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解説記事2018年05月28日 【税務マエストロ】 免税(1)(2018年5月28日号・№740)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
免税(1)
#213 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#214
タックスヘイブン対策税制関連のQ&Aについて②
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説  消費税は、国内で物を買う、借りる、サービスの提供を受けるという行為(消費支出)について担税力を求めて課税する税金である。
 したがって、海外で生産された製品であっても、これが日本国内に輸入され、国内で消費、使用されるということであれば、これについても消費税は課税される。逆に、日本国内で生産された製品であっても、これが海外に輸出されるのであれば、その製品は日本以外の場所で消費、使用されるわけであり、消費税を課税する必要はない。そこで、海外への貨物の輸出などについては「免税」という規定を設け、消費税を免除することとしているのである。
 例えば、日本と中国で貿易取引をする場合、日本からの貨物の輸出は中国では輸入であり、また、中国からの貨物の輸出は日本では輸入となる。日本から輸出する貨物については、中国では国産品との課税のバランスを図るために中国オリジナルの税金を輸入時に課税してくることから、結果として、日本からの輸出時に日本の消費税を課税してしまうと、税金分だけ輸出価格が上昇し、価格競争上不利になってしまうことになる。また、国際間の二重課税という問題も発生することになる。
 そこで、貨物に課される間接税は、その貨物が消費、使用される国において課税することとし、輸出される貨物については、間接税の負担がかからないように裸の価格で値決めをし、国境税調整を図るのが国際的慣行となっているのである(図表1参照)。

 今月からは、消費税が免税となる輸出取引等について、実務上のポイントを確認する。

1 輸出取引等の範囲  輸出取引等の範囲には、単なる貨物の輸出だけではなく、国際運輸や非居住者に対する役務の提供など、取引の効果が国外に向けて発生するようなものも含まれる。
 また、国際運輸が輸出免税の対象とされていることから、貨物の輸送や旅客業務などに用いる船舶や航空機、コンテナーの譲渡や修理など国際運輸に関連するものについても輸出取引等の範囲に含まれ、免税の対象とされている(消法7、消令17、消基通7-2-1)(図表2参照)。
【図表2】
典型的な輸出 ・国内からの輸出として行われる資産の譲渡、貸付け
外国貨物に関するもの ・外国貨物の譲渡、貸付け
・外国貨物に係る荷役、運送、保管、検数、鑑定等のサービス
役務の提供に関するもの ・国際運輸
・国際通信
・国際郵便
非居住者に対するもの ・無形固定資産等の譲渡、貸付け
・広告宣伝、情報提供などの特定のサービス

2 「非課税」と「免税」
(1)仕入税額控除における取扱い
 非課税売上高も免税売上高も消費税は課税されないわけであるから、どちらも課税標準額に計上する必要はない。しかし、仕入控除税額の計算において、その取扱いは大きく異なっている。
 個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合、非課税売上対応分の課税仕入れ等の税額は控除の対象とはならないのに対し、免税売上対応分の課税仕入れ等の税額は、その全額が仕入税額控除の対象となる。
 また、課税売上割合の計算において、非課税売上高は分母にのみ算入されるのに対し、免税売上高は分母と分子の両方に算入されることになる。


(2)適用要件  輸出免税の規定の適用を受けようとする場合には、貨物を輸出する場合であれば輸出許可証などの書類、役務の提供のように貨物の通関を伴わない取引については契約書類などの証明書類を、確定申告期限から7年間保存することが要件とされている(消法7②、消規5)。これに対し、非課税取引については証明書類などの保存要件はない。

3 「免税」と「免除」
(1)「免税」と納税義務の「免除」の相違点
 国外の取引先に商品を販売するために貨物を輸出する場合には、輸出許可書などの書類の保存を条件として輸出免税の適用を受けることができる。「輸出免税」とは、課税事業者が輸出取引等を行った場合に、その取引に係る消費税を「免除」するものである。
 これに対し、納税義務の免除とは、基準期間中の課税売上高が1,000万円以下の事業者(免税事業者)について、課税期間中のすべての取引について納税義務を「免除」するものである。「免税」というよりも、むしろ「0%課税取引」と理解した方が、「納税義務の免除」との違いがはっきりして理解しやすいのではないだろうか。
(2)課税仕入れの定義との関係  「課税仕入れ」については、消費税法2条1項12号で、『事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第28条第1項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもの①で、第7条第1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第8条第1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る②。)をいう。』と定義している。
 ①の箇所では、「……したとした場合……」という法律にしては珍しい玉虫色の表現をしている。その意図するところは、他の者(仕入先)で必ずしも課税されてなくてもよいということである。結論として、課税仕入れの相手方が免税事業者や消費者であったとしても、その対価には消費税が課税されているものとして仕入税額控除の対象とすることが認められている(消基通11-1-3)。
 ②の箇所では、輸出免税の適用を受けるような取引は、たとえ売手サイドで課税資産の譲渡等に該当しても課税仕入れにはならない旨を規定している。国際航空運賃や国際電話料金などは消費税が免税となるのであるから、支払サイドでもこれらの費用は当然に課税仕入れには該当せず、仕入税額控除はできないということである。
 「輸出免税」と「納税義務の免除」とは、本質的にその内容が異なるものであることに注意する必要がある。
 課税仕入れの相手方がたとえ免税事業者であったとしても、その支払いは課税仕入れに該当することとなるのに対し、国際航空運賃のような免税仕入れは、そもそも消費税が免除されている費用なのであり、絶対に課税仕入れには該当しないということである。

4 典型的な輸出取引(本邦からの輸出として行われる資産の譲渡)  「輸出」とは、関税法で「内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう」と定義している(関税法2①二)。つまり、通関手続きをした上で貨物を輸出する場合に限り、輸出免税の規定が適用されるわけであるから、輸出用商品の売買がすべて免税になるわけではない。輸出用の商品であっても、国内で売買されている間は消費税が課税され、これを最終的に輸出するときに、その輸出売上げについて消費税を免除するということである(図表3参照)。

 なお、国外の取引先は外国企業などの非居住者に限定されるものではない。日本企業の海外支店などに向けて貨物を輸出し、売上代金を国内の本店から収受する場合であっても、「本邦からの輸出として行われる資産の譲渡」に該当する限りは輸出免税の規定が適用されることになる。
 輸出業者の場合、国内で税込みで仕入れた商品を税抜価格で輸出するわけであるから、輸出免税の適用を受け、確定申告により、消費税の還付を受けることができる。
 ただし、免税事業者は輸出免税の適用を受けることはできない(消法7①)。
 したがって、免税事業者である輸出業者が輸出用商品などの課税仕入れについて消費税の還付を受けようとする場合には、「課税事業者選択届出書」を期限までに提出し、あらかじめ課税事業者になっておく必要がある。

5 国税庁質疑応答事例  国税庁質疑応答事例のうち、4に関する事例を紹介する。なお、【回答要旨】については、必要に応じて筆者が適宜内容をアレンジしている。

○輸出取引に係る輸出免税の適用者(輸出取引等の範囲1)
【照会要旨】  輸出免税制度の適用者は、その適用要件として輸出したことを証する所定の書類を保存することとされていますが(消法72、消規5)、友好商社が介在する取引等の場合には、名義貸しに係る取引が多く、当該友好商社等を輸出申告者として掲名するものの、輸出申告書の原本は実際に輸出取引を行った者(実際の輸出者)が保管しています。
 このように、輸出申告書に輸出者として掲名された者が形式的な輸出者であり、実際の輸出者がある場合には、消費税法上、輸出免税の適用者は実際の輸出者であるとして取り扱うことはできないでしょうか。
【回答要旨】  実際の輸出者及び名義貸しに係る友好商社等は、次の措置を講ずることを条件に、輸出申告書の名義にかかわらず、実際の輸出者が輸出免税制度の適用を受けることができるものとします。
1 実際の輸出者が講ずる措置
  実際の輸出者は、輸出申告書等の原本を保存するとともに、名義貸しに係る事業者に対して輸出免税制度の適用がない旨を連絡するための消費税輸出免税不適用連絡一覧表(別紙様式参照)などの書類を交付します。
  なお、実際の輸出者は、名義貸しに係る事業者に対して、名義貸しに係る輸出取引にあっては、当該事業者の経理処理の如何にかかわらず、税法上、売上げ及び仕入れとして認識されないものであることを指導することとします。
(注)名義貸しに係る手数料は、実際の輸出者に対する課税資産の譲渡等に係る対価であり、これについて輸出免税の対象とすることはできないことに留意してください。
2 名義貸しに係る事業者が講ずる措置
  名義貸しに係る友好商社等の事業者は、確定申告書の提出時に、所轄税務署に対して、実際の輸出者から交付を受けた1に揚げる書類の写しを提出します。ただし、当該確定申告書等の提出に係る課税期間において全く輸出免税制度の適用を受けていない場合には、この限りではありません。




○客の依頼に基づき国外へ商品を送付する場合(輸出取引等の範囲2)
【照会要旨】  次のような取引の場合、販売店の課税資産の譲渡は、消費税法第7条第1項1号の輸出免税の対象となる取引に該当するのでしょうか。

【回答要旨】  消費税法施行規則第5条第1項の規定に従って輸出証明がされている限り、消費税法第7条第1項第1号の輸出免税の対象となる取引に該当するものとして取り扱って差し支えありません。
 この場合において、輸出者を販売店として明記している限り、梱包の表面等に依頼人の氏名等を表示することとしても差し支えありません。

記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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