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解説記事2016年10月17日 【税制改正解説】 平成29年度税制改正に関する経団連の提言について(2016年10月17日号・№663)

税制改正解説
平成29年度税制改正に関する経団連の提言について
 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 神谷智彦

はじめに

 経団連では2016年9月20日に、平成29年度税制改正に関する提言を公表した。この提言は今年の年末に予定される政府・与党の平成29年度税制改正に関する検討について、経団連の考え方を示したものである。
 平成28年度税制改正では、成長志向の法人税改革の一環として、稼ぐ力のある企業の税負担を軽減するよう、外形標準課税の拡大や欠損金繰越控除制度の見直し等により課税ベースを広げるとともに、法人実効税率の20%台(標準税率ベース)への引下げが実施された。この点、平成29年度税制改正では、法人課税では研究開発税制や外国子会社合算税制、個人所得課税では配偶者控除の見直しなどが主要な課題となる見通しである。
 なお、本稿の内容は当方の私見であり、必ずしも組織全体の意見を代表するものではない。

Ⅰ 政府の成長戦略の動向および研究開発を巡る動き
 提言では、デフレからの脱却と経済再生、名目GDP600兆円経済の実現のために、第4次産業革命(Society5.0)を強力に推進することが極めて重要という認識を示している。第4次産業革命については、「日本再興戦略2016 ~第4次産業革命に向けて~」(2016年6月2日閣議決定)で目玉として取り上げられており、「経済財政運営と改革の基本方針2016 ~600兆円経済への道筋~」(いわゆる骨太の方針、2016年6月2日閣議決定)でも、重要性が強調されている。また、Society5.0については、政府の「第5期科学技術基本計画」(2016年1月22日閣議決定)において狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5の社会として、ネットワークやIoTを活用し、それらの技術をシステムとして統合した「超スマート社会」を推進することを謳っている。すなわち、政府全体で第4次産業革命およびSociety5.0を推進していくことを明らかにしており、民間においてもこれらの取り組みを推進することが非常に重要となる。
 また、2016年の第3四半期からGDPの計算に研究開発投資を加えることとされているため、引き続き研究開発投資を促進していくことが、GDP600兆円経済の実現のための重要なポイントとなっている。

Ⅱ 現行の研究開発税制の枠組み
 現行の研究開発税制は、図1のとおり、総額型、オープンイノベーション型、増加型・高水準型による、3階建ての仕組みになっている。

 平成29年度税制改正では、上乗せ措置である増加型・高水準型が期限切れを迎えるため、研究開発税制について、制度全体を含め、幅広い議論がなされる可能性がある。平成26年6月に公表された政府税制調査会のとりまとめ「法人税の改革について」では、研究開発税制について、「研究開発投資の増加インセンティブとなるような仕組みに転換していくべきである」としており、この点も踏まえて議論の方向性を見据える必要がある。

Ⅲ 研究開発税制に関する経団連の意見
 経団連としては、第4次産業革命・Society5.0の推進および研究開発投資の増大のために、研究開発税制の存在は不可欠であると考えており、制度の維持・拡充が求められると提言で主張している。
 研究開発税制の個別の制度については、総額型は、わが国の研究開発を支えるまさに根幹として維持が不可欠であり、25%の控除上限は引下げるべきではないと考えている。総額型の縮減は、わが国における研究開発の規模の縮小をもたらし、今後の持続的な経済成長にも大きな影を落とすおそれが強いと懸念する。
 期限切れを迎える増加型・高水準型についてもわが国での研究開発投資を促進する観点から有用であり、存続が前提である。とりわけ、研究開発に重点を置く企業の活動を中長期的に支援するため、高水準型の果たす役割は大きい。
 さらに、幅広い産業で第四次産業革命(Society5.0)を推進すべく、IoTやビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの様々な技術を活用した「サービス」の改善を研究開発税制の対象に含めることを提言している。
 また、オープンイノベーション型については、第四次産業革命・Society5.0の要となる領域であり、日本再興戦略2016においても、2025年に企業から大学・研究開発法人への投資を3倍増にするとの目標が明記されているため、今後、より一層制度の充実・活用が求められる。もっとも、オープンイノベーション型にかかる研究開発税制の要件が厳しく十分に活用が進んでいないため、契約書記載条件の簡素化・緩和や共同研究・委託先の拡充等を行い、活用しやすい制度へと変革すべきとしている。

Ⅳ 特定事業用資産の買換特例
 この他、設備投資の関係では、平成28年度末で生産性向上設備投資促進税制が期限切れを迎えることになる。生産性向上設備投資促進税制については、成長志向の法人税改革の一環として、期限切れをもって廃止を迎えることとされている。このため、引き続き設備投資を維持・拡大するための方策が重要となるが、経団連では、平成28年度末で期限切れを迎える特定事業用資産の買換特例の延長・拡充および都市再生税制の延長を提言している。このうち、特定事業用資産の買換特例については、平成27年度税制改正により、機械装置が買換資産の対象から外れるとともに、地方から都市部への買換について、圧縮記帳できる割合が減額されている。そのため、設備投資の促進の観点から、経団連では、平成29年度改正において、機械装置への適用を復活させるとともに、工具についても対象に加えて、制度を維持・拡充するよう提言している。(図2参照)


V 外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しへの対応
 外国子会社合算税制(CFC税制)は、軽課税国等に設立された子会社の所得のうち、実質的な経済活動を伴わないものを親会社において課税する制度であり、現行制度はトリガー税率といわれる一定の税負担率を下回る国・地域に立地する外国子会社に限り、合算対象とするかどうかを検討する。この点、CFC税制について、平成28年度の与党税制改正大綱では、「喫緊の課題となっている航空機リース事業の取扱いやトリガー税率のあり方、租税回避リスクの高い所得への対応等を含め、外国子会社の経済実体に即して課税を行うべきとするBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト最終報告書の基本的な考え方を踏まえ、軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止という本税制の趣旨、日本の産業競争力や経済への影響、適正な執行の確保等に留意しつつ、総合的な検討を行い、結論を得る」とされている。
 この点、OECD/G20のBEPSプロジェクトの行動3において、望ましいCFC税制のあり方が検討され、2015年10月に検討を踏まえた最終報告書の内容が公表されたが、結果的には、最終報告書の内容は各国においてCFC税制の柔軟な制度設計を許容するベスト・プラクティスと位置づけられた。このため、日本の現行のCFC税制をBEPSプロジェクトに合わせて急いで改正する必要性が必ずしもあるわけではないとも言える。
 もっとも、現行のわが国のCFC税制については、実体のある航空機リース事業のように租税回避とは言えない事業に関しても合算課税の対象となっている過剰合算の状態が存在する。そのため、経団連としては、CFC税制の見直しについて検討することは有意義だと考えており、実務負担に配慮しつつ、本来、日本で納めるべき税が意図的に浸食され、軽課税国で租税回避を生み出しているといえる場合のみを合算対象とすることが適当だと考える。その上で、具体的には、事業実体のある航空機リース収入や、グループ内組織再編成から生じるキャピタルゲインなど、税源浸食や租税回避と言えない取引については、CFC税制の適用除外とする見直し等を行うことが適当である。一方、所得の詳細な分類・判別を行う制度の導入や、トリガー税率や適用除外要件を根本から見直し、企業の負担が著しく増大するような制度の導入は、実務上は実行することが不可能または困難であるため、賛成できない。また、CFC税制の合算課税の対象とはされていない事業持株会社や物流統括会社、グループ金融会社、英国ロイズの保険会社等が、CFC税制の対象となることは適切ではないと考える。
 なお、CFC税制については、現在、政府税制調査会で検討が進められているが、9月29日に開催された第3回政府税制調査会の資料(国際課税①17ページ)において、CFC税制の見直しの方向性が示されている。この中では、CFC税制の改正に向けた問題意識として、「現行制度は、外国子会社の税負担水準が20%(トリガー税率)以上であれば経済実体を伴わない所得であっても合算せず、申告も求めない一方、実体ある事業から得た所得であっても合算してしまう、という問題あり」として、「外国子会社配当益金不算入制度(2009年度導入)と相まって、知財・金融資産等や事業を形式的・表面的に外国子会社へと移転し、得られた所得を配当として日本に戻すことで課税を逃れる行為を可能とする側面あり」としている。その上で、見直しの方向性として、「過度の事務負担が生じないよう配慮」しつつ、「『価値創造の場で税を払うべき』というBEPSプロジェクトの原則を踏まえ、外国子会社の所得の種類等に応じて合算対象を決定するアプローチへと変更」するとしており、具体的には、能動的所得(子会社が自らの能力と責任を持って取り組む商品の製造・販売やサービスの提供による対価の獲得等、経済実体がある事業から得た所得)については合算対象外(子会社所在地国で課税)とする一方、受動的所得(一定の金融所得や実質的活動のない事業から得られる所得等)については、親会社の所得と合算(日本で課税)するとしている。(図3参照)

 政府税制調査会で示された案は、能動的所得と受動的所得を区別し、受動的所得を合算課税の対象にするという内容のものであり、この点は、OECDのBEPS行動3で検討された方向性と整合的である。他方、企業の実務の観点からは、図3にある「税率を代替・補完する『制度適用免除』」が、実務負担を軽減するかたちで設計されることが重要となる。
 CFC税制の見直しについては、10月の政府税制調査会でさらに検討が深められる予定であり、より詳細な制度が示される可能性がある。引き続き、制度の詳細を注視することが必要となる。
 また、この他に、政府税制調査会の資料では、BEPSプロジェクトの行動4の利子控除制限と関連した、日本の過大支払利子税制の見直しや、行動8-10の移転価格税制と関連し、実際に生じたキャッシュフローが当初の予測から大きくかい離した場合に、事後的に価格を調整できる「所得相応性基準」などの導入の可能性、行動12のタックスプランニングの義務的情報開示制度の日本への導入などが今後の検討事項としてあげられている。検討材料が多いため、平成29年度税制改正には間に合わないかもしれないが、今後、日本での制度の導入に向けた議論が進展する見込みがあり、動向を注視する必要がある。

Ⅵ 個人所得課税
 個人所得課税については、政府税制調査会において「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理」(2015年11月13日)が公表されており、そのなかで、経済社会の構造変化を踏まえて、「今後、まずは個人所得課税及び資産課税を中心に中期的な税制のあり方について検討を深めていく」こととされている。さらに、論点整理の「個人所得課税の改革にあたっての基本的な考え方」のなかで、「個人所得課税については、所得再分配機能の回復を図り、経済力に応じた公平な負担を実現するための見直しを行う必要がある」とされ、かつ、「所得控除方式を採用している諸控除を見直し、税負担の累進性を高めることを通じて、低所得層の負担軽減を図っていくことを中心に検討すべき」と記述されている。配偶者控除については、「『結婚して夫婦共に働きつつ子どもを産み育てるといった世帯』に対する配慮の重要性を踏まえつつ、働き方の選択に対して中立的な税制を構築する観点から」、子育て支援の拡充とともに、配偶者控除の廃止や控除に係る所得制限の導入、夫婦世帯を対象とする新たな控除の導入などが提案されている。
 その上で、働き方の選択に対して中立的な税制として、具体的には、以下のA~C案が提案されている。(それぞれ政府税制調査会資料より抜粋)
 選択肢のA-1では、配偶者控除を廃止すると同時に、「子どもを産み育てようとする世帯」に配慮して子育て支援の拡充を行うとしている。

 選択肢のA-2では、配偶者控除の適用に納税者本人の所得に応じた制限を設けるとともに、子育て支援の拡充を行うとしている。

 選択肢のB-1では、配偶者控除に代えて、配偶者の所得の計算において控除しきれなかった基礎控除を納税者本人に移転するための仕組み(いわゆる移転的基礎控除)とすることにより、配偶者の収入によらず夫婦2人で受けられる控除の合計額が一定となるようにするとともに、子育て支援の拡充を行うとしている。

 選択肢B-2では、いわゆる移転的基礎控除の導入とあわせて、基礎控除を税額控除化することにより配偶者の収入によらず夫婦2人で受けられる控除の合計額が一定となるようにする。あわせて、子育て支援の拡充を行う。

 選択肢のCでは、配偶者控除に代えて、「夫婦世帯」に対し、若い世代の結婚や子育てに配慮する観点から新たな控除を創設し、子育て支援の拡充を行うとしている。新たな控除は配偶者の収入に関わらず適用されることとする。

 2016年9月以降の政府税制調査会でも、これらの選択肢を踏まえて、議論を行っている。配偶者控除を含む所得税改革の平成29年度税制改正における方向性についてはすでに様々な報道がなされているが、中長期的にはやはり政府税調で示された方向性が重要となる。10月以降、さらに詳細な内容が提示される可能性もあり、引き続き政府税調の動きを注視することが求められる。
 この点、経団連としては、提言で、個人所得課税について、経済活力をそがないように配慮しつつ、経済社会の構造変化を踏まえ、各種控除の適正化に関し、十分に検討を行うことが必要であるとしており、将来の成長の担い手である若年層・子育て世代の活力維持を図るとともに、女性の活躍推進の観点から働き方に対して中立的な税制を構築すべきとしている。

 また、提言では、事業再編を促進するための税制措置の延長・拡充、役員報酬制度の改善、原料用途免税の本則非課税化、車体課税の負担軽減、住宅・土地・都市税制にかかる租税特別措置等の延長・拡充、地球温暖化対策税の廃止を含む見直し、NISAの拡充、上場株式等の相続税評価額の見直し、退職年金等積立金に係る特別法人税の廃止等についても実現を求めている。

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