解説記事2016年11月14日 【ニュース特集】 税理士が妻に青色専従者給与、必要経費か否かをめぐり争い(2016年11月14日号・№666)
ニュース特集
関連法人で役員を兼務する期間の扱いが問題に
税理士が妻に青色専従者給与、必要経費か否かをめぐり争い
税理士事務所を経営する納税者がその生計を一にする妻に支払った給与をめぐり、同給与を必要経費に算入することができるか否かが問題となった税務訴訟で、納税者が敗訴する判決が下されていたことが明らかとなった(東京地裁平成28年9月30日判決)。裁判所は、税理士事務所に従事する一方で関連法人の代表取締役の地位にあった納税者の妻は「他に職業を有する者」に当たることから青色事業専従者には該当しないと判断。妻に対する給与を否認した課税処分は適法であるとした。税理士事務所の経営に税理士の妻が従事するケースが多く見受けられるなか、本特集では、他の職業を有する妻が青色事業専従者に該当するか否かが問題となった本件に関する裁判所の判断内容などを紹介する。
納税者の妻、税理士事務所に従事する一方で、関連法人の役員兼務
税理士などの個人事業者が生計一の配偶者に対して支払う給与は、原則として必要経費に算入することはできないが(所法56)、生計一の配偶者が「青色事業専従者」に該当すれば、個人事業主が生計一の配偶者に対して支払うその事業に関する給与は必要経費に算入することができる(所法57①)。
青色事業専従者とは、青色申告者(居住者)と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む事業に従事する者のことで、その事業専従期間がその年を通じて6月を超えるなどの一定の要件を満たす必要がある。
ただし、事業専従期間の算定にあたっては、生計一の配偶者その他の親族が他の職業を有する期間は原則として事業専従期間に含まれない一方で、「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」(所令165②二)に該当すれば、他の職業に従事する期間も事業専従期間に含めることができる。
今回紹介する裁判事例で問題となったのは、税理士である納税者(原告)が経営する税理士事務所の業務に所長代理として従事する一方で、役員として関連会社3社の業務にも従事していた納税者の妻が「青色事業専従者」に該当するか否かという点である。
事実関係をみると、納税者の妻は平成12年5月に納税者と婚姻をし、納税者と生計を一にする配偶者となった。税理士業や不動産貸付業等を営む納税者は、その税理士事業に関する青色事業専従者給与の支給について、妻を青色事業専従者、支給期間等を平成12年6月以後、仕事の内容・従事の程度をコンピュータ関係・経理・所長代理、給料(月額70万円)を支給する旨などを記載した法令所定の届出書を所轄税務署長に提出していた。
納税者の妻は、納税者の税理士事業に関する青色事業専従者給与の支給を受ける一方で、代表取締役などの役員を務める関連法人3社(業務の内容などは図表1参照)から役員報酬を受け取っていった。
納税者は、事業所得の計算上、妻に関する青色事業専従者給与の額として平成21年分は675万円、平成22年分は572万円、平成23年分は530万円をそれぞれ必要経費に算入したうえで所得税の確定申告を行っていた。これに対し税務署は、納税者の妻は他に職業を有しており、納税者の営む税理士事業に専ら従事するとは認められないことから青色事業専従者に該当しないと判断し、妻に対する給与の必要経費算入を否認する内容などの課税処分を行った(図表2参照)。
これを不服とした納税者は、納税者の妻は「事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」に該当するから必要経費算入が認められる「青色事業専従者」であるなどと主張し、裁判所に対して課税処分の取り消しを求めた。
地裁、他の職業に従事する期間が短い者等に該当せず
裁判所は、まず、事業専従期間に含まれる「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」(所令165②二)に該当するかどうかについて、「他の職業に従事する時間がおよそ短く、当該事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかであるかどうか、さらには上記に当たらない場合を含め、当該事業及び他の職業の性質、内容、従事する態様その他の諸事情に照らし、実質的にみて当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められるかどうかによって判断するのが相当である」という法令解釈を示した。
そして本件について裁判所は、代表取締役の地位にあった関連会社に関する納税者の妻の業務は相当の事務量があること自体は否定し難く、これらの業務は主として自宅又は税理士事務所において従事していたことなどから当該事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかということは困難と指摘。また、各業務の性質、内容、従事する態様等に照らし納税者の妻の関連会社の業務について納税者の税理士業務に専ら従事することが妨げられないものであったとまでは認め難いなどと指摘し、納税者の妻は青色事業専従者には該当しないと判断。妻に対する給与の必要経費算入を否定した課税処分は適法であると結論付けた(なお敗訴した納税者は控訴を提起している)。
関連法人で役員を兼務する期間の扱いが問題に
税理士が妻に青色専従者給与、必要経費か否かをめぐり争い
税理士事務所を経営する納税者がその生計を一にする妻に支払った給与をめぐり、同給与を必要経費に算入することができるか否かが問題となった税務訴訟で、納税者が敗訴する判決が下されていたことが明らかとなった(東京地裁平成28年9月30日判決)。裁判所は、税理士事務所に従事する一方で関連法人の代表取締役の地位にあった納税者の妻は「他に職業を有する者」に当たることから青色事業専従者には該当しないと判断。妻に対する給与を否認した課税処分は適法であるとした。税理士事務所の経営に税理士の妻が従事するケースが多く見受けられるなか、本特集では、他の職業を有する妻が青色事業専従者に該当するか否かが問題となった本件に関する裁判所の判断内容などを紹介する。
納税者の妻、税理士事務所に従事する一方で、関連法人の役員兼務
税理士などの個人事業者が生計一の配偶者に対して支払う給与は、原則として必要経費に算入することはできないが(所法56)、生計一の配偶者が「青色事業専従者」に該当すれば、個人事業主が生計一の配偶者に対して支払うその事業に関する給与は必要経費に算入することができる(所法57①)。
青色事業専従者とは、青色申告者(居住者)と生計を一にする配偶者その他の親族で専らその居住者の営む事業に従事する者のことで、その事業専従期間がその年を通じて6月を超えるなどの一定の要件を満たす必要がある。
ただし、事業専従期間の算定にあたっては、生計一の配偶者その他の親族が他の職業を有する期間は原則として事業専従期間に含まれない一方で、「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」(所令165②二)に該当すれば、他の職業に従事する期間も事業専従期間に含めることができる。
今回紹介する裁判事例で問題となったのは、税理士である納税者(原告)が経営する税理士事務所の業務に所長代理として従事する一方で、役員として関連会社3社の業務にも従事していた納税者の妻が「青色事業専従者」に該当するか否かという点である。
事実関係をみると、納税者の妻は平成12年5月に納税者と婚姻をし、納税者と生計を一にする配偶者となった。税理士業や不動産貸付業等を営む納税者は、その税理士事業に関する青色事業専従者給与の支給について、妻を青色事業専従者、支給期間等を平成12年6月以後、仕事の内容・従事の程度をコンピュータ関係・経理・所長代理、給料(月額70万円)を支給する旨などを記載した法令所定の届出書を所轄税務署長に提出していた。
納税者の妻は、納税者の税理士事業に関する青色事業専従者給与の支給を受ける一方で、代表取締役などの役員を務める関連法人3社(業務の内容などは図表1参照)から役員報酬を受け取っていった。

納税者は、事業所得の計算上、妻に関する青色事業専従者給与の額として平成21年分は675万円、平成22年分は572万円、平成23年分は530万円をそれぞれ必要経費に算入したうえで所得税の確定申告を行っていた。これに対し税務署は、納税者の妻は他に職業を有しており、納税者の営む税理士事業に専ら従事するとは認められないことから青色事業専従者に該当しないと判断し、妻に対する給与の必要経費算入を否認する内容などの課税処分を行った(図表2参照)。

これを不服とした納税者は、納税者の妻は「事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」に該当するから必要経費算入が認められる「青色事業専従者」であるなどと主張し、裁判所に対して課税処分の取り消しを求めた。
地裁、他の職業に従事する期間が短い者等に該当せず
裁判所は、まず、事業専従期間に含まれる「その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者」(所令165②二)に該当するかどうかについて、「他の職業に従事する時間がおよそ短く、当該事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかであるかどうか、さらには上記に当たらない場合を含め、当該事業及び他の職業の性質、内容、従事する態様その他の諸事情に照らし、実質的にみて当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められるかどうかによって判断するのが相当である」という法令解釈を示した。
そして本件について裁判所は、代表取締役の地位にあった関連会社に関する納税者の妻の業務は相当の事務量があること自体は否定し難く、これらの業務は主として自宅又は税理士事務所において従事していたことなどから当該事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかということは困難と指摘。また、各業務の性質、内容、従事する態様等に照らし納税者の妻の関連会社の業務について納税者の税理士業務に専ら従事することが妨げられないものであったとまでは認め難いなどと指摘し、納税者の妻は青色事業専従者には該当しないと判断。妻に対する給与の必要経費算入を否定した課税処分は適法であると結論付けた(なお敗訴した納税者は控訴を提起している)。

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