らの財産を取得し得ないことになります(ただし、相続債務は法定相続分相当を承継します。)。
 なお、ここで仮に、特別受益財産の価額が具体的相続分を超えてしまった場合、すなわち上記の計算式でマイナスとなってしまった場合でも、マイナス分の特別受益財産を返還するなどの必要はありません。
 上記事例で各相続人の現実の取得分を算出するに際しては、さらに考慮すべき事項があります。遺産分割時に遺産の評価額が上昇している点です。特別受益や寄与分の評価は相続開始時を基準としますが、遺産分割の際には分割時の価額で評価することになりますので、現実に取得する財産の価額を算定するにあたっては、引き直しが必要になります。具体的には、以下の計算式に従って計算します。
現実の取得分=
分割時の遺産評価額×各人の具体的相続分/具体的相続分の総額
 これをあてはめると各人の取得分は次のとおりになります。
・Aの現実の取得分=5500万円×3000万円/(3000万円+0円+2000万円)=3300万円
・Bの現実の取得分=0円
・Cの現実の取得分=5500万円×2000万円/(3000万円+0円+2000万円)=2200万円
 以上のようにして各相続人の具体的相続分及び現実的取得分を計算して行くわけですが、実際に特別受益や寄与分が争点となった場合には、上記の事例のようにはじめから特別受益や寄与分の価額が明確になっているわけではありません。
 特に、寄与分の評価は一般的に困難です。例えば、特定の相続人が無償で被相続人の家業に従事していたケースについて裁判所が決定することとなった場合、賃金センサス等に基づき通常得られる給与の額に基づいて計算することもあれば、相続財産の形成に貢献した割合をもって算定することもあり、更に、それらの方法に基づいて算出した金額がそのまま寄与分の価額と認められるとは限らず、当該金額を基礎としつつも、諸般の事情を考慮して定められることになります。

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