解説記事2016年04月25日 【税務マエストロ】 リース会計基準の公表に伴う消費税の取扱いについて(2)(2016年4月25日号・№640)
税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座
今週のマエストロ&テーマ
リース会計基準の公表に伴う消費税の取扱いについて(2)
#162 熊王征秀(税理士)
略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授
次回のテーマ
#163 外国法人課税とAOAの適用開始④
PwC税理士法人
品川克己 税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。
マエストロの解説 今月は、リース取引に係る残存リース料について、リース会計基準適用前と適用後に区分して内容を整理するとともに、転リース取引の取扱いを確認する。
また、平成29年4月からの10%税率への消費税の引き上げを前提に、平成26年1月に国税庁消費税室から公表された「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」について解説する。
1 残存リース料の取扱い 所有権移転外ファイナンスリース取引について、契約期間終了前に次に掲げる事由に該当し、リース契約を解約した場合には、賃借人が賃貸人に支払うこととなる残存リース料は、リース契約の締結日が平成20年4月1日以後か否かにより、次頁表1のように取り扱われる。
○平成20年4月1日以後に契約を締結した所有権移転外ファイナンスリースについて、一括控除を選択した場合の取扱い
(1)賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき 中途解約が禁止されている所有権移転外ファイナンスリース契約であっても、賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったときは、賃貸人はリース契約を解除することができる。この場合において、賃借人が賃貸人に支払う残存リース料は、単なるリース債務の返済にすぎないため、消費税法上、課税の対象外として取り扱うことになる。
賃借人は、リース物件の引き渡しを受けた時に、リース料の総額を課税仕入高として認識しているわけであるから、残存リース料を支払ったとしても、当然に残存リース料の支払は課税仕入れとはならない。
また、賃借人が賃貸人にリース物件を返還し、残存リース料の一部又は全部が減額された場合には、賃借人は、リース債務の支払に代えてリース物件を賃貸人に譲渡したものとして取り扱われる。したがって、賃借人は、代物弁済による資産の譲渡として、その減額された金額を課税売上高に計上しなければならない(消基通9-3-6の3、消法4①・2①八、消令45②一)。
【設例】
(2)リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったときは、賃借人は賃貸人に残存リース料を支払い、リース契約が終了する。この場合における賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、(1)と同様に、リース債務の返済にすぎないため、課税の対象外となる。
また、賃貸人にリース物件の滅失等を起因として保険金が支払われることにより残存リース料の一部又は全部が減額された場合には、事実上、リース料の値引きがあったことになるので、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として処理することとされている。
【設例】
(3)リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき解約するとき 賃貸人と賃借人との合意に基づきリース契約を解約するときは、賃借人は賃貸人に残存リース料を支払うこととなる。この場合における賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、(1)と同様にリース債務の返済にすぎないため、課税の対象外となる。
また、賃貸人と賃借人の合意に基づき、リース物件の陳腐化のため、リース物件を廃棄するとともに、残存リース料の一部又は全部が減額された場合には、(2)と同様に、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として処理することとされている。
○平成20年3月31日以前に契約を締結した所有権移転外ファイナンスリースの取扱い 平成20年3月31日以前に契約した所有権移転外ファイナンスリース取引は、売買ではなく、資産の貸付けとして取り扱うことになる。この所有権移転外ファイナンスリース取引について、契約期間満了日前に契約を解約すると規定損害金が発生する場合があるが、この規定損害金の取扱いは、その実質からみて次のように取り扱うこととされている。
(1)賃借人の倒産等により、賃貸人がリース契約に基づき契約を解約した場合 賃貸人が賃借人から受け取る損害金は、逸失利益の補償金であり、対価性のないものとして消費税の課税の対象外となる。したがって、賃借人は損害金の支払いを課税仕入れとすることはできない。
(2)リース物件の滅失等により、リース契約の終了事由に該当する場合
(1)と同様に、賃貸人が賃借人から受け取る損害金は、課税の対象外となり、賃借人は損害金の支払いを課税仕入れとすることはできない。
(3)リース物件の借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意により解約する場合 賃貸人が賃借人から損害金を収受するということは、言うなれば、中途解約によりリース期間の短縮(変更)をしたことに伴う各月の既払リース料の改定に賃借人が合意をし、損害金を支払うということである。したがって、賃貸人が収受する損害金は、リース料の増額修正に基づく精算金としての性格を有するものと認められる。
結果、賃貸人が賃借人から受け取る損害金は課税売上高となり、賃借人は支払った損害金を課税仕入高として処理することができる(消基通5-2-5)。
※参照文献 国税庁HP/質疑応答事例「資産の貸付け」1 平成20年3月31日以前に契約した所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る規定損害金等の取扱い
2 転リースの取扱い
(1)転リース取引とは? 転リース取引とは、リース物件の所有者(元受会社)から当該物件のリースを受けた会社(転リース会社)が、元受会社とのリース取引と概ね同一の条件で、さらに同一物件を第三者(エンドユーザー)にリースする取引をいう(下図参照)。
(2)リース会計基準の取扱い リース会計基準では、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方が所有権移転外ファイナンスリース取引に該当する場合には、エンドユーザーからの受取リース料総額と元受会社に対する支払リース料総額の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース料差益等の名称で損益計算書に計上することとしている(リース適用指針第47項)。
(3)法人税法上の取扱い 法人税法では、転リース会社において、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方が法人税法上のリース取引に該当する場合には、元受会社との取引はリース物件の購入とし、また、エンドユーザーとの取引はリース物件の売却として所得計算を行うこととされている。
ただし、法人税法に規定する延払基準の方法により計算した所得金額が、リース会計基準の処理によって計算される転リース差益の金額と差異がないと認められる場合には、リース会計基準の処理を延払基準の方法により計算したものとして取り扱うことが認められているようである。
(4)消費税法上の取扱い 消費税法では、会計処理や法人税における処理にかかわらず、受取リース料の総額を課税売上高に計上するとともに、支払リース料の総額を課税仕入高に計上することになる。
したがって、リース会計基準に基づいて計上したリース手数料だけを課税売上高として処理することはできないことに留意する必要がある。
なお、リース会計基準に基づく手数料処理について、法人税法上延払基準の適用を受けるような場合には、消費税法においても、長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例(延払基準)を適用することが認められている(消法16)。
【設例】
3 所有権移転外ファイナンス・リー取引における分割控除 平成26年1月に国税庁消費税室から「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」が公表された。平成29年4月からの税率の引き上げを前提に、このQ&Aの問4(リース資産の分割控除)について解説する。
なお、右記の問4は、原文を次のように書き換えて掲載している。
【答】
所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡として取り扱われますので、消費税率は、当該リース資産の譲渡があった時の税率が適用されます。
したがって、平成29年3月31日までに引渡しを受けたリース資産に係る分割控除については、旧消費税法の規定(旧税率(8%))に基づき行うこととなります。
【解説】 前月号で確認したように、リース会計基準の公表により、所有権移転外ファイナンスリースは例外的に認められていた賃貸借処理が廃止され、原則としてすべて売買処理に統一することとされた。ただし、リース会計基準では、少額リースや短期リースについてはその重要性を考慮して賃借料処理を認めることとしている。
また、リース会計基準が強制されない中小企業については、従来どおり、支払ったリース料を賃借料として計上し、損金処理することが認められている。
法人税の世界では、売買とされる所有権移転外ファイナンスリース取引について、賃借人が支払うべきリース料の額を賃借料として損金経理した場合には、そのリース料の金額は、償却費として損金経理をした金額に含めるものとしている(法令131の2③)。
したがって、法人税法上は、たとえ売買とされるリース取引であっても、リース物件を資産計上して減価償却する必要はなく、従来と同様に、支払うべきリース料の額を賃借料として処理すればよいこととなる。
消費税については、法人税の改正に引きずられるような形で基本通達が改正され、賃借人の処理に係わらず、リース資産の引き渡しを受けた日が課税仕入れを行った日となる旨が明らかにされた(消基通11-3-2(注))。
しかし、その後に国税庁から公表された質疑応答事例により、所有権移転外ファイナンスリースについては上図のように取り扱いが変更されている。
つまり、所有権移転外ファイナンスリースについては、リース物件の引き渡しを受けた日の属する課税期間でリース料の総額を一括控除することを原則としつつ、賃借料処理をした場合には、リース料の支払の都度、分割控除を選択することも認めるということになったのである。
上記のように、所有権移転外ファイナンスリースについては、賃借人の処理に係わらず、リース資産の引き渡しを受けた日が課税仕入れを行った日となる。したがって、一部施行日(平成29年4月1日)前に引き渡しを受けたリース物件については、たとえ28年指定日(平成28年10月1日)以後に契約を締結した場合であっても、会計処理に係わらず、原則として旧税率を適用して一括控除することになるのである。
なお、一部施行日前に引き渡しを受けたリース物件について、一部施行日以後に支払うリース料を分割控除する場合にも旧税率が適用されることになるのであるが、これは、経過措置が適用された結果、旧税率の適用になるのではなく、一部施行日前にリース物件の引き渡しを受けたことにより、当然に旧税率が適用されるということである。
また、売買処理が義務付けられるのは、平成20年4月1日以後に契約を締結した所有権移転外ファイナンスリースに限られているので、平成20年3月31日までに契約を締結したものについては、下記の要件を満たす限り、資産の貸付けに係る経過措置の適用を受けることができることになるのである。
記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
今週のマエストロ&テーマ
リース会計基準の公表に伴う消費税の取扱いについて(2)
#162 熊王征秀(税理士)
略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
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大原大学院大学准教授
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#163 外国法人課税とAOAの適用開始④
PwC税理士法人
品川克己 税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。
マエストロの解説 今月は、リース取引に係る残存リース料について、リース会計基準適用前と適用後に区分して内容を整理するとともに、転リース取引の取扱いを確認する。
また、平成29年4月からの10%税率への消費税の引き上げを前提に、平成26年1月に国税庁消費税室から公表された「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」について解説する。
1 残存リース料の取扱い 所有権移転外ファイナンスリース取引について、契約期間終了前に次に掲げる事由に該当し、リース契約を解約した場合には、賃借人が賃貸人に支払うこととなる残存リース料は、リース契約の締結日が平成20年4月1日以後か否かにより、次頁表1のように取り扱われる。

○平成20年4月1日以後に契約を締結した所有権移転外ファイナンスリースについて、一括控除を選択した場合の取扱い
(1)賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったとき 中途解約が禁止されている所有権移転外ファイナンスリース契約であっても、賃借人の倒産、リース料の支払遅延等の契約違反があったときは、賃貸人はリース契約を解除することができる。この場合において、賃借人が賃貸人に支払う残存リース料は、単なるリース債務の返済にすぎないため、消費税法上、課税の対象外として取り扱うことになる。
賃借人は、リース物件の引き渡しを受けた時に、リース料の総額を課税仕入高として認識しているわけであるから、残存リース料を支払ったとしても、当然に残存リース料の支払は課税仕入れとはならない。
また、賃借人が賃貸人にリース物件を返還し、残存リース料の一部又は全部が減額された場合には、賃借人は、リース債務の支払に代えてリース物件を賃貸人に譲渡したものとして取り扱われる。したがって、賃借人は、代物弁済による資産の譲渡として、その減額された金額を課税売上高に計上しなければならない(消基通9-3-6の3、消法4①・2①八、消令45②一)。
【設例】
![]() (注)代物弁済により、帳簿価額21,600円のリース資産を10,800円で売却したものであるから、会計上はリース資産売却損10,800円が計上されることになる。また、リース資産の売却価額である10,800円が、消費税における課税売上高となる。 <ケース2>賃借料処理する場合 リース資産につき、支払リース料を賃借料として損金経理していたが、リース開始後3年を経過した時点でリース契約を解約し、残存リース料21,600円のうち、10,800円を現金にて返済するとともにリース物件を賃貸人に返還した場合 ![]() (注)リース資産につき、支払リース料を賃借料として損金経理した場合には、リース資産の売却損は仕訳上発生しないことになる。ただし、簿外負債であるリース債務を消却するためには、結果として雑損失等の勘定科目を用いて整理せざるを得ないものと思われる。 |
(2)リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったとき リース物件が滅失・毀損し、修復不能となったときは、賃借人は賃貸人に残存リース料を支払い、リース契約が終了する。この場合における賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、(1)と同様に、リース債務の返済にすぎないため、課税の対象外となる。
また、賃貸人にリース物件の滅失等を起因として保険金が支払われることにより残存リース料の一部又は全部が減額された場合には、事実上、リース料の値引きがあったことになるので、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として処理することとされている。
【設例】
![]() (注)残存リース料のうち、減額された10,800円はリース資産の取得価額の値引であり、消費税では仕入れに係る対価の返還等として処理することになる(解約日の属する課税期間の課税仕入れ等の税額の合計額からマイナスしたところで、仕入控除税額の計算をするということである)。 <ケース2>賃借料処理する場合 リース資産につき、支払リース料を賃借料として損金経理していたが、リース開始後3年を経過した時点でリース契約が終了し、残存リース料21,600円のうち、10,800円を現金にて返済するとともに残額10,800円の減額を受けた場合 ![]() (注)リース資産につき、支払リース料を賃借料として損金経理した場合には、リース資産の除却損は仕訳上発生しないことになる。ただし、簿外負債であるリース債務を消却するためには、結果として雑損失等の勘定科目を用いて整理せざるを得ないものと思われる。 |
(3)リース物件の陳腐化のための借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意に基づき解約するとき 賃貸人と賃借人との合意に基づきリース契約を解約するときは、賃借人は賃貸人に残存リース料を支払うこととなる。この場合における賃借人から賃貸人への残存リース料の支払は、(1)と同様にリース債務の返済にすぎないため、課税の対象外となる。
また、賃貸人と賃借人の合意に基づき、リース物件の陳腐化のため、リース物件を廃棄するとともに、残存リース料の一部又は全部が減額された場合には、(2)と同様に、この残存リース料の減額は仕入れに係る対価の返還等として処理することとされている。

○平成20年3月31日以前に契約を締結した所有権移転外ファイナンスリースの取扱い 平成20年3月31日以前に契約した所有権移転外ファイナンスリース取引は、売買ではなく、資産の貸付けとして取り扱うことになる。この所有権移転外ファイナンスリース取引について、契約期間満了日前に契約を解約すると規定損害金が発生する場合があるが、この規定損害金の取扱いは、その実質からみて次のように取り扱うこととされている。
(1)賃借人の倒産等により、賃貸人がリース契約に基づき契約を解約した場合 賃貸人が賃借人から受け取る損害金は、逸失利益の補償金であり、対価性のないものとして消費税の課税の対象外となる。したがって、賃借人は損害金の支払いを課税仕入れとすることはできない。
(2)リース物件の滅失等により、リース契約の終了事由に該当する場合
(1)と同様に、賃貸人が賃借人から受け取る損害金は、課税の対象外となり、賃借人は損害金の支払いを課税仕入れとすることはできない。
(3)リース物件の借換えなどにより、賃貸人と賃借人との合意により解約する場合 賃貸人が賃借人から損害金を収受するということは、言うなれば、中途解約によりリース期間の短縮(変更)をしたことに伴う各月の既払リース料の改定に賃借人が合意をし、損害金を支払うということである。したがって、賃貸人が収受する損害金は、リース料の増額修正に基づく精算金としての性格を有するものと認められる。
結果、賃貸人が賃借人から受け取る損害金は課税売上高となり、賃借人は支払った損害金を課税仕入高として処理することができる(消基通5-2-5)。
※参照文献 国税庁HP/質疑応答事例「資産の貸付け」1 平成20年3月31日以前に契約した所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る規定損害金等の取扱い
2 転リースの取扱い
(1)転リース取引とは? 転リース取引とは、リース物件の所有者(元受会社)から当該物件のリースを受けた会社(転リース会社)が、元受会社とのリース取引と概ね同一の条件で、さらに同一物件を第三者(エンドユーザー)にリースする取引をいう(下図参照)。

(2)リース会計基準の取扱い リース会計基準では、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方が所有権移転外ファイナンスリース取引に該当する場合には、エンドユーザーからの受取リース料総額と元受会社に対する支払リース料総額の差額を手数料収入として各期に配分し、転リース料差益等の名称で損益計算書に計上することとしている(リース適用指針第47項)。
(3)法人税法上の取扱い 法人税法では、転リース会社において、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方が法人税法上のリース取引に該当する場合には、元受会社との取引はリース物件の購入とし、また、エンドユーザーとの取引はリース物件の売却として所得計算を行うこととされている。
ただし、法人税法に規定する延払基準の方法により計算した所得金額が、リース会計基準の処理によって計算される転リース差益の金額と差異がないと認められる場合には、リース会計基準の処理を延払基準の方法により計算したものとして取り扱うことが認められているようである。
(4)消費税法上の取扱い 消費税法では、会計処理や法人税における処理にかかわらず、受取リース料の総額を課税売上高に計上するとともに、支払リース料の総額を課税仕入高に計上することになる。
したがって、リース会計基準に基づいて計上したリース手数料だけを課税売上高として処理することはできないことに留意する必要がある。
なお、リース会計基準に基づく手数料処理について、法人税法上延払基準の適用を受けるような場合には、消費税法においても、長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例(延払基準)を適用することが認められている(消法16)。
【設例】
下記のような所有権移転外ファイナンスリース契約に基づくリース取引について、転リース会社である当社の法人税の所得金額と消費税における課税売上高(仕入高)は次のようになる。![]() ※参照文献 国税庁HP/質疑応答事例「資産の譲渡の範囲」38 所有権移転外ファイナンス・リース取引における転リース取引の取扱い |
3 所有権移転外ファイナンス・リー取引における分割控除 平成26年1月に国税庁消費税室から「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」が公表された。平成29年4月からの税率の引き上げを前提に、このQ&Aの問4(リース資産の分割控除)について解説する。
なお、右記の問4は、原文を次のように書き換えて掲載している。

問4 所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「リース取引」をいう。)につき、賃借人が賃貸借処理(通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理をいう。)をしている場合には、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとする処理(以下「分割控除」という。)が認められています。 平成29年3月31日までに引渡しを受けたリース資産について分割控除する場合は、平成29年4月1日以後の支払いに係る分割控除についても旧税率(8%)に基づき行うこととなりますか。 |
所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡として取り扱われますので、消費税率は、当該リース資産の譲渡があった時の税率が適用されます。
したがって、平成29年3月31日までに引渡しを受けたリース資産に係る分割控除については、旧消費税法の規定(旧税率(8%))に基づき行うこととなります。
【解説】 前月号で確認したように、リース会計基準の公表により、所有権移転外ファイナンスリースは例外的に認められていた賃貸借処理が廃止され、原則としてすべて売買処理に統一することとされた。ただし、リース会計基準では、少額リースや短期リースについてはその重要性を考慮して賃借料処理を認めることとしている。
また、リース会計基準が強制されない中小企業については、従来どおり、支払ったリース料を賃借料として計上し、損金処理することが認められている。
法人税の世界では、売買とされる所有権移転外ファイナンスリース取引について、賃借人が支払うべきリース料の額を賃借料として損金経理した場合には、そのリース料の金額は、償却費として損金経理をした金額に含めるものとしている(法令131の2③)。
したがって、法人税法上は、たとえ売買とされるリース取引であっても、リース物件を資産計上して減価償却する必要はなく、従来と同様に、支払うべきリース料の額を賃借料として処理すればよいこととなる。
消費税については、法人税の改正に引きずられるような形で基本通達が改正され、賃借人の処理に係わらず、リース資産の引き渡しを受けた日が課税仕入れを行った日となる旨が明らかにされた(消基通11-3-2(注))。

しかし、その後に国税庁から公表された質疑応答事例により、所有権移転外ファイナンスリースについては上図のように取り扱いが変更されている。
つまり、所有権移転外ファイナンスリースについては、リース物件の引き渡しを受けた日の属する課税期間でリース料の総額を一括控除することを原則としつつ、賃借料処理をした場合には、リース料の支払の都度、分割控除を選択することも認めるということになったのである。
上記のように、所有権移転外ファイナンスリースについては、賃借人の処理に係わらず、リース資産の引き渡しを受けた日が課税仕入れを行った日となる。したがって、一部施行日(平成29年4月1日)前に引き渡しを受けたリース物件については、たとえ28年指定日(平成28年10月1日)以後に契約を締結した場合であっても、会計処理に係わらず、原則として旧税率を適用して一括控除することになるのである。
なお、一部施行日前に引き渡しを受けたリース物件について、一部施行日以後に支払うリース料を分割控除する場合にも旧税率が適用されることになるのであるが、これは、経過措置が適用された結果、旧税率の適用になるのではなく、一部施行日前にリース物件の引き渡しを受けたことにより、当然に旧税率が適用されるということである。
また、売買処理が義務付けられるのは、平成20年4月1日以後に契約を締結した所有権移転外ファイナンスリースに限られているので、平成20年3月31日までに契約を締結したものについては、下記の要件を満たす限り、資産の貸付けに係る経過措置の適用を受けることができることになるのである。
①指定日(平成25年10月1日)の前日までに締結した契約であること ②施行日(平成26年4月1日)前から施行日以後引き続き資産の貸付けを行っていること ③貸付期間と貸付期間中の対価の額が契約で定められていること ④契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと ⑤下記の要件を満たすことが契約により定められていること ![]() |
28年指定日以後に契約した所有権移転外ファイナンスリースにつき、一部施行日前に物件の引渡しを受ける場合には、たとえ分割控除により一部施行日以後に計上するリース料であっても8%税率となることに注意する! |
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