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解説記事2017年05月29日 【ニュース特集】 税効果会計の改正案の全容(2017年5月29日号・№692)

ニュース特集
平成30年4月1日以後から適用へ
税効果会計の改正案の全容

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、日本公認会計士協会の税効果会計に関する実務指針の移管作業を行っているが、5月30日にも「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(案)等を決定する予定だ(意見募集期間は2か月)。基本的に同協会の実務指針を踏襲するものとなっているが、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異など、取扱いが一部見直される点もある。適用は平成30年4月1日以後開始する連結会計年度等の期首から適用される予定。ただし、表示や注記事項の取扱いについては早期適用も認められる。本特集では税効果会計基準等の公開草案の概要を紹介する。

基本は会計士協会の実務指針を踏襲するが……
 企業会計基準委員会が公表する予定の会計基準等は4つ。具体的には、「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(案)、「税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)」「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針(案)」である。
連結と個別の取扱いで平仄合わせ  税効果会計適用指針案については、日本公認会計士協会の税効果会計実務指針を踏襲するものとなっているが、2点ほど会計処理の見直しが行われている項目がある。その1つが個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いだ。
 現行、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異については、一律、繰延税金負債を認識することとされている。この点、改正案では、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いを、連結財務諸表における子会社及び関連会社に対する投資に係る将来加算一時差異の取扱いに合わせ、「親会社又は投資会社がその投資の売却等を当該会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に、その売却等を行う意思がない場合」を除き、繰延税金負債を計上する取扱いに見直すこととしている。連結と個別とで取扱いに差異が生じている点について平仄を合わせるものとなっている。
完全支配の国内子会社株式の評価損を想定  また、回収可能性適用指針案では、「分類1」に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いが一部見直される。具体的に「分類1」に該当する企業については、「原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」と「原則として」が追加される。
 例えば、国内の完全支配関係にある子会社株式の評価損について、企業が当該子会社株式を清算するまで保有し続ける方針がある場合、将来において税務上の損金に算入される蓋然性が低い時に当該子会社株式の評価損に係る繰延税金資産の回収可能性はないと判断することも想定されるからである。

未実現損益の税効果は従来どおり「繰延法」を採用
 未実現損益の消去に係る一時差異の取扱いに関しては、現行、税効果会計基準が採用している資産負債法の例外として繰延法が採用されている。この点、IFRS の取扱いと異なっている。また、米国会計基準では棚卸資産は繰延法だが、棚卸資産以外の資産に係る未実現損益の税効果については、繰延法から資産負債法に変更されている。
 このため、日本でも繰延法から資産負債法へ変更することが検討されていたが、従来どおり「繰延法」を採用することとしている。すべてではないが、一部の財務諸表作成者からシステム変更や内部統制の構築など多大なコストが生じるとの指摘があったからだ。
 企業会計基準委員会では、税効果会計に関しては会計基準レベルでは国際的な整合性は図られているため、無理にガイダンスレベルまで整合性を図る必要はないなどと判断した模様だ。

繰延税金資産・負債の表示はすべて非流動項目へ
 税効果会計基準の一部改正案については、表示の変更や注記事項が新たに追加される。 現行の表示に関する取扱いについては、繰延税金資産及び繰延税金負債はこれらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産又は投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債又は固定負債として表示しなければならないとされている。この点、IFRS(国際会計基準)及び米国会計基準ではいずれも非流動項目に表示するとされており、日本基準とは異なっている。
 このため、国際的な会計基準に基づく財務諸表との比較可能性の観点から日本基準でも繰延税金資産及び負債の表示のすべてについて非流動項目に表示するよう見直しが行われる。改正案では、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示するとしている。繰延税金資産及び負債を流動及び非流動項目に分ける必要がなくなるという点で財務諸表作成者のコストが多少なりとも軽減されることになる。

評価性引当額の内訳に関する情報などを注記へ
 注記事項については、これまで開示していた「繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳」「税率差異の注記」「税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額」「決算日後に税率の変更があった場合には、その内容及びその影響の注記事項」に加え、(1)評価性引当額の内訳に関する数値情報、(2)評価性引当額の内訳に関する定性的な情報、(3)繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る数値情報、(4)税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報が追加される。
 (1)の「評価性引当額の内訳に関する数値情報」では、財務諸表利用者における税負担率の予測及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価に資するように、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、これまで発生原因別の注記が示されていた「評価性引当額」の合計額を、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載することとしている。また、(2)の「評価性引当額の内訳に関する定性的な情報」では、財務諸表利用者が評価性引当額の内容を理解し、税負担率に影響が生じている原因の分析に資するように、評価性引当額に重要な変動が生じている場合、当該評価性引当額(合計額)の変動の主な内容を記載することとしている。
 (3)の「繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る数値情報」では、財務諸表利用者における税負担率の予測ができるように、発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金の額が重要である時は、税務上の繰越欠損金に係る数値情報として、繰越期限別に①税務上の繰越欠損金の額に税率を乗じた額(発生原因別の注記に記載されている額)、②当該税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額、③当該税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額の数値を記載することとしている。また、(4)の「税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報」では、税務上の繰越欠損金に係る数値情報が繰越期限別に開示されても、税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、財務諸表利用者が当該繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性を評価できないため、当該不確実性の評価に資するように、税務上の繰越欠損金に係る定性的な情報として、当該重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載することとしている。
個別での注記は一部省略  なお、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における税効果会計に関する注記事項については、これまで開示していた注記事項に加え、(1)の「評価性引当額に関する数値情報」のみ開示することが提案されている。
 他の(2)評価性引当額の内訳に関する定性的な情報、(3)繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る数値情報、(4)税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報に関しては、コストと便益の観点から個別財務諸表での注記は不要とされている。
 例えば、(3)繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る数値情報については、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額が記載されている場合、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額を算定することができると判断。また、日本の税法に基づくため、個別財務諸表における発生原因別の注記の推移や財務情報以外における一定期間の業績推移の開示により、重要な税務上の欠損金が生じた時期が特定できれば、どの時期に繰越期限となるか理解できることがあるとしている。

一部の注記事項は比較情報への記載不要に
 適用時期に関しては、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される(参照)。

【表】適用時期等
改正項目 適用時期 留意点
表示及び注記事項の取扱い 平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用することができる。 ・表示方法の変更として取り扱う。
・表示する過去の財務諸表について、新たな表示方法に従い組替えを行う。
・一部の注記事項は適用初年度の比較情報に記載しないことができる。
会計処理の取扱い 平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。 ・会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
・新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用する。
中間連結会計期間の取扱い 平成30年4月1日以後開始する中間連結会計期間及び中間会計期間の期首から適用する。 ・会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱わない。
(編注:企業会計基準委員会の資料に基づき作成)

 改正項目のうち、表示の取扱い及び注記事項の取扱いは、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び財務諸表からの早期適用も認められている。
 なお、注記事項については、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)の合計額以外は適用初年度の比較情報(適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表(注記事項を含む)及び前事業年度における個別財務諸表(注記事項を含む)をいう)に記載しないことができるとの経過措置が設けられる。
会計方針の変更として遡及適用  一方、個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱いなど、会計処理の取扱いに関しては、早期適用は認められていない。
 また、仮に今回の税効果会計適用指針を適用することによりこれまでの会計処理と異なる場合には「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱い、新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及適用することになる。

連結納税と企業結合会計における税効果会計の取扱いの整合性は図らず
 今回の税効果会計基準の一部改正案等では、連結納税制度を適用する場合における税効果会計の取扱いと企業結合会計における税効果会計の取扱いの整合性は図られていない。
 以前、基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する機関)から、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」Q12-2及びQ13に示されている連結納税制度における新規適用・加入・離脱の際の税効果会計の取扱いと、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第75項に示されている取得企業の税効果会計の取扱いについて整合性を図るべきとの要請があったものであるが、企業会計基準委員会によれば、現状の連結納税の取扱い及び企業結合の取扱いに対して、情報の有用性の観点から実務上大きな課題が聞かれておらず、当該取扱いを変更するニーズが大きくはないなどと結論付けている。

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