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解説記事2018年08月27日 【税制改正解説】 平成30年度における税務手続の電子化促進のための環境整備について(2018年8月27日号・№752)

税制改正解説
平成30年度における税務手続の電子化促進のための環境整備について
 中村隼一朗

  はじめに

 経済社会のICT化等を踏まえ、政府全体として、行政手続の電子化の徹底等への取組を進めており、平成28年12月に制定された官民データ活用推進基本法においても、「行政機関等に係る申請、届出、処分の通知その他の手続に関し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことを原則とするよう、必要な措置を講ずる」旨が示されている。
 そうした中、税務手続の電子化については、平成16年2月より国税電子申告・納税システム(以下「e-Tax」という。)の運用が行われてきたが、e-Taxによる電子申告の利用率(平成28年度)は法人税申告が79.3%(法人税申告のうち大規模法人については、56.9%)、所得税申告が53.5%となっており(電子申告の利用率の推移については図表1を参照)、国税の電子申告の普及については道半ばの状況にあった。

 特に法人税の申告については、企業活動におけるICTの利用が広がる一方で、ICTで作成された申告データが必ずしもデータのまま国税当局に提出されていない状況が課題とされていたところであり、「行政手続部会取りまとめ(平成29年3月29日 規制改革推進会議行政手続部会決定)」において、「電子申告の義務化が実現されることを前提として、大法人の法人税・消費税の申告について、電子申告(e-tax)の利用率100%」との数値目標が設定された後、「未来投資戦略2017」及び「規制改革実施計画」(いずれも同年6月9日 閣議決定)において、この「行政手続部会取りまとめに沿って行政手続コストの削減を進める」旨の指摘がなされた。
 また、「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告②(平成29年11月20日 政府税制調査会)」においても、「法人の基本的な手続は原則としてe-Taxで行われるという姿(法人税等の電子申告利用率100%)の実現を目指すべき」とされるとともに、併せて、法人側のニーズも踏まえ、「e-Taxシステム自体の機能改善、提出書類の見直し、認証手続(電子署名)の簡便化等を行うほか、法人がICTで作成・管理するデータが円滑にe-Taxで提出できるよう、情報セキュリティ等にも配意しつつe-Taxに提出可能なファイル形式の多様化等も検討すべき」との指摘もなされた。
 今回の改正においては、経済社会のICT化等が進展する中、こうした政府税制調査会等の議論を踏まえ、税務手続においても、ICTの活用を推進し、データの円滑な利用を進めることにより、社会全体のコスト削減及び企業の生産性向上を図る観点から、次のとおり、「法人税等の申告書の電子情報処理組織による提出義務」を創設するとともに、法人税等の電子申告の添付書類の光ディスク等による提出の可能化、法人の認証手続の簡便化等の「申告データの円滑な電子提出のための環境整備」及び「電子情報処理組織による処分通知等の範囲等の整備」が行われた。

Ⅰ 法人税等の申告書の電子情報処理組織による提出義務の創設

1 改正前の制度(任意の電子情報処理組織による提出)の概要
 国税の申告については、各税法の規定により申告書(書面)を提出して行うことが基本とされているが(通法17等)、行政手続オンライン化法令に基づき、電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うことができること(任意の利用)とされている(行政手続オンライン化法3①、国税オンライン化省令5等)。
(注1)上記の「行政手続オンライン化法令」とは、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(行政手続オンライン化法)」及び「国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令(国税オンライン化省令)」をいう。
   この行政手続オンライン化法は、行政機関等に係る申請、届出その他の手続等に関し、電子情報処理組織を使用する方法等により行うことができるようにするための共通する事項を定めた法律であり、行政機関等は、この申告書の提出を含む申請等のうち書面等により行うこととしているものについては、主務省令で定めるところにより、電子情報処理組織を使用して行わせることができることとされており(行政手続オンライン化法3①)、国税に関する申告、請求、届出等についても、この主務省令である国税オンライン化省令に基づき電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うことができることとされている(国税オンライン化省令5等)。
   納税者や税理士は、e-Taxに対応した税務・会計ソフトを利用すれば、会計処理や申告等のデータ作成から提出までの一連の作業を電子的に行うことができるため、事務の省力化やペーパーレス化につながり、国税当局にとっても、窓口・郵送での申告収受事務やデータ入力事務の削減、文書管理コストの低減等の効果が期待され、税務行政の効率化が図られることとなる。 
(注2)e-Taxを使用して行うことができる具体的な手続の範囲については、国税庁ホームページに掲げられている。

2 制度の概要  以下では、「法人税等の申告書の電子情報処理組織による提出義務」の概要について説明する。
(1)法人税、地方法人税及び消費税の申告書の電子情報処理組織による提出義務  特定法人である内国法人又は事業者の法人税、地方法人税及び消費税の申告書の提出については、これらの申告書に記載すべきものとされている事項(申告書記載事項)又はその添付書類に記載すべきものとされ、若しくは記載されている事項(添付書類記載事項)を電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により提供することにより、行わなければならないこととされた(法法75の3①・81の24の2①、地法法19の2①、消法46の2①)。
 ただし、特定法人である内国法人の法人税及び地方法人税の申告のうち添付書類については、添付書類記載事項を記録した光ディスク、磁気テープ又は磁気ディスク(以下「光ディスク等」という。)を提出する方法により行うことができることとされている(法法75の3①ただし書・81の24の2①ただし書、法規36の3の2⑤・37の15の2⑤、地法法19の2①ただし書、地法規8⑤)。
(注)上記の光ディスク等による提出については、上記1で述べた「任意の電子情報処理組織による提出」の場合と併せて措置されており、その詳細については下記の「2 法人税等の電子申告の添付書面等の光ディスク等による提出」を参照。
① 適用対象法人(特定法人)
  法人税等の申告書のe-Taxによる提出義務の対象となる特定法人は、事業年度開始の時における資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人及び特定目的会社とされている(法法75の3②・81の24の2②、地法法19の2②、消法46の2②)。
  上記の特定法人の範囲については、e-Taxによる申告書の提出を行うに当たっては、システム面での投資を要する法人も存在することを踏まえ、財務基盤が一定程度安定している法人に限定することが適当であると考えられたものである。そのため、財務基盤に関する安定的な指標が存在しない非出資法人や、電子証明書に係る認証サービスを十分に受けることができない外国法人等については、e-Taxによる提出義務の対象外とされている(以上の特定法人の類型(一覧)については、図表2を参照)。

(注)上記の法人については、普通法人(法法2九)のほか、公共法人(法法2五)、公益法人等(法法2六)及び協同組合等(法法2七)も対象となるが、いずれについても設立根拠法(株式会社であれば会社法)に、①その資本金又は出資金自体について規定されているもの、②その資本金又は出資金の出資について規定されているもの、③その他定款に出資持分に関する定めがあることを前提とした制度が規定されているもののうち「資本金の額又は出資金の額」が1億円を超える場合に該当することになる。この「資本金の額又は出資金の額」の判断時期については、納税者の予見可能性の確保等の観点から、「事業年度開始の時」とされている。なお、公共法人については、法人税を納める義務がないこととされているため(法法4②)、消費税の申告書のe-Taxによる提出義務のみ対象となる。また、人格のない社団等及び法人課税信託に係る受託法人は、特定法人に該当しないこととされている(法法3、法令14の10⑥、地法法3①、地法令2②、消法3、消規11の3)。
  消費税の申告については、上記からまでの法人のほか、国又は地方公共団体が特定法人に該当し、e-Taxによる提出義務の対象とされる(消法46の2②五)。これは、国又は地方公共団体が公的な主体であり、また、一般会計に係る業務としての事業又は特別会計を設けて事業を行う場合には消費税が課されること(消法60①)を踏まえたものである。
② 対象税目
  申告書のe-Taxによる提出義務の対象となる税目は、法人税、地方法人税及び消費税とされている(法法75の3①・81の24の2①、地法法19の2①、消法46の2①)。
  上記の対象税目については、税務分野における法人の手続負担は面的(対象者の広がり)・質的(手続の濃度)に法人税及び消費税において生じているものと考えられることを踏まえ、企業をはじめ社会全体のコスト削減の観点から行政手続コスト削減の効果に大きく寄与する度合いが大きいこれらの税目を対象とすることとされたものである。
(注)地方法人税については、法人税とは別に申告義務が課されているが、課税標準法人税額を基準に課され(地法法5)、実務上も申告は一体として行われることを踏まえ、対象税目とされている。なお、地方税である地方消費税の譲渡割の申告についても、上記①の特定法人は、地方税関係手続用電子情報処理組織(eLTAX)の使用による提出が義務とされたが(地法72の89の2)、この地方消費税については、当分の間、消費税の申告の例により、消費税の申告と併せて、税務署長に申告することとされているため(地法附則9の5)、実質的には、申告書のe-Taxによる提出義務の対象税目となる。
③ 対象手続(申告)
  法人税等の申告書のe-Taxによる提出義務の対象となる手続は、確定申告書(期限後申告書及び消費税の還付申告書を含む。)、中間申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書の提出とされている(法法75の3①・81の24の2①、地法法19の2①、消法46の2①)。
  上記の対象手続については、企業でデータ化された情報を円滑に電子申告に利用できる環境を整備し、電子申告を一層促進する観点からは、国税の基本手続である申告について、その種類を問わず対象とすることが適当と考えられたものである。
④ 対象となる申告書等の記載事項
  法人税等の申告書のe-Taxによる提出義務の対象となる記載事項は、申告書に記載すべきものとされている事項(申告書記載事項)のほか、その添付書類に記載すべきものとされ、若しくは記載されている事項(添付書類記載事項)も対象とされている(法法75の3①・81の24の2①、地法法19の2①、消法46の2①)。
  これは、ICT化の進展に伴い、企業の実務において添付書類をデータで作成又は入手することが多くなっており、また今回、ファイル形式の柔軟化や添付書面等の光ディスク等による提出を可能とするなどの見直しを行うこととしており、こうしたことを踏まえ、社会全体のコスト削減の観点からは、添付書類を含めて一体としてe-Taxにより提出することが適当と考えられたことによるものである。
(注)上記の申告書記載事項については、現行の書面による申告の運用上の取扱いを踏まえ、申告書記載事項のうち主要な部分が、期限内にe-Taxにより提出されていれば、無申告加算税は課さない取扱いとされる。これに関連し、平成30年度税制改正の大綱においては、「申告書の主要な部分以外の書類の電子提出の確保策については、施行後の電子的な提出状況等を踏まえ、そのあり方を検討する」こととされている。
(2)電子情報処理組織による申告が困難である場合の特例  特定法人である内国法人又は事業者が、電気通信回線の故障、災害その他の理由によりe-Taxを使用することが困難であると認められる場合で、かつ、納税申告書を提出することができると認められる場合において、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、その税務署長が指定する期間内に行う申告については、e-Taxを使用せず書面により申告書及び添付書類を提出することにより行うことができることとされた(法法75の4①・81の24の3①、地法法19の3、消法46の3①)。
 上記の特例については、特定法人である内国法人又は事業者のインターネットをはじめとしたシステム環境が常に安定的であるとは限らず、サイバー攻撃、災害、経営の破綻等によりe-Taxによる申告が困難となる場合が生じることも考えられることから、例外的に書面による申告書の提出を認める特例をセーフティネットとして設けることとされたものである。
(注)上記の特例を受けるためには、指定を受けようとする期間等を記載した申請書を、その期間の開始の日の15日前まで(災害等が生じた日が申告書の提出期限の15日前の日以後である場合において、その提出期限がその指定を受けようとする期間内の日であるときは、その開始の日まで)に納税地の所轄税務署長に申請書を提出しなければならないこととされているが(法法75の4②・81の24の3②、消法46の3②)、この申請書については、税務官庁に到達した時に効力が生じること(到達主義)とされている(平成30年国税庁告示第10号)。

3 適用関係  上記2の改正は、①平成32年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について、②同日以後に開始する課税事業年度の基準法人税額に対する地方法人税について、③消費税にあっては、同日以後に開始する課税期間について、それぞれ適用される(改正法附則31、36、42①、45)。

Ⅱ 申告データの円滑な電子提出のための環境整備

1 イメージデータで提出された添付書面等の原本保存の不要化
(1)改正前の制度の概要
① イメージデータによる添付書面等の提出制度
  e-Taxを使用して申請等を行う場合には、その申請手続に際し、その申請等につき添付すべきこととされている一定の書面等(以下「添付書面等」という。)に記載されている事項又は記載すべき事項(以下「添付書面等記載事項」という。)については、スキャナにより読み取る方法その他の方法により作成した電磁的記録(以下「イメージデータ」という。)をその申請等と併せて送信することをもって、その添付書面等の提出に代えることができることとされている(旧国税オンライン化省令5②二)。
② 税務署長等による添付書面等の提示等を求める措置
  上記①に基づき申請等を行う者がイメージデータにより送信をした場合、国税庁長官が定める添付書面等については、税務署長等は、その申請等を行った者に対し、国税庁長官が定める期間、その送信に係る事項の確認のために必要があるときは、その添付書面等を提示又は提出させることができることとされ(旧国税オンライン化省令5③)、実質的にその添付書面等の原本保存が求められていた。
  また、上記と併せて、申請等を行った者が税務署長等による提示又は提出に応じない場合には、その提示又は提出に応じない添付書面等については、イメージデータによる送信をもって、その添付書面等の提出に代えることはできないこととされていた(旧国税オンライン化省令5④)。
(注1)上記の「国税庁長官が定める添付書面等」は、次に掲げるもの以外の添付書面等とされていた(旧平成27年国税庁告示第8号)。
 イ その申請等を行う場合における添付書面等のうち、写しを添付することとされているもの
 ロ その申請等を行う者が作成するもの
   また、医療費控除の領収書など所得税の確定申告書に係る一定の添付書面等(添付省略書面等)については、添付書面等記載事項を併せて入力して送信することをもって、その添付書面等の提出に代えることができることとされていることから(旧国税オンライン化省令5②一)、上記①のイメージデータによる添付書面等の提出制度の対象外とされているが(旧国税オンライン化省令5②二)、上記②の税務署長等による添付書面等の提示等を求める措置の対象となっている(旧国税オンライン化省令5③④、旧平成27年国税庁告示第8号)。
(注2)上記の「国税庁長官が定める期間」は、次に掲げる申請等の区分に応じた期間とされている(平成27年国税庁告示第9号)。
 イ 国税に関する法律の規定により行う納税申告書の提出:国税の法定申告期限(電子情報処理組織を使用して還付請求申告書の提出があった場合には、その申告書の提出があった日)から5年を経過する日(同日前6月以内に更正の請求があった場合には、その更正の請求があった日から6月を経過する日。以下同じ。)までの間(贈与税並びに移転価格税制に係る法人税及び地方法人税にあっては法定申告期限から6年を経過する日までの間とし、法人税に係る純損失等がある場合にあっては法定申告期限から9年を経過する日までの間)
 ロ 上記イ以外の申請等:電子情報処理組織を使用してその申請等があった日から5年を経過する日までの間
(2)改正の内容  e-Taxにより行う申請等と併せてスキャナ等により作成したイメージデータを送信する添付書面等について、原本と同一性を確保しつつ、e-Taxの利便性向上を図る観点から、送信に当たり一定の解像度及び階調を確保することを要件とした上で、税務署長等による当該添付書面等の提示等を求める措置が廃止された。
 具体的には、e-Taxを使用して申請等を行う場合において、その申請手続に際し、添付書面等記載事項につきイメージデータを当該申請等と併せて送信する場合について、次の①及び②の措置が講じられた。
① そのイメージデータについて、次の要件を満たすように、スキャナ等により読み取り、又は作成することとされた(国税オンライン化省令5②二)。
 イ 解像度が一般文書のスキャニング時の解像度である25.4mm当たり200ドット以上であること。
 ロ 赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上であること。
② そのイメージデータについて、上記①イ及びロの要件を付したことと併せて、税務署長等による当該添付書面等の提示等を求める措置が廃止され(国税オンライン化省令5④⑤)、これにより、これまで実質的に求められていた原本保存も不要となる。
(注)上記(1)②(注1)の添付省略書面等については、これまでと同様、税務署長等による添付書面等の提示等を求める措置の対象とされており(国税オンライン化省令5④⑤、平成30年国税庁告示第6号・第7号)、引き続き一定期間その原本保存が必要となる。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成30年4月1日以後に行う申請等について適用し、同日前に行われた申請等については、従前どおりとされている(改正国税オンライン化省令附則③)。

2 法人税等の電子申告の添付書面等の光ディスク等による提出
(1)改正前の制度の概要
 e-Taxを使用して申請等を行う場合には、その申請手続に際し、添付書面等記載事項を次の方法により送信することをもって、当該添付書面等の提出に代えることができることとされており(旧国税オンライン化省令5②)、添付書面等の提出については、e-Taxを使用して送信する方法に限られていた。
① 添付書面等記載事項を当該申請等に併せて入力して送信する方法
② 添付書面等記載事項をスキャナ等により作成した電磁的記録(イメージデータ)を当該申請等と併せて送信する方法 
(2)改正の内容  e-Taxにより法人税等の申告を行う場合の添付書面等について、法人のe-Taxの利便性向上を図る観点から、その添付書面等記載事項の電磁的記録を記録した光ディスク等を提出する方法により提供することができることとされた。
 具体的には、法人の法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書の添付書面等については、添付書面等記載事項を記録した光ディスク等を提出する方法により提出することをもって代えさせることができることとされた(国税オンライン化省令5②三、平成30年国税庁告示第5号)。
(注)上記の添付書面等の光ディスク等による提出については、上記Ⅰ2(1)のとおり、e-Taxによる提出義務の対象となる特定法人である内国法人についても可能とされたが、法人における法人税の申告にあっては、財務諸表や勘定科目内訳明細書など他の税目に比べて添付書面等が多様・大量であることを踏まえ、e-Taxによる提出義務の有無を問わず、法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書の添付書面等について、光ディスク等による提出を可能とすることとされた。
 なお、上記の光ディスク等による提出の対象となる添付書面等については、財務諸表、勘定科目内訳明細書などのほか、イメージデータで提出することができることとされている第三者作成書類等も対象となるが、イメージデータを光ディスク等に記録して提出する場合には、イメージデータについて上記1(2)①イ及びロの解像度及び階調の要件を満たすように読み取り、又は作成することが必要となる(国税オンライン化省令5②三)。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成32年4月1日以後に行う申請等について適用される(改正国税オンライン化省令附則④)。

3 法人のe-Taxによる申請等に係る認証手続の簡便化
(1)改正前の制度の概要
 e-Taxを使用して申請等を行う者は、その申請等に係る法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項並びに税務署長より通知された識別符号(以下「ID」という。)及び暗証符号(以下「パスワード」という。)を入力して、当該申請等の情報に電子署名を行い、当該電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、当該申請等を行わなければならないこととされている(国税オンライン化省令5①本文)。
 ただし、国税庁長官が定める次の①から⑦までの者については、電子署名及び当該電子署名に係る電子証明書(以下「電子署名等」という。)の送信を要しないこととされていた(旧国税オンライン化省令5①二、旧平成18年国税庁告示第32号)。
① e-Taxを使用して源泉所得税の徴収高計算書に係る申請等を行う者
② 税理士等が委嘱を受けて税務書類を作成し、委嘱者に代わってe-Taxを使用して申請等を行う場合のその委嘱者
③ 税務署長が提供する電子計算機等を使用してe-Taxにより申請等を行う者
④ 市町村長(特別区の区長を含む。)が提供する電子計算機等を使用してe-Taxにより申請等を行う者
⑤ e-Taxを使用して電子申請等証明書の請求を行う者
⑥ e-Taxを使用して納税証明書の請求を行い、その納税証明書を税務署窓口で書面により交付を受けようとする者
⑦ e-Taxによる申請等に係る開始届出の際に行われた一定の本人確認に基づき通知されたID及びパスワードを入力して申請等を行う者
(2)改正の内容  法人がe-Taxを使用して電子申告を行う場合には、法人の代表者の電子署名等が必要とされているが(通法124②一、国税オンライン化省令5①)、例えば株主総会の決議等により法人の代表者が変更された場合であって、申告期限まで新代表者の電子署名等の取得が間に合わないときにはやむを得ず電子申告を断念し、書面による申告を行う法人が散見されており、これが法人の電子申告の利用が進まない要因の一つとされていた。
 今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、法人のe-Taxの利便性向上を図る観点から、e-Taxにより法人が行う申請等について、当該法人の代表者から委任を受けた者の電子署名等を送信する場合には、当該代表者の電子署名等の送信を要しないこととされた。
 具体的には、e-Taxを使用して申請等を行う場合において電子署名等の送信を要しない者の範囲に、申請等を行おうとする法人の代表者から、電子署名等の送信の委任を受けた者(当該法人の役員又は職員に限る。)が当該申請等を行う場合における当該法人の代表者が加えられた(平成30年国税庁告示第4号)。なお、この場合において、改正後の本制度の運用の適正性を確保する観点から、委任を受けたことを証する電磁的記録(委任状の写しのイメージデータ等)の送信が必要となる。
(注)法人税及び地方法人税の申告書における経理責任者の自署押印制度が廃止されたことに伴い(旧法法151、旧地法法30)、経理責任者の電子署名等についても送信を要しないこととされた。なお、この自署押印制度の廃止に伴い、これを税理士の署名押印制度が妨げるものではないとしていた規定についても廃止されている(旧税理士法33⑤)。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成30年4月1日から施行され(平成30年国税庁告示第4号)、同日以後に法人が行う申請等について適用されることとなる。

4 e-Taxによる申請等に係るファイル形式の柔軟化
(1)改正前の制度の概要
 e-Taxを使用して申請等を行う場合には、申告書その他申請等に係る書面に記載すべきこととされている事項を基本的には入力して送信することとされているが(国税オンライン化省令5①)、その際のファイル形式については、運用上XML形式によることとされている。なお、このファイル形式について、法人税の申告書の添付書類である財務諸表にあってはXBRL形式、勘定科目内訳明細書及び申告書以外の別表にあってはXML形式によることとされていた。
(注1)上記の「XML(eXtensible Markup Language)形式」とは、情報の内容にタグを付加して構造的に記述し、コンピュータ処理をしやすくするコンピュータ言語形式のファイルをいう。
(注2)上記の「XBRL(eXtensible Business Reporting Language)形式」とは、XMLをベースとして開発され、財務情報等を効率的に作成・流通・利用できるよう、国際的に標準化されたコンピュータ言語形式のファイルをいう。
(2)改正の内容  法人においては、様々な形式で作成したデータをXML形式又はXBRL形式に変換するために、データの並べ替えなどの調整が必要だったが、こうした作業に係る事務負担が法人の電子申告の利用が進まない大きな要因とされていたところである。また、「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告②(平成29年11月20日 政府税制調査会)」においても、「情報セキュリティ等にも配意しつつe-Taxに提出可能なファイル形式の多様化等も検討すべき」との指摘がなされていた。
 今回の改正においては、こうした状況を踏まえ、法人のe-Taxの利便性向上を図る観点から、e-Taxにより法人税の申告を行う場合の①財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、社員資本等変動計算書及び損益金の処分表をいう。以下同じ。)、②勘定科目内訳明細書、③申告書以外の別表(内訳を記載する部分に限る。)の記載事項の送信又は提出に関するファイル形式について、その形式を柔軟化し、これまでのXML形式又はXBRL形式に加え、CSV形式によることも可能とされた。
 また、e-Taxの利用に当たり申請者の予見可能性を高める等の観点から、e-Taxによる申請等に係る書面等に記載すべきこととされている事項又は添付書面等記載事項を送信又は提出する場合におけるその送信又は提出に関するファイル形式について、法令上、国税庁長官が定めることとされた(国税オンライン化省令5③、平成30年国税庁告示第14号)。
(注1)上記の「CSV(Comma-Separated Values)形式」とは、データをカンマ(,)や改行で区切って並べたテキスト形式のファイルであり、表計算ソフトやデータベースソフトなどの異なるアプリケーション間でデータを交換する場合に利用されるものをいう。
(注2)e-Taxによる提出義務の対象となる特定法人である内国法人又は事業者が行う添付書類記載事項の送信等についても、上記と同様の取扱いとなる(法規36の3の2⑥・37の15の2⑥、地法規8⑥、消規23の2⑤、平成30年国税庁告示第14号)。
(注3)上記の国税庁告示において定められた申請等及び添付書面等ごとのファイル形式の具体的な取扱いについては、図表3を参照。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、原則として平成31年4月1日から、財務諸表の記載事項の送信又は提出に関するファイル形式の柔軟化については、平成32年4月1日から施行され(改正国税オンライン化省令①二、平成30年国税庁告示第14号)、それぞれこれらの日以後に行う申請等について適用されることとなる。

5 電子納付手続に係る識別符号等の入力の省略
(1)改正前の制度の概要
 e-Tax等を使用して電子納付を行う者は、その納付書に記載すべきこととされている事項並びにID及びパスワードを入力して、当該納付を行わなければならないこととされていた(旧国税オンライン化省令7①)。
(注)上記の電子納付の方法には、①e-Taxを使用して、税目や納付金額等の納付情報データ(納付情報登録依頼)を作成・事前登録した上で、インターネットバンキング等を使用して納付を行う方法(登録方式)、②金融機関のATM等を使用して、納付目的コード等を入力して納付する方法(特定納付手続)及び③取扱金融機関等の一定の事項を税務署長に届け出た場合においてe-Taxを使用して取扱金融機関等の口座から納付する方法(ダイレクト納付)がある(旧国税オンライン化省令4、7①)。このうち②の特定納付手続を行う場合に入力を要する事項については、納付書に記載すべきこととされている事項及びIDのみでよいこととされている(旧国税オンライン化省令7①)。
(2)改正の内容  e-Tax等を使用して電子納付を行う際のID及びパスワードの入力については、なりすまし・不正アクセスの防止などセキュリティ確保の観点から、本人確認を行うために必要とされるものである。他方、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号法」という。)に基づく個人番号カード(以下「マイナンバーカード」という。)については、署名用の電子証明書とともに、利用者証明用の電子証明書も格納されていることから、これを用いることにより、本人確認を行うことが可能とされているため、平成29年度税制改正においては、e-Taxを使用して申請等を行う場合において、マイナンバーカードを用いて当該申請等の情報への電子署名等の送信を行うときは、ID及びパスワードの入力を要しないこととされた。
 今回の改正においては、納税者利便の更なる向上を図る観点から、マイナンバーカードを用いてe-Taxにログインした上で電子納付を行う場合についても、ID及びパスワードの入力を要しないこととされた。
 具体的には、e-Taxを使用して国税の納付を行う者は、そのe-Taxの使用に係る情報にマイナンバーカードを用いて電子署名を行い、当該電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信する場合(すなわち、マイナンバーカードを用いてe-Taxにログインする場合)には、ID及びパスワードの入力を要しないこととされた(国税オンライン化省令7①ただし書)。また、この場合には、ID及びパスワードが不要となることに伴い、電子納付を行うに当たり必要とされていたe-Tax利用の開始届出についても、これを要しないこととされた(国税オンライン化省令4①)。これにより、e-Taxを使用して行う電子納付について、電子申告の際にマイナンバーカードを用いることにより、いずれもID及びパスワードの入力を要することなく一連の手続でスムーズに行うことができるようになる。
(注1)上記の「個人番号カード(マイナンバーカード)」とは、氏名、住所、生年月日、性別、個人番号、本人の写真等が表示されるとともに、これらのカード記録事項が電磁的方法により記録されたカードをいい(番号法2⑦)、具体的には、本人の申請により交付され、マイナンバーを証明する書類や本人確認の際の公的な身分証明書として利用できるほか様々な行政サービスを受けることができるICカードとなっている。マイナンバーカードには、ICチップに、「署名用の電子証明書」と「利用者証明用の電子証明書」という公的個人認証サービスによる2つの電子証明書が格納されている。
(注2)上記の「署名用の電子証明書」は、インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用されており、「作成・送信した電子文書が、利用者が作成した真正なものであり、利用者が送信した者であること」を証明することができる。
(注3)上記の「利用者証明用の電子証明書」は、コンビニでの公的な証明書の交付を受ける際のコンビニ端末へのログインやインターネットサイト等へのログインを行う際に利用されており、「ログインした者が、利用者本人であること」を証明することができる。
(注4)国税の納付については、その税額に相当する金銭に納付書を添えて行うことを基本としつつ(通法34①本文)、あらかじめ税務署長に届け出た場合には電子納付を行うこともできることとされているが(通法34①ただし書)、上記のID及びパスワードを要することなく行う電子納付については、納付書に記載すべきこととされている事項を入力することをもって届出を行うこととされている(通規1の3①二)。
(注5)上記の改正(電子納付手続に係るID及びパスワードの入力の省略)と併せて、e-Taxを使用して申請等を行う場合についても、マイナンバーカードを用いてe-Taxにログインすることにより(すなわち、当該申請等の情報への電子署名等の送信を行うことなく)、ID及びパスワードの入力を要しないこととする整備が行われた(国税オンライン化省令5①一)。これにより、e-Taxを使用して申請等を行う場合において申請等の情報への電子署名等を要しないこととされている源泉所得税の源泉徴収高計算書に係る申請等や納税証明書の請求についても、マイナンバーカードを用いてe-Taxにログインすることにより、ID及びパスワードの入力を要することなく行うことができるようになる。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成31年1月4日以後に納付する国税について適用される(改正国税オンライン化省令附則⑥)。

Ⅲ 電子情報処理組織による処分通知等の範囲等の整備

1 改正前の制度の概要
 国税に関する処分通知等については、各税法の規定により通知書等(書面)を交付して行うことが基本とされているが(通法123①等)、行政手続オンライン化法令に基づき電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うことができることとされている(行政手続オンライン化法4①)。
(注)上記の「処分通知等」とは、処分(行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。)の通知その他の法令の規定に基づき行政機関等が行う通知(不特定の者に対して行うもの及び裁判手続等において行うものを除く。)をいう(行政手続オンライン化法2七)。
 税務署長等がe-Taxを使用して行うことができる処分通知等については、①納税証明書(通法123①)及び②電子申請等証明書(措法97)の交付(いずれもe-Taxを使用して請求がされたものに限る。)とされていた(旧国税オンライン化省令8①)。
 なお、e-Taxを使用して行われた処分通知等の到達時期については、処分通知等を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に到達したものとみなすこととされている(行政手続オンライン化法4③)。
(注)税務署長等がe-Taxを使用して上記①の納税証明書及び②の電子申請等証明書を交付する場合におけるこれらの証明書に記載すべき事項については、国税庁の使用に係る電子計算機から入力し、その入力した情報に電子署名を行い、当該電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを国税庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに、当該証明書の交付を受ける者が入手可能な状態で記録することとされていた(旧国税オンライン化省令8②)。

2 改正の内容  税務署長等がe-Taxを使用して行うことができる処分通知等について、その範囲が拡充され、国税に関する法令等に基づき行われる処分通知等で国税庁長官が定めるものとされた(国税オンライン化省令8①)。
(注)上記の「国税に関する法令等」の具体的な範囲については、国税オンライン化省令別表において定められている。
 具体的には、e-Taxを使用して行うことができる処分通知等の範囲について、次の処分通知等に拡充されている(平成30年国税庁告示第8号)。
(1)適格請求書発行事業者の登録に係る通知(消法57の2⑦、平成28年改正法附則44③)
(2)更正の請求に係る①更正(通法24、26)、②これに伴い行われる加算税についてする賦課決定(通法32⑤)及び③更正をすべき理由がない旨の通知(通法23④)
(3)納税証明書の交付(通法123①)
(4)住宅ローン控除証明書の交付(措法41の2の2⑧)
(5)電子申請等証明書の交付(措法97)
(注1)上記の処分通知等については、運用上、その処分通知等に関する請求がe-Taxを使用して行われた場合において、その処分通知等を受ける者の同意がある場合に限り、e-Taxを使用して行われることとなる。
(注2)上記のとおりe-Taxによる処分通知等の範囲が拡充されたことに併せて、運用上、e-Taxにおいて新たに処分通知等の受領専用の個人ファイルを設定することとされ、その個人ファイルに処分通知等に関する記録が行われることとなる。これにより、処分通知等の到達時点については、この個人ファイルに記録がされた時となることを踏まえ、税務署長等がe-Taxを使用して処分通知等を行う場合には、その処分通知等に記載すべき事項について、処分通知等を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(処分通知等の受領専用の個人ファイル)に、当該処分通知等を受ける者が入手可能な状態で記録することとされている(国税オンライン化省令8②)。

3 適用関係  上記2の改正は、平成32年1月1日以後に行う処分通知等について適用し、同日前に行われた処分通知等については、従前どおりとされている(改正国税オンライン化省令附則⑦)。

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