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解説記事2017年12月25日 【SCOPE】 馬券の払戻金の課税関係めぐり最高裁で国側が2度目の敗訴(2017年12月25日号・№720)

予想ソフト不使用でも外れ馬券を経費と認める
馬券の払戻金の課税関係めぐり最高裁で国側が2度目の敗訴

 馬券の払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費性が問題となった税務訴訟で最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は平成29年12月15日、馬券の払戻金を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券も必要経費に該当すると判断した。菅野裁判長は、納税者の馬券購入の期間等(6年間にわたり1年当たり合計3億円から21億円購入)に照らせば納税者の一連の馬券購入行為は継続的行為といえると指摘。また、利益発生の規模等(6年間を通じて1,800万円~約2億円の利益)に鑑みると、一連の馬券購入行為は客観的にみて営利を目的とするものであったと指摘。本件納税者による馬券払戻金に係る所得を雑所得と判断するとともに、外れ馬券の購入代金も必要経費に当たると結論付けた。

独自のノウハウで回収率100%超え、6年間で恒常的に多額の利益を計上
 競馬の当たり馬券の払戻金に関する所得区分などが問題となる税務訴訟が相次ぐなか、最高裁第三小法廷判決(平成27年3月10日判決)では、馬券の払戻金を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券の購入代金を当たり馬券の払戻金から必要経費として控除できるという初めての判断が示された(本誌586号31頁参照)。今回紹介する税務訴訟の納税者(以下「本件納税者」)は、最高裁平成27年3月10日判決における別件納税者とは異なり、馬券の購入に当たり予想コンピュータソフトを使用してはいなかったものの、独自のノウハウによる着順予想を行ったうえで大量の馬券を購入することにより別件納税者以上の利益を獲得していた(参照)。

【表】本件納税者と別件納税者の相違点(馬券の購入方法・利益の規模など)
本件納税者
(最高裁平成29年12月15日判決)
別件納税者
(最高裁平成27年3月10日判決)
馬券の購入方法  競馬場のコースごとのレース傾向等に関する情報を継続的に収集・蓄積する。そしてレースごとに馬の能力、コース適正、レース展開など複数の考慮要素に基づいた評価をすることで着順を予想する。そのうえで予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小との組合せなどにより購入する馬券を決定する。年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標に、年間で利益が得られるように工夫する。  馬券を自動的に購入するコンピュータソフトを使用して独自の条件設定と計算式をもとに、インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目せず網羅的な購入方法で馬券を購入する。
購入金額や利益の規模 【馬券の購入金額】
 平成17年から平成22年にかけて約72億7,000万円。
【利 益】
 平成17年には約1,800万円、平成18年には約5,800万円、平成19年には約1億2,000万円、平成20年には約1億円、平成21年には約2億円、平成22年には約5,500万円の利益を計上(総額約5億5,100万円)。
【馬券の購入金額】
 平成19年から平成21年にかけて約28億7,000万円。
【利 益】
 平成19年に約1億円、平成20年に約2,600万円、平成21年に約1,300万円の利益を計上(総額約1億4,000万円)。

地裁、機械的・網羅的に購入した証拠なし  一審の東京地裁(民事第2部・増田稔裁判長)は、本件納税者が最高裁判決における別件納税者と同等以上の金額の馬券を購入し、同等以上の利益を得ていたことを認める一方で、本件納税者の場合は具体的な馬券の購入履歴などが保存されていないため、具体的にどのように馬券を購入していたかが明らかではないと指摘。この点を踏まえ地裁は、本件納税者が最高裁判決における別件納税者のように馬券を機械的に、網羅的に購入していたとまでは認めることができない本件事実関係等のもとでは、本件納税者による一連の馬券の購入が一体の経済的活動の実態を有するとまでは認めることができないため、一時所得に該当するとの判断を示していた(外れ馬券は必要経費に該当せず)。
高裁、雑所得で外れ馬券を必要経費と認める  一審の地裁判決とは一転して東京高裁(第7民事部・菊池洋一裁判長)は、本件納税者による競馬所得を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券を含むすべての馬券の購入代金を必要経費として控除することができるとの判断を示した。高裁は、本件納税者は具体的な馬券の購入を裏付ける資料を保存していないものの、その有するノウハウを駆使し、多額の利益を恒常的に得ることができたものと認められるとした。そして、本件納税者はその独自のノウハウに基づいて長期間にわたり多数回かつ頻繁にその選別に関する馬券の網羅的な購入をして、100%を超える回収率を実現することにより多額の利益を恒常的に上げていたものであるため、このような一連の馬券の購入は一体の経済活動の実態を有するということができると指摘。そのうえで、高裁は、本件納税者による競馬所得は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として、一時所得ではなく雑所得に該当すると判断するとともに、外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するため、外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が的中馬券の払戻金という収入に対応するものとして必要経費に該当すると判断した(本誌641号4頁参照)。
最高裁、国側の上告受理申立てを斥ける  控訴審で逆転敗訴した国側は、上告受理申立てを行っていたものの、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は納税者逆転勝訴とした高裁判決の判断を是認する判決を下している。
 具体的にみると、菅野裁判長は、本件納税者の馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様に照らせば、一連の馬券購入行為は継続的行為といえるものであると指摘。また、利益発生の規模、期間その他の状況等に鑑みると、一連の馬券購入行為は客観的にみて営利を目的とするものであったと指摘した。そのうえで、菅野裁判長は、本件納税者の馬券に係る所得は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当すると認定。また、一連の馬券の購入により利益を得るためには外れ馬券の購入は不可避であったといわざるを得ないと指摘し、本件における外れ馬券の購入代金は雑所得である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として必要経費に当たるとの判断を下している。

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