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解説記事2016年05月02日 【税務マエストロ】 外国法人課税とAOAの適用開始④(2016年5月2日号・№641)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
外国法人課税とAOAの適用開始④
#163 品川克己
PwC税理士法人

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#163 リース会計基準の公表に伴う消費税の取扱いについて 税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化など、消費税法の改正が続く。消費税マエストロが実務ポイントを解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 e-mail:ta@lotus21.co.jp

2 法人税額の計算と申告・納税
(1)法人税額の計算
 外国法人に対する法人税額の計算は、次の国内源泉所得ごとに、23.4%の税率を乗じて計算される。したがって、それぞれの国内源泉所得が損失である場合、他の国内源泉所得との通算はできないこととなる(法法143)。
 i.PEを有する外国法人のPE帰属所得
 ii.PEを有する外国法人のPE非帰属国内源泉所得
 iii.PEを有しない外国法人のPE非帰属国内源泉所得
 なお、中小法人の軽減税率の適用(800万円以下の所得に対する15%の税率の適用)について、それぞれの国外源泉所得ごとに行う(法法143②)。また、中小法人(資本金1億円以下)の判定については、これまでどおり外国法人の資本及び外国法人を含むグループ全体の状況に基づいて行う(法法143⑤)。
(2)PEにおける外国税額控除
 ① 基本的仕組み
 国内にPEを有する外国法人が、各事業年度において「外国法人税」を納付することとなる場合には、その外国法人税のうち、「国外所得金額」に対応する部分の金額を限度(「控除限度額」)として、PE帰属所得に係る法人税額から控除することができる(法法144の2①)。
 かつては外国法人(日本PE)の課税は、総合主義を採っており、国内源泉所得のみがその課税対象とされていたため、国内源泉所得以外の所得(いわゆる国外源泉所得)は課税対象とはならないため、たとえ外国法人税(その国外源泉所得に係るもの)を納付していたとしても我が国の法人税との二重課税は生じず、したがって外国税額控除は定められていなかった。外国法人の課税原則が帰属主義に変更されたことにともない、PEに帰属する国外源泉所得も課税対象とされたため、二重課税排除の観点から、PE帰属所得に対する外国税額控除が定められたものである。
 なおこの外国税額控除制度は、内国法人における外国税額控除と同様、一括限度額方式をとっており、限度超過額や控除余裕額の繰越し等、基本的仕組みは内国法人と同様のものとなっている。
 ② 控除対象となる外国法人税  PEに係る外国税額控除の対象となる外国法人税は、外国の法令により課される法人税に相当する税(法人税法第69条第1項の規定による)で、PE帰属所得について課されるものが該当する(法法144の2①)。ただし、次のものは対象とはならない。
 i.その所得に対する負担が高率な部分(法令195①~③)
 ii.通常行われる取引として認められない取引に係る外国法人税(法令195④)
 iii.外国法人の本店所在地国で課される外国法人税。ただし、PEが本店所在地国から得る利子、配当等に源泉税が課され、当該源泉税が本店所在地国において税額控除等の対象とならない場合には、当該源泉税は、PEにおける外国税額控除の対象となる外国法人税に該当する(法令195⑤一)
 iv.外国法人の本店所在地国以外の国(第三国)で課される外国法人税のうち、その外国法人税の課税標準となる所得について日本と当該第三国との間の租税条約が適用されるとしたならば、当該外国法人税の軽減又は免除される場合における、軽減額又は免除額(法令195⑤二)。
 ③ 国外源泉所得の計算  国外所得金額は、外国法人の各事業年度のPE帰属所得に係る所得の金額のうち、「国外源泉所得」に係るものが該当する(法令193①)。なお、販売費、一般管理費等の費用で、国外源泉所得とそれ以外のPE帰属所得の双方に係るもの(「共通費用の額」)がある場合には、収入金額、資産の価額、使用人の数その他の基準のうち、外国法人の行う業務の内容又は費用の性質に照らして合理的と認められる基準により、国外源泉所得とそれ以外のPE帰属所得に係る所得の金額の計算上、損金の額として按分する(法令193②)。
 ④ 国外源泉所得の範囲  国外源泉所得とは、国外で生じたものと認められる所得で、具体的には次のいずれかに該当するものをいう(法法144の2④)。
 i.国外にある資産の運用又は保有により生ずる所得
 ii.国外にある資産の譲渡により生じる所得
 iii.国外において人的役務の提供を主たる内容とする事業を行う法人が受ける人的役務の提供に係る対価
 iv.国外にある不動産等の貸付け、非居住者又は外国法人に対する船舶又は航空機の貸付けによる対価
 v.外国の国債等の利子等
 vi.外国法人から受ける配当等
 vii.国外において業務を行う者に対する貸付金で当該業務に係るものの利子
 viii.国外において業務を行う者から受ける使用料又は対価で当該業務に係るもの
 ix.国外において行う事業の広告宣伝のための賞金
 x.国外にある営業所で締結した保険契約に基づく年金等
 xi.国外にある営業所が受け入れた定期積金の給付補填金等
 xii.国外において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配
 xiii.その他国外に源泉がある所得
 ⑤ 控除限度額の計算  控除限度額は、次の算式により求めることとなる(法法144の2①、法令194)。

 上記算式におけるPE帰属所得に係る法人税の額とは、「外国法人に係る所得税額の控除」(法法144)、「外国法人に係る外国税額の控除」(法法144の2)、「使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例」(措法62①)、「土地の譲渡等がある場合の特別税率」(措法62の3)及び「短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率」(措法63)の規定を適用しないで計算した場合の法人税の額となる(法令194①)。
 PE帰属所得金額(「恒久的施設帰属所得金額」)とは、内国法人の所得の計算の諸規定に準じてPE帰属所得の金額を計算する場合に、「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し」(法法57)、「青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し」(法法58)、「対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例」(措法59の2)、「組合事業等による損失がある場合の課税の特例」(措法67の12、67の13)の規定を適用しないで計算したPE帰属所得に係る所得の金額となる(法令194②)。
 調整国外所得金額とは、国外所得金額から、国外源泉所得が生じた国又は地域が外国法人税を課さないこととしている国外源泉所得(非課税国外源泉所得)を控除した金額で、PE帰属所得金額の90%が上限となる(法令194③)。
(3)確定申告
 ① PEを有する外国法人
 PEを有する外国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定申告書を提出しなければならない(法法144の6①)。なお、確定申告にあたって、PE帰属国内源泉所得とPE非帰属国内源泉所得をわけ、それぞれに係る法人税を計算することになる。また、租税条約及び「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税に関する法律(昭和37年法律第144号)」の規定により、PE帰属国内源泉所得及びPE非帰属国内源泉所得の全部が免税となる場合には、確定申告書の提出は必要ない(法法144の6①ただし書、法令203)。
 ② PEを有しない外国法人  PEを有しない外国法人が、法人税が課されることとなるPE非帰属国内源泉所得(141条第2号)を有する場合には、各事業年度終了の翌日から2か月以内に、確定申告書を提出しなければならない(法法144の6②)。ただし、租税条約によって法人税が課されないこととなるPE非帰属国内源泉所得のみを有する場合には、確定申告書の提出は必要ない(法法144の6②ただし書)。したがって例えば、PE非帰属国内源泉所得として内国法人の株式の譲渡による所得(事業譲渡類似)がある場合で、租税条約の規定により免税となる場合には、確定申告書を提出する必要はない。
(4)納付・還付
 ① PEを有する外国法人
 PEを有する外国法人が納付する法人税は次の順序で計算し、確定申告書の提出期限までに納付しなければならない(法法144の6①、144の10)。
イ)PE帰属国内源泉所得に税率(23.4%もしくは15%)を乗じて計算した金額
ロ)上記イ)に対する所得税額控除、外国税額控除
ハ)下記ホ)の所得税額控除で控除しきれなかった金額をロ)から控除
ニ)PE非帰属国内源泉所得に税率を乗じて計算した金額
ホ)上記に対する所得税額控除
ヘ)上記ロ)の所得税額控除及び外国税額控除で控除しきれなかった金額をホ)から控除
ト)上記ハ)及びへ)を合計
チ)中間納付税額がある場合には、中間納付税額を控除
 なお、上記ト)の金額の計算に当たり、控除しきれなかった所得税額又は外国税額がある場合には、その金額が還付される(法法144の11①)。同様に、中間納付税額がある場合で、上記ト)の金額の計算にあたり控除しきれなかった金額がある場合には、その金額に相当する中間納付税額が還付される(法法144の12①)。
 ② PEを有しない外国法人  PEを有しない外国法人が納付する法人税は次の順序で計算し、確定申告書の提出期限までに納付しなければならない(法法144の6②、144の10)。
リ)PE帰属国内源泉所得に税率(23.4%もしくは15%)を乗じて計算した金額
ヌ)上記リ)に対する所得税額控除
ル)中間納付税額がある場合には、中間納付税額を控除
 なお、上記ヌ)の金額の計算に当たり、控除しきれなかった所得税額がある場合には、その金額が還付される(法法144の11①)。同様に、中間納付税額がある場合で、上記ル)の金額の計算にあたり控除しきれなかった金額がある場合には、その金額に相当する中間納付税額が還付される(法法144の12①)。
(5)欠損金の繰り戻し還付
 ① PEを有する外国法人
 青色申告書を提出するPEを有する外国法人の事業年度において、欠損金額がある場合には、次の金額に相当する法人税の還付を請求することができる(法法144の13①)。
イ)PE帰属国内源泉所得に係る欠損金額がある場合:欠損金が生じた事業年度(欠損事業年度)の開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(一般的には前年、還付所得事業年度)におけるPE帰属国内源泉所得に係る法人税の額(所得税額控除及び外国税額控除の控除前)に、還付所得事業年度のPE帰属国内源泉所得のうちに欠損事業年度の欠損金額の占める割合を乗じて計算した金額
ロ)PE非帰属国内源泉所得に係る欠損金額がある場合:欠損金が生じた事業年度(欠損事業年度)の開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(一般的には前年、還付所得事業年度)におけるPE非帰属国内源泉所得に係る法人税の額(所得税額控除の控除前)に、還付所得事業年度のPE非帰属国内源泉所得のうちに欠損事業年度の欠損金額の占める割合を乗じて計算した金額
 ② PEを有しない外国法人  青色申告書を提出するPEを有しない外国法人の事業年度において、欠損金額がある場合には、次の金額に相当する法人税の還付を請求することができる(法法144の13②)。
 欠損金が生じた事業年度(欠損事業年度)の開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(一般的には前年、還付所得事業年度)におけるPE非帰属国内源泉所得に係る法人税の額(所得税額控除の控除前)に、還付所得事業年度のPE非帰属所得のうちに欠損事業年度の欠損金額の占める割合を乗じて計算した金額
(6)行為計算の否認  外国法人(PE)の各事業年度のPE帰属所得に係る法人税につき更正又は決定をする場合、そのPEの行為又は計算で、これを容認したならば、①PE帰属所得に係る所得の金額から控除する金額の増加、②PE帰属所得に係る法人税の額から控除する金額の増加、③内部取引に係る利益の額の減少又は損失の額の増加、④その他の事由により、法人税を不当に減少させる結果となると認められるものがある時は、税務署長は、その行為又は計算を否認して、PE帰属所得に係る法人税の課税標準もしくは欠損金額又はPE帰属所得に係る法人税の額を計算することができる(法法147の2)。
 いわゆる、PEに関する「行為計算否認」であるが、内国法人(同族会社)の行為計算否認に関する規定(法人税法132条)は、法人税法147条により、外国法人について準用することとされている。その結果、行為計算否認については、PEについての147条の2と準用する132条の重複適用が問題となる。つまり、どのような場合には132条の準用によって行為計算が否認され、どのような場合に147条の2によって行為計算が否認されるのかが不明確といえよう。

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