解説記事2018年07月09日 【SCOPE】 接待交際費の必要経費算入は業務との直接関係性が必要に(2018年7月9日号・№746)
具体的な支出先等の説明なく必要経費と認めず
接待交際費の必要経費算入は業務との直接関係性が必要に
申告所得税をめぐる税務紛争でしばしば問題となるのは、事業を営む納税者が支出した費用が所得金額の計算上、必要経費に算入することができるか否かという点である。今回紹介する裁決事例では、会社役員であって不動産貸付業を営む請求人(納税者)が支出した固定資産税等、自動車関係経費、接待交際費が必要経費に算入されるか否かが問題となっていた。この点に関し審判所は、賃貸土地に係る固定資産税等を必要経費と認める一方で、自動車関係経費と接待交際費については、客観的にみて請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であると認めることができないことから、必要経費に算入できないという判断を示している(平成30年2月1日裁決・名裁(所・諸)平29第11号)。
審判所、原処分庁が否認した固定資産税等は必要経費と認める
会社役員であって不動産貸付業を営んでいた請求人は、本件土地を所有していたほか、本件自動車を所有していた。請求人は、税務調査の結果により不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入できないと判断されたもののうち、本件土地に関する固定資産税等、自動車関係経費(自動車税、損害保険料、修繕費、消耗品費などを含む)、接待交際費は必要経費に算入すべきであるとして、審査請求を行った。
請求人の審査請求に対し原処分庁は、固定資産税等については、請求人の本件土地が特定の場所で駐車場として使用されているか明らかでないから「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)には当たらないと主張した。また、自動車関係経費については、取引の記録等に基づいて「業務の遂行上直接必要であった」部分を明らかにしているとはいえないから、必要経費に算入されないとした。さらに、接待交際費については、支出目的及び相手先の名称や関係等をその一部しか明らかにしていないから不動産貸付業との直接の関連性及び必要性は認められず、社会通念上必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものはないと主張した。
業務遂行上の必要性等は客観的に判断 国税不服審判所は、「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)とは、その費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られ、その必要性の判断においては事業主の主観的な判断のみによるべきではなく、通常必要なものとして客観的に認識できるものでなければならないと解するのが相当であるとした。また、家事関連費(所法45①一、所令96二)が不動産所得の計算上必要経費と認められるためには、取引の記録等に基づいて不動産所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であった部分が明らかにされる必要があるとした。
そして本件について審判所は、請求人が不動産貸付業の一環として本件土地を賃貸していることが認められることから、固定資産税等は本件土地に係る賃料収入を得るために直接の関連があり、かつ、業務遂行上必要なものであるから必要経費に算入できるとした。
一方で審判所は、自動車関係経費と接待交際費については、客観的にみて、請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であると認めることができないことから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入できないという判断を示した(表参照)。
なお、本裁決で請求人は、原処分庁の調査手続には違法があった旨主張していたものの、審判所は本件の調査手続は適法に行われているとして、請求人の主張を斥けている。
接待交際費の必要経費算入は業務との直接関係性が必要に
申告所得税をめぐる税務紛争でしばしば問題となるのは、事業を営む納税者が支出した費用が所得金額の計算上、必要経費に算入することができるか否かという点である。今回紹介する裁決事例では、会社役員であって不動産貸付業を営む請求人(納税者)が支出した固定資産税等、自動車関係経費、接待交際費が必要経費に算入されるか否かが問題となっていた。この点に関し審判所は、賃貸土地に係る固定資産税等を必要経費と認める一方で、自動車関係経費と接待交際費については、客観的にみて請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であると認めることができないことから、必要経費に算入できないという判断を示している(平成30年2月1日裁決・名裁(所・諸)平29第11号)。
審判所、原処分庁が否認した固定資産税等は必要経費と認める
会社役員であって不動産貸付業を営んでいた請求人は、本件土地を所有していたほか、本件自動車を所有していた。請求人は、税務調査の結果により不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入できないと判断されたもののうち、本件土地に関する固定資産税等、自動車関係経費(自動車税、損害保険料、修繕費、消耗品費などを含む)、接待交際費は必要経費に算入すべきであるとして、審査請求を行った。
請求人の審査請求に対し原処分庁は、固定資産税等については、請求人の本件土地が特定の場所で駐車場として使用されているか明らかでないから「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)には当たらないと主張した。また、自動車関係経費については、取引の記録等に基づいて「業務の遂行上直接必要であった」部分を明らかにしているとはいえないから、必要経費に算入されないとした。さらに、接待交際費については、支出目的及び相手先の名称や関係等をその一部しか明らかにしていないから不動産貸付業との直接の関連性及び必要性は認められず、社会通念上必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものはないと主張した。
業務遂行上の必要性等は客観的に判断 国税不服審判所は、「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)とは、その費用が業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要なものに限られ、その必要性の判断においては事業主の主観的な判断のみによるべきではなく、通常必要なものとして客観的に認識できるものでなければならないと解するのが相当であるとした。また、家事関連費(所法45①一、所令96二)が不動産所得の計算上必要経費と認められるためには、取引の記録等に基づいて不動産所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であった部分が明らかにされる必要があるとした。
そして本件について審判所は、請求人が不動産貸付業の一環として本件土地を賃貸していることが認められることから、固定資産税等は本件土地に係る賃料収入を得るために直接の関連があり、かつ、業務遂行上必要なものであるから必要経費に算入できるとした。
一方で審判所は、自動車関係経費と接待交際費については、客観的にみて、請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であると認めることができないことから、請求人の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入できないという判断を示した(表参照)。
【表】必要経費該当性に関する請求人の主張及び審判所の判断内容 |
請求人の主張 | 審判所の判断内容 |
【固定資産税等】 請求人は本件土地を駐車場専用として貸付けているから、「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」として、必要経費に該当する。 | 【固定資産税等】(必要経費に該当) 請求人は不動産貸付業の一環として本件土地を賃貸している。固定資産税等は本件土地の所有に伴い生じる租税で、本件土地に係る賃料収入を得るために直接の関連があり、かつ、請求人の業務の遂行上必要なものである。 |
【自動車関係経費】 請求人は所有及び貸付けを行っている不動産について、本件自動車を用いて管理業務等を行っている。取引の記録等に基づいて「業務の遂行上直接必要であった」部分を明らかにしているから、必要経費に該当する。 | 【自動車関係経費】(必要経費に該当せず) 請求人から取引の記録等に基づいた本件自動車の具体的な使用方法や頻度等を明らかにする証拠の提出はないから、不動産貸付業務の遂行上必要であった部分が明らかとはいえない。客観的にみて請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であるとは認めることができない。また、請求人が提出した走行距離の計算書等は審査請求後に作成された資料であるうえ、実際に使用していた本件自動車の記録に基づいて作成されたものでもないから、本件自動車の具体的な使用方法や頻度等は明らかになったとはいえない。 |
【接待交際費】 必要経費に算入した接待交際費は請求人の業務と直接の関連性及び必要性を持つものである。請求人は、税務調査等において一部ではあるが具体的な相手先を明らかにしているほか、金額も過大ではなく客観的に妥当であるから、必要経費に該当する。 | 【接待交際費】(必要経費に該当せず) 請求人から接待交際費について請求人の不動産貸付業務との関係について合理的な説明はない。接待交際費の内訳についても抽象的な説明にとどまり、具体的な支出先や支出目的等の合理的な説明はないうえ、請求人の主張を裏付ける証拠の提出もない。本件の接待交際費が客観的にみて請求人の業務と直接の関係を持ち、かつ、業務の遂行上必要な支出であるとは認められない。 |
なお、本裁決で請求人は、原処分庁の調査手続には違法があった旨主張していたものの、審判所は本件の調査手続は適法に行われているとして、請求人の主張を斥けている。
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