解説記事2016年04月11日 【最新判決研究】 土地等の評価方法と土地保有特定会社判定の合理性(2016年4月11日号・№638)
最新判決研究
土地等の評価方法と土地保有特定会社判定の合理性
東京地裁平成27年7月30日判決(平成25年(行ウ)第186号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X1、X2、X3、及びX4(原告、以下「X1ら」という。)は、平成20年12月18日に死亡した甲を相続(以下「本件相続」という。)し、甲が経営・所有していた株式会社KB(以下「本件会社」という。)の株式2万1400株(以下「本件株式」という。)を取得した。X1らは、本件会社が財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)上の大会社(総資産価額94億円余、取引金額23億円余、従業員37名、卸売業・小売サービス業以外)に該当するということで、本件株式の価額を評価通達が定める類似業種比準価額で評価して、相続税の申告(以下「本件申告」という。)をした。
これに対し、処分行政庁は、本件会社が評価通達189(3)に定める土地保有特定会社に該当するので、本件株式の価額を純資産価額で評価すべきである(評価通達189-4)とする更正処分(以下「本件更正」という。)等(以下「本件各処分」という。)をした。X1らは、本件各処分の取消しを求めて、前審手続を経て、平成25年4月10日、本訴を提起した。
(2)本訴においては、不動産の賃貸借及び管理業務等を目的とする株式会社である本件会社の株式(本件株式)の評価方法が争われたのであるが、甲が所有する土地等につき、甲と本件会社との間で、相当地代による土地の賃貸借が行われ、無償返還届出書も提出されていたため、本件会社の借地権の評価額が争われ、本件相続開始前3年以内に取得した借地権の評価額(評価通達185かっこ書きの合理性)も争われた。また、本件会社が評価通達189(3)に定める大会社に係る土地保有特定会社に該当するところ、当該基準の70%の合理性と本件株式を純資産価額で評価することの適法性が争われることになった。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 本件の争点は、次のとおりである。
(1)評価通達189(3)、189-4及び185(以下「評価通達189(3)等」という。)の合理性等
(2)本件会社が土地保有特定会社に該当するか否か。
(3)本件株式についてとるべき評価方法及び1株当たりの評価額
そのほか、X1らは、訴状において本件相続により相続した土地の一部の価額についても争うとしていたが、後にこの主張を撤回した。
2 X1らの主張 (1)評価通達189(3)等は、法律の根拠を欠く無効な通達であり、それ自体としても合理性を失っている。すなわち、昭和60年以降のバブル経済の中で土地等の取引価額が高騰し、当該取引価額と相続税評価額の開差を利用した租税回避行為が横行し、それを規制するために、昭和63年12月に租税特別措置法69条の4(以下「旧措置法69条の4」という。)が制定されて、相続開始前3年以内に取得した土地等又は建物等をその取得価額で課税する旨規定されたものの、その後、バブル崩壊後、当該規定が憲法違反(財産権の侵害)の恐れがあるとした判決が出された後に旧措置法69条の4が廃止されたが、評価通達189(3)等は、旧措置法69条の4に準じて定めたものであるから、その法的根拠を失ったものである。
また、評価通達185括弧書は、帳簿価額に基づいて評価する旨定めているが、それは相続税法22条に定める「時価」と異にする違法な取扱いである。
(2)仮に、評価通達189(3)等の適用を前提として本件会社の土地保有割合を計算したとしても、本件会社の総資産価額は168億9096万円余であり、土地等の価額の合計額は115億3778万円余であるから、土地保有割合は68.3%となる。したがって、本件会社は土地保有特定会社に該当しない。また、その根拠となる土地の一部及び借地権の評価額は、鑑定評価によるものである。
なお、本件会社が甲から賃借していた土地に係る借地権については、昭和60年6月5日付直資2-5ほか「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(以下「相当地代通達」という。)及び昭和43年10月28日付け直資3-22ほか「相当の地代を収受している賃宅地の評価について」(以下「相当地代貸宅地通達」という。)により、無償返還届出書が提出されているから、土地保有割合の計算上、当該借地権の価額は、零であり、分子には算入されないが、分母には20%相当額が加算されるべきである。
(3)本件株式は、類似業種比準方式によって評価すべきであり、類似業種の株価を基礎として、類似業種と本件会社の1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額を所定の方法で比較し、類似業種の株価に比準して算出した価額に0.7を乗じると、その評価額は1株当たり10万3335円となる。
3 国の主張 (1)評価通達189(3)等は、相続税法22条に関する通達であり、合理性も認められる。また、旧措置法69条の4の規定と評価通達189(3)等とは、その趣旨、目的を異にするものであるから、旧措置法69条の4の規定が廃止されたからといって、評価通達189(3)等の規定に影響を及ぼすものではない。また、評価通達189(3)等は、個人が所有する株式に係る相続税法22条に規定する時価(客観的交換価値)を算出するための評価方式を定めたものであり、その定めは合理性を有するものである。
(2)大会社の場合、土地保有割合が70%以上であれば、土地保有特定会社に該当するところ(評基通189(3))、本件相続開始時点における本件会社の総資産価額(相続税評価額)は176億2630万円余であり、本件会社が所有する土地等の価額(相続税評価額)の合計額は133億3297万円余であるから、本件会社の土地保有割合は75.64%となる。したがって、本件会社は土地保有特定会社に該当するため、本件株式は純資産価額方式によって評価されることとなる。
この場合、土地及び借地権は、原則として、評価通達の定めにより、相続開始前3年以内に取得した借地権の価額は、鑑定評価額によった。また、無償返還届出書の提出に係る借地権については、相当地代通達及び相当地代貸宅地通達の定めにより、土地保有割合の計算上、評価通達189(3)の「土地等の価額」に加算されることになる。
以上により、本件株式価額は、1株当たり55万3193円となる。
三、判決要旨
請求棄却
1 評価通達189(3)等の合理性について (1)相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価による旨定めているが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
もっとも、相続財産の客観的交換価値といっても、必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務においては、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、これに定められた画一的な評価方式によって相続財産の時価、すなわち客観的交換価値を評価するものとしている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものである。
したがって、相続財産の価額は、評価通達によって評価することが相当ではないと認められる特段の事情がない限り、評価通達に規定された評価方法によって評価するのが相当である。
(2)上記でみた評価通達の改正経緯及び内容等を踏まえると、取引相場のない株式の評価に関する評価通達の定めは、合理性を有する。その理由は、以下に述べるとおりである。
すなわち、取引相場のない株式とは、上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式であるところ(評基通168)、評価会社の規模は、上場会社に匹敵するような大規模な会社から、個人企業と変わらない小規模な会社まで様々であることから、取引相場のない株式のすべてを画一的な方法によって評価することは適当でない。そのため、評価通達は、評価会社の実態に適合した評価ができるように、事業規模に応じて評価会社を大会社、中会社及び小会社に区分し、それぞれの区分に応じて評価方式を定めている。このうち、大会社は、上場会社や気配相場等のある株式の発行会社に匹敵するような規模の会社であり、その株式が正常な状態において取引されるとすれば、上場株式等の取引価格に準じた価額が付されるものと想定されることから、大会社の株式については、類似業種比準方式によって評価することを原則としている。
他方で、評価会社の中には、会社の総資産のうちに占める各資産の保有状況が、類似業種比準方式における標本会社である上場会社に比して著しく株式等や土地等に偏っているものが見受けられるほか、標本会社である上場会社と同様に正常な営業活動を行っておらず又は事業活動自体を行っていないものが見受けられ、このような評価会社の株式については、類似業種比準方式を適用すべき前提条件を欠き、同方式によっては適正な株価の算定を行うことが期し難く、また、これらの原則的な評価方式による評価額と適正な時価との間に開差が生ずることとなり、かかる開差を利用したいわゆる租税回避行為の原因ともなっていたことから、課税の公平の観点から、株式の評価方法を適正化するとともに、租税回避行為に対処することを目的として、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等が一般の会社と異なる「特定の評価会社の株式」、すなわち、「株式保有特定会社」、「土地保有特定会社」等の各株式に区分し、それぞれ、その特殊性に応じた特別な評価方法を行うものとしている。
このうち、評価通達189(3)が定める土地保有特定会社の株式については、純資産価額方式によって評価するものとされている(評基通189-4)。これは、①会社の総資産のうちに占める土地等の保有状況が類似業種比準方式における標本会社である上場会社と比して著しく土地等に偏っており、類似業種比準方式を適用すべき前提条件を欠くものと認められ、同方式によって適正な株価の算定を行うことを期し難いこと、②土地保有割合が極めて高い評価会社については、その会社の資産内容に着目した取引がなされると考えられるので、株式の評価においても、土地等の保有状況に着目し、その資産価値を良く反映し得る純資産価額方式により評価することが適切であること、③個人所有の土地を現物出資して会社を設立し、その会社の株式の評価を土地保有特定会社が営む業種に類似する類似業種比準方式を適用することにより、その評価額を大幅に引き下げることによる節税策に対処すること、を理由とするものである。そして、土地保有特定会社の判定基準について、大会社の土地保有割合を70%以上とし、中会社の土地保有割合を90%と高くし、小会社を適用対象外としているのは、中小企業の事業承継等に配慮したものである。
また、評価通達185括弧書きは、課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等又は家屋等の価額については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(帳簿価額がこれに相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額)によって評価するものとしている。これは、①純資産価額の計算において、評価会社が所有する土地等の時価を算定する場合に、個人が所有する土地等の評価を行うことを念頭に置いた路線価等によって洗い替えをすることが唯一の方法であるとは限らないものと考えられ、適正な株式評価の見地からは、むしろ通常の取引価額によって評価すべきものであるとも考えられること、また、②課税時期の直前に取得し、時価が明らかになっている土地等についても、わざわざ、その時価を相当に下回る路線価等の相続税評価額によって洗い替えを行うことは、時価の算定上、適切ではないと考えられることに加え、③土地等の相続税評価額が実際の取引価額に比し低いことを利用し、会社がそのオーナーの相続開始直前に借入金で土地を取得し、その会社の株式評価額(純資産価額方式による。)を大幅に引き下げることによる節税策に対処するため、個人事業者等に適用される旧措置法69条の4との権衡をも考慮して、平成2年改正において、定められたものである。
(3)X1らは、評価通達189(3)等は、旧措置法69条の4が廃止されたことに伴い、その根拠法をなくしたものであるから、法律の根拠を欠く無効な通達であり、かかる無効な通達によって本件株式を評価することは租税法律主義に違反する旨主張する。しかしながら、上記においてみたとおり、そもそも、評価通達189(3)及び189-4は、大会社又は中会社の株式について、純資産価額方式による評価と類似業種比準方式による評価との開差を利用した節税策に対処するとともに、土地等の保有状況に着目し、その資産価値を良く反映し得る評価方法を採るため、土地保有特定会社の株式について純資産価額方式によって評価する旨を定めているものであり、不動産の実勢価格と相続税評価額との開差を利用した節税策に対処しようとした旧措置法69条の4とは直接関係しないというべきである。
また、旧措置法69条の4は、相続税法22条の適用を排除する特例を定めたものであるのに対し、評価通達185括弧書きは、その文言に照らすと、飽くまで、同条の定めに従った上で、取引相場のない株式について時価評価をするに際し、1株当たりの純資産価額を算定する前提として、評価会社が保有する資産の評価方法を定めたものにすぎず、相続財産としての土地等又は建物等の評価方法を定めたものではないし、同条の適用を排除する特例を定めたものでもない。したがって、旧措置法69条の4と評価通達185括弧書きが、不動産の実勢価格と相続税評価額との開差を利用した節税策に対処するという抽象的な目的において一部共通する点があるとしても、これをもって、旧措置法69条の4が評価通達185括弧書きの根拠法であるとみることはできないし、租税法律主義に違反するとはいえない。
また、評価通達185括弧書きは、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等又は家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、帳簿価額に相当する金額によって評価する場合も、当該帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合に限定しているのであるから、旧措置法69条の4のように、取得価額をもって財産の価額とみなすことを定めたものではない。
(4)評価通達189(3)が定める土地保有特定会社の株式については、純資産価額方式によって評価するものとしたものであるが(評基通189-4)、前記(2)において述べたとおり、これは、①会社の総資産のうちに占める土地等の保有状況が類似業種比準方式における標本会社である上場会社と比して著しく土地等に偏っており、類似業種比準方式を適用すべき前提条件を欠くものと認められ、同方式によって適正な株価の算定を行うことを期し難いこと、②土地保有割合が極めて高い評価会社については、その株式の取引価格の決定に際しても、会社の資産内容に着目した取引がなされると考えられるので、株式の評価においても、土地等の保有状況に着目し、その資産価値を良く反映し得る純資産価額方式により評価することが適切であること、③個人所有の土地を現物出資して会社を設立し、その会社の株式の評価を土地保有特定会社が営む業種に類似する類似業種比準方式を適用することにより、その評価額を大幅に引き下げることによる節税策に対処することを理由とするものである。また、土地保有特定会社の判定基準について、中会社の土地保有割合を90%と一層高くし、小会社を適用対象外とするなど、中小企業の事業承継等にも配慮がされている。また、X1らが主張するとおり、本件会社が営利活動を継続しており、甲が本件会社に対する土地取引を利用して節税を図った事実がないとしても、上記①及び②の理由に鑑みると、上記事実をもって本件株式を同方式によって評価することが不合理であるとみるべき特段の事情ということはできない。
2 本件会社が土地保有特定会社に該当するかについて (1)本件会社所有地の価額は、評価通達に規定された評価方法によって評価するのが相当である。また、X1らが主張するN鑑定は、不動産取引市場全体の実態よりも低額のものに偏した取引事例を収集・選択するなどして取引事例比較法を適用し、試算価格(比準価格)を算出し、各試算価格の調整をして鑑定評価額を決定しており、適正な鑑定評価額であるとは認められない。
また、評価通達が定める借地権及び貸家建付借地権の評価方法は、相続又は贈与における財産評価手法として一般的に合理性を有し、課税実務上も定着しているものであり、本件において、かかる評価通達によって評価することが相当ではない特段の事情を認めるに足りる証拠はない。したがって、本件会社が有する借地権及び貸家建付借地権の評価は、原則として、評価通達に規定された評価方法によって評価するのが相当である。
(2)本件会社は、本件相続の開始当時、本件相続開始前3年以内に取得した借地権として、甲借地権及び乙借地権を有しているところ、評価通達185括弧書が合理性を有することは、既に述べたとおりである。そして、同通達にいう「通常の取引価額に相当する金額」については、X1ら及び国がそれぞれ主張する鑑定価額は、いずれも適正なものとは認められないから、採用できず、結局、本件の裁決が、国土利用計画法所定の基準地価格及び地価公示法所定の公示価格に基づき、評価通達27を適用して算定した価額を合理的な評価額として採用できる。
(3)本件相続の開始当時、本件会社は、本件無償返還予定地(甲の所有地)を目的とする借地権及び貸家建付借地権(価額合計10億5985万円)を有し、無償返還届出書を提出して使用していた。
ところで、相当地代通達5は、借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として扱う旨定めている。これは、土地所有者と借地人との間に将来無償で土地を返還する旨の合意がある場合には、借地権の価額を零として扱うことが当事者の取引の実態にかなうと考えられることによると解される。
他方、相当地代通達8は、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付け、当該土地について無償返還届出書が提出されている場合には、相当地代貸宅地通達の適用がある旨定めている。そして、相当地代貸宅地通達は、この場合には、当該同族会社の株式の評価上、当該土地の自用地としての価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を同社の純資産価額に算入する旨定めている。これは、①被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、当該被相続人が自ら当該土地を利用している場合と実質的に変わりがないにもかかわらず、前者の場合は、相続税の計算上、自用地としての価額の80%に相当する金額で評価される一方で、後者の場合には、相続税の計算上、自用地としての価額の100%に相当する金額で評価されるという課税上の不公平が生じるため、当該土地の価額を個人と法人を通じて100%顕在させることが課税の公平上適当であると考えられること、②無償返還届出書の提出があるとしても、借地借家法によって保護される借地権の存在が否定されるものでないことから、当該同族会社の株式の評価上、当該土地の自用地としての価額の20%に相当する金額を、借地権の価額として、同社の純資産価額に算入することとしたものであると解される。
以上に鑑みると、上記各通達の定めは合理性を有するというべきであり、相当地代通達8及び相当地代貸宅地通達の適用がある場合には、相当地代通達5の適用はないと解するのが相当である。したがって、本件無償返還予定地の自用地としての価額の20%に相当する金額、すなわち、借地権及び貸家建付借地権の価額合計10億5985万円余は、本件会社の土地保有割合の計算上、分母及び分子のいずれにも算入されるべきものである。
(4)以上に述べたところによれば、本件相続の開始時点における本件会社の総資産価額(相続税評価額)は175億7455万円余であり、本件会社が所有する土地等の価額(相続税評価額)の合計額は132億8122万円余であるから、本件会社の土地保有割合は75.57%となる。よって、本件株式の評価額は、1株当たり55万1817円となり、本件各処分は、適法というべきである。
四、解説
はじめに 昭和60年代から平成の初めにかけてのいわゆるバブル期においては、土地、株式等についての取引価額と相続税評価額の開差を利用した相続税・贈与税の節税又は租税負担回避が横行し、それに対処するために法律又は通達による規制が行われた(注1)。本件で問題になっている土地保有特定会社を他の評価会社と区分し、同会社株式について類似業種比準方式の適用を制限する措置がとられたのも、その一環である。
ところが、バブル崩壊後、前述の節税(租税回避)を封じる各措置の見直しが行われるようになり、平成8年3月に、旧措置法69条の4が廃止となり(注2)、平成25年6月に、評価通達が改正により株式保有特定会社の判定基準について、大会社の株式保有割合が25%から50%へ引き上げられた(注3)。
かくして、本件の土地保有特定会社の評価方法についても見直すべきではないかという議論もあり、その中でも、評価会社が所有する土地等の評価において、本件で問題となっている評価通達185括弧書きに定めるいわゆる3年しばりの適法性等が従前より一層問題視されてきた。また、無償返還届出書が提出されている借地権の評価額が土地保有割合の判定に影響を及ぼすこととなったが、そのようなことは極めて稀であると考えられる。本稿では、それらの問題点について、本件に即して検討することとする。
1 土地保有特定会社株式の評価の合理性 (1)前述したように、平成2年8月の評価通達の改正(注4)により、株式保有特定会社、土地保有特定会社等の特定の評価会社が区分され、当該会社の株式の価額については、類似業種比準方式の適用が制限(原則として、純資産価額方式を適用)された。その中でも、株式保有特定会社及び土地保有特定会社の資産管理会社については、主として、資産管理を目的として設立されているため類似業種比準方式における比準要素である配当、利益及び純資産についてそれぞれの価額の操作(調節)も容易であり、当該特定会社の株式の価額を不当に引き下げることにもなる。よって、当該株式について適正の「時価」評価を行うためには、類似業種比準方式の適用を制限せざるを得なくなる。
この場合、土地保有特定会社については、それぞれの評価会社について、どの程度の土地保有割合をもって特定会社として区分するかが問題となる。平成2年改正時には、大会社については、土地保有割合を70%とされ、中会社については、90%とされ、小会社については、特定会社の対象からはずされた(注5)。しかし、平成6年6月の評価通達の改正により、会社規模区分の改正において評価基準が見直しされ、従来の大会社又は中会社が小会社に区分されることとなったため、それらの小会社についても特定会社の対象にすることとされた(注6)。
(2)次に、大会社に対する70%基準と中会社に対する90%基準の根拠については、次のように説明される(注7)。すなわち、平成2年当時の実態調査によると、大会社において最も土地保有割合の高い業種であった映画興行会社等が概ね30数%であったので、その2倍程度の保有割合(70%)であれば、相当異常な土地所有であると判断できた。また、当時実施されていた法人税の土地重課制度の中で土地等の保有割合が70%以上の会社の株式を譲渡した場合には、当該土地等の譲渡とみなして当該重課税を適用することとされていた。そういう意味では、70%というのは一つの土地の塊であると推定されていた。
また、中会社については、70%が「土地の塊」といっても、元々、会社の基盤が土地の上に何らかの建物等があって事業が成り立っている場合が多いので、70%基準では厳しいと考えられたので、土地が大部分であると評価できる90%基準を中会社に適用され、更に、土地保有割合が高いと目される個人事業類似の小会社については当初適用除外とされた。
更に、土地保有特定会社については、その保有割合の基となる「土地等の価額」について相続税評価額によるのであるが、その評価方法いかんが保有割合に影響を及ぼすことになる。そこで、その評価方法について特に問題となる事項について、本件に即して次に述べることとする。
なお、このような土地保有特定会社の株式の評価方法については、従前の裁判例においてもその合理性が容認されている(注8)。
2 旧措置法69条の4と評価通達185との関係 (1)旧措置法69条の4は、個人が相続又は遺贈により取得した財産(収用等に伴う代替資産、居住用財産を除く。)のうちに、当該相続の開始前3年以内に被相続人が取得等した土地等又は建物等がある場合には、当該土地等又は建物等の相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続税法22条の規定にかかわらず、当該土地等又は建物等に係る取得価額による旨定めていた。
このような規定が立法されたのは、本判決も判示するように、昭和50年代後半から平成初期にかけての地価高騰時における土地等の取引価額と相続税評価額との開差を利用した租税負担回避に対処したことにほかならない。すなわち、税制調査会「税制の抜本的見直しについての答申」(昭和61年10月)では、かかる租税負担回避行為に対して、「制度面を含め、何らかの対応策を検討すべきである。」と提言し、本条項が審議された衆議院税制問題等に関する調査特別委員会において、当時の主税局長は、かかる租税負担回避行為に対処する必要性、他の財産形態を保有している者との税負担のバランスを図る必要等から本条項を提案した旨説明している(注9)。
しかし、旧措置法69条の4については、前掲大阪地裁平成7年10月17日判決等が、当該条項に基づく課税処分は違憲状態になる旨判示し、当該課税処分を取り消したため、翌平成8年3月に廃止されることになった。このような結果は、旧措置法69条の4が内包している構造上の問題から必然的に導き出されるものであると言える。けだし、相続税法22条に定める「時価」は、当該財産が置かれている経済環境の変化に対応して絶えず変動するものであるから、その「時価」に代替して「取得価額」という歴史的事実に基づき課税価格を固定することは、当該財産の「時価」の変動(上下を問わず)が激しければ自ずから財産課税として矛盾が露呈することは当然であるからである。特に、財産の価額が下落する時にはその問題が一層深刻になるが、そのことは、当初から筆者は指摘してきた(注10)。
(2)ところで、旧措置法69条の4の制定後も、財産の取引価額と相続税評価額の開差を利用した租税負担回避行為が横行し、特に、個人間の負担付贈与等の取引や法人の財産取得による株式評価額の引下げという形式が採られるようになった。そのため、国税庁は、平成元年3月、「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」通達を発出し、翌2年8月、本件で問題となっている評価通達185の規定を含む一連の評価通達改正を行い、各財産の価額の評価につき、「通常の取引価額」を重視する取扱いとした。しかし、これらの改正は、あくまでも相続税法22条にいう「時価」の解釈・適用を適正なものにするためのものであり、旧措置法69条の4の規定が立法政策的に租税負担回避行為を封じようとしたこととは全く性格を異にするものである(注11)。
特に、評価通達185の改正については、その括弧書で、「この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができる」と定めている。
この規定は、旧措置法69条の4の規定と類似するところはあるが、前述したように、あくまでも相続税法22条が定める「時価」の解釈・適用において評価会社が所有する資産の価額を的確に把握しそれを株式の価額の評価に反映させているに過ぎない。また、同通達によって当該財産の「帳簿価額」によって評価することができる旨定めているのは、当該「帳簿価額」が直近の取引価額を反映するものであり、課税時期の「通常の取引価額」に近似するものと認められるからにほかならない。更に、旧措置法69条の4の規定の廃止に伴って評価通達185括弧書の規定を廃止すれば、当該財産の取引価額と相続税評価額の開差を利用した租税負担回避を一層惹起することも目に見えている。このことは、最近の「タワーマンション節税」現象によって明白にされている。
3「無償返還届出書」提出に係る借地権の評価 (1)本件のように、個人が、当該個人が経営する同族会社に対して土地を賃借(相当の地代を授受)し、当該会社からその土地につき「無償返還届出書」の提出を受けている場合に、当該個人に相続が開始されたとき、当該土地の評価額と当該会社の借地権の評価額が問題となる。
この点につき、相当地代通達5は、「借地権が設定されている土地について、……〈無償返還届出書〉……が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として取り扱う。」と定めている。また、同通達8は、無償返還届出書が提出されている場合の貸宅地の価額について、次のように評価するとしている。
「借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。
なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、43年直資3-22通達(編注=相当地代貸宅地通達)の適用があることに留意する。この場合において、同通達中「相当の地代を収受している」とあるのは「土地の無償返還に関する届出書」の提出されている」と読み替えるものとする。」
(2)次に、「相当地代貸宅地通達」では、相当の地代を収受している(無償返還届出書を提出している)貸宅地の評価について、次のように定めている。
「標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により評価することとされたい。
なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達(編注=現行の評価通達)32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。」
上記のように、この通達は、被相続人の貸宅地から20%の借地権価額を控除するが、当該借地権を有している評価会社の株式の価額の評価上加算することとし、結果的に、当該個人と会社との間で借地権の存在がなかったことと同じに取り扱うとしており、その理由について、次のように説明している(相当地代貸宅地通達(理由))。
「地代率との相関関係から借地権の有無につき規定している法人税法施行令第137条の趣旨からすれば、本件の場合土地の評価に当たり借地権を無視する考え方もあるが、借地借家法の制約、賃貸借契約にもとづく利用の制約等を勘案すれば、現在借地慣行のない地区についても20%の借地権を認容していることとの権衡上、本件における土地の評価についても借地権割合を20%とすることが適当である。
なお、本件における借地権の価額を被相続人が所有するI株式会社の株式の評価上、同社の純資産価額に算入するのは、被相続人が同社の同族関係者である本件の場合において価額が個人と法人を通じて100%顕現することが、課税の公平上適当と考えられるからである。」
4 本件における土地保有特定会社の判定とその合理性 (1)本件においては、不動産の賃貸借及び管理業務等を目的とする株式会社である本件会社(昭和31年設立)が評価通達上の土地保有特定会社に該当するか否か、当該会社の株式である本件株式の価額を類似業種比準方式によって評価することの適否が争われたものである。本件会社は、本件相続開始直近の平成20年3月期の取引金額23億2661万円余、総資産価額94億円余、従業員37名ということで、評価通達上の大会社に該当することとなり、その土地保有割合が70%を超えれば、本件株式の価額は、純資産価額方式によって評価されることになる。
この場合まず、本件会社のように、バブル期の節税策の手段とは関係のない昭和31年に設立され、かつ、年間取引金額23億円余、従業員37名を擁して事業会社の側面を有する会社について、機械的に土地保有特定会社と認定することの当否や土地保有割合70%の妥当性が問題となる。
この点につき、本判決は、前述したように、①土地等の保有状況が類似業種比準方式における標本会社である上場会社と比して著しく土地等に偏っていること、②土地保有割合が極めて高い評価会社については、その株式の取引価格の決定もその土地等の保有状況に着目して決定されること、③個人所有の土地等を現物出資して資産管理会社を設立し、その株式について類似業種比準方式を適用するという節税策に対処する必要があること等の理由を挙げ、かつ、土地保有割合の大会社70%以上、中会社90%以上にも合理性があるとして、本件更正の適法性を是認した。
このような判決は、前記1で述べた土地保有特定会社株式の価額について純資産価額方式によって評価することの当該通達の制定趣旨に照らし、是認し得るものと考えられる。
(2)次に、大会社が土地保有特定会社と判定されることになる土地保有割合70%基準については、当該評価会社が所有する土地等の相続税評価額が問題となる。この点につき、X1らは、本件会社の土地保有割合が68.3%になるから土地保有特定会社に該当しない旨主張し、国は、当該土地保有割合75.64%になるから土地保有特定会社に該当する旨主張していた。両者の主張の差異の主要な原因は、本件会社が本件相続開始3年前内に取得した借地権の価額につき評価通達185括弧書を適用すべきか否かと、本件会社が甲から賃貸していて無償返還届出書を提出している借地権について自用地の20%相当額を加算して評価すべきか否かにある。
これらの点につき、X1らは前者につき、旧措置法69条の4が廃止された以上、評価通達185括弧書は無効であると主張し、当該括弧書の中で当該財産の「帳簿価額」で評価することの不当性を主張し、後者につき、当該20%相当額加算の不当性を主張した。
これに対し、本判決は、前述したように、平成2年の評価通達改正の経緯を確認した上で、「評価通達185括弧書は、その文言に照らすと、飽くまで、同条(編注=相続税法22条)の定めに従った上で、取引相場のない株式について時価評価をするに際し、1株当たりの純資産価額を算定する前提として、評価会社が保有する資産の評価方法を定めたものにすぎず、相続財産としての土地等又は建物等の評価方法を定めたものではないし、同条の適用を排除する特例を定めたものでもない。したがって、旧措置法69条の4と評価通達185括弧書が、不動産の実勢価格と相続税評価額との開差を利用した節税策に対処するという抽象的な目的において一部共通する点があるとしても、これをもって、旧措置法69条の4が評価通達185括弧書の根拠法であるとみることはできない。」と判示し、X1らの主張を退けている。また、本判決は、評価通達185括弧書に定める当該財産の「帳簿価額」による評価については、「当該帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合に限定している」から、問題にはならない旨判示している。これらの判決は、前記2で述べた「旧措置法69条の4と評価通達185との関係」に照らし、首肯できるところである。
なお、無償返還届出書を提出している借地権の評価についてのX1らの主張は、本判決も否定しているが、当該主張が前記3で述べた関係通達の取扱いが適正と認められるところ、それに明らかに反するものであり、他にX1らの主張を適法と認める理由も認められない。
5 本判決の意義と問題点 本判決も判示するように、平成2年の評価通達の改正は、当時のバブル期における各財産の相続税評価額と取引価額の開差を利用した節税(租税回避)策に対し、当該相続税評価額の適正化を図ることによって封じることにあった。その中で、類似業種比準方式を利用(悪用)した節税策を封じるために、「特定の評価会社」を区分し、同評価会社株式の価額を原則として純資産価額方式で評価することとした。
その「特定の評価会社」の中では、株式保有特定会社と土地保有特定会社は代表的なものであった。その株式保有特定会社の会社区分については、その後の株式保有規制の緩和(持株会社の解禁)等もあって、前述したように、国側の敗訴事件もあったため、株式保有特定会社の判定基準(評基通189(2))が改正された。他方、土地保有特定会社については、従前の裁判例では、前述したように、当該会社区分等の合理性が容認されてきたが、本件会社が相応の事業活動を行っているため、本訴の行方が注目されてきた。しかし、本判決は、前述のように、平成2年の評価通達の改正の経緯を具さに検討し、土地保有特定会社制度の合理性を容認したが、そのこと自体意義のあることである。
その中でも、評価通達185括弧書の規定については、旧措置法69条の4の規定が廃止されたため、その存在を問題視する議論もあるところ、本判決は、旧措置法69条の4の規定との違いを明確にし、その必要性は現在でも変らないとしたことに意義がある。ただ、最近の事例においては、今までにない超低金利時代を反映し、会社が借入金によって多額な土地等を取得し、当該取得3年後に当該会社の株式を贈与等することによって、贈与税等を回避する手法が持てはやされているので、「3年しばり」を「5年しばり」に延長する必要性等も指摘されている。
(注1)本判決においても認定されているところであるが、主な規制策として、昭和63年12月に、旧措置法69条の4が制定され、被相続人が相続開始前3年以内に取得した土地等及び家屋等について、取得価額で相続税を課税することとされ、平成元年3月に、いわゆる負担付贈与通達が発出され、負担付贈与等によって取得した土地等及び家屋等の「時価」を「通常の取引価額」で評価して贈与税を課税することとされ、平成2年8月に、評価通達の改正によって評価通達189(3)等が制定され、土地保有特定会社の株式等について類似業種比準方式の適用を制限する等の各措置がとられた(詳細については、品川芳宣・緑川正博「相続税財産評価の理論と実践」(ぎょうせい 平成17年)62頁以下参照)。
(注2)旧措置法69条の4廃止の起因は、大阪地裁平成7年10月17日判決(行裁例集46巻10・11号942頁)が、被相続人が約22億円で取得した土地が相続開始時に約9億円に値下がりしたものの約12億円の相続税が課税された事案につき、当該規定は合憲であるが、当該規定を適用して当該土地の時価を上回る相続税額を課す当該課税処分は違憲状態になる旨判示したことにある(上告審の大阪高裁平成10年4月14日判決・訟務月報45巻6号1112頁、最高裁平成11年6月11日第二小法廷判決・税資243号270頁も同旨。品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第三版」(大蔵財務協会 平成26年)906頁等参照。)
(注3)同通達改正の起因は、東京地裁平成24年3月2日判決(平成21年(行ウ)第28号)及び東京高裁平成25年2月28日判決(平成24年(行コ)第124号)が、株式保有割合25%基準に基づく課税処分を違法としたことにある(詳細は、前出(注2)799頁参照)。
(注4)同改正全体の趣旨については、品川芳宣・緑川正博「特別対談 株式節税規制通達のポイントを衝く」別冊税理 平成2年11月臨時増刊号(33巻15号)1頁等参照。
(注5)前出(注4)18頁等参照。
(注6)谷口裕之「財産評価基本通達逐条解説 平成25年版」(大蔵財務協会)722頁等参照。
(注7)前出(注1)216頁等参照。
(注8)東京地裁平成10年5月29日判決(判例タイムズ1002号144頁)等参照。
(注9)国税庁「昭和63年 改正税法のすべて」463頁参照。
(注10)品川芳宣「措置法69条の4の廃止と評価通達の関係」税理39巻5号18頁、品川芳宣他「改正相続税財産評価基本通達の実務検討」税経通信45巻12号30頁等参照。
(注11)前出(注10)「措置法69条の4の廃止と評価通達の改正」20頁等参照。
土地等の評価方法と土地保有特定会社判定の合理性
東京地裁平成27年7月30日判決(平成25年(行ウ)第186号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X1、X2、X3、及びX4(原告、以下「X1ら」という。)は、平成20年12月18日に死亡した甲を相続(以下「本件相続」という。)し、甲が経営・所有していた株式会社KB(以下「本件会社」という。)の株式2万1400株(以下「本件株式」という。)を取得した。X1らは、本件会社が財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)上の大会社(総資産価額94億円余、取引金額23億円余、従業員37名、卸売業・小売サービス業以外)に該当するということで、本件株式の価額を評価通達が定める類似業種比準価額で評価して、相続税の申告(以下「本件申告」という。)をした。
これに対し、処分行政庁は、本件会社が評価通達189(3)に定める土地保有特定会社に該当するので、本件株式の価額を純資産価額で評価すべきである(評価通達189-4)とする更正処分(以下「本件更正」という。)等(以下「本件各処分」という。)をした。X1らは、本件各処分の取消しを求めて、前審手続を経て、平成25年4月10日、本訴を提起した。
(2)本訴においては、不動産の賃貸借及び管理業務等を目的とする株式会社である本件会社の株式(本件株式)の評価方法が争われたのであるが、甲が所有する土地等につき、甲と本件会社との間で、相当地代による土地の賃貸借が行われ、無償返還届出書も提出されていたため、本件会社の借地権の評価額が争われ、本件相続開始前3年以内に取得した借地権の評価額(評価通達185かっこ書きの合理性)も争われた。また、本件会社が評価通達189(3)に定める大会社に係る土地保有特定会社に該当するところ、当該基準の70%の合理性と本件株式を純資産価額で評価することの適法性が争われることになった。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 本件の争点は、次のとおりである。
(1)評価通達189(3)、189-4及び185(以下「評価通達189(3)等」という。)の合理性等
(2)本件会社が土地保有特定会社に該当するか否か。
(3)本件株式についてとるべき評価方法及び1株当たりの評価額
そのほか、X1らは、訴状において本件相続により相続した土地の一部の価額についても争うとしていたが、後にこの主張を撤回した。
2 X1らの主張 (1)評価通達189(3)等は、法律の根拠を欠く無効な通達であり、それ自体としても合理性を失っている。すなわち、昭和60年以降のバブル経済の中で土地等の取引価額が高騰し、当該取引価額と相続税評価額の開差を利用した租税回避行為が横行し、それを規制するために、昭和63年12月に租税特別措置法69条の4(以下「旧措置法69条の4」という。)が制定されて、相続開始前3年以内に取得した土地等又は建物等をその取得価額で課税する旨規定されたものの、その後、バブル崩壊後、当該規定が憲法違反(財産権の侵害)の恐れがあるとした判決が出された後に旧措置法69条の4が廃止されたが、評価通達189(3)等は、旧措置法69条の4に準じて定めたものであるから、その法的根拠を失ったものである。
また、評価通達185括弧書は、帳簿価額に基づいて評価する旨定めているが、それは相続税法22条に定める「時価」と異にする違法な取扱いである。
(2)仮に、評価通達189(3)等の適用を前提として本件会社の土地保有割合を計算したとしても、本件会社の総資産価額は168億9096万円余であり、土地等の価額の合計額は115億3778万円余であるから、土地保有割合は68.3%となる。したがって、本件会社は土地保有特定会社に該当しない。また、その根拠となる土地の一部及び借地権の評価額は、鑑定評価によるものである。
なお、本件会社が甲から賃借していた土地に係る借地権については、昭和60年6月5日付直資2-5ほか「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(以下「相当地代通達」という。)及び昭和43年10月28日付け直資3-22ほか「相当の地代を収受している賃宅地の評価について」(以下「相当地代貸宅地通達」という。)により、無償返還届出書が提出されているから、土地保有割合の計算上、当該借地権の価額は、零であり、分子には算入されないが、分母には20%相当額が加算されるべきである。
(3)本件株式は、類似業種比準方式によって評価すべきであり、類似業種の株価を基礎として、類似業種と本件会社の1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額を所定の方法で比較し、類似業種の株価に比準して算出した価額に0.7を乗じると、その評価額は1株当たり10万3335円となる。
3 国の主張 (1)評価通達189(3)等は、相続税法22条に関する通達であり、合理性も認められる。また、旧措置法69条の4の規定と評価通達189(3)等とは、その趣旨、目的を異にするものであるから、旧措置法69条の4の規定が廃止されたからといって、評価通達189(3)等の規定に影響を及ぼすものではない。また、評価通達189(3)等は、個人が所有する株式に係る相続税法22条に規定する時価(客観的交換価値)を算出するための評価方式を定めたものであり、その定めは合理性を有するものである。
(2)大会社の場合、土地保有割合が70%以上であれば、土地保有特定会社に該当するところ(評基通189(3))、本件相続開始時点における本件会社の総資産価額(相続税評価額)は176億2630万円余であり、本件会社が所有する土地等の価額(相続税評価額)の合計額は133億3297万円余であるから、本件会社の土地保有割合は75.64%となる。したがって、本件会社は土地保有特定会社に該当するため、本件株式は純資産価額方式によって評価されることとなる。
この場合、土地及び借地権は、原則として、評価通達の定めにより、相続開始前3年以内に取得した借地権の価額は、鑑定評価額によった。また、無償返還届出書の提出に係る借地権については、相当地代通達及び相当地代貸宅地通達の定めにより、土地保有割合の計算上、評価通達189(3)の「土地等の価額」に加算されることになる。
以上により、本件株式価額は、1株当たり55万3193円となる。
三、判決要旨
請求棄却
1 評価通達189(3)等の合理性について (1)相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価による旨定めているが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
もっとも、相続財産の客観的交換価値といっても、必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務においては、相続財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、これに定められた画一的な評価方式によって相続財産の時価、すなわち客観的交換価値を評価するものとしている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的かつ大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどからして、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものである。
したがって、相続財産の価額は、評価通達によって評価することが相当ではないと認められる特段の事情がない限り、評価通達に規定された評価方法によって評価するのが相当である。
(2)上記でみた評価通達の改正経緯及び内容等を踏まえると、取引相場のない株式の評価に関する評価通達の定めは、合理性を有する。その理由は、以下に述べるとおりである。
すなわち、取引相場のない株式とは、上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式であるところ(評基通168)、評価会社の規模は、上場会社に匹敵するような大規模な会社から、個人企業と変わらない小規模な会社まで様々であることから、取引相場のない株式のすべてを画一的な方法によって評価することは適当でない。そのため、評価通達は、評価会社の実態に適合した評価ができるように、事業規模に応じて評価会社を大会社、中会社及び小会社に区分し、それぞれの区分に応じて評価方式を定めている。このうち、大会社は、上場会社や気配相場等のある株式の発行会社に匹敵するような規模の会社であり、その株式が正常な状態において取引されるとすれば、上場株式等の取引価格に準じた価額が付されるものと想定されることから、大会社の株式については、類似業種比準方式によって評価することを原則としている。
他方で、評価会社の中には、会社の総資産のうちに占める各資産の保有状況が、類似業種比準方式における標本会社である上場会社に比して著しく株式等や土地等に偏っているものが見受けられるほか、標本会社である上場会社と同様に正常な営業活動を行っておらず又は事業活動自体を行っていないものが見受けられ、このような評価会社の株式については、類似業種比準方式を適用すべき前提条件を欠き、同方式によっては適正な株価の算定を行うことが期し難く、また、これらの原則的な評価方式による評価額と適正な時価との間に開差が生ずることとなり、かかる開差を利用したいわゆる租税回避行為の原因ともなっていたことから、課税の公平の観点から、株式の評価方法を適正化するとともに、租税回避行為に対処することを目的として、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等が一般の会社と異なる「特定の評価会社の株式」、すなわち、「株式保有特定会社」、「土地保有特定会社」等の各株式に区分し、それぞれ、その特殊性に応じた特別な評価方法を行うものとしている。
このうち、評価通達189(3)が定める土地保有特定会社の株式については、純資産価額方式によって評価するものとされている(評基通189-4)。これは、①会社の総資産のうちに占める土地等の保有状況が類似業種比準方式における標本会社である上場会社と比して著しく土地等に偏っており、類似業種比準方式を適用すべき前提条件を欠くものと認められ、同方式によって適正な株価の算定を行うことを期し難いこと、②土地保有割合が極めて高い評価会社については、その会社の資産内容に着目した取引がなされると考えられるので、株式の評価においても、土地等の保有状況に着目し、その資産価値を良く反映し得る純資産価額方式により評価することが適切であること、③個人所有の土地を現物出資して会社を設立し、その会社の株式の評価を土地保有特定会社が営む業種に類似する類似業種比準方式を適用することにより、その評価額を大幅に引き下げることによる節税策に対処すること、を理由とするものである。そして、土地保有特定会社の判定基準について、大会社の土地保有割合を70%以上とし、中会社の土地保有割合を90%と高くし、小会社を適用対象外としているのは、中小企業の事業承継等に配慮したものである。
また、評価通達185括弧書きは、課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等又は家屋等の価額については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(帳簿価額がこれに相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額)によって評価するものとしている。これは、①純資産価額の計算において、評価会社が所有する土地等の時価を算定する場合に、個人が所有する土地等の評価を行うことを念頭に置いた路線価等によって洗い替えをすることが唯一の方法であるとは限らないものと考えられ、適正な株式評価の見地からは、むしろ通常の取引価額によって評価すべきものであるとも考えられること、また、②課税時期の直前に取得し、時価が明らかになっている土地等についても、わざわざ、その時価を相当に下回る路線価等の相続税評価額によって洗い替えを行うことは、時価の算定上、適切ではないと考えられることに加え、③土地等の相続税評価額が実際の取引価額に比し低いことを利用し、会社がそのオーナーの相続開始直前に借入金で土地を取得し、その会社の株式評価額(純資産価額方式による。)を大幅に引き下げることによる節税策に対処するため、個人事業者等に適用される旧措置法69条の4との権衡をも考慮して、平成2年改正において、定められたものである。
(3)X1らは、評価通達189(3)等は、旧措置法69条の4が廃止されたことに伴い、その根拠法をなくしたものであるから、法律の根拠を欠く無効な通達であり、かかる無効な通達によって本件株式を評価することは租税法律主義に違反する旨主張する。しかしながら、上記においてみたとおり、そもそも、評価通達189(3)及び189-4は、大会社又は中会社の株式について、純資産価額方式による評価と類似業種比準方式による評価との開差を利用した節税策に対処するとともに、土地等の保有状況に着目し、その資産価値を良く反映し得る評価方法を採るため、土地保有特定会社の株式について純資産価額方式によって評価する旨を定めているものであり、不動産の実勢価格と相続税評価額との開差を利用した節税策に対処しようとした旧措置法69条の4とは直接関係しないというべきである。
また、旧措置法69条の4は、相続税法22条の適用を排除する特例を定めたものであるのに対し、評価通達185括弧書きは、その文言に照らすと、飽くまで、同条の定めに従った上で、取引相場のない株式について時価評価をするに際し、1株当たりの純資産価額を算定する前提として、評価会社が保有する資産の評価方法を定めたものにすぎず、相続財産としての土地等又は建物等の評価方法を定めたものではないし、同条の適用を排除する特例を定めたものでもない。したがって、旧措置法69条の4と評価通達185括弧書きが、不動産の実勢価格と相続税評価額との開差を利用した節税策に対処するという抽象的な目的において一部共通する点があるとしても、これをもって、旧措置法69条の4が評価通達185括弧書きの根拠法であるとみることはできないし、租税法律主義に違反するとはいえない。
また、評価通達185括弧書きは、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等又は家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、帳簿価額に相当する金額によって評価する場合も、当該帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合に限定しているのであるから、旧措置法69条の4のように、取得価額をもって財産の価額とみなすことを定めたものではない。
(4)評価通達189(3)が定める土地保有特定会社の株式については、純資産価額方式によって評価するものとしたものであるが(評基通189-4)、前記(2)において述べたとおり、これは、①会社の総資産のうちに占める土地等の保有状況が類似業種比準方式における標本会社である上場会社と比して著しく土地等に偏っており、類似業種比準方式を適用すべき前提条件を欠くものと認められ、同方式によって適正な株価の算定を行うことを期し難いこと、②土地保有割合が極めて高い評価会社については、その株式の取引価格の決定に際しても、会社の資産内容に着目した取引がなされると考えられるので、株式の評価においても、土地等の保有状況に着目し、その資産価値を良く反映し得る純資産価額方式により評価することが適切であること、③個人所有の土地を現物出資して会社を設立し、その会社の株式の評価を土地保有特定会社が営む業種に類似する類似業種比準方式を適用することにより、その評価額を大幅に引き下げることによる節税策に対処することを理由とするものである。また、土地保有特定会社の判定基準について、中会社の土地保有割合を90%と一層高くし、小会社を適用対象外とするなど、中小企業の事業承継等にも配慮がされている。また、X1らが主張するとおり、本件会社が営利活動を継続しており、甲が本件会社に対する土地取引を利用して節税を図った事実がないとしても、上記①及び②の理由に鑑みると、上記事実をもって本件株式を同方式によって評価することが不合理であるとみるべき特段の事情ということはできない。
2 本件会社が土地保有特定会社に該当するかについて (1)本件会社所有地の価額は、評価通達に規定された評価方法によって評価するのが相当である。また、X1らが主張するN鑑定は、不動産取引市場全体の実態よりも低額のものに偏した取引事例を収集・選択するなどして取引事例比較法を適用し、試算価格(比準価格)を算出し、各試算価格の調整をして鑑定評価額を決定しており、適正な鑑定評価額であるとは認められない。
また、評価通達が定める借地権及び貸家建付借地権の評価方法は、相続又は贈与における財産評価手法として一般的に合理性を有し、課税実務上も定着しているものであり、本件において、かかる評価通達によって評価することが相当ではない特段の事情を認めるに足りる証拠はない。したがって、本件会社が有する借地権及び貸家建付借地権の評価は、原則として、評価通達に規定された評価方法によって評価するのが相当である。
(2)本件会社は、本件相続の開始当時、本件相続開始前3年以内に取得した借地権として、甲借地権及び乙借地権を有しているところ、評価通達185括弧書が合理性を有することは、既に述べたとおりである。そして、同通達にいう「通常の取引価額に相当する金額」については、X1ら及び国がそれぞれ主張する鑑定価額は、いずれも適正なものとは認められないから、採用できず、結局、本件の裁決が、国土利用計画法所定の基準地価格及び地価公示法所定の公示価格に基づき、評価通達27を適用して算定した価額を合理的な評価額として採用できる。
(3)本件相続の開始当時、本件会社は、本件無償返還予定地(甲の所有地)を目的とする借地権及び貸家建付借地権(価額合計10億5985万円)を有し、無償返還届出書を提出して使用していた。
ところで、相当地代通達5は、借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として扱う旨定めている。これは、土地所有者と借地人との間に将来無償で土地を返還する旨の合意がある場合には、借地権の価額を零として扱うことが当事者の取引の実態にかなうと考えられることによると解される。
他方、相当地代通達8は、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付け、当該土地について無償返還届出書が提出されている場合には、相当地代貸宅地通達の適用がある旨定めている。そして、相当地代貸宅地通達は、この場合には、当該同族会社の株式の評価上、当該土地の自用地としての価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を同社の純資産価額に算入する旨定めている。これは、①被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、当該被相続人が自ら当該土地を利用している場合と実質的に変わりがないにもかかわらず、前者の場合は、相続税の計算上、自用地としての価額の80%に相当する金額で評価される一方で、後者の場合には、相続税の計算上、自用地としての価額の100%に相当する金額で評価されるという課税上の不公平が生じるため、当該土地の価額を個人と法人を通じて100%顕在させることが課税の公平上適当であると考えられること、②無償返還届出書の提出があるとしても、借地借家法によって保護される借地権の存在が否定されるものでないことから、当該同族会社の株式の評価上、当該土地の自用地としての価額の20%に相当する金額を、借地権の価額として、同社の純資産価額に算入することとしたものであると解される。
以上に鑑みると、上記各通達の定めは合理性を有するというべきであり、相当地代通達8及び相当地代貸宅地通達の適用がある場合には、相当地代通達5の適用はないと解するのが相当である。したがって、本件無償返還予定地の自用地としての価額の20%に相当する金額、すなわち、借地権及び貸家建付借地権の価額合計10億5985万円余は、本件会社の土地保有割合の計算上、分母及び分子のいずれにも算入されるべきものである。
(4)以上に述べたところによれば、本件相続の開始時点における本件会社の総資産価額(相続税評価額)は175億7455万円余であり、本件会社が所有する土地等の価額(相続税評価額)の合計額は132億8122万円余であるから、本件会社の土地保有割合は75.57%となる。よって、本件株式の評価額は、1株当たり55万1817円となり、本件各処分は、適法というべきである。
四、解説
はじめに 昭和60年代から平成の初めにかけてのいわゆるバブル期においては、土地、株式等についての取引価額と相続税評価額の開差を利用した相続税・贈与税の節税又は租税負担回避が横行し、それに対処するために法律又は通達による規制が行われた(注1)。本件で問題になっている土地保有特定会社を他の評価会社と区分し、同会社株式について類似業種比準方式の適用を制限する措置がとられたのも、その一環である。
ところが、バブル崩壊後、前述の節税(租税回避)を封じる各措置の見直しが行われるようになり、平成8年3月に、旧措置法69条の4が廃止となり(注2)、平成25年6月に、評価通達が改正により株式保有特定会社の判定基準について、大会社の株式保有割合が25%から50%へ引き上げられた(注3)。
かくして、本件の土地保有特定会社の評価方法についても見直すべきではないかという議論もあり、その中でも、評価会社が所有する土地等の評価において、本件で問題となっている評価通達185括弧書きに定めるいわゆる3年しばりの適法性等が従前より一層問題視されてきた。また、無償返還届出書が提出されている借地権の評価額が土地保有割合の判定に影響を及ぼすこととなったが、そのようなことは極めて稀であると考えられる。本稿では、それらの問題点について、本件に即して検討することとする。
1 土地保有特定会社株式の評価の合理性 (1)前述したように、平成2年8月の評価通達の改正(注4)により、株式保有特定会社、土地保有特定会社等の特定の評価会社が区分され、当該会社の株式の価額については、類似業種比準方式の適用が制限(原則として、純資産価額方式を適用)された。その中でも、株式保有特定会社及び土地保有特定会社の資産管理会社については、主として、資産管理を目的として設立されているため類似業種比準方式における比準要素である配当、利益及び純資産についてそれぞれの価額の操作(調節)も容易であり、当該特定会社の株式の価額を不当に引き下げることにもなる。よって、当該株式について適正の「時価」評価を行うためには、類似業種比準方式の適用を制限せざるを得なくなる。
この場合、土地保有特定会社については、それぞれの評価会社について、どの程度の土地保有割合をもって特定会社として区分するかが問題となる。平成2年改正時には、大会社については、土地保有割合を70%とされ、中会社については、90%とされ、小会社については、特定会社の対象からはずされた(注5)。しかし、平成6年6月の評価通達の改正により、会社規模区分の改正において評価基準が見直しされ、従来の大会社又は中会社が小会社に区分されることとなったため、それらの小会社についても特定会社の対象にすることとされた(注6)。
(2)次に、大会社に対する70%基準と中会社に対する90%基準の根拠については、次のように説明される(注7)。すなわち、平成2年当時の実態調査によると、大会社において最も土地保有割合の高い業種であった映画興行会社等が概ね30数%であったので、その2倍程度の保有割合(70%)であれば、相当異常な土地所有であると判断できた。また、当時実施されていた法人税の土地重課制度の中で土地等の保有割合が70%以上の会社の株式を譲渡した場合には、当該土地等の譲渡とみなして当該重課税を適用することとされていた。そういう意味では、70%というのは一つの土地の塊であると推定されていた。
また、中会社については、70%が「土地の塊」といっても、元々、会社の基盤が土地の上に何らかの建物等があって事業が成り立っている場合が多いので、70%基準では厳しいと考えられたので、土地が大部分であると評価できる90%基準を中会社に適用され、更に、土地保有割合が高いと目される個人事業類似の小会社については当初適用除外とされた。
更に、土地保有特定会社については、その保有割合の基となる「土地等の価額」について相続税評価額によるのであるが、その評価方法いかんが保有割合に影響を及ぼすことになる。そこで、その評価方法について特に問題となる事項について、本件に即して次に述べることとする。
なお、このような土地保有特定会社の株式の評価方法については、従前の裁判例においてもその合理性が容認されている(注8)。
2 旧措置法69条の4と評価通達185との関係 (1)旧措置法69条の4は、個人が相続又は遺贈により取得した財産(収用等に伴う代替資産、居住用財産を除く。)のうちに、当該相続の開始前3年以内に被相続人が取得等した土地等又は建物等がある場合には、当該土地等又は建物等の相続税の課税価格に算入すべき価額は、相続税法22条の規定にかかわらず、当該土地等又は建物等に係る取得価額による旨定めていた。
このような規定が立法されたのは、本判決も判示するように、昭和50年代後半から平成初期にかけての地価高騰時における土地等の取引価額と相続税評価額との開差を利用した租税負担回避に対処したことにほかならない。すなわち、税制調査会「税制の抜本的見直しについての答申」(昭和61年10月)では、かかる租税負担回避行為に対して、「制度面を含め、何らかの対応策を検討すべきである。」と提言し、本条項が審議された衆議院税制問題等に関する調査特別委員会において、当時の主税局長は、かかる租税負担回避行為に対処する必要性、他の財産形態を保有している者との税負担のバランスを図る必要等から本条項を提案した旨説明している(注9)。
しかし、旧措置法69条の4については、前掲大阪地裁平成7年10月17日判決等が、当該条項に基づく課税処分は違憲状態になる旨判示し、当該課税処分を取り消したため、翌平成8年3月に廃止されることになった。このような結果は、旧措置法69条の4が内包している構造上の問題から必然的に導き出されるものであると言える。けだし、相続税法22条に定める「時価」は、当該財産が置かれている経済環境の変化に対応して絶えず変動するものであるから、その「時価」に代替して「取得価額」という歴史的事実に基づき課税価格を固定することは、当該財産の「時価」の変動(上下を問わず)が激しければ自ずから財産課税として矛盾が露呈することは当然であるからである。特に、財産の価額が下落する時にはその問題が一層深刻になるが、そのことは、当初から筆者は指摘してきた(注10)。
(2)ところで、旧措置法69条の4の制定後も、財産の取引価額と相続税評価額の開差を利用した租税負担回避行為が横行し、特に、個人間の負担付贈与等の取引や法人の財産取得による株式評価額の引下げという形式が採られるようになった。そのため、国税庁は、平成元年3月、「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」通達を発出し、翌2年8月、本件で問題となっている評価通達185の規定を含む一連の評価通達改正を行い、各財産の価額の評価につき、「通常の取引価額」を重視する取扱いとした。しかし、これらの改正は、あくまでも相続税法22条にいう「時価」の解釈・適用を適正なものにするためのものであり、旧措置法69条の4の規定が立法政策的に租税負担回避行為を封じようとしたこととは全く性格を異にするものである(注11)。
特に、評価通達185の改正については、その括弧書で、「この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができる」と定めている。
この規定は、旧措置法69条の4の規定と類似するところはあるが、前述したように、あくまでも相続税法22条が定める「時価」の解釈・適用において評価会社が所有する資産の価額を的確に把握しそれを株式の価額の評価に反映させているに過ぎない。また、同通達によって当該財産の「帳簿価額」によって評価することができる旨定めているのは、当該「帳簿価額」が直近の取引価額を反映するものであり、課税時期の「通常の取引価額」に近似するものと認められるからにほかならない。更に、旧措置法69条の4の規定の廃止に伴って評価通達185括弧書の規定を廃止すれば、当該財産の取引価額と相続税評価額の開差を利用した租税負担回避を一層惹起することも目に見えている。このことは、最近の「タワーマンション節税」現象によって明白にされている。
3「無償返還届出書」提出に係る借地権の評価 (1)本件のように、個人が、当該個人が経営する同族会社に対して土地を賃借(相当の地代を授受)し、当該会社からその土地につき「無償返還届出書」の提出を受けている場合に、当該個人に相続が開始されたとき、当該土地の評価額と当該会社の借地権の評価額が問題となる。
この点につき、相当地代通達5は、「借地権が設定されている土地について、……〈無償返還届出書〉……が提出されている場合の当該土地に係る借地権の価額は、零として取り扱う。」と定めている。また、同通達8は、無償返還届出書が提出されている場合の貸宅地の価額について、次のように評価するとしている。
「借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。
なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、43年直資3-22通達(編注=相当地代貸宅地通達)の適用があることに留意する。この場合において、同通達中「相当の地代を収受している」とあるのは「土地の無償返還に関する届出書」の提出されている」と読み替えるものとする。」
(2)次に、「相当地代貸宅地通達」では、相当の地代を収受している(無償返還届出書を提出している)貸宅地の評価について、次のように定めている。
「標題のことについて、課税時期における被相続人所有の貸宅地は、自用地としての価額から、その価額の20%に相当する金額(借地権の価額)を控除した金額により評価することとされたい。
なお、上記の借地権の価額は、昭和39年4月25日付直資56相続税財産評価に関する基本通達(編注=現行の評価通達)32の(1)の定めにかかわらず、被相続人所有のI株式会社の株式評価上、同社の純資産価額に算入することとされたい。」
上記のように、この通達は、被相続人の貸宅地から20%の借地権価額を控除するが、当該借地権を有している評価会社の株式の価額の評価上加算することとし、結果的に、当該個人と会社との間で借地権の存在がなかったことと同じに取り扱うとしており、その理由について、次のように説明している(相当地代貸宅地通達(理由))。
「地代率との相関関係から借地権の有無につき規定している法人税法施行令第137条の趣旨からすれば、本件の場合土地の評価に当たり借地権を無視する考え方もあるが、借地借家法の制約、賃貸借契約にもとづく利用の制約等を勘案すれば、現在借地慣行のない地区についても20%の借地権を認容していることとの権衡上、本件における土地の評価についても借地権割合を20%とすることが適当である。
なお、本件における借地権の価額を被相続人が所有するI株式会社の株式の評価上、同社の純資産価額に算入するのは、被相続人が同社の同族関係者である本件の場合において価額が個人と法人を通じて100%顕現することが、課税の公平上適当と考えられるからである。」
4 本件における土地保有特定会社の判定とその合理性 (1)本件においては、不動産の賃貸借及び管理業務等を目的とする株式会社である本件会社(昭和31年設立)が評価通達上の土地保有特定会社に該当するか否か、当該会社の株式である本件株式の価額を類似業種比準方式によって評価することの適否が争われたものである。本件会社は、本件相続開始直近の平成20年3月期の取引金額23億2661万円余、総資産価額94億円余、従業員37名ということで、評価通達上の大会社に該当することとなり、その土地保有割合が70%を超えれば、本件株式の価額は、純資産価額方式によって評価されることになる。
この場合まず、本件会社のように、バブル期の節税策の手段とは関係のない昭和31年に設立され、かつ、年間取引金額23億円余、従業員37名を擁して事業会社の側面を有する会社について、機械的に土地保有特定会社と認定することの当否や土地保有割合70%の妥当性が問題となる。
この点につき、本判決は、前述したように、①土地等の保有状況が類似業種比準方式における標本会社である上場会社と比して著しく土地等に偏っていること、②土地保有割合が極めて高い評価会社については、その株式の取引価格の決定もその土地等の保有状況に着目して決定されること、③個人所有の土地等を現物出資して資産管理会社を設立し、その株式について類似業種比準方式を適用するという節税策に対処する必要があること等の理由を挙げ、かつ、土地保有割合の大会社70%以上、中会社90%以上にも合理性があるとして、本件更正の適法性を是認した。
このような判決は、前記1で述べた土地保有特定会社株式の価額について純資産価額方式によって評価することの当該通達の制定趣旨に照らし、是認し得るものと考えられる。
(2)次に、大会社が土地保有特定会社と判定されることになる土地保有割合70%基準については、当該評価会社が所有する土地等の相続税評価額が問題となる。この点につき、X1らは、本件会社の土地保有割合が68.3%になるから土地保有特定会社に該当しない旨主張し、国は、当該土地保有割合75.64%になるから土地保有特定会社に該当する旨主張していた。両者の主張の差異の主要な原因は、本件会社が本件相続開始3年前内に取得した借地権の価額につき評価通達185括弧書を適用すべきか否かと、本件会社が甲から賃貸していて無償返還届出書を提出している借地権について自用地の20%相当額を加算して評価すべきか否かにある。
これらの点につき、X1らは前者につき、旧措置法69条の4が廃止された以上、評価通達185括弧書は無効であると主張し、当該括弧書の中で当該財産の「帳簿価額」で評価することの不当性を主張し、後者につき、当該20%相当額加算の不当性を主張した。
これに対し、本判決は、前述したように、平成2年の評価通達改正の経緯を確認した上で、「評価通達185括弧書は、その文言に照らすと、飽くまで、同条(編注=相続税法22条)の定めに従った上で、取引相場のない株式について時価評価をするに際し、1株当たりの純資産価額を算定する前提として、評価会社が保有する資産の評価方法を定めたものにすぎず、相続財産としての土地等又は建物等の評価方法を定めたものではないし、同条の適用を排除する特例を定めたものでもない。したがって、旧措置法69条の4と評価通達185括弧書が、不動産の実勢価格と相続税評価額との開差を利用した節税策に対処するという抽象的な目的において一部共通する点があるとしても、これをもって、旧措置法69条の4が評価通達185括弧書の根拠法であるとみることはできない。」と判示し、X1らの主張を退けている。また、本判決は、評価通達185括弧書に定める当該財産の「帳簿価額」による評価については、「当該帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合に限定している」から、問題にはならない旨判示している。これらの判決は、前記2で述べた「旧措置法69条の4と評価通達185との関係」に照らし、首肯できるところである。
なお、無償返還届出書を提出している借地権の評価についてのX1らの主張は、本判決も否定しているが、当該主張が前記3で述べた関係通達の取扱いが適正と認められるところ、それに明らかに反するものであり、他にX1らの主張を適法と認める理由も認められない。
5 本判決の意義と問題点 本判決も判示するように、平成2年の評価通達の改正は、当時のバブル期における各財産の相続税評価額と取引価額の開差を利用した節税(租税回避)策に対し、当該相続税評価額の適正化を図ることによって封じることにあった。その中で、類似業種比準方式を利用(悪用)した節税策を封じるために、「特定の評価会社」を区分し、同評価会社株式の価額を原則として純資産価額方式で評価することとした。
その「特定の評価会社」の中では、株式保有特定会社と土地保有特定会社は代表的なものであった。その株式保有特定会社の会社区分については、その後の株式保有規制の緩和(持株会社の解禁)等もあって、前述したように、国側の敗訴事件もあったため、株式保有特定会社の判定基準(評基通189(2))が改正された。他方、土地保有特定会社については、従前の裁判例では、前述したように、当該会社区分等の合理性が容認されてきたが、本件会社が相応の事業活動を行っているため、本訴の行方が注目されてきた。しかし、本判決は、前述のように、平成2年の評価通達の改正の経緯を具さに検討し、土地保有特定会社制度の合理性を容認したが、そのこと自体意義のあることである。
その中でも、評価通達185括弧書の規定については、旧措置法69条の4の規定が廃止されたため、その存在を問題視する議論もあるところ、本判決は、旧措置法69条の4の規定との違いを明確にし、その必要性は現在でも変らないとしたことに意義がある。ただ、最近の事例においては、今までにない超低金利時代を反映し、会社が借入金によって多額な土地等を取得し、当該取得3年後に当該会社の株式を贈与等することによって、贈与税等を回避する手法が持てはやされているので、「3年しばり」を「5年しばり」に延長する必要性等も指摘されている。
(注1)本判決においても認定されているところであるが、主な規制策として、昭和63年12月に、旧措置法69条の4が制定され、被相続人が相続開始前3年以内に取得した土地等及び家屋等について、取得価額で相続税を課税することとされ、平成元年3月に、いわゆる負担付贈与通達が発出され、負担付贈与等によって取得した土地等及び家屋等の「時価」を「通常の取引価額」で評価して贈与税を課税することとされ、平成2年8月に、評価通達の改正によって評価通達189(3)等が制定され、土地保有特定会社の株式等について類似業種比準方式の適用を制限する等の各措置がとられた(詳細については、品川芳宣・緑川正博「相続税財産評価の理論と実践」(ぎょうせい 平成17年)62頁以下参照)。
(注2)旧措置法69条の4廃止の起因は、大阪地裁平成7年10月17日判決(行裁例集46巻10・11号942頁)が、被相続人が約22億円で取得した土地が相続開始時に約9億円に値下がりしたものの約12億円の相続税が課税された事案につき、当該規定は合憲であるが、当該規定を適用して当該土地の時価を上回る相続税額を課す当該課税処分は違憲状態になる旨判示したことにある(上告審の大阪高裁平成10年4月14日判決・訟務月報45巻6号1112頁、最高裁平成11年6月11日第二小法廷判決・税資243号270頁も同旨。品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第三版」(大蔵財務協会 平成26年)906頁等参照。)
(注3)同通達改正の起因は、東京地裁平成24年3月2日判決(平成21年(行ウ)第28号)及び東京高裁平成25年2月28日判決(平成24年(行コ)第124号)が、株式保有割合25%基準に基づく課税処分を違法としたことにある(詳細は、前出(注2)799頁参照)。
(注4)同改正全体の趣旨については、品川芳宣・緑川正博「特別対談 株式節税規制通達のポイントを衝く」別冊税理 平成2年11月臨時増刊号(33巻15号)1頁等参照。
(注5)前出(注4)18頁等参照。
(注6)谷口裕之「財産評価基本通達逐条解説 平成25年版」(大蔵財務協会)722頁等参照。
(注7)前出(注1)216頁等参照。
(注8)東京地裁平成10年5月29日判決(判例タイムズ1002号144頁)等参照。
(注9)国税庁「昭和63年 改正税法のすべて」463頁参照。
(注10)品川芳宣「措置法69条の4の廃止と評価通達の関係」税理39巻5号18頁、品川芳宣他「改正相続税財産評価基本通達の実務検討」税経通信45巻12号30頁等参照。
(注11)前出(注10)「措置法69条の4の廃止と評価通達の改正」20頁等参照。
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