カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

民事2026年08月26日 成年後見制度の改正 執筆者:矢吹保博

 2026年6月17日に、民法等の一部を改正する法律が成立しました。これは従前の成年後見制度を改正するもので、遅くとも2028年12月までに施行される予定です。高齢化の進展、単独世帯の増加など家族の在り方の変化により、成年後見制度・遺言制度についてのニーズが増加・多様化していることや、現行の成年後見制度では自己決定権が必要以上に制限されることになり、本人のニーズに合った保護が受けられないケースが多いということなどが背景にあります。
 本稿では改正の概要を説明します。

1 補助への一元化

現行の制度では、後見・保佐・補助の3つの制度が設けられていますが、改正法では、後見・保佐が廃止され、本人に必要な事項について同意権・代理権を付与する補助の制度に一元化されます。要件は①事理弁識能力が不十分であること、②本人の同意、③制度利用の必要性です。
また、現行の制度のように、能力の程度で類型が画一的に決まる仕組みが廃止され、利用動機に対応した権限だけを付与するという制度に変わります。
ただし、現行の後見類型に相当するような場合、すなわち事理弁識能力を欠く常況にあると認定される場合は、法定の重要な財産行為をいずれも取消可能とする特定補助という制度を選択することができます。なお、利用に際しては医師二人以上の意見聴取が要件です。

2 制度利用の終了

現行の制度では、ひとたび成年後見人等が付されれば、事理弁識能力が回復するか死亡するまで制度を終了させることはできませんが、改正法では、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権で利用を終了できるようになりました。
これにより、遺産分割手続きのためだけに補助制度を利用するということができるなど、使い勝手の良い制度に変わるため、利用件数は大幅に増加するのではないかと思います。

3 本人の意向を重視

現行の制度でも成年後見人等の選任時の考慮要素として「本人の意見」が規定されていますが、改正法では、「本人の意見」が冒頭に置かれ、これを重視することが明確となりました。さらに、本人の意向把握義務が明確化されています。
また、解任事由には「本人の利益のために特に必要があるとき」を追加し、不正行為がなくても面談を行わない等で適切な保護がされない場合に交代が可能となりました。
このほか、報酬については、事務の内容等が考慮要素であることが明確化され、認容事案の実績公表も予定されています。

4 死後の事務

現行の制度では、本人の死後の事務について、成年後見人のみ認められていますが、改正法では補助人にも、本人死亡後の火葬・埋葬契約の締結や、死亡当時の権限の範囲内での相続財産保存に必要な行為ができるようになりました。これにより、例えば施設利用料の支払いなども行うことができます。

5 意思表示受領の特別代理人

意思表示の相手方が事理弁識能力を欠いており、当該意思表示を受領することができない場合に、表意者の請求により家庭裁判所が特別代理人を選任する制度も新設されました。
これにより、相手方が受領能力を欠くケースであっても、解除や催告などの意思表示を行うことができるようになります。

6 経過措置

現に後見・保佐を利用中の場合、原則として現行法の内容で継続できますが、解任事由と意向尊重義務は改正法が適用されます。
また、新制度への移行は、補助の申立てによって行われます。この場合、従前の後見・保佐開始の審判は取り消されることになります。さらに、終了を望む場合については、取消しの申立てが可能になります。
施行後は既存利用者やその親族から終了・移行の相談が多くなるのではないかと思われます。

7 最後に

これまで、成年後見人を付すべきケースであるにもかかわらず、手間や費用(後見人に対する報酬)などの観点から親族がこれを断念し、その結果、本人にとって不利益となっていたようなケースが散見されましたが、改正法施行後は、本人の保護に向けて新しい制度の積極的活用が期待されます。

(2026年8月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

人気記事

人気商品

執筆者

矢吹 保博やぶき やすひろ

弁護士

略歴・経歴

法律事務所あさひパートナーズ所属

執筆者の記事

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索