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税務ニュース2005年08月01日 航空機リース訴訟、静岡地裁も課税処分を取消す(2005年8月1日号・№125) 課税庁の後出し主張に、「航空機の所有権を有していた」と判示

航空機リース訴訟、静岡地裁も課税処分を取消す
課税庁の後出し主張に、「航空機の所有権を有していた」と判示


 静岡地裁民事2部(佃浩一裁判長)は、7月14日、個人が組合員となっている民法上の組合が行った航空機リース事業による所得の損益通算の可否を主たる争点とする事件に対して、「民法上の組合契約として有効に成立したと認められ、本件所得は不動産所得に該当するというべきである。」などと判示し、「原告らのした損益通算は適法であり、被告らのした本件処分は違法である。」として課税処分を取消した(平成15年(行ウ)第9号・第10号)。航空機リース訴訟では、名古屋地裁・津地裁の同種事案で国側が敗訴していたが、国側の3連敗となった。

主たる争点と弁論再開の申立て
 静岡地裁では、2件の課税処分について争われたが、事案の概要は、いずれも、名古屋地裁・津地裁の事案と同種のものである。本件においても以下の争点で争われている。
(1)組合契約の成否
  本件組合契約は、民法上の組合契約か、それとも利益配当契約か。
(2)組合契約の有効性
  本件組合契約が民法上の組合契約と認められたとしても、それは心裡留保又は虚偽表示により無効か。
(3)不動産所得該当性
  本件組合契約が民法上の組合契約又は匿名組合と認められたとしても、本件所得は雑所得か。
 本件は平成17年1月13日に結審していたが、国側は、これまでの主張が裁判所に受け入れられないことから、平成17年5月23日付の準備書面を提出して、「原告は本件航空機の所有権を取得していないし、また、実質的には本件航空機の代金を支払っていない。」と主張して、この主張立証のための口頭弁論の再開を申し立てた。
 静岡地裁は、口頭弁論の再開はせずに、本件判決を言渡すことになった。

「特段の事情」なければ、組合契約成立
 静岡地裁は、「本件組合契約が組合契約であるか、利益配当契約であるかの認定も、私法上の契約の認定と同様に行うべきである。そうでなければ、納税者にとって法的安定性と予測可能性が害され、租税法律主義(憲法84条)に反する結果となるからである。」と解釈の指針を示した上で、名古屋地裁・津地裁とは異なる判断過程での判示を行っている。
 名古屋地裁判決は、航空機リース事業での民法上の組合契約が、通常は用いられることのない法形式であるかの判断を行い、NOとの判断(むしろ、通常の合理的経済人にとって合理性を有するとの判断)から、使用された文言に則した文理解釈を中心として行うのが相当であるとしている。
 一方、静岡地裁判決は、本件組合契約書の成立の真正が認められるのであれば、特段の事情がない限り、同契約書の記載内容通りの契約を成立させる意思表示(合意)がされたものと認定すべきである、と判示し、特段の事情の有無の検討を行っている。
 静岡地裁判決は、①本件事業の経済的合理性について、②課税額減少効果について、③組合員としての責任について、④本件航空機の所有権の帰属について、それぞれ検討を行った上で、「これら(の検討)を総合しても、本件組合契約を民法上の組合契約と見ることができないような特段の事情があるということはできない。」として、組合契約の成立を判示した。

「映画フィルムリース」判示を援用して追加主張
 判断過程に違いはあるものの、主たる争点では、航空機リース事業の経済的合理性などが検討され、名古屋地裁では法形式の異常性、静岡地裁では契約を否定する特段の事情について「異常性(特段の事情)はない。」との判断が行われた。
 しかし、類似したスキームである「映画フィルムリース」では、千葉地裁・大阪地裁(高裁)・東京地裁で、課税処分が容認されている。国側からすれば、「映画フィルムリース」での有利な判示から、「航空機リース」への援用を検討することになろう。本件訴訟における口頭弁論終結後の追加主張(弁論再開の申立て)には、「映画フィルムリース」判決を援用したい国側の本件訴訟への新たな対応を窺うことができる。
 「映画フィルムリース」の大阪地裁(高裁)判決では、映画購入契約や融資契約に関する検討を行った結果、「本件取引により本件映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではない。」と判示して、課税処分を容認している。
 本件航空機リース契約についても、①本件航空機は、任意組合契約書の成立とほぼ同時に再売買契約書を締結して、原告ら一般組合員はその処分権を喪失し、(略)原告らはその所有権を取得していないこと、②航空機購入代金のうち3/4は、アレンジャーの100%保証による金融機関からの借入であり、実質的に支払われていないこと、などを指摘し、「原告らは本件航空機の所有権を取得していないし、また、実質的には本件航空機の代金を支払っていない。」と、国側は追加主張した。
 この追加主張は、名古屋地裁事件の控訴審(名古屋高裁で審理中)においても、国側が控訴審における追加の主張として行っているものだ。

国側の後出しの主張も一蹴
 静岡地裁は、国側の口頭弁論の再開の申立てを認めなかったが、判決では、国側の追加主張に対しても、念のため、検討を行い、「原告らは航空機の使用収益権限・処分権限を有している・本件航空機の所有権を有しているというべきである。」と判示して、国側の主張を一蹴した。国側は、口頭弁論の再開が認められなかった上に、当該主張に対して不利な判示が行われたことで、名古屋高裁での審理にも国側に不利な影響を及ぼしかねないものとなった。国側の口頭弁論の再開の申立ては、裏目に出たことになる。

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