解説記事2016年04月25日 【解説】 国別報告事項に関する議論の動向(2016年4月25日号・№640)
解 説
国別報告事項に関する議論の動向
一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 幕内 浩
経団連は通常、年度の税制改正に関する提言を9月に取りまとめ、公表している。しかし、OECDのBEPS最終報告書の実施フェーズは国内外ですでに始まっており、秋を待っていてはタイミングを逸する恐れがある。そこでこの度、国際課税に焦点を絞った提言を取りまとめた。全文は経団連のHPに掲載している(「BEPSプロジェクトを踏まえた今後の国際課税に関する提言」(4.19))。以下ではそのうち国別報告事項に関する主張の概要を紹介する。なお、意見に係る部分には筆者の個人的な見解が含まれている。
国別報告事項は、多国籍企業グループの活動概況を国ごとに、定量的に記載するものであり、関連する課税当局に提供される。最近、日本を含め、各国の課税当局が国別報告事項の国内法制化を進める中で、いくつか企業に懸念が生じている。
1 適用初年度の取扱い 第1は、適用初年度の問題である。国別報告事項の提出方法は条約方式が基本であり、多国籍企業グループの最終親会社が自国の課税当局に提出した国別報告事項は、租税条約を通じて自動的な情報交換により関係する課税当局に提供される。
ただし、BEPS最終報告書では、条約方式が満足に機能しない場合、第2方式として子会社方式(各国の課税当局が多国籍企業グループの現地子会社を通じて国別報告事項を入手する方式)が適用されるとされている。例えば、最終報告書の勧告の通り、2016年1月1日以降開始事業年度分について国別報告事項の提出を義務化している国の中には、日本のように2016年4月1日以降開始事業年度分では遅く、条約方式が満足に機能していないと考える国があるかもしれない。そのような判断がなされれば、例えば日本の12月決算法人は、国内では義務化されていない2016年1月1日開始事業年度分の国別報告事項について、子会社方式が発動される恐れがある。
しかし、このような施行時期の若干のずれは他国でも生じている。また、最終報告書でも、国内立法化に時間を要する法域があるかもしれない旨の認識が示されている。そこで提言では、時間差が常識的な範囲に留まっている場合は、企業の進出先国が子会社方式を適用しないよう、取り扱いを徹底すべきであり、端的には、最終親会社の所在地国税法が定める施行時期を尊重する必要があると主張している。
なお、この問題については、同様の立場にある米国の経済界の主張が興味深い。米国では財務省及び内国歳入庁(IRS)が国別報告事項に関する規則案を昨年末に公表したが、現時点では最終化されていない。このため、米国における国別報告事項の施行は、最速で2016年7月1日以降開始事業年度分から、すなわち多くの米国企業にとっては実質的に2017年1月1日以降開始事業年度分からではないかとの観測がある。こうした中、USCIB(米国国際ビジネス評議会)が本年3月、同規則案に対する書簡をIRSに送っている。差出人であるUSCIBのビル・サンプル税制委員長(マイクロソフト社コーポレート・ヴァイス・プレジデント)はBIAC(OECD経済産業諮問委員会)の税制財政委員会副委員長でもあり、国際税務の世界における民間人のキーパーソンの1人である。
書簡の中で、USCIBは米国における国別報告事項の施行の遅れに起因する諸外国での子会社方式の発動に対し、機密情報漏洩等の観点から強い懸念を表明するとともに、解決の方策として6つのオプションを米国政府に提案している(図表参照)。
【図表】USCIB提案
USCIBはこの①~⑥の提案につき特段の優先順位を設けていないが、適用初年度における子会社方式の発動を牽制する①と②は経団連の見解と近い。一方、③は米国の経済界が様々な場所で発信している見解であり、自主的提出(voluntary submission)と呼ばれる。これは、米国における施行時期の遅れを理由に諸外国で子会社方式が発動されるぐらいならば、施行前であっても自主的に国別報告事項をIRSに提出し、条約方式による交換とすることで機密情報の保護を受けようというものである。この方式については、施行前に作成する余力のある企業とそうでない企業の差があること、施行前に作成したものを有効な文書として課税当局が受け取るのかという問題があること、他国の課税当局から「やればできるではないか」と主張され、却って子会社方式を助長する恐れがあることなどから、米国以外も含め、普遍的なルールとして国際的に許容されるかどうか疑問なしとしないが、適用初年度を混乱なく乗り切らなければならないという危機意識には共感できる。なお、日本は、条約相手国が体系的不履行の状況にある場合を除き、適用初年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日までの間に開始する最初親会計年度)には子会社方式を発動しない旨の経過措置を講じている(措令附則23)。
2 情報交換に関する透明性 第2は、情報交換に関する透明性である。今後、国別報告事項は、多国間又は二国間の権限ある当局間の合意に基づき、最初のものは事業年度終了後18ヵ月以内、2回目以降は15ヵ月以内に他国の課税当局と交換されることになる。経団連の提言では、国別報告事項の交換は受領国におけるリスク評価の開始を意味するため、実際にいつ、どの国に交換されたのか、納税者が把握できるツールの提供をOECDや各国政府に求めている。
この問題についてはUSCIBも書簡において経団連と同様の提案を行っている。具体的には、「IRSは他国への国別報告事項の送信につき、米国企業に自動的に通知する手続きを導入すべきである。これは情報の誤った使用に関連する。企業がある国に情報が提供されたか否かを知らされなければ、情報が誤って使用されたかどうかを正確に検証することはできない」としている。
3 情報請求に関するルール 第3は情報請求に関するルールについてである。国別報告事項についてはテンプレートが確定している以上、それを超えて、各国の課税当局が構成会社等のデータを要求することはなく、また、条約方式が基本であることを踏まえれば、交換された国別報告事項の記載内容に関し明確化が必要な場合は、受領国の課税当局は多国籍企業グループの最終親会社や子会社に対して直接照会するのではなく、条約に基づき相手国課税当局に照会することになると理解されている。
BEPS最終報告書では、国別報告事項を基礎とした更なる質問検査が妨げられるものではない旨の記載があるが、経団連の提言では、国別報告事項自体に関する情報請求のルールについては明確化の余地があると指摘している。
4 国別報告事項の解釈 第4は、国別報告事項の解釈についてである。国別報告事項には、以下のような留意点がある。
・内部取引消去を行わないため、個別データの合算額と連結財務諸表の数値が一致しない。
・構成会社等の範囲と移転価格税制における国外関連者の範囲が一致しない。
・配当免税等の税会不一致により、法定税率と会計上の税負担割合が一致しない。
・税効果会計が考慮されない。
・企業がコングロマリットの場合、国別の数値は複数の事業内容の合算額となる。
こうした中、経団連の提言では、どのような状況において企業がリスクあり(BEPSの恐れあり)と判定されるのか、典型例に基づき、各国の課税当局はできるだけ認識を共有すべきと主張している。また、実際のリスク評価に際しては、単年度の、一過性の欠損が異常値と見なされることのないよう、複数年度に渡り国別報告事項を検証するよう課税当局に求めている。
なお、直近事業年度の会計データに基づき、すでに国別報告事項をトライアルで作成している企業からは、事業分野が他方面に渡るため、国別の数値が何を意味するかについて、課税当局としても俄かには読み取りにくいのではないか、やはり国別報告事項はハイレベルなリスク評価のための資料ということではないかとのコメントが寄せられている。
この場合、関連する課税当局から不必要な誤解を受けぬよう、国別報告事項のtable3の追加情報欄で数値情報の補足説明をするのも1つの手段と考えられるが、3月にOECDが公表した「国別報告事項XMLスキーマ:課税当局及び納税者向けのユーザ・ガイド」では、追加情報欄に関し、「“他の情報”の要素では、自由なテキスト・フォーマットにより追加情報を入力できる。入力毎に4,000文字が許容される。さらにスペースが必要な場合は、“追加情報”の要素は要求に基づき繰り返すことができるかもしれない」とされており、文字制限があるようにもないようにも読める。今後、課税当局による正式な解説が期待される。
なお、USCIBも、書簡において追加情報の有用性を指摘しており、国別報告事項の正確な理解を促すため、IRSは必ず数値情報とセットで追加情報を他国課税当局に送信すべきと主張している。
経団連の提言では、上記1~4で掲げた課題に対処するため、OECD及び関連する機関に対し、国別報告事項の適切な利用を確保するためのガイダンスを策定し、各国の課税当局及び納税者に提供すべきと主張している。また、日本の課税当局に対しては、「移転価格文書化については、他国の制度と比べ用語の意義や記載方法について過度に硬直的とならないよう十分、留意しつつ、早期に法令解釈通達、事務運営要領、参考事例集において国別報告事項等に関する情報を提供する」ことを求めている。
最後に、経団連の提言では、国別報告事項に関する欧州委員会の動きに触れている。欧州委員会は4月12日、BEPS最終報告書の実施とは別トラックとの整理のもと、国別報告事項と内容が類似する「国別報告書」の一般公開を提案したが、内外の経済界からは懸念する意見が相次いでいる。もちろん、パナマ文書の問題を受け、税務情報の透明性を向上する必要性が高まっていることは広く認識されている。ただし、国別データは企業の機密情報を含むものであり、BEPS最終報告書でも、一般公開がなされぬよう、課税当局はあらゆる合理的な手段を講ずるべきとされている。また、国別報告事項の条約方式による交換は、各国において国別報告事項の守秘が担保されていることが前提となっている。経団連の提言では、このような国際合意は必ず遵守すべきと主張している。
OECDは本年2月、包摂的枠組に合意した。この枠組によれば、今後、関心のあるすべての国・地域はOECD租税委員会に参加し、OECD/G20諸国と平等の立場でBEPS関連のモニタリングに関与可能となる一方、国別報告事項を含む4つのミニマム・スタンダードをはじめとして、BEPSパッケージの実施にコミットすることになる。実効性のある取り組みとなることが期待される。
経団連は提言をすでにOECD、EU、わが国政府等に提出している。また、上記、包摂的枠組の初会合は来る6月、京都で開催される。今後も関係方面との対話を継続していく予定としている。
国別報告事項に関する議論の動向
一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 幕内 浩
経団連は通常、年度の税制改正に関する提言を9月に取りまとめ、公表している。しかし、OECDのBEPS最終報告書の実施フェーズは国内外ですでに始まっており、秋を待っていてはタイミングを逸する恐れがある。そこでこの度、国際課税に焦点を絞った提言を取りまとめた。全文は経団連のHPに掲載している(「BEPSプロジェクトを踏まえた今後の国際課税に関する提言」(4.19))。以下ではそのうち国別報告事項に関する主張の概要を紹介する。なお、意見に係る部分には筆者の個人的な見解が含まれている。
国別報告事項は、多国籍企業グループの活動概況を国ごとに、定量的に記載するものであり、関連する課税当局に提供される。最近、日本を含め、各国の課税当局が国別報告事項の国内法制化を進める中で、いくつか企業に懸念が生じている。
1 適用初年度の取扱い 第1は、適用初年度の問題である。国別報告事項の提出方法は条約方式が基本であり、多国籍企業グループの最終親会社が自国の課税当局に提出した国別報告事項は、租税条約を通じて自動的な情報交換により関係する課税当局に提供される。
ただし、BEPS最終報告書では、条約方式が満足に機能しない場合、第2方式として子会社方式(各国の課税当局が多国籍企業グループの現地子会社を通じて国別報告事項を入手する方式)が適用されるとされている。例えば、最終報告書の勧告の通り、2016年1月1日以降開始事業年度分について国別報告事項の提出を義務化している国の中には、日本のように2016年4月1日以降開始事業年度分では遅く、条約方式が満足に機能していないと考える国があるかもしれない。そのような判断がなされれば、例えば日本の12月決算法人は、国内では義務化されていない2016年1月1日開始事業年度分の国別報告事項について、子会社方式が発動される恐れがある。
しかし、このような施行時期の若干のずれは他国でも生じている。また、最終報告書でも、国内立法化に時間を要する法域があるかもしれない旨の認識が示されている。そこで提言では、時間差が常識的な範囲に留まっている場合は、企業の進出先国が子会社方式を適用しないよう、取り扱いを徹底すべきであり、端的には、最終親会社の所在地国税法が定める施行時期を尊重する必要があると主張している。
なお、この問題については、同様の立場にある米国の経済界の主張が興味深い。米国では財務省及び内国歳入庁(IRS)が国別報告事項に関する規則案を昨年末に公表したが、現時点では最終化されていない。このため、米国における国別報告事項の施行は、最速で2016年7月1日以降開始事業年度分から、すなわち多くの米国企業にとっては実質的に2017年1月1日以降開始事業年度分からではないかとの観測がある。こうした中、USCIB(米国国際ビジネス評議会)が本年3月、同規則案に対する書簡をIRSに送っている。差出人であるUSCIBのビル・サンプル税制委員長(マイクロソフト社コーポレート・ヴァイス・プレジデント)はBIAC(OECD経済産業諮問委員会)の税制財政委員会副委員長でもあり、国際税務の世界における民間人のキーパーソンの1人である。
書簡の中で、USCIBは米国における国別報告事項の施行の遅れに起因する諸外国での子会社方式の発動に対し、機密情報漏洩等の観点から強い懸念を表明するとともに、解決の方策として6つのオプションを米国政府に提案している(図表参照)。
【図表】USCIB提案
| ① 2017年1月1日前開始事業年度に関する国別報告事項には子会社方式を適用しないよう諸外 国の政府と協同する ② 2017年1月1日前開始事業年度に関する国別報告事項には子会社方式を適用しないよう OECDに補足勧告を求める ③ 米国企業が2016年1月1日以降開始事業年度分の国別報告事項につき米国政府への提出を選 択できるよう規則案を修正する ④ 規則案を2016年1月1日以降開始事業年度分から有効とするよう修正する ⑤ 上記が不可能な場合、第3国の「代理親法人」による提出が情報交換された他の全ての国にお いて米国企業による有効な国別報告事項の提出と受容されるよう、又、米国での提出が可能となっ た場合は米国での提出が受容されるよう、OECD及び関連政府と協同する ⑥ 米国企業が2016年分の国別報告事項をIRSに提出し、かつ、その2016年分の国別報告事 項について情報交換を繰り延べるようOECD及び他国と協同する |
USCIBはこの①~⑥の提案につき特段の優先順位を設けていないが、適用初年度における子会社方式の発動を牽制する①と②は経団連の見解と近い。一方、③は米国の経済界が様々な場所で発信している見解であり、自主的提出(voluntary submission)と呼ばれる。これは、米国における施行時期の遅れを理由に諸外国で子会社方式が発動されるぐらいならば、施行前であっても自主的に国別報告事項をIRSに提出し、条約方式による交換とすることで機密情報の保護を受けようというものである。この方式については、施行前に作成する余力のある企業とそうでない企業の差があること、施行前に作成したものを有効な文書として課税当局が受け取るのかという問題があること、他国の課税当局から「やればできるではないか」と主張され、却って子会社方式を助長する恐れがあることなどから、米国以外も含め、普遍的なルールとして国際的に許容されるかどうか疑問なしとしないが、適用初年度を混乱なく乗り切らなければならないという危機意識には共感できる。なお、日本は、条約相手国が体系的不履行の状況にある場合を除き、適用初年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日までの間に開始する最初親会計年度)には子会社方式を発動しない旨の経過措置を講じている(措令附則23)。
2 情報交換に関する透明性 第2は、情報交換に関する透明性である。今後、国別報告事項は、多国間又は二国間の権限ある当局間の合意に基づき、最初のものは事業年度終了後18ヵ月以内、2回目以降は15ヵ月以内に他国の課税当局と交換されることになる。経団連の提言では、国別報告事項の交換は受領国におけるリスク評価の開始を意味するため、実際にいつ、どの国に交換されたのか、納税者が把握できるツールの提供をOECDや各国政府に求めている。
この問題についてはUSCIBも書簡において経団連と同様の提案を行っている。具体的には、「IRSは他国への国別報告事項の送信につき、米国企業に自動的に通知する手続きを導入すべきである。これは情報の誤った使用に関連する。企業がある国に情報が提供されたか否かを知らされなければ、情報が誤って使用されたかどうかを正確に検証することはできない」としている。
3 情報請求に関するルール 第3は情報請求に関するルールについてである。国別報告事項についてはテンプレートが確定している以上、それを超えて、各国の課税当局が構成会社等のデータを要求することはなく、また、条約方式が基本であることを踏まえれば、交換された国別報告事項の記載内容に関し明確化が必要な場合は、受領国の課税当局は多国籍企業グループの最終親会社や子会社に対して直接照会するのではなく、条約に基づき相手国課税当局に照会することになると理解されている。
BEPS最終報告書では、国別報告事項を基礎とした更なる質問検査が妨げられるものではない旨の記載があるが、経団連の提言では、国別報告事項自体に関する情報請求のルールについては明確化の余地があると指摘している。
4 国別報告事項の解釈 第4は、国別報告事項の解釈についてである。国別報告事項には、以下のような留意点がある。
・内部取引消去を行わないため、個別データの合算額と連結財務諸表の数値が一致しない。
・構成会社等の範囲と移転価格税制における国外関連者の範囲が一致しない。
・配当免税等の税会不一致により、法定税率と会計上の税負担割合が一致しない。
・税効果会計が考慮されない。
・企業がコングロマリットの場合、国別の数値は複数の事業内容の合算額となる。
こうした中、経団連の提言では、どのような状況において企業がリスクあり(BEPSの恐れあり)と判定されるのか、典型例に基づき、各国の課税当局はできるだけ認識を共有すべきと主張している。また、実際のリスク評価に際しては、単年度の、一過性の欠損が異常値と見なされることのないよう、複数年度に渡り国別報告事項を検証するよう課税当局に求めている。
なお、直近事業年度の会計データに基づき、すでに国別報告事項をトライアルで作成している企業からは、事業分野が他方面に渡るため、国別の数値が何を意味するかについて、課税当局としても俄かには読み取りにくいのではないか、やはり国別報告事項はハイレベルなリスク評価のための資料ということではないかとのコメントが寄せられている。
この場合、関連する課税当局から不必要な誤解を受けぬよう、国別報告事項のtable3の追加情報欄で数値情報の補足説明をするのも1つの手段と考えられるが、3月にOECDが公表した「国別報告事項XMLスキーマ:課税当局及び納税者向けのユーザ・ガイド」では、追加情報欄に関し、「“他の情報”の要素では、自由なテキスト・フォーマットにより追加情報を入力できる。入力毎に4,000文字が許容される。さらにスペースが必要な場合は、“追加情報”の要素は要求に基づき繰り返すことができるかもしれない」とされており、文字制限があるようにもないようにも読める。今後、課税当局による正式な解説が期待される。
なお、USCIBも、書簡において追加情報の有用性を指摘しており、国別報告事項の正確な理解を促すため、IRSは必ず数値情報とセットで追加情報を他国課税当局に送信すべきと主張している。
経団連の提言では、上記1~4で掲げた課題に対処するため、OECD及び関連する機関に対し、国別報告事項の適切な利用を確保するためのガイダンスを策定し、各国の課税当局及び納税者に提供すべきと主張している。また、日本の課税当局に対しては、「移転価格文書化については、他国の制度と比べ用語の意義や記載方法について過度に硬直的とならないよう十分、留意しつつ、早期に法令解釈通達、事務運営要領、参考事例集において国別報告事項等に関する情報を提供する」ことを求めている。
最後に、経団連の提言では、国別報告事項に関する欧州委員会の動きに触れている。欧州委員会は4月12日、BEPS最終報告書の実施とは別トラックとの整理のもと、国別報告事項と内容が類似する「国別報告書」の一般公開を提案したが、内外の経済界からは懸念する意見が相次いでいる。もちろん、パナマ文書の問題を受け、税務情報の透明性を向上する必要性が高まっていることは広く認識されている。ただし、国別データは企業の機密情報を含むものであり、BEPS最終報告書でも、一般公開がなされぬよう、課税当局はあらゆる合理的な手段を講ずるべきとされている。また、国別報告事項の条約方式による交換は、各国において国別報告事項の守秘が担保されていることが前提となっている。経団連の提言では、このような国際合意は必ず遵守すべきと主張している。
OECDは本年2月、包摂的枠組に合意した。この枠組によれば、今後、関心のあるすべての国・地域はOECD租税委員会に参加し、OECD/G20諸国と平等の立場でBEPS関連のモニタリングに関与可能となる一方、国別報告事項を含む4つのミニマム・スタンダードをはじめとして、BEPSパッケージの実施にコミットすることになる。実効性のある取り組みとなることが期待される。
経団連は提言をすでにOECD、EU、わが国政府等に提出している。また、上記、包摂的枠組の初会合は来る6月、京都で開催される。今後も関係方面との対話を継続していく予定としている。
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