解説記事2017年02月13日 【最新判決研究】 小規模宅地の課税特例の適用と手続要件(共同相続人の選択同意書)(2017年2月13日号・№678)
最新判決研究
小規模宅地の課税特例の適用と手続要件(共同相続人の選択同意書)
東京地裁平成28年7月22日判決(平成27年(行ウ)第57号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X(原告)の母K(被相続人)は、平成22年2月27日に死亡し、相続(以下「本件相続」という。)が開始した。本件相続に係る共同相続人は、X(Kの長男)、М(同長女)、R(同次女)及びD(同三女)であった(以下「本件相続人ら」といい、X以外の相続人らを「他の相続人ら」という。)。
本件相続の財産には、北区に所在する地積1,278.21㎡の土地(以下「北区土地」という。)の1000分の457の割合による共有持分(以下「北区土地相続分」という。)及び北区土地上に存する建物(以下「北区建物」という。)の1000分の457の割合による共有持分(以下「北区建物相続分」という。)並びに川口市に所在する地積533㎡の土地(以下「川口土地」という。)の5分の1の割合による共有持分(以下「川口土地相続分」という。)が含まれている。北区建物は、本件相続の開始直前において、Kと生計を一にしていたXが経営する診療所として利用され、北区土地は、当該診療所の敷地等として一体で利用されており、Xの本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告書の提出期限(以下「本件申告期限」という。)まで引き続き上記のように事業の用に供されていた。
川口土地上には、共同住宅であるA建物(以下「川口A建物」という。)及びB建物(以下「川口B建物」といい、A建物と併せて「川口各建物」という。)が存在し、川口土地の一部は当該入居者の駐車場の用に供されていた。川口各建物の貸主であるKと借主であるS社は、平成18年11月に締結した貸室賃貸借契約が期間満了したことに伴い、平成20年10月7日付で、要旨、①川口A建物については、契約期間2年、賃料月31万円余、②川口B建物については、契約期間2年、賃料月32万円余とする当該契約を更新した。
(2)Kは、平成19年1月14日付の遺言書により、北区土地相続分及び北区建物相続分を全てXに相続させる旨の遺言(以下「本件遺言」という。)をした。Xは、北区土地相続分について租税特別措置法(以下「措置法」という。)69条の4第1項に規定する小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「本件特例」という。)を適用して計算した上で、本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を本件申告期限前に提出した(以下「本件申告」という。)。Xは、本件申告書に、本件相続人らが北区土地相続分について本件特例を適用することに同意したことを証する書類(以下「選択同意書」という。)を添付しなかった。なお、本件申告期限の時点において、本件相続に係る遺産のうち、分割された財産(以下「分割財産」という。)は北区土地相続分及び北区建物相続分のみであり、川口土地相続分は、分割されていない財産(以下「未分割財産」という。)であった。
これに対し、処分行政庁は、平成25年7月9日付で、Xに対し、北区土地相続分について本件特例の適用は認められないとする更正等をし、同年12月9日付で、本件特例は認められないものの、一部税額を減額する更正(以下「本件更正」という。)等をした。Xは、本件更正等を不服とし、前審手続を経て、国(被告)に対し、その取消しを求めて、本訴を提起した。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 本件の争点は、本件更正等の適法性であり、具体的には、Xが、本件申告において、本件相続人らの選択同意書を添付せずに、北区土地相続分について本件特例の適用を受けることができるか否かである。
2 国の主張 (1)北区土地及び川口土地はいずれも特例対象宅地等に該当し、また、特例対象宅地等の一つである川口土地を取得した相続人は、本件相続税の申告期限の時点においてX及び他の相続人らであったから、本件においては、措置法施行令40条の2第3項(編注=現行5項、以下同じ。)3号に定める書類(選択同意書)の添付が必要であるにもかかわらず、当該選択同意書の添付がない。
(2)本件申告書の付表1の「特例の対象となる財産を取得したすべての人の氏名」欄には、Xの氏名のみが記載されており、他の相続人らの氏名は記載されていなく、そして、他に、本件特例の対象となり得る特例対象宅地等を取得した他の相続人らが、北区土地相続分について本件特例を適用することに同意したことを証する書類の添付があったといえるような事情は何ら認められないことからすれば、本件においては、選択同意書の添付があったとは認められない。
(3)以上のとおり、Xの本件相続税の申告書には、特例対象宅地等を取得した本件相続人ら全員が、選択特例対象宅地等として北区土地相続分を選択することについて同意をしたことを証する書類が添付されていない上に、そもそも、当該選択について本件相続人ら全員の同意が得られていないのであるから、本件特例の適用要件を欠くことは明らかである。
3 Xの主張 (1)措置法69条の4第1項の「取得した財産」との文言は、申告書提出期限までに確定的に取得した財産を指すものであって、当該期限における未分割財産を含むものではない。このことを確認的に規定したのが、同条4項本文である。
遺言は、しばしばその有効性が争いとなるため、申告書提出期限までに、遺言対象となっている特例対象宅地等についての全ての相続人の選択同意書を取ることは事実上困難なことが多いから、遺言対象の特例対象宅地等についてのみ、事実上、相続税の確定申告時点で、本件特例を排除するに近い結果を招くこととなる。
しかし、これは、事業等の継続のために遺言をしてまで特例対象宅地等を引き継がせようとした被相続人の意思に明らかにそぐわない結果をもたらすといわざるを得ないし、遺言対象の特例対象宅地等を、そうではない特例対象宅地等に比べて不当に不利益を扱うものでもある。
したがって、措置法69条の4第4項本文を確認的規定と見る解釈の方がより優れているから、措置法69条の4第1項の「取得した財産」には、未分割財産は含まれない。そのため、本件において特例対象宅地等となるのは、北区土地相続分だけである。
北区土地相続分は、Xが遺言により単独で取得したのであるから、同相続分に本件特例の適用をするに当たっては、他の相続人らの同意を証する書類(選択同意書)の提出は不要であり(措置法施行令40条の2第3項ただし書)、この点を誤ってされた本件更正等は違法というほかはない。
(2)小規模宅地等についてその評価減を認めることとされたのは、事業用宅地及び居住用宅地が、その本質として、処分に相当の制約がかかる財産という特徴を持つためであり、本件特例は、後天的な政策的恩典として小規模宅地等の評価減を認めているというよりも、先天的な小規模宅地等の財産的本質から、課税価格の評価減を認めた規定となっているものである。それゆえ、措置法69条の4第1項が「政令で定めているところにより選択」することとしているのは、政策的恩典を付すための特別な要件を付加するという趣旨ではなく、あくまで現行の相続税法が採った技術的枠組み上、課税価格を相続人等間で同一にする必要から、その技術的細目を政令に委任する趣旨にすぎない。したがって、政令の定めが技術的細目要件としての機能を超えて、実体要件としての機能を持ってしまう場合には、それは政令の委任の範囲を超えた規定となってしまうから、措置法施行令40条の2第3項3号は、政令への委任の範囲を超えてしまうため、租税法律主義に違反した違憲無効な規定となる。
(3)本件でXが問題提起しているのは、遺言対象となった特例対象宅地等についてだけ、措置法69条の4第4項ただし書のルート、すなわち確定申告時点で未分割の上申書を提出した上で、選択同意書の取得の蓋然性が最も高まる「被相続人の遺産についての協議が整った段階」で選択同意書を取得し、本件特例の適用を求めるというルートが用意されていないことにある。遺言対象となった特例対象宅地等について、「分割されていない」(措置法69条の4第4項本文)とみることは不可能であるため、上記の特例対象宅地等だけ、措置法69条の4第4項ただし書のルートに載せることができないのである。
(4)上記の立法の不備の結果、一方で、その立法の条文を丁寧に読み込み、遺言対象となった特例対象宅地等について「分割されていない特例対象宅地等」(措置法69条4項本文)に含ませることはできない、と正確に文理に従って処理した者が救済されず、もう一方で、条文を丁寧に読み込むことをせずに、条文から離れた違法な上記取扱いに従って処理した者が本件特例を受けられるという事態が生じるのは、いかにも本末転倒な結論であろう。したがって、本件では、上記の本末転倒な結論を避けるべく、適切な解決の道が示されなければならない。
措置法69条の4第4項の「取得した財産」という文言について、他の条項との整合的解釈の問題からXが主張する解釈が採用できないのであれば、上記問題点の緩やかな是正を解釈によって行う唯一の道は、次のような形で措置法69条の4第1項と同条4項本文を位置付けることである。
すなわち、同条4項本文の規定は、同項本文にいう「分割されていない特例対象宅地等」を同条1項のいわゆる柱書きの「すべての特例対象宅地等」から除外する意味の規定と理解するのである。
そして、上記のとおり理解すれば、他の特例対象宅地等について未分割の現状、特例対象宅地等の全てを取得しているのはXだけであるから、Xには選択同意書の添付が不要なのであり、本件更正は違法となる。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)相続税は、相続又は遺贈により財産を取得した者の被相続人からこれらの事由により財産を取得した全ての者(以下「全ての相続人等」という。)に係る相続税の総額を計算し、当該相続税の総額を基礎としてそれぞれこれらの事由により財産を取得した者に係る相続税額として計算した金額により、課するものとされている(相法11)。
そして、措置法69条の4第1項は、個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに特例対象宅地等がある場合に、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、同項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をした部分(選択特例対象宅地等)については、限度面積要件を満たす当該選択特例対象宅地等(小規模宅地等)に限り、相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額の算定に当たり、一定割合を減額する旨の特例(本件特例)を定めている。
(2)措置法69条の4第1項は、相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格を計算する際の特例として定められたものであるところ、相続税の計算に当たっては、同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る相続税の課税価格(相続税法11条の2)に相当する金額の合計額を基にするものとしているのであって、課税価格の算定の基礎となる「相続又は遺贈により取得した財産」には、未分割財産が含まれるものというべきであるから、措置法69条の4第1項の「相続又は遺贈により取得した財産」についても、未分割財産が含まれるものというべきである。そして、このことは、相続税法55条本文が、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続又は包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合等において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとすると定めていることからも明らかである。
また、措置法69条の4第1項は、「当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、同項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの」(選択特例対象宅地等)を本件特例の適用対象とする旨を定め、選択特例対象宅地等を、本件特例を受けようとする個人の取得に係る特例対象宅地等の中から選択したものではなく、同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る全ての特例対象宅地等の中から選択したものとしている。これは、前記のとおり、相続税の計算に当たっては、同一の被相続人に係る相続人等に係る相続税の課税価格(相続税法11条の2)に相当する金額の合計額を基にするものとしているのであって、相続税の課税価格の確定のためには、同一の被相続人に係る全ての相続人等の課税価格が全ての相続人等との関係において同額で確定されていなければならないところ、相続税の課税価格の計算に係る特例である本件特例においても、同一の被相続人等に係る相続人等が特例対象宅地等のうちそれぞれ異なるものを選択して相続税の課税価格を確定することができない結果となることがないよう、全ての相続人等の間において、選択する特例対象宅地等が同一のものとなることを前提としているからであると解される。
このように、本件特例の前提として要求されている同条項の「選択」とは、単に本件特例を受けようとする個人のみが選択をすれば足りるものではなく、全ての相続人等間で統一された選択をすることが当然に要求されているというべきであるところ、これを受けて、措置法施行令40条の2第3項は、特例対象宅地等のうち、本件特例の適用を受けるものの選択は、当該相続若しくは遺贈又は贈与により特例対象宅地等並びに特例対象山林及び特例対象受贈山林の全てを取得した個人が1人である場合を除き、当該特例対象宅地等又は特例対象山林若しくは特例対象受贈山林を取得した全ての個人の選択同意書を相続税の申告書に添付することを定めているものと解することができる。
(3)これを本件についてみると、北区土地相続分及び川口土地相続分は、本件被相続人又は本件被相続人と生計を一にしていたその長男であるXの事業の用に供されていた宅地等であって、措置法69条の4第1項にいう財務省令(措置法施行規則23の2①)で定める建物の敷地の用に供されているもので政令(措置法施行令40の2②)で定めるものに該当することは明らかであり、川口土地相続分のような未分割財産も特例対象宅地等に含まれることは上記(1)に述べたとおりであるから、北区土地相続分及び川口土地相続分は、いずれも特例対象宅地等に該当するというべきである。
そして、川口土地相続分は、本件相続税の申告期限の時点において未分割財産であり、本件被相続人の共同相続人である本件相続人らの共有に属していたことになるから、本件相続により、北区土地相続分及び川口土地相続分から成る特例対象宅地等を取得したのは、本件相続人ら全員ということになる。したがって、本件相続において、特例対象宅地等の選択をして本件特例の適用を受けるためには、特例対象宅地等を取得した全ての相続人である本件相続人らの選択同意書を相続税の申告書に添付してしなければならず(措置法施行令40の2③本文)、Xが、本件申告において、本件相続人らの選択同意書を添付せずに、北区土地相続分について本件特例の適用を受けることはできないということになる。
そこで、本件申告についてみると、Xが、本件相続人らが北区土地相続分について本件特例を適用することに同意したことを証する書類(選択同意書)を本件申告書に添付していなかったことは、前提事実のとおりである。
なお、措置法施行令40条の2第3項が定める選択同意書の添付は、課税実務においては、相続税申告書第11・11の2表の付表1に特例対象宅地等の選択をするに当たって同意をした相続人の氏名を記載することによっても行われていることが認められるところ、証拠によれば、本件申告書の第11・11の2表の付表1の「特例の対象となる財産を取得したすべての人の氏名」欄には、Xの氏名のみが記載されており、他の相続人らの氏名は記載されていないことが認められるから、これをもって選択同意書が添付されていたということもできない。
以上によれば、Xは、本件申告において、本件相続人らの選択同意書を添付していないのであるから、北区土地相続分について、本件特例を適用することはできないというべきである。
(4)Xは、特例対象宅地等を相続させる旨の遺言が存在する場合に、申告時点での選択同意書の添付を要するという、技術的細目要件としての機能を超えて、実体要件としての機能を有するに至ってしまうとして、措置法施行令40条の2第3項3号は、租税法律主義に違反した違憲無効な規定となる旨を主張する。
しかしながら、前記のとおり、措置法69条の4第1項は、選択特例対象宅地等を、同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る全ての特例対象宅地等の中から選択したものと定め、全ての相続人等間で統一された選択をすることを要求しているものというべきであって、措置法施行令40条の2第3項は、これを受けて、特例対象宅地等のうち、本件特例の適用を受けるものの選択は、特例対象宅地等を取得した個人が1人である場合を除き、当該特例対象宅地等を取得した全ての個人の選択同意書を相続税の申告書に添付することを定めているのであるから、措置法69条の4第1項に規定する「政令で定めるところにより選択」との文言を受けて、その委任に基づき具体的手続を定めた規定であることが明らかである。したがって、措置法40条の2第3項3号が租税法律主義に違反する旨のXの主張は、採用することができない。
(5)Xは、遺言対象となった特例対象宅地等についてだけ、確定申告時点で未分割の上申書を出した上で、選択同意書の取得の蓋然性が最も高まる「被相続人の遺産についての協議が整った段階」で選択同意書を取得し、本件特例の適用を求めるというルートが用意されていないという問題があり、この原因は、もっぱら立法の不備によるというほかない旨を主張する。
しかし、措置法69条の4第4項本文は、同項第1項の規定は、申告期限までに分割されていない特例対象宅地等については、適用しない旨を定め、未分割財産を本件特例の対象から除くものとしているところ、これは、同条1項が、相続開始の直前において被相続人等の居住の用又は事業の用に供されている選択特例対象宅地等のうち、被相続人の事業を継続する者又は居住を継続する者等が当該宅地等を取得した場合と、そうでない者が取得した場合とで減額割合を異にしていることから、当該宅地等を誰が取得するか確定しなければ、いずれの減額割合を用いることになるのか判定することができないことになるため、当該宅地等が相続人等間で分割されていることを本件特例の適用要件としたものと解される。そして、このような同項本文の規定があることを前提として、同項ただし書は、分割されていない宅地等が申告書の提出期限から3年以内等に分割された場合には、本件特例の対象とする旨を定めている。
以上に述べたところによれば、措置法69条の4第4項は、申告期限までに分割されていない財産については、上記の減額割合を判定することができないことから、原則として、本件特例を適用しないものとする旨を定めた規定であることが明らかであるところ、特例対象宅地等が分割されている場合には、当該宅地等を誰が取得するのかが確定し、当該宅地等について本件特例が適用されたときの減額割合を判定することができるのであって、このような場合には、全ての相続人等の間において、当該宅地等について本件特例の適用を受けるものとして選択することができる状態にあるというべきである。そして、このことは、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合であっても異なることはない。すなわち、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合において、常に全ての相続人等の選択同意書の添付が不可能あるいは困難となるものではないことは明らかであるし、かかる選択同意書を添付することが困難となるのは、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合以外においても一般に生じ得るものというべきである。したがって、本件特例の適用に関し、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合にのみ不利益に取り扱われているということはできないというべきである。
四、解説
はじめに 本件特例は、相続税における「第2の基礎控除」と称されるように、相続税の税額算定に多額な影響を及ぼすので、同税の申告において無視できないものである。また、本件特例は、単に相続税の特例として認識されているだけではなく、措置法が定める数多くある租税特別措置の中で最も重視されているものと言える。そして、平成25年度税制改正において、相続税の基礎控除額が40%減額され、かつ、最高税率が55%に引き上げられ、当該増税措置が平成27年1月1日から施行されたため、本件特例の活用が相続税対策の重要な課題にもなっている。
この本件特例の適用においては、実務上、当該宅地が本件特例の対象となる「小規模宅地等」に該当するか否かという実体要件の充足の有無が検討されるが、とかく手続要件については軽視される傾向にある。しかし、かかる手続要件については、当該要件を満たさなかった場合に宥恕規定が設けられていない限り、当該特例が適用されなくなるので留意を要する。
本件においては、本件特例の適用対象地が2か所あるところ、Xが、本件申告に当たって、一方の適用対象地について選択し、他の相続人らの同意を得ず選択同意書を添付しなかった場合に、本件特例の適用が認められるか否かが争われたものである。本判決は、本件特例の適用を認めなかった本件更正を適法と認めたもので、その結論自体は動かし難いものであるとしても、本件特例(ひいては、租税特別措置の各種特例)における手続要件のあり方について考えさせられる事案ではある。
1 本件特例の実体要件 (1)個人が事業の用又は居住の用に供していた小規模宅地については、それらが相続人等の生活基盤の維持のために不可欠なものであるということで、既に、昭和50年から、当初は国税庁の通達によって、200㎡まで20%の評価減を行うという特例が設けられてきた。その特例が、租税法律主義の原則に反する旨の批判もあり、かつ、小規模宅地の課税優遇の重要性が指摘され、当該特例は、昭和58年度税制改正によって措置法の特例として設けられることになった。その時の立法趣旨は、次のように説明されている(注1)。
「ところで、今回、前述のように取引相場のない株式の相続税の評価について改善合理化を行うこととされたことに関連し、税制調査会の「昭和58年度の税制改正に関する答申」において「株式評価について改善合理化を図ることの関連で、個人が事業の用又は居住の用に供する小規模宅地についても所要の措置を講ずることが適当である。」とされたことから、最近における地価の動向にも鑑み、個人事業者等の事業の用又は居住の用に供する小規模宅地の処分についての制約面に一層配意し、特に事業用土地については、事業が雇用の場であるとともに取引先等と密接に関連している等事業主以外の多くの者の社会的基盤として居住用土地にはない制約を受ける面があること等に鑑み、従来の通達による取扱いを発展的に吸収して相続税の課税上特別の配慮を加えることとし、以下に述べる小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例として法定することとされました。」
その後、本件特例は、逐年、その優遇措置が拡充され、現行法では、居住用と事業用の各宅地について併用適用も認められ、合計730㎡まで、最高80%の課税軽減が認められることになっている(注2)。
(2)この特例の実体要件につき、措置法69条の4第1項は、「個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(〈略〉)の事業(〈略〉)の用又は居住の用(〈略〉)に供されていた宅地等(〈略〉)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(〈略〉)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得した特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの(〈略〉)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下この項において「小規模宅地等」という。)に限り、相続税法第11条の2(〈略〉)に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。」と定めている。
かくして、本件に即していうと、特定事業用宅地等である小規模宅地等については、当該小規模宅地等の価額の20%を相続税の課税価格に算入すれば足りる(措法69の4①一)。また、限度面積要件は、当該相続又は遺贈により特例対象宅地等を取得した者に係る選択特例対象宅地等の区分ごとに定められているが、本件のような特定事業用宅地等については、合計400㎡までである(措法69の4②一)。この場合、特定居住用宅地等についても、330㎡まで適用できる(措法69の4②二)ので、合計730㎡まで当該小規模宅地等の価額の20%を課税価格に算入すれば足りることになる(措法69の4①②)。
次に、特定事業用宅地等とは、「被相続人等の事業(〈略〉)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族(〈略〉)が相続又は遺贈により取得したもの(〈略〉)をいう。」(措法69の4③一)のである。そして、当該親族が、相続開始時から相続税法27条、29条又は31条2項の規定による申告書の提出期限までの間に当該宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、当該申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該事業を営んでいることを要する(措法69の4③一イ)。
2 本件特例の手続要件 (1)本件特例は、前記1のような実体要件を満たしている場合であっても、次のような手続要件を満たしていなければ、その適用は認められないことになる。まず、措置法69条の4第4項は、次のとおり定めている。
「第1項の規定は、同項の相続又は遺贈に係る相続税法第27条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されていない特例対象宅地等については、適用しない。ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合(当該相続又は遺贈により財産を取得した者が次条1項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。」
また、措置法69条の4第6項は、申告要件について、次のように定めている。
「第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法第27条又は第29条の規定による申告書(〈略〉)に第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。」
(2)以上の措置法本法の要件を補充するために、政省令では、次のように定めている。まず、措置法施行令40条の2第3項(現行5項)は、要旨次のように定めている。
「法69条の4第1項に規定する個人が相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により取得した特例対象宅地等(〈略〉)のうち、同項の規定の適用を受けるものの選択は、次に掲げる書類の全てを同条6項に規定する相続税の申告書に添付してするものとする。ただし、当該相続若しくは遺贈又は贈与により特例対象宅地等の全てを取得した個人が1人である場合には、1号及び2号に掲げる書類とする。
1号 当該特例対象宅地等を取得した個人がそれぞれ措置法69条の4第1項の規定の適用を受けるものとして選択をしようとする当該特例対象宅地等又はその一部について同項各号に掲げる小規模宅地等の区分その他の明細を記載した書類
2号 当該特例対象宅地等を取得した全ての個人に係る前号の選択をしようとする当該特例対象宅地等又はその一部の全てが措置法69条の4第2項各号に規定する限度面積要件のうちのいずれか一の要件を満たすものである旨を記載した書類
3号 当該特例対象宅地等又は当該特例対象山林若しくは当該特例対象受贈山林を取得した全ての個人の1号の選択についての同意を証する書類(以下、同号に規定する書類を「選択同意書」という。)」
また、措置法69条の4第6項が、申告要件の一つとして、「その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。」と定めているところ、措置法施行規則23条の2第7項(現行8項)は、本件のような特定事業用宅地等については、次に掲げる書類であることを定めている。
① 措置法69条の4第1項に規定する小規模宅地等に係る同項の規定による相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額の計算に関する明細書
② 措置法施行令40条の2第3項各号に定める書類(同項ただし書の場合に該当するときは、同項1号及び2号に掲げる書類)
③ 遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(当該書類に当該相続に係る全ての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る。)の写し(当該自己の印に係る印鑑証明書が添付されているものに限る。)その他の財産の取得の状況を証する書類
3 特例規定の解釈基準 (1)租税法の解釈については、一般に、「租税法は侵害規範(〈略〉)であり、法的安定性の要請が強くはたらくから、その解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されない(〈略〉)。〈中略〉ただし、文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合には、規定の趣旨目的に照らしてその意味内容を明らかにしなければならない」(注3)と解されている。また、「租税特別措置(政策税制)に関する規定の解釈についても、原則として文理解釈によるべきであるが、必要に応じて規定の趣旨・目的を勘案すべきである。その場合には規定の立法趣旨の参照が必要となることが多いであろう。」(注4)と解されている。
他方、裁判例における措置法上の特例規定の解釈については、多くの裁判例が「租税特別措置法は、租税負担の特例を認めたものであるから、同法各条に規定する負担軽減のための要件は、みだりに拡張解釈をすることは許されない」旨解されている(注5)。また、このような厳格な解釈とは別に通達等においてまま拡張解釈等が行われることとの関係については、次のように解されている(注6)。
「租税特別措置法は、本来ならば、所得税法等に基づき課せられる税負担等について政策的考慮から、その軽減等を図るための特例を規定したものであるから、その適用に当たっては、規定を厳格に適用すべきものということができ、規定の文言から離れた拡張解釈や類推適用することは、そのような規定の文言から拡張解釈や類推適用が課税実務上一般的に行われ、かえって、文言どおりに当該規定を適用することが、平等原則あるいは租税法律関係における信義則に違反するといった特段の事情が存しない以上、許されないというべきである。」
(2)以上のような解釈基準に対し、実務上、文理解釈から離れた拡張解釈がまま行われることがある。例えば、本件の措置法69条の4に関しても、同条1項は、本件特例につき、「当該相続の開始の直前において、……事業の用又は居住の用に供されていた宅地等」についてその適用を認めるとしているのであるが、国税庁の通達では、現実に、事業等の用に供されていなくても、事業用建物等の建築中等であって、「当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったと認められるとき」には、本件特例を認めることにしている(租税特別措置法(相続税関係)通達69の4-5、同69の4-8参照)。
また、このような拡張解釈は、裁判例においてもみられるところであり、例えば、名古屋地裁平成10年2月6日判決(税資230号384頁)は、貸駐車場業を予定してその建物を建築中に相続が開始し、当該相続税の法定申告期限になっても事業の用に供することができなかった場合にも、本件特例を認めるべきである旨判示している(注7)。また、最高裁平成19年1月23日第三小法廷判決(税資257号順号10614)は、居住用宅地につき、相続開始時に、土地区画整理事業中のため当該宅地が「更地」の状態であったものにつき、本件特例を認めるべきである旨判示している(注8)。
なお、そのほか、文理解釈に拘わらず、拡張解釈した事例として、最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決(民集63巻6号1092頁)(注9)等がある。
4 本件における本件特例適用の可否 (1)本件においては、Xを含む本件相続人らは、本件相続によって、いずれも本件特例の適用対象となる北区土地相続分及び川口土地相続分を含む相続財産を取得したものであるが、本件申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった。しかし、Xは、被相続人であるKの遺言(本件遺言)により北区土地相続分を取得したものであるとして、当該土地について本件特例を適用して、本件相続税について本件申告を行ったものであるが、前述のように、未分割であったため、措置法施行令40条の2第3項3号に定める選択同意書を本件申告書に添付しなかった。
これに対し、処分行政庁は、本件特例の手続要件である本件申告書に選択同意書の添付がなかったということで、本件特例の適用を否認する本件更正等を行った。かくして、Xは、本訴を提起し、前述したように、①本件特例における「取得した財産」とは、申告書提出期限までに確定的に取得した財産(遺言による取得)を指すものであって、措置法69条の4第4項は確認的規定に過ぎない、②措置法施行令40条の2第3項3号の規定は、法律の委任の範囲を超えたもので、租税法律主義に反する、③税務署の実務では、遺言対象となった特例対象宅地等について、未分割の上申書を添付させ、最終的な遺産分割協議成立段階で本件特例の適用を認めるという運用がされている、④本件のような確定的に特例対象宅地等を取得している場合には、措置法69条の4第1項と4項とを弾力的に解すべきである、等を主張した。
(2)このようなXの主張に対し、本判決は、前述のように、措置法69条の4第1項等の立法趣旨と解釈指針を判示した上で、本件に即して、①Xが、本件申告において、選択同意書を添付しなかったから、北区土地相続分について本件特例の適用を受けることはできない、②措置法施行令40条の2第3項3号は、措置法69条の4第1項の委任を受けて定められた手続規定であるから、租税法律主義に違反しない、③特例対象宅地等について遺言対象となっているからといって、関係条項を弾力的に解釈する余地はない、等と判示して、Xの主張をいずれも退け、その請求を棄却した。
本件においては、特定事業用宅地等である北区土地相続分の本件特例の適用につき、本件相続人らの遺産分割協議が整わず、選択同意書を本件申告書に添付できなかったことは明白であり、X自身それを自認しているのであるから、前述した本件特例の各条項の文言に照らせば、本件特例の適用は認められないことになる。そのことを確認的に判示したのが、本判決であるといえる。
しかしながら、前記3で述べたように、租税法の解釈においては、原則として、文理解釈によるとしても、拡張解釈や類推解釈の余地がないわけではなく、現に、本件特例の実体要件については、国税庁の通達も、当該規定の文言に拘わらず拡張解釈を行っており、従前の裁判例においても、当時の国税庁の拡張解釈が不十分であるとして、更に弾力的に解釈するように求めてきたところである。また、他の法規についても、文理解釈に拘泥せずに、納税者を救済した裁判例も紹介してきたところである。そうであれば、本件のような手続要件についても、そのような拡張解釈が認められるかが注目されたが、本判決では認められることはなかった。
(3)また、Xは、措置法施行令40条の2第3項の課税要件法定主義違反を主張するが、近年の租税法の違憲審査についての判決の傾向からみて、本判決の結論も眼に見えているといえる。すなわち、租税法の違憲審査については、最高裁昭和60年3月27日大法廷判決(民集39巻2号247頁)(注10)が、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。」と判示した後、その後の裁判例は、違憲審査に極めて慎重になっている。
例えば、大阪地裁平成7年10月17日判決(行裁判例集46巻10・11号942頁)、大阪高裁平成10年4月14日判決(訟務月報45巻6号1112頁)及び最高裁平成11年6月11日第二小法廷判決(税資243号270頁)は、昭和63年に判定された旧措置法69条の4の規定に基づき、23億円で取得した土地が相続開始時に9億円に値下がりしても、13億円の相続税額を課した課税処分の適否が争われた事案につき、当該規定は合憲であるが、当該規定どおりに課税した処分は違憲状況になる旨判示している。また、最高裁平成23年9月30日第二小法廷判決(裁時1540号5頁)は、平成16年3月末に成立した土地建物等の譲渡損失の損益通算禁止規定を同年1月1日に遡及適用した課税処分を合憲とし、大阪高裁平成21年10月16日判決(訟務月報57巻2号318頁)等は、法人税法施行令72条の3が法律の委任規定がない(明確でない)にもかかわらず使用人賞与の損金算入規定を合憲と判示している(注11)。このような裁判例の動向に照らすと、本件についても、裁判所における違憲判断は適わぬことと考えられる。
(4)結局、本件のように、相続税の法定申告期限までに遺産分割の協議が整わず未分割のときには、当該特定事業用宅地等について本件特例を適用しないで当該相続税の期限内申告を済ませ、措置法69条の4第4項ただし書及び5項の規定に基づき、当該申告期限から3年以内に分割を済ませ、相続税法32条に定める更正の請求の特則の定めに従って、更正の請求によって本件特例の適用を受けた減額更正を受けることが望まれることになる。この場合、「3年以内」については、「当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内」(措法69の4④ただし書のかっこ書)に延長されることになっている。
5 本判決の意義と問題点 以上のように、本件は、本件特例の対象地が2箇所あり、かつ、本件申告期限までに未分割であった場合に、本件相続人らの1人であるXが、被相続人Kの遺言により、本件特例の対象の一つである北区土地相続分を本件相続によって取得したものであるとし、措置法施行令40条の2第3項3号に定める選択同意書を添付せずに本件特例を適用して本件申告をしたときに、本件特例の適用を否認した本件更正等の適否が争われたものである。
本判決は、前述のように、Xの各主張に理由がないとして、その請求を棄却したものであるが、その結論自体は、前述した理由により覆し難いものと考えられる。ともあれ、本判決は、措置法上の特例適用に当たって、手続要件を満たすことの重要性を認識させられたことに意義があるものと考えられる。
(注1)国税庁「改正税法のすべて 昭和58年」177頁。
(注2)本件特例の変遷については、品川芳宣編著「資産・事業承継対策の現状と課題」(大蔵財務協会 平成28年)137頁等参照。
(注3)金子宏「租税法 第21版」(弘文堂 平成28年)115頁。
(注4)前出(注3)117頁。
(注5)東京地裁昭和44年12月9日判決(税資57号669頁)、東京高裁昭和45年7月13日判決(行裁例集21巻7・8号1018頁)、岡山地裁昭和57年7月20日判決(税資127号321頁)等参照。
(注6)東京地裁平成10年6月26日判決(税資232号864頁)。
(注7)当該事案当時の取扱い通達では、相続開始時には事業の用に供されていなくても、当該相続税の申告時までに事業の用に供されている場合に、当該特例を認めることとしていた(本判決については、品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第三版」(大蔵財務協会 平成26年)925頁等参照)。
(注8)当該判決の詳細については、前出(注7)932頁参照。
(注9)前出(注7)10頁等参照。
(注10)同判決の評釈については、中里実「月刊税務事例創刊400号(記念出版)」12頁等参照。
(注11)上記各判決については、前出(注7)906頁、137頁及び563頁を参照。
小規模宅地の課税特例の適用と手続要件(共同相続人の選択同意書)
東京地裁平成28年7月22日判決(平成27年(行ウ)第57号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X(原告)の母K(被相続人)は、平成22年2月27日に死亡し、相続(以下「本件相続」という。)が開始した。本件相続に係る共同相続人は、X(Kの長男)、М(同長女)、R(同次女)及びD(同三女)であった(以下「本件相続人ら」といい、X以外の相続人らを「他の相続人ら」という。)。
本件相続の財産には、北区に所在する地積1,278.21㎡の土地(以下「北区土地」という。)の1000分の457の割合による共有持分(以下「北区土地相続分」という。)及び北区土地上に存する建物(以下「北区建物」という。)の1000分の457の割合による共有持分(以下「北区建物相続分」という。)並びに川口市に所在する地積533㎡の土地(以下「川口土地」という。)の5分の1の割合による共有持分(以下「川口土地相続分」という。)が含まれている。北区建物は、本件相続の開始直前において、Kと生計を一にしていたXが経営する診療所として利用され、北区土地は、当該診療所の敷地等として一体で利用されており、Xの本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告書の提出期限(以下「本件申告期限」という。)まで引き続き上記のように事業の用に供されていた。
川口土地上には、共同住宅であるA建物(以下「川口A建物」という。)及びB建物(以下「川口B建物」といい、A建物と併せて「川口各建物」という。)が存在し、川口土地の一部は当該入居者の駐車場の用に供されていた。川口各建物の貸主であるKと借主であるS社は、平成18年11月に締結した貸室賃貸借契約が期間満了したことに伴い、平成20年10月7日付で、要旨、①川口A建物については、契約期間2年、賃料月31万円余、②川口B建物については、契約期間2年、賃料月32万円余とする当該契約を更新した。
(2)Kは、平成19年1月14日付の遺言書により、北区土地相続分及び北区建物相続分を全てXに相続させる旨の遺言(以下「本件遺言」という。)をした。Xは、北区土地相続分について租税特別措置法(以下「措置法」という。)69条の4第1項に規定する小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「本件特例」という。)を適用して計算した上で、本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を本件申告期限前に提出した(以下「本件申告」という。)。Xは、本件申告書に、本件相続人らが北区土地相続分について本件特例を適用することに同意したことを証する書類(以下「選択同意書」という。)を添付しなかった。なお、本件申告期限の時点において、本件相続に係る遺産のうち、分割された財産(以下「分割財産」という。)は北区土地相続分及び北区建物相続分のみであり、川口土地相続分は、分割されていない財産(以下「未分割財産」という。)であった。
これに対し、処分行政庁は、平成25年7月9日付で、Xに対し、北区土地相続分について本件特例の適用は認められないとする更正等をし、同年12月9日付で、本件特例は認められないものの、一部税額を減額する更正(以下「本件更正」という。)等をした。Xは、本件更正等を不服とし、前審手続を経て、国(被告)に対し、その取消しを求めて、本訴を提起した。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 本件の争点は、本件更正等の適法性であり、具体的には、Xが、本件申告において、本件相続人らの選択同意書を添付せずに、北区土地相続分について本件特例の適用を受けることができるか否かである。
2 国の主張 (1)北区土地及び川口土地はいずれも特例対象宅地等に該当し、また、特例対象宅地等の一つである川口土地を取得した相続人は、本件相続税の申告期限の時点においてX及び他の相続人らであったから、本件においては、措置法施行令40条の2第3項(編注=現行5項、以下同じ。)3号に定める書類(選択同意書)の添付が必要であるにもかかわらず、当該選択同意書の添付がない。
(2)本件申告書の付表1の「特例の対象となる財産を取得したすべての人の氏名」欄には、Xの氏名のみが記載されており、他の相続人らの氏名は記載されていなく、そして、他に、本件特例の対象となり得る特例対象宅地等を取得した他の相続人らが、北区土地相続分について本件特例を適用することに同意したことを証する書類の添付があったといえるような事情は何ら認められないことからすれば、本件においては、選択同意書の添付があったとは認められない。
(3)以上のとおり、Xの本件相続税の申告書には、特例対象宅地等を取得した本件相続人ら全員が、選択特例対象宅地等として北区土地相続分を選択することについて同意をしたことを証する書類が添付されていない上に、そもそも、当該選択について本件相続人ら全員の同意が得られていないのであるから、本件特例の適用要件を欠くことは明らかである。
3 Xの主張 (1)措置法69条の4第1項の「取得した財産」との文言は、申告書提出期限までに確定的に取得した財産を指すものであって、当該期限における未分割財産を含むものではない。このことを確認的に規定したのが、同条4項本文である。
遺言は、しばしばその有効性が争いとなるため、申告書提出期限までに、遺言対象となっている特例対象宅地等についての全ての相続人の選択同意書を取ることは事実上困難なことが多いから、遺言対象の特例対象宅地等についてのみ、事実上、相続税の確定申告時点で、本件特例を排除するに近い結果を招くこととなる。
しかし、これは、事業等の継続のために遺言をしてまで特例対象宅地等を引き継がせようとした被相続人の意思に明らかにそぐわない結果をもたらすといわざるを得ないし、遺言対象の特例対象宅地等を、そうではない特例対象宅地等に比べて不当に不利益を扱うものでもある。
したがって、措置法69条の4第4項本文を確認的規定と見る解釈の方がより優れているから、措置法69条の4第1項の「取得した財産」には、未分割財産は含まれない。そのため、本件において特例対象宅地等となるのは、北区土地相続分だけである。
北区土地相続分は、Xが遺言により単独で取得したのであるから、同相続分に本件特例の適用をするに当たっては、他の相続人らの同意を証する書類(選択同意書)の提出は不要であり(措置法施行令40条の2第3項ただし書)、この点を誤ってされた本件更正等は違法というほかはない。
(2)小規模宅地等についてその評価減を認めることとされたのは、事業用宅地及び居住用宅地が、その本質として、処分に相当の制約がかかる財産という特徴を持つためであり、本件特例は、後天的な政策的恩典として小規模宅地等の評価減を認めているというよりも、先天的な小規模宅地等の財産的本質から、課税価格の評価減を認めた規定となっているものである。それゆえ、措置法69条の4第1項が「政令で定めているところにより選択」することとしているのは、政策的恩典を付すための特別な要件を付加するという趣旨ではなく、あくまで現行の相続税法が採った技術的枠組み上、課税価格を相続人等間で同一にする必要から、その技術的細目を政令に委任する趣旨にすぎない。したがって、政令の定めが技術的細目要件としての機能を超えて、実体要件としての機能を持ってしまう場合には、それは政令の委任の範囲を超えた規定となってしまうから、措置法施行令40条の2第3項3号は、政令への委任の範囲を超えてしまうため、租税法律主義に違反した違憲無効な規定となる。
(3)本件でXが問題提起しているのは、遺言対象となった特例対象宅地等についてだけ、措置法69条の4第4項ただし書のルート、すなわち確定申告時点で未分割の上申書を提出した上で、選択同意書の取得の蓋然性が最も高まる「被相続人の遺産についての協議が整った段階」で選択同意書を取得し、本件特例の適用を求めるというルートが用意されていないことにある。遺言対象となった特例対象宅地等について、「分割されていない」(措置法69条の4第4項本文)とみることは不可能であるため、上記の特例対象宅地等だけ、措置法69条の4第4項ただし書のルートに載せることができないのである。
(4)上記の立法の不備の結果、一方で、その立法の条文を丁寧に読み込み、遺言対象となった特例対象宅地等について「分割されていない特例対象宅地等」(措置法69条4項本文)に含ませることはできない、と正確に文理に従って処理した者が救済されず、もう一方で、条文を丁寧に読み込むことをせずに、条文から離れた違法な上記取扱いに従って処理した者が本件特例を受けられるという事態が生じるのは、いかにも本末転倒な結論であろう。したがって、本件では、上記の本末転倒な結論を避けるべく、適切な解決の道が示されなければならない。
措置法69条の4第4項の「取得した財産」という文言について、他の条項との整合的解釈の問題からXが主張する解釈が採用できないのであれば、上記問題点の緩やかな是正を解釈によって行う唯一の道は、次のような形で措置法69条の4第1項と同条4項本文を位置付けることである。
すなわち、同条4項本文の規定は、同項本文にいう「分割されていない特例対象宅地等」を同条1項のいわゆる柱書きの「すべての特例対象宅地等」から除外する意味の規定と理解するのである。
そして、上記のとおり理解すれば、他の特例対象宅地等について未分割の現状、特例対象宅地等の全てを取得しているのはXだけであるから、Xには選択同意書の添付が不要なのであり、本件更正は違法となる。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)相続税は、相続又は遺贈により財産を取得した者の被相続人からこれらの事由により財産を取得した全ての者(以下「全ての相続人等」という。)に係る相続税の総額を計算し、当該相続税の総額を基礎としてそれぞれこれらの事由により財産を取得した者に係る相続税額として計算した金額により、課するものとされている(相法11)。
そして、措置法69条の4第1項は、個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに特例対象宅地等がある場合に、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、同項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をした部分(選択特例対象宅地等)については、限度面積要件を満たす当該選択特例対象宅地等(小規模宅地等)に限り、相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額の算定に当たり、一定割合を減額する旨の特例(本件特例)を定めている。
(2)措置法69条の4第1項は、相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格を計算する際の特例として定められたものであるところ、相続税の計算に当たっては、同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る相続税の課税価格(相続税法11条の2)に相当する金額の合計額を基にするものとしているのであって、課税価格の算定の基礎となる「相続又は遺贈により取得した財産」には、未分割財産が含まれるものというべきであるから、措置法69条の4第1項の「相続又は遺贈により取得した財産」についても、未分割財産が含まれるものというべきである。そして、このことは、相続税法55条本文が、相続又は遺贈により財産を取得した者が相続又は包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合等において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(904条の2を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとすると定めていることからも明らかである。
また、措置法69条の4第1項は、「当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、同項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの」(選択特例対象宅地等)を本件特例の適用対象とする旨を定め、選択特例対象宅地等を、本件特例を受けようとする個人の取得に係る特例対象宅地等の中から選択したものではなく、同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る全ての特例対象宅地等の中から選択したものとしている。これは、前記のとおり、相続税の計算に当たっては、同一の被相続人に係る相続人等に係る相続税の課税価格(相続税法11条の2)に相当する金額の合計額を基にするものとしているのであって、相続税の課税価格の確定のためには、同一の被相続人に係る全ての相続人等の課税価格が全ての相続人等との関係において同額で確定されていなければならないところ、相続税の課税価格の計算に係る特例である本件特例においても、同一の被相続人等に係る相続人等が特例対象宅地等のうちそれぞれ異なるものを選択して相続税の課税価格を確定することができない結果となることがないよう、全ての相続人等の間において、選択する特例対象宅地等が同一のものとなることを前提としているからであると解される。
このように、本件特例の前提として要求されている同条項の「選択」とは、単に本件特例を受けようとする個人のみが選択をすれば足りるものではなく、全ての相続人等間で統一された選択をすることが当然に要求されているというべきであるところ、これを受けて、措置法施行令40条の2第3項は、特例対象宅地等のうち、本件特例の適用を受けるものの選択は、当該相続若しくは遺贈又は贈与により特例対象宅地等並びに特例対象山林及び特例対象受贈山林の全てを取得した個人が1人である場合を除き、当該特例対象宅地等又は特例対象山林若しくは特例対象受贈山林を取得した全ての個人の選択同意書を相続税の申告書に添付することを定めているものと解することができる。
(3)これを本件についてみると、北区土地相続分及び川口土地相続分は、本件被相続人又は本件被相続人と生計を一にしていたその長男であるXの事業の用に供されていた宅地等であって、措置法69条の4第1項にいう財務省令(措置法施行規則23の2①)で定める建物の敷地の用に供されているもので政令(措置法施行令40の2②)で定めるものに該当することは明らかであり、川口土地相続分のような未分割財産も特例対象宅地等に含まれることは上記(1)に述べたとおりであるから、北区土地相続分及び川口土地相続分は、いずれも特例対象宅地等に該当するというべきである。
そして、川口土地相続分は、本件相続税の申告期限の時点において未分割財産であり、本件被相続人の共同相続人である本件相続人らの共有に属していたことになるから、本件相続により、北区土地相続分及び川口土地相続分から成る特例対象宅地等を取得したのは、本件相続人ら全員ということになる。したがって、本件相続において、特例対象宅地等の選択をして本件特例の適用を受けるためには、特例対象宅地等を取得した全ての相続人である本件相続人らの選択同意書を相続税の申告書に添付してしなければならず(措置法施行令40の2③本文)、Xが、本件申告において、本件相続人らの選択同意書を添付せずに、北区土地相続分について本件特例の適用を受けることはできないということになる。
そこで、本件申告についてみると、Xが、本件相続人らが北区土地相続分について本件特例を適用することに同意したことを証する書類(選択同意書)を本件申告書に添付していなかったことは、前提事実のとおりである。
なお、措置法施行令40条の2第3項が定める選択同意書の添付は、課税実務においては、相続税申告書第11・11の2表の付表1に特例対象宅地等の選択をするに当たって同意をした相続人の氏名を記載することによっても行われていることが認められるところ、証拠によれば、本件申告書の第11・11の2表の付表1の「特例の対象となる財産を取得したすべての人の氏名」欄には、Xの氏名のみが記載されており、他の相続人らの氏名は記載されていないことが認められるから、これをもって選択同意書が添付されていたということもできない。
以上によれば、Xは、本件申告において、本件相続人らの選択同意書を添付していないのであるから、北区土地相続分について、本件特例を適用することはできないというべきである。
(4)Xは、特例対象宅地等を相続させる旨の遺言が存在する場合に、申告時点での選択同意書の添付を要するという、技術的細目要件としての機能を超えて、実体要件としての機能を有するに至ってしまうとして、措置法施行令40条の2第3項3号は、租税法律主義に違反した違憲無効な規定となる旨を主張する。
しかしながら、前記のとおり、措置法69条の4第1項は、選択特例対象宅地等を、同一の被相続人に係る全ての相続人等に係る全ての特例対象宅地等の中から選択したものと定め、全ての相続人等間で統一された選択をすることを要求しているものというべきであって、措置法施行令40条の2第3項は、これを受けて、特例対象宅地等のうち、本件特例の適用を受けるものの選択は、特例対象宅地等を取得した個人が1人である場合を除き、当該特例対象宅地等を取得した全ての個人の選択同意書を相続税の申告書に添付することを定めているのであるから、措置法69条の4第1項に規定する「政令で定めるところにより選択」との文言を受けて、その委任に基づき具体的手続を定めた規定であることが明らかである。したがって、措置法40条の2第3項3号が租税法律主義に違反する旨のXの主張は、採用することができない。
(5)Xは、遺言対象となった特例対象宅地等についてだけ、確定申告時点で未分割の上申書を出した上で、選択同意書の取得の蓋然性が最も高まる「被相続人の遺産についての協議が整った段階」で選択同意書を取得し、本件特例の適用を求めるというルートが用意されていないという問題があり、この原因は、もっぱら立法の不備によるというほかない旨を主張する。
しかし、措置法69条の4第4項本文は、同項第1項の規定は、申告期限までに分割されていない特例対象宅地等については、適用しない旨を定め、未分割財産を本件特例の対象から除くものとしているところ、これは、同条1項が、相続開始の直前において被相続人等の居住の用又は事業の用に供されている選択特例対象宅地等のうち、被相続人の事業を継続する者又は居住を継続する者等が当該宅地等を取得した場合と、そうでない者が取得した場合とで減額割合を異にしていることから、当該宅地等を誰が取得するか確定しなければ、いずれの減額割合を用いることになるのか判定することができないことになるため、当該宅地等が相続人等間で分割されていることを本件特例の適用要件としたものと解される。そして、このような同項本文の規定があることを前提として、同項ただし書は、分割されていない宅地等が申告書の提出期限から3年以内等に分割された場合には、本件特例の対象とする旨を定めている。
以上に述べたところによれば、措置法69条の4第4項は、申告期限までに分割されていない財産については、上記の減額割合を判定することができないことから、原則として、本件特例を適用しないものとする旨を定めた規定であることが明らかであるところ、特例対象宅地等が分割されている場合には、当該宅地等を誰が取得するのかが確定し、当該宅地等について本件特例が適用されたときの減額割合を判定することができるのであって、このような場合には、全ての相続人等の間において、当該宅地等について本件特例の適用を受けるものとして選択することができる状態にあるというべきである。そして、このことは、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合であっても異なることはない。すなわち、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合において、常に全ての相続人等の選択同意書の添付が不可能あるいは困難となるものではないことは明らかであるし、かかる選択同意書を添付することが困難となるのは、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合以外においても一般に生じ得るものというべきである。したがって、本件特例の適用に関し、特例対象宅地等が遺言対象となっている場合にのみ不利益に取り扱われているということはできないというべきである。
四、解説
はじめに 本件特例は、相続税における「第2の基礎控除」と称されるように、相続税の税額算定に多額な影響を及ぼすので、同税の申告において無視できないものである。また、本件特例は、単に相続税の特例として認識されているだけではなく、措置法が定める数多くある租税特別措置の中で最も重視されているものと言える。そして、平成25年度税制改正において、相続税の基礎控除額が40%減額され、かつ、最高税率が55%に引き上げられ、当該増税措置が平成27年1月1日から施行されたため、本件特例の活用が相続税対策の重要な課題にもなっている。
この本件特例の適用においては、実務上、当該宅地が本件特例の対象となる「小規模宅地等」に該当するか否かという実体要件の充足の有無が検討されるが、とかく手続要件については軽視される傾向にある。しかし、かかる手続要件については、当該要件を満たさなかった場合に宥恕規定が設けられていない限り、当該特例が適用されなくなるので留意を要する。
本件においては、本件特例の適用対象地が2か所あるところ、Xが、本件申告に当たって、一方の適用対象地について選択し、他の相続人らの同意を得ず選択同意書を添付しなかった場合に、本件特例の適用が認められるか否かが争われたものである。本判決は、本件特例の適用を認めなかった本件更正を適法と認めたもので、その結論自体は動かし難いものであるとしても、本件特例(ひいては、租税特別措置の各種特例)における手続要件のあり方について考えさせられる事案ではある。
1 本件特例の実体要件 (1)個人が事業の用又は居住の用に供していた小規模宅地については、それらが相続人等の生活基盤の維持のために不可欠なものであるということで、既に、昭和50年から、当初は国税庁の通達によって、200㎡まで20%の評価減を行うという特例が設けられてきた。その特例が、租税法律主義の原則に反する旨の批判もあり、かつ、小規模宅地の課税優遇の重要性が指摘され、当該特例は、昭和58年度税制改正によって措置法の特例として設けられることになった。その時の立法趣旨は、次のように説明されている(注1)。
「ところで、今回、前述のように取引相場のない株式の相続税の評価について改善合理化を行うこととされたことに関連し、税制調査会の「昭和58年度の税制改正に関する答申」において「株式評価について改善合理化を図ることの関連で、個人が事業の用又は居住の用に供する小規模宅地についても所要の措置を講ずることが適当である。」とされたことから、最近における地価の動向にも鑑み、個人事業者等の事業の用又は居住の用に供する小規模宅地の処分についての制約面に一層配意し、特に事業用土地については、事業が雇用の場であるとともに取引先等と密接に関連している等事業主以外の多くの者の社会的基盤として居住用土地にはない制約を受ける面があること等に鑑み、従来の通達による取扱いを発展的に吸収して相続税の課税上特別の配慮を加えることとし、以下に述べる小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例として法定することとされました。」
その後、本件特例は、逐年、その優遇措置が拡充され、現行法では、居住用と事業用の各宅地について併用適用も認められ、合計730㎡まで、最高80%の課税軽減が認められることになっている(注2)。
(2)この特例の実体要件につき、措置法69条の4第1項は、「個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(〈略〉)の事業(〈略〉)の用又は居住の用(〈略〉)に供されていた宅地等(〈略〉)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(〈略〉)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得した特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの(〈略〉)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下この項において「小規模宅地等」という。)に限り、相続税法第11条の2(〈略〉)に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。」と定めている。
かくして、本件に即していうと、特定事業用宅地等である小規模宅地等については、当該小規模宅地等の価額の20%を相続税の課税価格に算入すれば足りる(措法69の4①一)。また、限度面積要件は、当該相続又は遺贈により特例対象宅地等を取得した者に係る選択特例対象宅地等の区分ごとに定められているが、本件のような特定事業用宅地等については、合計400㎡までである(措法69の4②一)。この場合、特定居住用宅地等についても、330㎡まで適用できる(措法69の4②二)ので、合計730㎡まで当該小規模宅地等の価額の20%を課税価格に算入すれば足りることになる(措法69の4①②)。
次に、特定事業用宅地等とは、「被相続人等の事業(〈略〉)の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族(〈略〉)が相続又は遺贈により取得したもの(〈略〉)をいう。」(措法69の4③一)のである。そして、当該親族が、相続開始時から相続税法27条、29条又は31条2項の規定による申告書の提出期限までの間に当該宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、当該申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該事業を営んでいることを要する(措法69の4③一イ)。
2 本件特例の手続要件 (1)本件特例は、前記1のような実体要件を満たしている場合であっても、次のような手続要件を満たしていなければ、その適用は認められないことになる。まず、措置法69条の4第4項は、次のとおり定めている。
「第1項の規定は、同項の相続又は遺贈に係る相続税法第27条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されていない特例対象宅地等については、適用しない。ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合(当該相続又は遺贈により財産を取得した者が次条1項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。」
また、措置法69条の4第6項は、申告要件について、次のように定めている。
「第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法第27条又は第29条の規定による申告書(〈略〉)に第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。」
(2)以上の措置法本法の要件を補充するために、政省令では、次のように定めている。まず、措置法施行令40条の2第3項(現行5項)は、要旨次のように定めている。
「法69条の4第1項に規定する個人が相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により取得した特例対象宅地等(〈略〉)のうち、同項の規定の適用を受けるものの選択は、次に掲げる書類の全てを同条6項に規定する相続税の申告書に添付してするものとする。ただし、当該相続若しくは遺贈又は贈与により特例対象宅地等の全てを取得した個人が1人である場合には、1号及び2号に掲げる書類とする。
1号 当該特例対象宅地等を取得した個人がそれぞれ措置法69条の4第1項の規定の適用を受けるものとして選択をしようとする当該特例対象宅地等又はその一部について同項各号に掲げる小規模宅地等の区分その他の明細を記載した書類
2号 当該特例対象宅地等を取得した全ての個人に係る前号の選択をしようとする当該特例対象宅地等又はその一部の全てが措置法69条の4第2項各号に規定する限度面積要件のうちのいずれか一の要件を満たすものである旨を記載した書類
3号 当該特例対象宅地等又は当該特例対象山林若しくは当該特例対象受贈山林を取得した全ての個人の1号の選択についての同意を証する書類(以下、同号に規定する書類を「選択同意書」という。)」
また、措置法69条の4第6項が、申告要件の一つとして、「その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。」と定めているところ、措置法施行規則23条の2第7項(現行8項)は、本件のような特定事業用宅地等については、次に掲げる書類であることを定めている。
① 措置法69条の4第1項に規定する小規模宅地等に係る同項の規定による相続税法11条の2に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額の計算に関する明細書
② 措置法施行令40条の2第3項各号に定める書類(同項ただし書の場合に該当するときは、同項1号及び2号に掲げる書類)
③ 遺言書の写し、財産の分割の協議に関する書類(当該書類に当該相続に係る全ての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る。)の写し(当該自己の印に係る印鑑証明書が添付されているものに限る。)その他の財産の取得の状況を証する書類
3 特例規定の解釈基準 (1)租税法の解釈については、一般に、「租税法は侵害規範(〈略〉)であり、法的安定性の要請が強くはたらくから、その解釈は原則として文理解釈によるべきであり、みだりに拡張解釈や類推解釈を行うことは許されない(〈略〉)。〈中略〉ただし、文理解釈によって規定の意味内容を明らかにすることが困難な場合には、規定の趣旨目的に照らしてその意味内容を明らかにしなければならない」(注3)と解されている。また、「租税特別措置(政策税制)に関する規定の解釈についても、原則として文理解釈によるべきであるが、必要に応じて規定の趣旨・目的を勘案すべきである。その場合には規定の立法趣旨の参照が必要となることが多いであろう。」(注4)と解されている。
他方、裁判例における措置法上の特例規定の解釈については、多くの裁判例が「租税特別措置法は、租税負担の特例を認めたものであるから、同法各条に規定する負担軽減のための要件は、みだりに拡張解釈をすることは許されない」旨解されている(注5)。また、このような厳格な解釈とは別に通達等においてまま拡張解釈等が行われることとの関係については、次のように解されている(注6)。
「租税特別措置法は、本来ならば、所得税法等に基づき課せられる税負担等について政策的考慮から、その軽減等を図るための特例を規定したものであるから、その適用に当たっては、規定を厳格に適用すべきものということができ、規定の文言から離れた拡張解釈や類推適用することは、そのような規定の文言から拡張解釈や類推適用が課税実務上一般的に行われ、かえって、文言どおりに当該規定を適用することが、平等原則あるいは租税法律関係における信義則に違反するといった特段の事情が存しない以上、許されないというべきである。」
(2)以上のような解釈基準に対し、実務上、文理解釈から離れた拡張解釈がまま行われることがある。例えば、本件の措置法69条の4に関しても、同条1項は、本件特例につき、「当該相続の開始の直前において、……事業の用又は居住の用に供されていた宅地等」についてその適用を認めるとしているのであるが、国税庁の通達では、現実に、事業等の用に供されていなくても、事業用建物等の建築中等であって、「当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったと認められるとき」には、本件特例を認めることにしている(租税特別措置法(相続税関係)通達69の4-5、同69の4-8参照)。
また、このような拡張解釈は、裁判例においてもみられるところであり、例えば、名古屋地裁平成10年2月6日判決(税資230号384頁)は、貸駐車場業を予定してその建物を建築中に相続が開始し、当該相続税の法定申告期限になっても事業の用に供することができなかった場合にも、本件特例を認めるべきである旨判示している(注7)。また、最高裁平成19年1月23日第三小法廷判決(税資257号順号10614)は、居住用宅地につき、相続開始時に、土地区画整理事業中のため当該宅地が「更地」の状態であったものにつき、本件特例を認めるべきである旨判示している(注8)。
なお、そのほか、文理解釈に拘わらず、拡張解釈した事例として、最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決(民集63巻6号1092頁)(注9)等がある。
4 本件における本件特例適用の可否 (1)本件においては、Xを含む本件相続人らは、本件相続によって、いずれも本件特例の適用対象となる北区土地相続分及び川口土地相続分を含む相続財産を取得したものであるが、本件申告期限までに遺産分割協議が成立しなかった。しかし、Xは、被相続人であるKの遺言(本件遺言)により北区土地相続分を取得したものであるとして、当該土地について本件特例を適用して、本件相続税について本件申告を行ったものであるが、前述のように、未分割であったため、措置法施行令40条の2第3項3号に定める選択同意書を本件申告書に添付しなかった。
これに対し、処分行政庁は、本件特例の手続要件である本件申告書に選択同意書の添付がなかったということで、本件特例の適用を否認する本件更正等を行った。かくして、Xは、本訴を提起し、前述したように、①本件特例における「取得した財産」とは、申告書提出期限までに確定的に取得した財産(遺言による取得)を指すものであって、措置法69条の4第4項は確認的規定に過ぎない、②措置法施行令40条の2第3項3号の規定は、法律の委任の範囲を超えたもので、租税法律主義に反する、③税務署の実務では、遺言対象となった特例対象宅地等について、未分割の上申書を添付させ、最終的な遺産分割協議成立段階で本件特例の適用を認めるという運用がされている、④本件のような確定的に特例対象宅地等を取得している場合には、措置法69条の4第1項と4項とを弾力的に解すべきである、等を主張した。
(2)このようなXの主張に対し、本判決は、前述のように、措置法69条の4第1項等の立法趣旨と解釈指針を判示した上で、本件に即して、①Xが、本件申告において、選択同意書を添付しなかったから、北区土地相続分について本件特例の適用を受けることはできない、②措置法施行令40条の2第3項3号は、措置法69条の4第1項の委任を受けて定められた手続規定であるから、租税法律主義に違反しない、③特例対象宅地等について遺言対象となっているからといって、関係条項を弾力的に解釈する余地はない、等と判示して、Xの主張をいずれも退け、その請求を棄却した。
本件においては、特定事業用宅地等である北区土地相続分の本件特例の適用につき、本件相続人らの遺産分割協議が整わず、選択同意書を本件申告書に添付できなかったことは明白であり、X自身それを自認しているのであるから、前述した本件特例の各条項の文言に照らせば、本件特例の適用は認められないことになる。そのことを確認的に判示したのが、本判決であるといえる。
しかしながら、前記3で述べたように、租税法の解釈においては、原則として、文理解釈によるとしても、拡張解釈や類推解釈の余地がないわけではなく、現に、本件特例の実体要件については、国税庁の通達も、当該規定の文言に拘わらず拡張解釈を行っており、従前の裁判例においても、当時の国税庁の拡張解釈が不十分であるとして、更に弾力的に解釈するように求めてきたところである。また、他の法規についても、文理解釈に拘泥せずに、納税者を救済した裁判例も紹介してきたところである。そうであれば、本件のような手続要件についても、そのような拡張解釈が認められるかが注目されたが、本判決では認められることはなかった。
(3)また、Xは、措置法施行令40条の2第3項の課税要件法定主義違反を主張するが、近年の租税法の違憲審査についての判決の傾向からみて、本判決の結論も眼に見えているといえる。すなわち、租税法の違憲審査については、最高裁昭和60年3月27日大法廷判決(民集39巻2号247頁)(注10)が、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。」と判示した後、その後の裁判例は、違憲審査に極めて慎重になっている。
例えば、大阪地裁平成7年10月17日判決(行裁判例集46巻10・11号942頁)、大阪高裁平成10年4月14日判決(訟務月報45巻6号1112頁)及び最高裁平成11年6月11日第二小法廷判決(税資243号270頁)は、昭和63年に判定された旧措置法69条の4の規定に基づき、23億円で取得した土地が相続開始時に9億円に値下がりしても、13億円の相続税額を課した課税処分の適否が争われた事案につき、当該規定は合憲であるが、当該規定どおりに課税した処分は違憲状況になる旨判示している。また、最高裁平成23年9月30日第二小法廷判決(裁時1540号5頁)は、平成16年3月末に成立した土地建物等の譲渡損失の損益通算禁止規定を同年1月1日に遡及適用した課税処分を合憲とし、大阪高裁平成21年10月16日判決(訟務月報57巻2号318頁)等は、法人税法施行令72条の3が法律の委任規定がない(明確でない)にもかかわらず使用人賞与の損金算入規定を合憲と判示している(注11)。このような裁判例の動向に照らすと、本件についても、裁判所における違憲判断は適わぬことと考えられる。
(4)結局、本件のように、相続税の法定申告期限までに遺産分割の協議が整わず未分割のときには、当該特定事業用宅地等について本件特例を適用しないで当該相続税の期限内申告を済ませ、措置法69条の4第4項ただし書及び5項の規定に基づき、当該申告期限から3年以内に分割を済ませ、相続税法32条に定める更正の請求の特則の定めに従って、更正の請求によって本件特例の適用を受けた減額更正を受けることが望まれることになる。この場合、「3年以内」については、「当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内」(措法69の4④ただし書のかっこ書)に延長されることになっている。
5 本判決の意義と問題点 以上のように、本件は、本件特例の対象地が2箇所あり、かつ、本件申告期限までに未分割であった場合に、本件相続人らの1人であるXが、被相続人Kの遺言により、本件特例の対象の一つである北区土地相続分を本件相続によって取得したものであるとし、措置法施行令40条の2第3項3号に定める選択同意書を添付せずに本件特例を適用して本件申告をしたときに、本件特例の適用を否認した本件更正等の適否が争われたものである。
本判決は、前述のように、Xの各主張に理由がないとして、その請求を棄却したものであるが、その結論自体は、前述した理由により覆し難いものと考えられる。ともあれ、本判決は、措置法上の特例適用に当たって、手続要件を満たすことの重要性を認識させられたことに意義があるものと考えられる。
(注1)国税庁「改正税法のすべて 昭和58年」177頁。
(注2)本件特例の変遷については、品川芳宣編著「資産・事業承継対策の現状と課題」(大蔵財務協会 平成28年)137頁等参照。
(注3)金子宏「租税法 第21版」(弘文堂 平成28年)115頁。
(注4)前出(注3)117頁。
(注5)東京地裁昭和44年12月9日判決(税資57号669頁)、東京高裁昭和45年7月13日判決(行裁例集21巻7・8号1018頁)、岡山地裁昭和57年7月20日判決(税資127号321頁)等参照。
(注6)東京地裁平成10年6月26日判決(税資232号864頁)。
(注7)当該事案当時の取扱い通達では、相続開始時には事業の用に供されていなくても、当該相続税の申告時までに事業の用に供されている場合に、当該特例を認めることとしていた(本判決については、品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第三版」(大蔵財務協会 平成26年)925頁等参照)。
(注8)当該判決の詳細については、前出(注7)932頁参照。
(注9)前出(注7)10頁等参照。
(注10)同判決の評釈については、中里実「月刊税務事例創刊400号(記念出版)」12頁等参照。
(注11)上記各判決については、前出(注7)906頁、137頁及び563頁を参照。
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