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資料2017年10月09日 【重要資料】 株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A平成28年度・平成29年度税制改正を踏まえて~(1)(2017年10月9日号・№710)

(編注:本資料は、「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~(平成29年9月時点版)経済産業省産業組織課から「Ⅱ.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A」の部分を抜粋し、分割して掲載するものです。)

重要資料

株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A
平成28年度・平成29年度税制改正を踏まえて~(1)

(備考)
本Q&Aにおける株式報酬プラン名の定義 ・事前交付かつ業績連動無し: 事前交付型リストリクテッド・ストック
 ※法人税法第34条第1項第2号の特定譲渡制限付株式を含みます。

・事後交付かつ業績連動無し: 事後交付型リストリクテッド・ストック
 ※法人税法第34条第1項第2号の「所定の時期に確定した数の株式を付与するもの」を指し、いわゆる「リストリクテッド・ストックユニット」と呼ばれているものを含みます(退職給与を除きます)。なお、金銭債権を現物出資して株式を交付する手法、株式交付信託を用いて交付する手法について主に記載していますが、いわゆる1円ストックオプション(新株予約権)を予め付与し、その行使により一定の時期に確定数の株式を交付する手法もこの類型に該当します。

・事後交付かつ業績連動有り: パフォーマンス・シェア
 ※一定期間経過後に、利益に関する状況等の指標を用いて算定した数の株式を金銭債権を現物出資して株式を交付する手法、株式交付信託を用いて交付する手法について主に記載していますが、いわゆる1円ストックオプション(新株予約権)を予め付与し、その行使により株式を交付する手法もこの類型に該当します。

第1 役員給与に関する税制改正の全体像に関するQ&A
Q1 役員給与全体として整合的な税制になる、とはどういうことですか。
 これまでは、インセンティブ報酬の中で、報酬類型によって損金算入の可否が異なっていましたが、今後は類型の違いによらず、一定要件を満たせば損金算入できるようになります。
 また、ストックオプション、退職給与については、これまで法人税法第34条第1項の枠組みに入っていませんでしたが、平成29年度税制改正において役員給与全体で整合的な税制となるよう整理されました。このため、ストックオプション、退職給与(業績連動給与に該当しないものを除く)についても、法人税法第34条第1項第2号又は第3号に定められた一定の要件を満たした場合に損金算入できるようになります。


Q2 役員給与に関する平成29年度の税制改正はいつから適用されるのですか。
 役員給与に関する平成29年度の税制改正は、原則として平成29年4月1日以後に支給又は交付に係る決議(当該決議が行われない場合には、その支給又は交付)をする給与について新法が適用されますが、退職給与、譲渡制限付株式及び新株予約権に係る改正については、平成29年10月1日以後に支給又は交付に係る決議(当該決議が行われない場合には、その支給又は交付)をする給与について新法が適用されます。
 経過措置の適用の判断基準となる支給に係る決議とは、報酬上限額等に関する株主総会決議や新株発行・自己株式処分の取締役会決議ではなく、株主総会又は取締役会等における役員報酬の具体的な内容を決定する決議又は決定(以下「支給の決議等」といいます。)と考えられ、当該決議等の実施日と施行日の前後関係によって、新旧どちらの法律が適用されるかが判断されます。
 例えば、在任時交付型の株式交付信託については、平成29年4月1日以後に支給の決議等をしたものは、損金算入要件を充足すれば損金算入が可能であると考えられます。
 退任時交付型の株式交付信託(業績連動給与に該当するもの)については、平成29年9月30日までに支給の決議等をしたものは、その決議に基づき設定した信託が終了するまでは旧法が適用され損金算入が可能であると考えられます(平成29年10月1日以降に追加拠出する部分を除く)。平成29年10月1日以後に取締役会等において役員報酬の内容を決定する決議又は決定をしたものは、業績連動給与の損金算入要件を充足すれば損金算入が可能であると考えられます(⇒Q3を参照)。
 なお、既に導入済みの株式交付信託に新任役員が加わった場合には、その選任の決議の時にその給与の支給の決議等がされたものとして、上記の適用関係の考え方に沿って損金算入の可否が判断されることとなります。既に導入済みの株式交付信託の中で、予め役員の地位の変更があった場合の支給額が定められている場合に、その地位の変更のあった役員に対する給与については、導入時の支給の決議をした時期によって適用関係を考えることとなります。

Q3 退職給与は、どのような場合に損金算入が認められるのですか。
 平成29年度の税制改正前において退職給与は、法人税法第34条第1項の対象から除かれており、同条第2項の過大役員給与等に該当しない限り損金算入が可能でした。
 平成29年度の税制改正により法人税法第34条第5項の「業績連動給与」に該当する退職給与は、同条第1項第3号の各要件を満たす場合に限り損金算入が可能となります。例えば、退職給与の算定に株価を参照している場合、株価が変動すると退職給与の金額が変動するため同条第5項の「業績連動給与」に該当します。なお、法人税法第34条第5項の「業績連動給与」に該当しない場合(例えば、勤務期間×最終月額報酬×給付乗率(功績倍率)に基づき算定される退職給与)には、改正前と同じ取扱いとなります。

Q4 ストックオプションは、どのような場合に損金算入が認められるのですか。
 その内容に応じ事前確定届出給与又は業績連動給与(法人税法第34条第1項第2号又は第3号)に該当すれば損金算入可能です。また、退職給与であって、「業績連動給与」に該当しない場合には、これまで通り法人税法第34条第1項の対象外であるため、同条第2項の過大役員給与等に該当しない限り損金算入されます。これに対し業績連動給与に該当する場合は、損金算入するためには法人税法第34条第1項第3号の要件を満たす必要があり、例えば、確定した数を限度としているものであることや、ストックオプションを指標確定後一定期間以内に交付すること(法人税法第34条第1項第3号ロ、法人税法施行令第69条第17項)などが要件とされています。
 このほか、非居住者の役員等に交付されたストックオプションについては、その非居住者が居住者であるとしたときに給与所得等が生じた日において損金算入されることとされました。
 なお、実質的に役務提供の対価と認められる無償発行のストックオプションについても損金算入が可能であることが明確化されています(法人税法第54条の2第1項第2号)。

Q5 事前確定届出給与と業績連動給与は、それぞれどのようなものですか。
 法人税法上、役員給与については、恣意性を排除することが適正な課税を実現する観点から不可欠と考えられています。そのような考え方の下、事前確定届出給与は、事前の定めにより役員給与の支給時期・支給額に対する恣意性が排除されているものについて損金算入が認められ、業績連動給与は、適正性や透明性を担保することを条件に損金算入が認められると考えられます。
 事前確定届出給与とは、法人税法第34条第1項第2号で定義されているもので、事前に金額又は株式や新株予約権の交付数が確定しており、所定の時期に支給する給与のことを言います。なお、一定の期間内に納税地の所轄税務署長にその確定した給与の届出を行うことが必要ですが、一定の要件を満たす法人税法第54条第1項に規定する特定譲渡制限付株式又は法人税法第54条の2第1項に規定する特定新株予約権による給与については、届出が不要です(法人税法第34条第1項第2号イ、法人税法施行令第69条第3項)。
 また、平成28年度改正で法人税法第34条第1項第2号に位置付けられた特定譲渡制限付株式は事前に株式を交付することが前提とされていましたが、平成29年度改正では、事前に届出をした上で、事後に株式を交付するいわゆる事後交付型リストリクテッド・ストックも、事前確定届出給与として損金算入の対象となりました。(⇒詳細はQ48を参照)
 業績連動給与とは、法人税法第34条第5項で定義され、業績連動指標(⇒詳細はQ56を参照)を基礎に算定される給与のことをいいます。また、その算定方法の内容が一定の報酬諮問委員会の諮問等(⇒詳細はQ61を参照)を経て決定されていることや、有価証券報告書等に開示されていること(⇒詳細はQ61を参照)などの要件を満たせば損金算入することができ、業績連動指標を基礎として交付される額又は数が決まる金銭、株式又は新株予約権による給与に加えて、特定新株予約権又は承継新株予約権による給与で、消滅される数が役務提供期間以外の事由で決まるものがあります(法人税法第34条第1項第3号)。
 なお、勤務期間以外の事由(業績など)により無償取得される数が決まる特定譲渡制限付株式については、業績連動給与として損金算入の対象とはならないことに留意する必要があります。

第2 役員に対する株式報酬の付与に関するQ&A
Q6 株式報酬を発行したい場合、どのような選択肢がありますか。
 株式報酬には、事前交付型と事後交付型のものがあります。
 事前交付型とは、職務執行開始後速やかに譲渡制限の付いた株式を交付する形態のものを指し、事前交付型リストリクテッド・ストックが該当します。また、事後交付型とは、職務執行期間が終了した後に株式を交付する形態のものを指し、事後交付型リストリクテッド・ストック、パフォーマンス・シェアが該当します。

Q7 親会社の株式や非上場の株式会社の株式を役員給与として損金算入することは可能ですか。
 損金算入できる株式報酬は、役員が職務に従事する法人又はその法人の関係法人(※)の株式であり、かつ、その株式が市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式であるものに限定されています(法人税法第34条第1項第2号ロ、第3号柱書き)。また、市場価格があることの判定は、報酬決定時点(所定の時期に確定した数の株式を交付する旨の定めを行った時点)で行われるため、例えば報酬決定時に非上場で市場価格がない場合には損金算入の対象となりません。
 なお、上場会社が非上場の種類株式として譲渡制限を付している株式を発行している場合がありますが、そのような場合において「市場価格のある株式と交換される株式」には、取得請求権の行使等により市場価格のある株式が交付される種類株式が該当します。
 具体的には、上場会社がその役員に対して確定数の株式を役員給与として交付する場合や、上場会社の子会社がその役員に対して確定数の親会社の上場会社の株式を役員給与として交付する場合が考えられます。
※ 関係法人とは、役員が職務に従事する法人と支配関係のある法人(親会社等)で特定譲渡制限付株式の譲渡制限解除時や事後交付型リストリクテッド・ストックで株式を交付する時点などまで支配関係が継続することが見込まれる法人です(法人税法施行令第71条の2)。

Q8 株式報酬を交付する際、会社法上どのような手続が必要となりますか。
 取締役の報酬については、株主総会の普通決議で決定することになりますが(会社法第361条第1項。指名委員会等設置会社を除く)、各取締役の個別の報酬内容や金額の決定については取締役会決議等により行うことも可能です。また、金銭債権の現物出資により株式を交付する場合、株式を取締役に交付する際には、募集株式の発行等の手続を行うことが必要です(会社法第199条以下)。
<監査役会設置会社の場合>  自社の株式を株式報酬として交付する場合における会社法上の取扱いを踏まえた基本的な流れは以下の通りです。
① 株主総会において取締役に対する報酬の額又は具体的な算定方法を決議
② 必要な場合には取締役会において取締役個人に対する株式報酬相当の金銭報酬債権の付与を決議
【現物出資型の場合】 ③ 取締役会において株式の第三者割当て(新株の発行又は自己株式の処分)を決議
④ 払込期日において、各取締役による上記②の金銭報酬債権の現物出資と引換えに、各取締役に株式を交付
<監査等委員会設置会社の場合>  上記①において、監査等委員である取締役の報酬総額とそれ以外の取締役の報酬総額とは区別して株主総会で決議する必要があります。また、上記②について、監査等委員である取締役個人の報酬は、監査等委員である取締役の協議によって定めることとなります。
<指名委員会等設置会社の場合>  上記①が不要となるとともに、上記②の決議は報酬委員会によることとなります(会社法第404条第3項)(具体的なスケジュールは、Q46を参照)。
 現物出資型の場合、上記①の株主総会決議に関し、取締役に対して会社法上報酬として付与される金銭報酬債権の現物出資により株式が交付されるという実質を踏まえ、既存の金銭報酬の枠を利用するのではなく、改めて金銭報酬としての株主総会決議による承認を得ることとし、その際には、その金銭報酬債権の現物出資により株式が交付されることや、その株式報酬制度の概要についても説明することが望ましいと考えられます(⇒「Ⅲ.株主総会報酬議案(例)1.事前交付・在籍条件型」を参照)。
 なお、取締役の報酬について上記①の株主総会決議を得る場合には、会社法第361条第1項第1号の確定額報酬として決議を得る(確定額で報酬の上限を決定する場合もこれに含まれます。)か、同項第2号の報酬額の具体的な算定方法として決議を得ることが考えられます。
 確定額で報酬の上限を決定して会社法第361条第1項第1号の決議を得る場合、株価上昇により交付する株式に対応する金銭報酬債権の額が総会決議で定めた上限金額を超過する場合が考えられますので、注意して設定する必要があります。
 会社法第361条第1項第2号の決議を得る場合、その決議において取締役の全員について一律同じ計算式によって株数に応じた金銭報酬を付与するという場合には、株主総会では、その旨と、その計算方法を決議することになると考えられます。そのほか、取締役をいくつかのグループに分けて(例えば、役付取締役と、平取締役に分けて)、それぞれ異なった計算式によって株数に応じた金銭報酬を付与するという場合には、株主総会では、その旨と、各グループについての計算式を決議する方法も考えられます。また、これらの方法については、最も高額となる計算式のみ決議して、その枠内での運用を取締役会等に委ねるという方法も考えられます。
 なお、報酬を取締役に付与するに当たって、取締役会にて役員報酬規程を制定することや、会社と取締役との間で個別に契約を締結することなども考えられます。

Q9 上場会社が株式報酬を交付するために第三者割当を行う際、金融商品取引法上の開示規制はどうなりますか。
 発行価額の総額が一億円未満の場合を除き、原則として、有価証券届出書において、「第三者割当の場合の特記事項」として割当先の状況等(取締役個人の氏名、住所、職業の内容など)を記載することが求められています。ただし、譲渡禁止条件付新株予約権や特定譲渡制限付株式に該当する場合は、金融商品取引法上の第三者割当の定義から除外されることとされているため(企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第1号ヲ(2)(3))、有価証券届出書における「第三者割当の場合の特記事項」の記載は不要となります。
 なお、現物出資型の株式報酬について、金融商品取引法上の第三者割当の定義から除外する企業内容等の開示に関する内閣府令の改正案がパブリックコメントに付され(コメント募集期間2017年5月17日から6月16日まで)、7月14日付で公布・施行されました。

Q10 上場会社が株式報酬を交付するために第三者割当を行う際、上場規則における開示はどうなりますか。
 株式報酬としての株式の発行に係る募集又は自己株式処分に係る募集を行うことについての決定をした場合は、以下の事項を開示することが必要となります。ただし、発行価額の総額が一億円未満の場合には、適時開示義務は生じません(会社情報適時開示ガイドブック 第2編第1章1.(2)⑦参照)。
a.発行の概要
(a)払込期日
(b)発行する株式の種類及び数
(c)発行価額
(d)発行総額
(e)募集又は割当方法
(f)出資の履行方法
(g)株式の割当ての対象者及びその人数並びに割り当てる株式の数
(h)その他投資判断上重要又は必要な事項
b.発行の目的及び理由
c.株式割当契約の概要(種類株式の場合には株式の内容)
d.払込金額の算定根拠及びその具体的内容
e.企業行動規範上の手続き(第三者割当に該当する場合)
 なお、2016年の夏に会社情報適時開示ガイドブックが改訂され、上場企業がその役員又は従業員に対して付与された金銭報酬債権の払込みを受けることにより役務提供の対価として新株発行や自己株式処分を行う場合には、上記の開示事項に沿って適時開示を行うこととされました。
 また、有価証券上場規程施行規則では、上場会社が第三者割当による募集株式の割当てを行う場合には、割当てを受けた者が割当後2年の間に募集株式の譲渡を行うことについての確約の締結と譲渡を行った場合の取引所への報告(有価証券上場規程施行規則第429条、第430条)、割当先が反社会的勢力と関係がないことを示す確認書の提出(有価証券上場規程施行規則第417条第1項第1号g)について定められています。
 これらのルールに関し、2016年の夏に企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され、上場企業がその役員に対する株式報酬として、新株発行や自己株式処分により特定譲渡制限付株式を交付する場合が第三者割当に該当しないこととされたため、会社情報適時開示ガイドブックにおいても、かかる場合において譲渡報告に関する確約書の写し、株式の譲渡に関する報告書及び割当先が反社会的勢力と関係がないことを示す確認書の提出を不要とすることが明確化されました。

Q11 自己株式処分により株式の交付を行う際、金融商品取引法上のインサイダー取引規制はどのように適用されますか。
 上場会社等が役員に対し自己株式処分による有償での株式交付を行う場合、金融商品取引法第166条第1項柱書で定めるインサイダー取引規制の「売買等」に該当すると解されています。
 また、金融商品取引法では、インサイダー取引を間接的に防止するために、売買報告義務(金融商品取引法第163条第1項)及び短期売買利益提供義務(金融商品取引法第164条第1項)を規定しており、上場会社等が役員に対し自己株式処分による有償での株式交付を行う場合には、当該義務の対象になると解されています。
 役員が上場会社等から自己株式処分による有償での株式交付を受けた場合には、当該義務で規定する「買付け」に該当し、その交付を受けた日の属する月の翌月15日までに、その取引に関する売買報告書を内閣総理大臣に提出する必要があります。
 また、上場会社等が役員に毎年株式の割当を行う場合においては、株式の割当日から前後6ヶ月以内に、役員が既に交付されている株式の売却を行うと、その売買によって生じた利益は「短期売買利益」に該当し、それを当該上場会社等又はその株主が役員に対し返還請求できることになります。
 ただし、金融商品取引法第163条第1項及び第164条第8項において、内閣府令で定める場合は売買報告義務及び短期売買利益の返還義務の適用除外とすると定めており、当該適用除外を定める有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第30条第1項及び第33条では、新株予約権の取得とその権利行使による株券の買付け等を適用除外としています。
 なお、自己株式処分によらず新株発行による場合は、原始取得に該当し、有償、無償に関わらず、インサイダー取引規制の対象となる「売買等」には該当せず、売買報告義務及び短期売買利益提供義務も生じません。
 なお、現物出資型の株式報酬について金融商品取引法上の売買報告義務及び短期売買利益の返還義務の適用から除外する有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の改正案がパブリックコメントに付され(コメント募集期間2017年5月17日から6月16日まで)、7月14日付で公布・施行されました。

Q12 複数年の報酬を付与する場合、有価証券報告書における額の開示はどのようにすれば良いでしょうか。
 業績連動給与としての損金算入とは別に、役員報酬額の開示が有価証券報告書において必要となりますが、この有価証券報告書に記載すべき役員報酬額としては、各事業年度において会計処理上費用計上された金額が報酬額として開示されることになります。

Q13 株式報酬を付与する場合、社会保険料の算定の対象になりますか。
 健康保険・厚生年金保険の保険料の額や保険給付の額の計算の基礎となる「標準賞与額」の範囲は、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他名称を問わず、被保険者が労務の対償として受けるすべてのもののうち年3回以下のもの(ただし、大入り袋や見舞金のような臨時に受けるものを除く)とされており、役員に対する株式報酬についても、原則として標準賞与額に含まれるものと解されています。
 ただし、ストックオプションについては、自社株をあらかじめ定められた権利行使価格で購入する権利を付与するものであり、権利の付与自体は社会保険料を徴収すべき報酬に該当しないとされています。また、権利行使による株式取得も社会保険料の対象とならないとされています。

Q14 上場企業の完全子会社の役員に株式を交付する場合、組織再編成によって支配関係が変わる可能性がある場合はどうなりますか。
 上場企業がその完全子会社の役員に株式を交付する場合、損金算入の要件において、株式を交付するまでの間、継続して支配関係があることが見込まれることとされています(法人税法第34条第1項第2号及び第3号並びに第7項、法人税法施行令第71条の2)。
 株式報酬の導入決議前に組織再編成が予定され、その組織再編成により支配関係がなくなることが予定されている場合は、そもそも「継続して支配関係があること」が見込まれませんので、損金算入の要件を満たすことができません。

Q15 株式報酬の導入決議後などに組織再編成が生じることを決定した場合には、損金算入するために、どのような対応をすることが考えられますか。
 特定譲渡制限付株式の場合は、予め契約などによって、その時点における権利関係を清算し、組織再編成後の法人で特定譲渡制限付株式を交付することもできます。(⇒詳細はQ30を参照)
 事後交付型リストリクテッド・ストックの場合は、当該組織再編成を契機として臨時改定事由が生じたことにより、当該組織再編成前に期間按分した株式数に交付する株式数を変更する定めを行ったものと認められる場合には、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を所定の期間中に提出することになります。(⇒詳細はQ52を参照)
 パフォーマンス・シェアの場合は、組織再編成が生じるまでの期間で報酬額を按分して組織再編成前に交付できるよう、予め算定方法等を記載するという方法が考えられます。

第3 事前確定届出給与としての株式報酬に関するQ&A
1 事前確定届出給与における株式報酬
Q16 事前確定届出給与としてどのような株式報酬が対象となりますか。
 平成29年度改正では所定の時期に確定数の株式を交付する役員給与も事前確定届出給与の対象とされたことにより、事前交付型リストリクテッド・ストックとして平成28年度改正において事前確定届出給与の対象となった特定譲渡制限付株式に加え、他の手法による事前交付型リストリクテッド・ストックなど、将来の一定の時期に株式を交付するもの(いわゆる、事後交付型リストリクテッド・ストック)や、株式交付信託(業績連動がないもの)による株式報酬も損金算入の対象に加えられました。また、事前に報酬額が確定していて、交付直前の株価を参照して交付株式数を決定するような報酬で、端数部分を金銭交付するものも、事前確定届出給与の対象となります(法人税法施行令第69条第8項)。
 また、株式交付信託では株式の一部を役員に交付する時期に金銭に換えて役員には株式と金銭を交付することが行われていますが、このような場合についても、全体として株式を交付することが目的の給与であることが株主総会議案において明らかにされ、一定の割合の株式を源泉徴収等のために換金するものであることが役員報酬規程等で予め明らかにされ、株式の換金が受益権確定の時期に近接した時点で行われていれば、全体として確定した数の株式とされ、損金算入できると考えられます。
 なお、株式と金銭を区分した上で、確定数の株式(事前確定届出給与)と株価連動の金銭(業績連動給与)を組み合わせて交付することも可能です。

2 「特定譲渡制限付株式」
① 概要
Q17「特定譲渡制限付株式」に関する税制措置の概要はどのようなものですか。
 法人からその法人の役員又は従業員等(以下「役員等」といいます。)にその役員等による役務提供の対価として交付される一定期間の譲渡制限その他の条件が付されている株式(以下「特定譲渡制限付株式」といいます。)について、その役員等における所得税の課税時期については、譲渡制限期間中はその特定譲渡制限付株式の処分ができないこと等に鑑み、その特定譲渡制限付株式の交付日ではなく、譲渡制限解除日となることが平成28年度改正で明確化されました(所得税法施行令第84条第1項)。
 また、法人税については、平成29年度改正において、その法人において、その役員等における所得税の課税時期として給与等課税額が生ずることが確定した日にその役務提供を受けたものとされ、その役務提供に係る費用の額は、同日の属する事業年度において損金の額に算入することとされました(法人税法第54条1項)。
 平成29年度改正により、無償取得事由がなくなった後も譲渡制限が解除されない場合、所得税の課税時期と法人税の損金算入時期が異なることとなります。
 また、役員給与として特定譲渡制限付株式が交付された場合には、原則として事前確定届出給与の要件に該当する特定譲渡制限付株式による給与の額は損金の額に算入されます(⇒Q18、Q24を参照)が、この特定譲渡制限付株式による給与のうち株式交付等のスケジュールに係る要件を満たすものについては、事前確定届出給与の届出が不要とされています。
 なお、対象となる株式は、適格株式(市場価格のある株式(役員が職務に従事する法人に加え、関係法人の発行する株式を含みます。)をいいます。)のみとなります。


Q18 税制措置の対象となる「特定譲渡制限付株式」とはどのようなものですか。
 法人税法等及び所得税法施行令等においてそれぞれ規定されており、具体的には、次の①及び②の各要件を満たす株式(以下「譲渡制限付株式」といいます。)であって、次の③及び④の各要件を満たすものとされています。
① 一定期間の譲渡制限が設けられている株式であること(⇒Q19を参照)
② 法人により無償取得(没収)される事由(無償取得事由)として勤務条件又は業績条件が達成されないこと等が定められている株式であること(⇒Q20を参照)
③ 役務提供の対価として役員等に生ずる債権の給付と引換えに交付される株式等であること(⇒Q21を参照)
④ 役務提供を受ける法人又はその関係法人の株式であること(⇒Q21を参照)
 なお、役員給与として特定譲渡制限付株式が交付された場合には、事前確定届出給与の要件に該当する特定譲渡制限付株式による給与の額については、原則として損金の額に算入されます(⇒Q24を参照)。
【参照条文:法人税法第34条、第54条、所得税法施行令第84条 等】

Q19 譲渡制限付株式の譲渡制限に関する要件とはどのようなものですか。
「譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。)についての制限がされており、かつ、当該譲渡についての制限に係る期間(以下「譲渡制限期間」といいます。)が設けられていること(法人税法施行令第111条の2第1項第1号、所得税法施行令第84条第1項第1号)。」とされています。この譲渡制限期間については、中期経営計画の対象期間のサイクルと一致させて3~5年といった期間を設定すること等が考えられます。なお、役員給与は一定期間の職務執行の対価であるため、中期経営計画の対象期間等にあわせて一定の役務提供期間が設定されていると考えられます。役務提供期間終了時点において譲渡制限が解除されることとなる特定譲渡制限付株式の数は定まっていると考えられますが、実際に譲渡制限が解除される日は役務提供期間終了後の一定の日とすることも考えられます。また、その一定の日は確定日ではなく、退任日など客観的な事由に基づき定まる日とすることも考えられます(※)。
 なお、譲渡制限の手法としては、種類株式を用いるほか、普通株式を用いた上で、法人とその役員等との契約において制限することが考えられます。
※ 業績連動給与以外の退職給与に該当する場合は、法人税法第34条第1項の対象外となります。

Q20 譲渡制限付株式の無償取得(没収)の要件とはどのようなものですか。
 譲渡制限付株式は、「法人が無償で取得することとなる事由(以下「無償取得事由」といいます。)が定められていること」が要件とされています。
 この譲渡制限付株式として認められるために必要な無償取得事由は、役員等が「譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと」「勤務実績が良好でないこと」といった『役員等の勤務の状況に基づく事由』又は「法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないこと」といった『法人の業績等の指標の状況に基づく事由』に限ることとされています(法人税法施行令第111条の2第1項第2号、所得税法施行令第84条第1項第2号)。
 また、事前確定届出給与として損金算入が可能な特定譲渡制限付株式は「役務の提供期間に応じて」無償取得されるものに限られます(法人税法第34条第1項第2号及び第5項参照)。
 なお、無償取得の手法としては、種類株式を用いるほか、普通株式を用いた上で、法人とその役員等との契約において無償取得事由を定めることが考えられます(⇒Q39を参照)(具体的な無償取得事由の定め方については、「Ⅳ.譲渡制限付株式割当契約書(例)」第3条を参照)。

Q21 「特定譲渡制限付株式」となる譲渡制限付株式の対象範囲はどのようなものですか。
 役務提供の対価として役員等に生ずる債権の給付と引換えにその役員等に交付される譲渡制限付株式のほか、その役員等に給付されることに伴ってその債権が消滅する場合のその給付された譲渡制限付株式のうち、役務の提供を受ける内国法人又はその関係法人が発行した譲渡制限付株式が対象とされています(法人税法第34条第1項第2号、第54条第1項、所得税法施行令第84条第1項)。
 すなわち、その役員等に生ずる債権の現物出資と引換えに交付されるその役務の提供を受ける法人又はその関係法人の譲渡制限付株式や役員等に給付されることに伴ってその債権が消滅する場合のその給付された譲渡制限付株式が該当することになります。
 なお、関係法人の譲渡制限付株式が交付されるケースとしては、役員等が役務の提供を受ける法人に対する債権を、発行法人に対して現物出資する(その結果、その発行法人がその債権を取得することになる)ことが考えられます(※)。
※ 役務の提供を受ける法人が役員等に対して負う債務について、その発行法人が債務引受けをした上で、その債務引受けによりその発行法人に対する債権となった債権を、役員等がその発行法人に対して現物出資することも考えられます。
 なお、役務の提供期間以外の事由により無償取得される株式数が変動する特定譲渡制限付株式については、事前確定届出給与として損金算入できません(⇒Q20を参照)。ただし、譲渡制限付株式割当契約書等において禁固以上の刑に処せられた場合等に特定譲渡制限付株式の全てが没収される旨が規定されていることは「役務の提供期間以外の事由により無償取得される株式数が変動する」には該当しないと考えられます。

Q22 損金算入の対象とされる特定譲渡制限付株式となる関係法人の株式とはどのようなものですか。
 子会社の役員等に親会社の株式を交付するニーズがあることを踏まえ、その役務提供を受ける法人の関係法人の株式についても損金算入の対象とされています。
 関係法人とは、その交付の時点において、役務の提供を受ける法人との間で譲渡制限期間中において支配関係が継続することが見込まれている法人が該当します(法人税法施行令第71条の2)。
※ 役務の提供を受ける法人(A法人)が役員等に対して負う債務について、その発行法人(B法人)が債務引受けをした上で、その債務引受けによりB法人に対する債権となった債権を、役員等がB法人に対して現物出資する場合、A法人において損金算入することになり、役員等に対する源泉徴収義務もA法人において生じると考えられます。このような債務引受けをストックオプションで行った場合の課税関係も同様です。

Q23 「特定譲渡制限付株式」については、議決権、配当受領権があってもよいのですか。
 議決権、配当受領権を有していてもよく、これらの有無は、税務上の取扱いに影響しません。

② 特定譲渡制限付株式の法人税法上の取扱いについて(各論)
Q24 役員に支給する「特定譲渡制限付株式による給与」の額は、損金算入となりますか。
 法人がその役員に対して支給する給与(役員給与)については、①定期同額給与、②事前確定届出給与及び③業績連動給与のいずれかに該当するものの額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、原則として、損金の額に算入することとされています。
 役員に支給する「特定譲渡制限付株式による給与」については、その特定譲渡制限付株式の交付までの手続等を踏まえると、上記②の事前確定届出給与の要件を満たすことができると考えられ、その要件を満たす場合には事前確定届出給与に該当する「特定譲渡制限付株式による給与」となり、その支給額は損金の額に算入されます(⇒Q17、Q18を参照)。
 なお、事前確定届出給与に該当するためには、納税地の所轄税務署長に「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めの内容に関する届出」をしていることが必要とされていますが、株式交付等のスケジュールに係る要件を満たす「特定譲渡制限付株式による給与」については、その届出は不要とされています(⇒Q26を参照)。

Q25 「事前確定届出給与」に該当する「特定譲渡制限付株式による給与」となるための要件とはどのようなものですか。
 法人がその役員に支給する「特定譲渡制限付株式による給与」が事前確定届出給与に該当するためには、「その役員の職務につき所定の時期に確定した数の株式又は確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式を交付する旨の定め」に基づいて、「特定譲渡制限付株式による給与」が支給されることが必要となります(法人税法第34条第1項第2号)。
 確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式を交付する場合には、その役員の職務執行開始当初に、その役員の職務執行期間(=将来の役務提供)に係る報酬債権の額(支給額)が確定し、所定の時期までにその役員によるその報酬債権の現物出資と引換えに特定譲渡制限付株式が交付されることが必要となります。
 そのため、職務執行開始当初にその報酬債権の額(支給額)が確定せず、業績状況に応じて報酬債権の額が決まる場合には、確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式に該当しません。
 また、所定の時期に確定した数の株式を交付する場合には、その役員の職務執行開始当初に付与する特定譲渡制限付株式の数が確定し、所定の時期までにその役員の報酬債権の現物出資と引換えにその確定した数の譲渡制限付株式が交付されることが必要となります。
 なお、勤務期間以外の事由により無償取得される株式数が変動する譲渡制限付株式は損金算入の対象とならないこととされています。

Q26 「届出が不要となる事前確定届出給与」に該当するための株式交付等のスケジュールに係る要件とはどのようなものですか。
 「届出が不要となる事前確定届出給与」の要件として、報酬決議及び特定譲渡制限付株式の交付に係る期限が設けられています。
 具体的には、職務の執行の開始の日(原則、定時株主総会の日)から1月を経過する日までに株主総会等(株主総会の委任を受けた取締役会を含むものと解されます。)の決議により取締役個人別の確定額報酬又は確定数の株式についての定め(その決議の日からさらに1月を経過する日までに、その職務につきその役員に生ずる債権の額に相当する特定譲渡制限付株式又は確定数の株式を交付する旨の定めに限ります。)がされ、その定めに従って交付されることが要件とされています(法人税法施行令第69条第3項第1号)(⇒具体的な想定スケジュールについては、Q46を参照)。

Q27 当社の取締役の任期は2年ですが、その取締役の2年目の給与として新たに「特定譲渡制限付株式による給与」を支給する場合の事前確定届出給与としての取扱いはどのようになりますか。
 事前確定届出給与としての取扱いについては、役員の任期が複数年の場合であっても、通常、定時株主総会をもって毎年職務執行開始日が到来するものと解されます。
 このため、例えば、2年目の任期に該当する役員に対して、新たに「特定譲渡制限付株式による給与」として特定譲渡制限付株式を交付する場合であっても、2年目の職務執行開始日に該当する日(原則、2年目の定時株主総会の日)から所定の期限までに所定の要件(⇒Q18、Q26を参照)を満たしているときは、「届出が不要となる事前確定届出給与(⇒Q17、Q24を参照)」に該当する「特定譲渡制限付株式による給与」となると考えられます。
 ただし、この場合の「特定譲渡制限付株式による給与」のうちに、1年目の職務執行期間に係る給与が含まれている場合には、職務執行開始日から1月を経過する日までに決議が行われている等の要件を満たさないので、事前確定届出給与には該当しません。

Q28 「特定譲渡制限付株式による給与」の額の損金算入時期及び損金算入額についてはどのようになりますか。
 損金算入時期については、役員等に給与等課税額(※1)が生ずることが確定した日においてその法人がその役員等から役務提供を受けたものとして、その役務提供に係る費用の額(損金算入額)をその法人の同日の属する事業年度の損金の額に算入することとされています(※2)(⇒Q17、Q24を参照)。
 また、損金算入額については、確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式を交付する場合(確定した数の特定譲渡制限付株式を交付する場合で「届出が不要となる事前確定届出給与」に該当するものを含みます。)では、原則として、その給与等課税額が確定した特定譲渡制限付株式の交付と引換えにその役員等により現物出資された報酬債権等の額とされています。確定した数の特定譲渡制限付株式を交付する場合(「届出が不要となる事前確定届出給与」に該当するものを除きます。)は、当初報酬の内容を決議した時点の株価を元に算定することとされています(法人税法施行令第71条の3)(⇒具体的な処理例については、Q47を参照)。
※1 所得税法上の給与所得、事業所得、退職所得及び雑所得に係る収入金額とすべき金額
※2 役員の場合には事前確定届出給与に該当するものに限ります。

Q29 海外に居住する役員等に「特定譲渡制限付株式による給与等」を支給した場合についても、損金算入の対象となりますか。
 平成28年度改正時点では、役員等が非居住者である場合は損金算入の対象となっていませんでしたが、平成29年度改正において、役員等が非居住者である場合には、その役員等が居住者であるとしたときに給与等課税額が生ずることが確定した日において、役務提供を受けたものとして、その役務提供に係る費用の額が損金算入されることとなりました(法人税法第54条第1項、法人税法施行令第111条の2第3項)。

Q30 「特定譲渡制限付株式」の交付後、法人が組織再編成を行った場合にはどのようになりますか。
 特定譲渡制限付株式を交付する法人を当事者とする合併又は分割型分割が行われた場合に、その法人以外のその合併又は分割型分割に係る法人が、その特定譲渡制限付株式に係る契約関係を承継し、「承継譲渡制限付株式」を交付する場合があります。
 例えば、特定譲渡制限付株式を交付しているA社(消滅会社)とB社(存続会社)が合併(※)し、その合併の対価としてその事前特定譲渡制限付株式を有するA社役員等に交付されるB社株式が譲渡制限付株式(一定期間の譲渡制限及び無償取得事由(⇒Q18、Q50、Q51を参照)といった条件が付されている株式)に該当する場合に、そのB社株式は「承継譲渡制限付株式」となります。この場合には、その合併の日において課税関係は生じず、その役員等における給与等課税額が生ずることが確定した日)においてその役員等から役務提供を受けたものとして、B社はその役員等の役務提供に係る費用の額を同日の属する事業年度において損金の額に算入することとなります。
 なお、合併及び分割型分割を含む組織再編成に際して、法人とその役員等との間のインセンティブ構造が大幅に変更されること等の理由から、その時点で特定譲渡制限付株式に関する権利関係を一旦清算(組織再編成時までの期間分の特定譲渡制限付株式について譲渡制限を解除し、将来分の特定譲渡制限付株式については無償取得する)し、必要に応じて再編後新たに再編後の法人の特定譲渡制限付株式を交付するといった実務上の工夫も考えられます(⇒「Ⅳ.譲渡制限付株式割当契約書(例)」第4条を参照)。
※ 合併のほか、分割型分割についても同様とされています。

Q31 「特定譲渡制限付株式」が無償取得(没収)された場合の法人税法上の税務処理はどのようになりますか。
 法人が役員等から株式を無償取得することとなった部分については、役員等から役務の提供につき給与等課税額が生じないため、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されません(法人税法第54条第2項)。

Q32 「特定譲渡制限付株式」に関する税制措置の適用関係はどのようになりますか。
 特定譲渡制限付株式に関する平成29年度税制改正の改正事項の多く(市場価格があるものに限定される、非居住者に対するものが損金算入の対象に含まれる、没収数が変動するものが除外されるなどの改正)は平成29年10月1日施行とされており、法人が平成29年10月1日以後にその交付に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給又は交付)をする特定譲渡制限付株式及びその特定譲渡制限付株式に係る承継譲渡制限付株式について改正後の法律が適用されます。
 なお、事前確定届出給与として確定した数の特定譲渡制限付株式を支給することについては、平成29年4月1日施行とされており、要件を満たす特定譲渡制限付株式については10月までの間に交付決議されたものも損金算入が可能です。

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