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解説記事2018年02月19日 【SCOPE】 関与税理士に通帳不提示も、仮装隠ぺいの事実は認められず(2018年2月19日号・№727)

審判所、重加算税賦課決定処分を取消し
関与税理士に通帳不提示も、仮装隠ぺいの事実は認められず

 医師や産業医である請求人が本件収入(報酬及び交通費相当額)を申告していなかったことが重加算税の賦課要件に該当するか否かが問題となった事案で国税不服審判所は平成29年8月23日、重加算税賦課決定処分を取り消す裁決を下した(大裁(所・諸)平29第17号)。原処分庁は、請求人が関与税理士に預金通帳を提示しなったことや調査担当職員から申告漏れを指摘されるまで預金通帳を提示しなかったことが仮装隠ぺいに該当する旨などを主張したものの、審判所は原処分庁の主張は採用できないと結論付けた。重加算税の適否が問題となる場合に課税当局は、納税者の関与税理士に対する所得の秘匿等を重視しているなか(本誌725号4頁以降の特集参照)、本裁決事例は、原処分庁の主張が審判所の事実認定により斥けられたという点で注目されそうだ。

課税当局、納税者の関与税理士に対する所得の秘匿等を重視
 重加算税の賦課要件について最高裁は、「当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたうえ、その意図に基づく過少申告をしたような場合」には重加算税を賦課できるという法令解釈を示している(下囲み参照)。

>最高裁判所第二小法廷平成7年4月28日判決
 重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要するものである。
 しかし、重加算税制度の趣旨にかんがみれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解すべきである。

 今回紹介する裁決事例で問題となったのは、医師や産業医である請求人が各事業場を巡回することにより収受していた本件収入(報酬及び交通費相当額)を申告していなかったこと(申告漏れ)が重加算税の賦課要件に該当するか否かという点である。
 原処分庁は、①請求人が確定申告書の作成を依頼していた関与税理士に本件通帳(本件収入が振り込まれた本件預金口座に関するもの)を提示しなかったこと、②請求人が税務調査の際に調査担当職員から本件収入の申告漏れを指摘されるまで本件通帳を提示しなかったこと(最高裁平成6年11月22日判決(本誌725号5頁参照)及び事務運営指針第1・1(8)参照)から、請求人は当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行為をしたと認められる旨などを主張した。

審判所、当初から所得の過少申告を意図していたとは認められず
 国税不服審判所はまず、最高裁平成7年4月28日判決の法令解釈を引用したうえで、原処分庁の主張①(確定申告書の作成を依頼していた関与税理士に本件通帳を提示しなかったこと)から請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認められるか否かを検討。審判所は、請求人は本件預金口座を開設し、支払先に本件収入を本件預金口座に振り込むよう依頼しているものの、他に多額の収入を得ていた請求人は本件収入を生活費として費消する必要がなく、現に本件預金口座の入出金を一度もしていないこと、請求人は産業医等として極めて多忙であり、売上の集計も自ら行わず、記帳も保険会社の担当職員に頼んでいたなど自己の金銭管理について平素より気にかけていなかったといえることなどを指摘。また、本件収入が別の預金口座(通帳は原処分庁に提出済み)に入金されていると思っていた旨を請求人が申述及び答述していることからすると、請求人が支払先への振り込みの依頼からしばらくして同依頼自体を忘れてしまい、本件収入が別の預金口座に振り込まれていると請求人が誤解していた可能性も否定できないと指摘した。
 この点などを踏まえ審判所は、別の預金口座の通帳等を提示したことにより、請求人が本件通帳を提示しなくても本件収入について適正に申告していると誤解していたと考える余地が残るというべきであるとしたうえで、原処分庁の主張①の点は請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえないと判断した。
原処分庁の主張はいずれも採用できず  また審判所は、原処分庁の主張②(調査担当職員から本件収入の申告漏れを指摘されるまで本件通帳を提示しなかったこと)については、請求人が税務調査の際に入出金している「動きのある」口座のみ提示すればよいと考えて、本件収入及び預金利息が入金されるのみでそれ以外の入出金が全くなかった本件預金口座に係る本件通帳を提示しなった旨の申述が信用できないとは認められないと認定した。
 この点などを踏まえ審判所は、請求人は自ら入出金している口座に係る通帳の提出に応ずれば問題ないと考えて、そうではなかった本件通帳を提示しなかったとみる余地が残るというべきであるとしたうえで、原処分庁の主張②の点も請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえないと判断した。
 以上を踏まえ審判所は、原処分庁の主張はいずれも請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、請求人が当初から所得を過少に申告することを意図していたとは認められないから、本件は納税者が当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には当たらないと判断。請求人に対する重加算税の賦課決定処分を取り消した。

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