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解説記事2017年06月26日 【税制改正解説】 平成29年度における消費税・間接諸税関係の改正について(上)(2017年6月26日号・№696)

税制改正解説
平成29年度における消費税・間接諸税関係の改正について(上)
 三枝俊平

Ⅰ 消費税法関係の改正

一 仮想通貨の譲渡の非課税措置

1 改正の内容
 ICTの進展等を背景に、近年、インターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨が登場している中、利用者保護やマネー・ロンダリング対策の観点から、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)が成立し、平成29年4月1日から施行されている。
 同法による改正後の「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「改正資金決済法」という。)において、仮想通貨は、
・不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨と相互に交換ができること、
・電子的に記録され、移転できること、
・法定通貨又は法定通貨建ての資産ではないこと
等の性質を持つ財産的価値と定義されている。
 このように改正資金決済法において仮想通貨が支払の手段として位置づけられたことや、EU等では仮想通貨の譲渡は非課税とされていること等を踏まえ、消費税が非課税とされる支払手段に類するものの範囲に、改正資金決済法第2条第5項に規定する仮想通貨が追加された(消令9④)。
 また、仮想通貨の譲渡については、その性格に鑑み、法定通貨等の支払手段と同様に、課税売上割合の計算に含めないこととされた(消令48②一)。

2 適用関係  上記の改正は、平成29年7月1日(以下「施行日」という。)以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用され、施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れについては、なお従前の例によることとされている(改正消令附則2)。
 ただし、施行日前に仮想通貨を駆け込みで仕入れることが行われ、仮想通貨の市場に大きな影響を及ぼすことを回避する観点から、
・施行日の前日に100万円以上(税抜き)の仮想通貨を有しており、かつ、
・施行日前1月間の平均保有数量に比べ、施行日前日の保有数量が増加している
場合には、当該増加分の課税仕入れに係る消費税額については、仕入税額控除を認めないとする経過措置が設けられている(改正消令附則8)。

二 災害に対応するための特例措置の常設化
 これまで災害に対応するための臨時的な税制上の特例措置については、災害の状況等に応じ、所要の措置が講じられてきたが、近年災害が頻発していることも踏まえ、被災者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに税制が遅れをとることがないよう、今般、災害に対応するための特例的な税制措置を常設化することとされた。
 消費税においては、特定非常災害(「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(平成8年法律第85号)第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいう。)の被災者である事業者が、被災事業者となった日の属する課税期間以後の課税期間につき「課税事業者選択届出書」、「課税事業者選択不適用届出書」、「簡易課税制度選択届出書」及び「簡易課税制度選択不適用届出書」を国税庁長官が当該特定非常災害の状況等を勘案して定める日(以下「指定日」という。)までに所轄税務署長に提出したときは、その選択する課税期間の初日の前日に提出したものとみなされる等の特例が設けられた(措法86の5、措令46の3、措規37の3の2)。
 上記の措置は、一定の場合を除き、平成29年4月1日以後に指定日が到来する場合の被災日の属する課税期間から適用されている(改正法附則1、90①)。

三 その他の改正

1 独立行政法人等非識別加工情報利用手数料に関する規定の整備
 平成28年5月に成立した「行政機関の保有する個人情報の適正かつ効果的な活用による新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するための関係法律の整備に関する法律」(平成28年法律第51号。以下「行政機関個人情報保護法等改正法」という。)により、行政機関や独立行政法人等は自らが保有する個人情報を加工して作成する非識別加工情報(特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。以下「行政機関非識別加工情報」という。)を民間事業者に提供することを可能とする仕組みが創設された。
 この新たな仕組みを利用する事業者は、行政機関等と利用契約を締結し、手数料を納付して行政機関非識別加工情報の提供を受けることとなるが、この事業者が納付する手数料を対価とする役務の提供について、当該手数料の徴収は法令(「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第58号)第44条の13及び独法等個人情報保護法第44条の13)に基づくものであり、また、行政機関非識別加工情報の提供は公文書の交付等に該当するため、消費税を非課税とすることとされた。
 上記の改正は、行政機関個人情報保護法等改正法の施行の日(平成29年5月30日)から適用されている(改正消規附則)。

2 異動届出書の提出先のワンストップ化  事業者は、その消費税の納税地に異動があった場合には、その異動前及び異動後の納税地の所轄税務署長にその旨を書面により届け出なければならないこととされていたが、税務署間において遅滞なく異動情報の連絡・共有が可能となっていることを踏まえ、異動後の納税地の所轄税務署長への提出は不要とされた。
 上記の改正は、平成29年4月1日以後の消費税の納税地の異動について適用されている(改正法附則1)。

3 身体障害者用物品の指定  消費税の非課税物品として指定されている「盲人用秤」の性状、構造又は機能について、点字、凸線等により操作ボタンが知覚でき、計測結果を音声により伝える機能を有する製品が加えられたほか、「視覚障害者用拡大読書器」について新たに撮像した活字を文字として認識し、音声信号に変換して出力する機能を有する製品を対象に加え、併せて製品分類名称を「視覚障害者用読書器」に改める等の改正が行われた(消令14の4、平成3年厚生省告示第130号)。
 上記の改正は、平成29年4月1日から適用されている(平成29年厚生労働省告示第137号)。

4 輸入品に対する内国消費税に関する改正  入国旅客の利便性の向上を図る等の観点から、外国の免税店等で販売されている免税品と同等のものを国内到着時の空港等でも購入できるよう、平成29年度の関税改正で、本邦国際空港等の到着エリア内に免税店(以下「到着時免税店」という。)の設置を可能とし、入国旅客が到着時免税店において購入して輸入する外国貨物について、携帯品免税制度の対象とすることとされた。
 到着時免税店が設置されることとなると、当該到着時免税店で販売される物品の国内への持ち込みについて、その物品の状態によっては、携帯品免税制度又は再輸入免税制度のどちらが適用されるのかという疑義が生じることとなるため、再輸入免税制度の適用について「消費税法第7条第1項又は第8条第1項の規定により消費税の免除を受けていないものに限る」という規定が新たに設けられ、当初輸出時に消費税の免除を受けた物品については、再輸入免税制度の規定の適用は受けられないこととされた(輸徴法13①一)。これにより、到着時免税店で販売する物品を旅行者が携帯して輸入する場合、再輸入免税制度の規定の適用はなく、携帯品免税制度の規定が適用されることが明確化された。
 上記の改正は、平成29年4月1日以後に輸出される物品に係る消費税について適用され、同日前に輸出された物品に係る消費税については、なお従前の例によることとされている(改正法附則95①)。

Ⅱ 酒税関係の改正

一 酒類間の税率格差の縮小・解消

1 改正の内容
 酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、以下の酒類の税率格差を解消することを中心に酒税の税率構造が大幅に改正された。
① 発泡性酒類(ビール系飲料)  発泡性酒類のうちビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)については、その税率を1klにつき155,000円に統一することとされた(酒法23①一)。
② 発泡性酒類(その他の発泡性酒類)  発泡性酒類のうちビール系飲料以外のその他の発泡性酒類については、その対象範囲をアルコール分11度未満に拡大した上で、果実酒等の他の酒類との税負担のバランスや、アルコール健康障害対策基本法(平成25年法律第109号)における不適切飲酒の誘引防止の趣旨を踏まえ、その税率を1klにつき100,000円に引き上げることとされた(酒法23②)。
③ 醸造酒類  醸造酒類の基本税率を1klにつき100,000円に引き下げ、清酒と果実酒の特例税率を廃止することとされた(酒法23①二)。
④ 混成酒類(基本税率)  混成酒類の基本税率については、その税率を1klにつき200,000円(アルコール分が21度以上のものにあっては、200,000円にアルコール分が20度を超える1度ごとに10,000円を加えた金額)に引き下げることとされた(酒法23①四)。
⑤ 低アルコール分の蒸留酒類等に係る特例税率(租税特別措置)  発泡性を有しない低アルコール分の蒸留酒類及びリキュールに係る酒税の特例税率については、その他の発泡性酒類との税負担の公平性を図る観点から、下限税率の適用範囲をアルコール分11度未満に拡大した上で、下限税率を1klにつき100,000円に引き上げることとされた(措法87の2)。
 上記の税率改正の施行日は平成32年10月1日とされているが、発泡性酒類及び醸造酒類等については、税率の急激な変更が及ぼす消費者及び酒類製造者への影響を緩和する観点から、税率の改正は十分な経過期間を設けて段階的に実施するため、以下の表のとおり経過措置が設けられている(改正法附則1八、36)。


2 手持品課税及び手持品戻税  今回の税率改正は、平成32年10月1日、平成35年10月1日及び平成38年10月1日の三段階で実施されるため、手持品課税及び手持品戻税を税率改正の実施日に流通段階にある対象酒類について実施することとされた(改正法附則39)。
① 手持品課税  税率改正の実施日に、酒類の製造場又は保税地域以外の場所において、税率改正の実施日の税率改正により酒税額が引き上げられることとなる酒類(以下「引上対象酒類」という。)を販売のために所持する酒類の製造者又は販売業者(酒場、料飲店等を含む。以下同じ。)がある場合において、その所持する引上対象酒類の数量(二以上の場所で所持する場合には、その合計数量)が1,800ℓ以上(税率改正の実施日が平成38年10月1日である場合には、2,000ℓ以上)であるときは、その所持する酒類の製造者又は販売業者に対して、引上対象酒類に係る手持品課税が行われる(改正法附則39①⑭⑳)。
 また、税率改正の実施日に、引上対象酒類を販売のために所持する場合において、その所持する数量が1,800ℓ未満(税率改正の実施日が平成38年10月1日である場合には、2,000ℓ未満)であることにより手持品課税の適用を受けない酒類の製造者又は販売業者であっても、税率改正の実施日の都度、手持品課税の申告期限までに、その貯蔵場所の所在地の所轄税務署長に対して、手持品課税の適用を受ける旨の届出をした場合には、その届出をした酒類の製造者又は販売業者が税率改正の実施日に所持する引上対象酒類について手持品課税が行われる(改正法附則39②⑮ )。
② 手持品戻税
 税率改正の実施日に所持する引上対象酒類について手持品課税の適用を受ける酒類の製造者又は販売業者が、税率改正の実施日に、酒類の製造場又は保税地域以外の場所において、税率改正の実施日の税率改正により酒税額が引き下げられることとなる酒類(以下「引下対象酒類」という。)を販売のために所持する場合には、引下対象酒類に係る酒税額に相当する金額を手持品課税の酒税額から控除することとされている(改正法附則39④⑰ )。
③ 手持品課税等の申告及び納付の手続
 手持品課税の適用を受けることとなった酒類の製造者又は販売業者は、その所持していた引上対象酒類について、その貯蔵場所ごとに申告書(以下「手持品課税等申告書」という。)を、税率改正の実施日の都度、手持品課税の申告期限までに貯蔵場所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない(改正法附則39⑥⑲ )。
 手持品課税等申告書を提出した者は、手持品課税の納期限までに、手持品課税等申告書に記載した酒税額に相当する酒税を国に納付しなければならない。また、手持品課税等申告書の提出があった場合において、控除不足額があるときは、税務署長は、その申告書を提出した者に対し、その不足額を還付する(改正法附則39⑧⑨⑲ )。
 手持品課税の申告期限及び納期限は、税率改正の実施日ごとに、それぞれ次のとおり(改正法附則39⑥⑧⑲ )。

税率改正の実施日 申告期限 納期限
平成32年10月1日 平成32年11月2日 平成33年3月31日
平成35年10月1日 平成35年10月31日 平成36年4月1日
平成38年10月1日 平成38年11月2日 平成39年3月31日

二 酒類の定義の改正

1 ビールの定義の改正
① ビールの副原料の範囲の拡大
 今回の改正では、多様な香味を持つビールの製造が可能になるよう、地ビールメーカーにおいて発泡酒の原料として使用されている物品や、海外においてビールの原料として認められている物品の状況等を踏まえ、ビールの副原料の範囲を拡大することとされた(酒法3十二、酒令6、酒規4)。
《新たに拡大された副原料の範囲》
イ 果実(乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮した果汁を含む。)
ロ コリアンダー又はその種
ハ ビールに香り又は味を付けるため使用する次の物品
(イ)こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうその他の香辛料又はその原料
(ロ)カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ
(ハ)かんしょ、かぼちゃその他の野菜(乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)
(ニ)そば又はごま
(ホ)蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
(ヘ)花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調製品
(ト)かき、こんぶ、わかめ又はかつお節
 ただし、新たに拡大された副原料を大量に使用した商品は、ビール本来の姿から大きく乖離することが考えられることから、その使用する副原料の重量の合計は、ビールの必須原料である麦芽の重量の100分の5を超えない範囲に限ることとされ、この制限を超えて新たな副原料を使用した酒類を製造する場合には、従来どおり「発泡酒」に分類される。(酒法3十二)。
② 麦芽比率要件の緩和  ビールの副原料の使用量の制限を緩和して多様な商品開発を促す観点から、使用する副原料の重量は麦芽の重量を超えない範囲(麦芽比率50%以上)に引き下げることとされた(酒法3十二)。
③ ビールの製法の緩和  多様なビールの製造を可能にする観点から、麦芽、ホップ及び水等を原料として発酵させて製成したビールに、ホップ又は新たにビールの副原料として拡大された物品(上記①を参照)を加えて発酵させたものについてもビールに分類されるよう、ビールの製法の要件が緩和された(酒法3十二、酒令6)。
④ 適用関係  上記の改正は、平成30年4月1日から適用される(改正法附則1五)。

2 発泡酒の定義の改正  ビール以外のビール系飲料を発泡酒の範囲に包含するよう、次の酒類を発泡酒の範囲に含めることとされた(酒法3十八)。
① 麦芽又は麦を原料に使用しない発泡性を有する酒類のうち、その原料の一部にホップを使用しているもの
② 麦芽、麦及びホップを原料に使用しない発泡性を有する酒類のうち、香味・色沢等の性状がビールに類似するものとして、吸光光度分析法によって測定した数値を基礎として算出したビールの特徴である苦味価の値と色度の値がそれぞれ一定の数値以上のもの
 これにより、ホップを原料に使用している新ジャンルを発泡酒に位置付けるとともに、将来的に開発され得る麦酒類似商品も発泡酒に分類することで、税率構造の見直しとあわせてビール系飲料の税率の統一を図ることとされた。
 上記の改正は、平成35年10月1日から適用される(改正法附則1九)。 

3 果実酒の定義の改正  改正前の酒税法では、果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させた酒類は甘味果実酒に分類されていたが、果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させる方法は、諸外国においても果実酒の製法として普及しており、また、樽に貯蔵して香味等の成分を浸出させる方法と果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させる方法は、ともにオーク材の成分が果実酒に浸出する点では変わりがないため、果実酒にオークチップを浸してその成分を浸出させたものを果実酒の範囲に含めることとされた(酒法3十三ホ)。
 上記の改正は、平成30年4月1日から適用される(改正法附則1五)。

4 製造免許等に係る経過措置  平成30年4月1日のビール及び果実酒の定義の改正に伴い、「ビールに分類されることとなる発泡酒」、「果実酒に分類されることとなる甘味果実酒」又は「ブランデーに分類されることとなるスピリッツ」につき、発泡酒、甘味果実酒又はスピリッツの製造免許又は販売業免許(以下「製造免許等」という。)を受けていた者については、同日に、「ビール(改正前に発泡酒に分類されていたものに限る。)」、「果実酒(改正前に甘味果実酒に分類されていたものに限る。)」又は「ブランデー(改正前にスピリッツに分類されていたものに限る。)」の製造免許等を受けたものとみなす経過措置が設けられている(改正法附則35①②)。
 また、平成35年10月1日の発泡酒の定義の改正に伴い、「発泡酒に分類されることとなるその他の醸造酒、スピリッツ、リキュール又は雑酒」につき、その他の醸造酒、スピリッツ、リキュール又は雑酒の製造免許等を受けていた者については、同日に、「発泡酒(改正前にその他の醸造酒、スピリッツ、リキュール又は雑酒に分類されていたものに限る。)」の製造免許等を受けたものとみなす経過措置が設けられている(改正法附則35③)。

5 その他の経過措置 ① 改正前の酒税法の規定により発泡酒、甘味果実酒又はスピリッツに分類されていたもののうち、改正後の酒税法の規定によりビール、果実酒又はブランデーに分類される酒類についての酒類業組合法第86条の5の規定によって行う品目の表示は、平成30年9月30日までは、改正前の品目の表示によることができる。
② 改正前の酒税法の規定によりその他の醸造酒、スピリッツ、リキュール又は雑酒に分類されていたもののうち、改正後の酒税法の規定により発泡酒に分類される酒類についての酒類業組合法第86条の5の規定によって行う品目の表示は、平成36年3月31日までは、改正前の品目の表示によることができる。

三 酒税制度の簡素・合理化等

1 未納税移出手続の簡素化
 酒類製造者の承認手続に係る事務負担を軽減する観点から、①他の酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場に移入するための酒類のうち、酒類製造者から酒類(当該酒類製造者が製造免許を受けた品目の酒類に限る。)の製造の委託を受けた酒類製造者が、当該委託を受けて製造した酒類を容器に詰めるため当該他の酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場(当該委託をした者の酒類の製造場又は蔵置場を除く。)へ移入するもので、当該他の酒類製造者が当該移入をした後に当該委託をした者の酒類の製造場又は蔵置場へ更に移出することが明らかなもの及び②上記①により移入して容器に詰められた酒類を容器詰めの委託を受けた者の酒類の製造場又は蔵置場から上記①の製造の委託をした者の酒類の製造場又は蔵置場に移入するためのものについては、事前承認を得ないで事後的な手続による未納税移出ができることとされた(酒令32二、四)。
 上記の改正は、平成29年10月1日から適用される(改正酒令附則1一)。

2 未納税引取制度の範囲の拡大  酒類製造者が自己の酒類の製造場又は蔵置場へ引き取る酒類で当該酒類製造者が当該酒類の製造場又は蔵置場で容器に詰めて更に移出することが明らかなものについて、未納税引取りの対象範囲に追加することとされた(酒規9の2)。
 上記の改正は、平成29年10月1日から適用される(改正酒規附則1一)。

3 承認義務の見直し  酒類の製造行為等について承認を受ける義務のうち、①リキュールの製造免許と清酒、合成清酒又はみりんの製造免許とを受けている製造場において清酒、合成清酒又はみりんを原料の一部としてリキュールを製造しようとする場合及び②税率の適用区分が異なる発泡酒を混和しようとする場合について承認を受ける義務が廃止された(酒規16)。
 上記①の改正については平成29年10月1日から、上記②の改正については平成38年10月1日から適用される(改正酒規附則1一・三、2)。

4 申告義務(製造方法等申告書の提出期限)の見直し  近年、消費者の酒類消費は多様化が進んでおり、効率的な経営の観点から酒類市場の動向等に応じて臨機応変に新商品を提供していく必要があり、酒類製造者における新商品の製造が迅速に開始できるよう、酒類の製造の開始及び製造方法の申告書は、酒類の製造の開始の日までに提出することとされた(酒令53③)。
 上記の改正は、平成29年10月1日から適用される(改正酒令附則1一)。

四 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(酒税関係)の改正
 これまで災害に対応するための臨時的な税制上の特例措置については、災害の状況等に応じ、所要の措置が講じられてきたが、近年災害が頻発していることも踏まえ、被災者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに税制が遅れをとることがないよう、今般、災害に対応するための特例的な税制措置を常設化することとされた。
 酒税においては、酒類の製造者又は販売業者が販売のために所持する酒類で酒税が課されたものが、災害により亡失等の状態になった場合において、その災害について、国税通則法第11条の規定が適用される地域の指定があり、かつ、国税庁長官がその地域に所在する被災酒類に係る納税義務者に代わる酒類の製造者を指定したときは、その指定された酒類の製造者を被災酒類に係る酒税の納税義務者とみなして、被災酒類に係る酒税額に相当する金額の控除又は還付の手続をその指定された酒類の製造者において一元的に行うこととされた(災害減免法8)。

五 沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律(酒税関係)の改正

1 沖縄県産酒類に対する酒税の軽減措置
 「沖縄県産酒類に対する酒税の軽減」については、沖縄県の社会経済情勢等を考慮しつつ、他の沖縄関係税制の延長期間を踏まえ、その適用期限を2年延長し、平成31年5月14日までの措置とすることとされた(沖特法80①一、沖特令72)。

2 沖縄県産酒類に係る酒税の差額課税の申告期限の特例  平成29年度税制改正において、沖縄産酒類に対する酒税の軽減の適用を受けた酒類を沖縄県の区域以外の本邦の地域に移出する目的で継続的に船舶又は航空機に積み込む者が、沖縄軽減酒類の主たる積込み場所の所在地を所轄する税務署長の承認を受けた場合には、その者が提出すべき酒税の申告書については、改正前の申告期限の特例を適用せずに、酒税法第30条の2の規定の適用により、その月分に製造場から移出したとみなされた沖縄軽減酒類の合計数量に対する酒税につき、翌月末日までに提出することができることとされた(沖特法81④)。

3 酒販組合に関する経過措置  「酒販組合に関する経過措置」について、本措置が本土復帰以前の沖縄における酒類販売業者の特殊事情等を考慮して講じられたものであることに鑑み、その適用期限を2年延長し、平成31年5月14日までの措置とすることとされた(沖特令110)。

六 低アルコール分の蒸留酒類等に係る酒税の税率の特例措置の改正

1 改正の内容
 本特例については、その他の発泡性酒類(新ジャンルを除く。以下同じ。)との税負担の公平性を図る観点から、下限税率の適用範囲をアルコール分11度未満に拡大した上で、下限税率を1klにつき100,000円に引き上げることとされた。具体的な酒類の区分ごとの下限税率の適用範囲、下限税率及びアルコール分が11度以上の税率は、次の表のとおり。
※ 本特例の改正は、酒税改革の一環として行われたもの。酒税改革については前述の「Ⅱ酒税法等の改正 一 酒類間の税率格差の縮小・解消」を参照のこと。

区  分 アルコール分 税  率
蒸留酒類(連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー又はスピリッツ) 11度未満 100,000円/kl
11度以上13度未満 100,000円/klに10度を超える1度ごとに
10,000円/klを加算
リキュール 11度未満 100,000円/kl
11度以上12度未満 100,000円/klに10度を超える1度ごとに
10,000円/klを加算

2 適用関係  この改正は、酒類間の税率格差の縮小・解消を図るための酒税の税率改正の実施時期である平成32年10月1日に施行される(改正法附則1八ロ)。
 ただし、その他の発泡性酒類との間における税負担のバランスを考慮し、平成32年10月1日から平成38年9月30日までの間については経過的な措置として、改正前の下限税率の適用範囲、下限税率及びアルコール分を適用することとされている(改正法附則91②)。

七 入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置の改正
 関税暫定措置として無税とされている発泡酒及び蒸留酒等(ウイスキー、ブランデー、ラム、ジン、ウオッカ、リキュール)については、平成29年度関税改正において、現行の暫定税率は市場における定着も進んできたものと考えられ、また、我が国が締結した全てのEPAやTPPにおいて無税で譲許されており、今後の国際交渉においてこれらの品目に係る関税の引上げが行われる可能性は非常に低いと考えられる等の理由から、現行の暫定税率を廃止し、基本税率により無税の水準を維持することとされた(関定法別表)。
 そこで、関税暫定措置法の適用期限の延長に併せて延長してきた本特例についても、関税無税の恒久化に併せて、平成29年3月31日までとしていた適用期限を撤廃することとされた(措法87の3)。

八 輸出酒類販売場制度(酒蔵ツーリズム免税制度)の創設

1 制度の内容
 酒税等の内国消費税においては、消費地課税の考え方から、国内において消費される課税物件に対して負担を求めることを予定しているため、酒類製造者が輸出する目的で酒類をその製造場から移出する場合には、移出時課税の例外として輸出免税の制度を設け、輸出のため製造場から移出される酒類については酒税を免除することとしている(酒法29)。
 本来、外国人観光客である消費者向けに酒類を販売するための製造場からの移出は、酒類製造者が直接輸出する目的の移出ではないが、外国人観光客がその出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であれば、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられることから、地方創生の推進や日本産酒類のブランド価値向上を図る等の政策的な観点や移出時課税を採用している酒税の性格等を踏まえ、輸出酒類販売場(消費税の輸出物品販売場の許可を受けた酒類の製造場であることその他の要件に該当する販売場として、当該酒類の製造場の所在地を所轄する税務署長の許可を受けた酒類の販売場をいう。以下同じ。)を経営する酒類製造者が、非居住者(外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)第6条第1項第6号に規定する非居住者をいう。)に対し、自ら製造等をした一定の酒類で輸出するために一定の方法により購入されるものを販売するため、当該輸出酒類販売場である酒類の製造場から移出する場合には、当該移出に係る酒税を免除することとした(措法87の6①)。
① 輸出酒類販売場の許可を受ける場合の手続及び要件  輸出酒類販売場を開設するためには、輸出酒類販売場許可申請書に輸出酒類販売場の見取図などの必要書類を添付し、輸出酒類販売場の許可を受けようとする酒類の製造場の所在地を所轄する税務署長に提出し、その許可を受ける必要がある(措令46の8の4①、措規37の4の5)。
 輸出酒類販売場の許可を受けるためには、次の要件の全てを満たす必要がある(措法87の6⑦、措令46の8の4②)。
イ 許可を受けようとする酒類製造者が、過去3年以内に輸出酒類販売場の許可を取り消されたことがない酒類製造者であり、輸出酒類販売場を経営することについて特に不適当と認められる事情がない者であること
ロ 許可を受けようとする酒類製造者が、酒類の製造免許の取消要件の一つである酒税法第10条第3号から第5号まで又は第7号から第8号までに該当していない者であること
ハ 許可を受けようとする場所が、消費税法に規定する輸出物品販売場の許可を受けた酒類の製造場であること
(注1)酒類の製造場とは異なる場所で酒類の販売場を経営している場合であっても、当該販売場が酒類の製造場と近接している場合(酒類の販売場の所在地と酒類の製造場の所在地とが同一の税務署の管轄区域内である場合に限る。)で、当該販売場が酒類製造者によって管理され、製造及び販売がこれらの場所で一体的に行われているときは、酒税の取締り上特に不適当であると認められる事情がない場合に限り、当該販売場と酒類の製造場は「一の酒類の製造場」とみなす(措法87の6⑧、措令46の8の5)。この場合、一の酒類の製造場とみなされた販売場では、酒類の製造場としての申告義務・記帳義務等が課される。
(注2)酒税法第28条第1項第3号の規定により設置の許可を受けた酒類の蔵置場であって、当該蔵置場の所在地と酒類製造者の酒類の製造場の所在地が同一の税務署の管轄区域内にあり、かつ、同一の市町村等の区域内にある酒類の蔵置場については、上記イからハの全ての要件を満たすことにより、輸出酒類販売場の許可を受けることができる(措法87の6⑦二、措令46の8の4③)。
② 免税酒類及び免税手続等 イ 免税酒類
  輸出酒類販売場において酒税を免除して販売できる酒類(以下「免税酒類」という。)は、輸出酒類販売場を経営する酒類製造者が受けている製造免許と同一の品目の酒類で当該酒類製造者が製造した酒類(自己の他の酒類の製造場で製造した酒類及び自己の商標を付した酒類を含む。)であることに加え、輸出物品販売場制度において消費税が免除される酒類であることが必要とされている。
ロ 免税手続
  輸出酒類販売場における非居住者に対する免税酒類の販売方法は、原則として、消費税の輸出物品販売場で行う消耗品の免税販売の手続と同様だが、販売時に作成する購入記録票や非居住者から提出を受ける購入者誓約書には、消費税法令により定められている記載事項に加え、免税酒類の税率の適用区分やその区分ごとの数量等の必要事項を追記する必要がある。
(注)非居住者から提出された購入者誓約書や運送契約書の写しについては、酒税を免除して販売した日の属する消費税の課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、酒類製造者の消費税に係る納税地又は輸出酒類販売場の所在地に保存しなければならず、この保存がない場合や記載内容に不備がある場合には、非居住者に対する販売であっても免税とならない。ただし、災害等やむを得ない事情により保存することができなかったことを酒類製造者が証明した場合には、この限りではない(措法87の6②、措規37の4の2)。
ハ 免税購入できる非居住者の範囲
  本制度により免税酒類を購入することができる非居住者は、消費税の輸出物品販売場制度と同様、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号に規定する非居住者とされている。同法における非居住者には法人も含まれるが、免税酒類の範囲が通常生活の用に供する酒類であることが要件とされていることや、法人が行う行為は全て事業活動の一環であることから、法人に対する販売は免税対象とはならない。
③ 輸出酒類販売場における申告手続  本制度により酒税の免除の適用を受けるためには、輸出酒類販売場で免税酒類を販売した日の属する月分の期限内申告書に、免税販売した酒類についての明細(免税酒類の税率の適用区分及び当該区分ごとの数量、購入年月日等)を記載した書類を添付する。ただし、災害その他やむを得ない事情により当該書類を添付することができなかったことを酒類製造者が証明した場合は、この限りでない(措法87の6②、措令46の8の3)。
④ 免税酒類を輸出しない場合等の酒税の即時徴収  非居住者が出国する時までに免税酒類を輸出しないとき又はその非居住者が居住者となる時までにその免税酒類を輸出しないときには、その者から、免除に係る酒税額に相当する酒税を直ちに徴収する(措法87の6③)。また、非居住者が購入した免税酒類について税務署長の承認を受けずに日本国内において譲渡する行為や譲受けする行為を禁止し、仮にこれらの行為を行った場合には罰則が適用されるとともに、その行為者から、免除に係る酒税額に相当する酒税を直ちに徴収する(措法87の6④⑤⑭⑮)。
 ただし、その免税酒類の購入者が災害その他やむを得ない事情により免税酒類を亡失したため輸出しないことについて税関長の承認を受けた場合など一定の事実がある場合は酒税が徴収されることはない。
⑤ 輸出酒類販売場の許可の取消し  消費税法の規定により輸出物品販売場の許可が取り消された場合には、輸出酒類販売場の許可要件を満たさなくなることから、当該輸出酒類販売場の許可は取り消される(措法87の6⑨)。
 また、輸出酒類販売場を経営する酒類製造者が酒税に関する法令の規定に違反するなど一定の事実が生じたことにより引き続き輸出酒類販売場としておくことが不適当と認められる場合には、税務署長の判断により、輸出酒類販売場の許可を取り消す場合がある(措法87の6⑩)。
⑥ 特例の適用を受けることをやめる場合の手続  輸出酒類販売場の許可を受けた酒類製造者が、当該許可に係る輸出酒類販売場において免税販売をやめようとするときは、そのやめようとする日その他一定の事項を記載した届出書を当該輸出酒類販売場の所在地を所轄する税務署長に提出することとされている。この場合には、当該輸出酒類販売場の許可は、そのやめようとする日限り、その効力を失うこととされ、同日以後は本制度の適用はなくなる(措令46の8の4⑤⑥)。

2 適用関係  本制度は、輸出酒類販売場の許可を受けた酒類製造者が、平成29年10月1日以後に非居住者に対して販売する酒類の移出について適用される(改正法附則92①)。
 ただし、輸出酒類販売場の許可を受けるための手続については、平成29年4月1日から施行されているため、同日以後であればその申請は可能。この場合、同年10月1日から免税販売を開始しようとする酒類製造者は、同年6月30日までにその申請を行うこととされた(改正法附則92③④)。

Ⅲ たばこ税関係の改正

一 入国者が輸入する紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の延長
 紙巻たばこに係る関税が無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成30年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成29年3月31日まで1年延長することとされた(措法88の2)。

Ⅳ 石油石炭税関係の改正

一 地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例に係る免税・還付措置の延長等

 「特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置」については、その適用期限を平成32年3月31日まで3年延長することとされた(措法90の3の3)。 
 また、「特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置」については、その適用期限を平成32年3月31日まで3年延長するとともに、苛性ソーダの製造業を営む者が、重油等を自ら発電(苛性ソーダの製造に使用する電気に係るものに限る。)の用に供した場合を適用範囲に加えることとされた(措法90の3の4)。

二 輸入農林漁業用A重油及び国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税措置の延長
 「引取りに係る石油製品等の免税」及び「特定の重油を農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付」については、小売価格の引下げ効果の実態調査の結果等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、平成32年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の4、90の6)。

三 非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の延長
 「非製品ガスに係る石油石炭税の還付」については、石油精製業者の投資計画の進捗状況等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、平成32年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の6の3)。

Ⅴ 航空機燃料税関係の改正

一 航空機燃料税の税率の特例措置の延長

 「航空機燃料税の税率の特例」ついては、引き続き、国内航空ネットワークの充実を図る観点から、その適用期限を3年延長し、平成32年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の8)。

二 沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長
 「沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例」については、その適用期限を3年延長し、平成32年3月31日までの措置とすることとされた(措法90の8の2)。

三 特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長
 「特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例」については、その適用期限を3年延長し、平成32年3月31日までの措置とするとともに(措法90の9)、奄美大島と福岡空港との間の路線及び屋久島と福岡空港との間の路線が本措置の対象となる路線に指定された(措令50の4①三、特定離島路線の指定に関する告示(平成11年運輸省告示第173号))。

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