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解説記事2018年09月10日 【SCOPE】 相続税の取得費加算特例の期間制限撤廃への実現度は?(2018年9月10日号・№754)

金融庁は株式売却を助長すると主張
相続税の取得費加算特例の期間制限撤廃への実現度は?

 各省庁等の平成31年度税制改正要望が出揃ったが、金融庁の平成31年度税制改正要望で注目されるのが相続した株式の譲渡における相続税(株式分)の取扱いに関する見直しだ。具体的には相続税の取得費加算特例の3年以内とされている期間制限を撤廃することを求めるものだが、平成31年度税制改正での実現は難しそうだ。取得費加算特例は株式だけでなく、土地や建物も対象になっているからだ。金融庁は実現までの「ハードルは高い」と認めるものの、「貯蓄から資産形成」への観点から税制の見直しを求めていくとしている。

土地や建物も対象であるため、実現までのハードルは高い
 ここ2年ほど、上場株式等の相続税に係る見直しを求めてきた金融庁だが、平成31年度税制改正要望では、相続税の取得費加算特例の期間制限の撤廃を打ち出してきた。知っての通り、相続税の取得費加算特例とは、相続により取得した土地、建物、株式などについて一定期間内(相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで)に譲渡した場合には相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというもの(図表参照)。例えば、相続人が、相続した上場株式等を売却する場合、その売却が3年以内であれば当該株式に係る相続税分を譲渡所得から差し引くことができる。

 しかし、3年以内に売却しなければ、その後に売却しても当該相続税分は差し引くことができない。このため、金融庁は、取得費加算特例が相続後3年以内での株式売却を助長しているとし、税制が国民の資産選択を歪めていると指摘している。その上で、「貯蓄から資産形成」への観点から相続税の取得費加算特例の期間に関する制限を撤廃するよう求めている。
 ただ撤廃までのハードルは高い。相続税の取得費加算特例は株式だけでなく土地や建物も対象になっているからだが、金融庁は「貯蓄から資産形成」への観点から税制の見直しを求めていくとしている。
上場株式の価格変動リスクの考慮も  一方では、昨年に引き続き上場株式等の相続時の評価に係る見直しも要望している。相続財産となった上場株式等については、相続時の時価と、相続時以前3か月間(相続発生月、その前月、前々月)の各月のおける終値平均額のうち、最も低い価額で評価されることになるが、上場株式等は価格変動リスクの高い金融商品でもあるにも関わらず、相続時から納付期限までの10か月間の価格変動リスクが考慮されていないと金融庁は指摘している。こちらについても併せて見直しを求めている。

開始時期に関係なく20年間の積立期間の確保を
 そのほかでは、金融庁は昨年と同様、NISA制度の恒久化を求めている。
 特に「つみたてNISA」については、平成30年から投資を開始した場合には20年間の積立期間が確保できるが、来年以降は積立期間が1年ずつ縮減することになると指摘。今年であれば800万円まで積み立てることが可能だが、来年から積立を開始した場合には760万円までとなってしまう。長期の積立投資を奨励する制度であることに鑑み、開始時期にかかわらず20年間の積立期間を確保されるよう、制度期限(2037年)を延長するよう求めている。
 NISA制度の利便性向上等も行う。現行、NISA口座保有者が海外転勤等により一時的に出国する場合、すでにNISA口座で保有している商品は課税口座に払い出されることになり、その後帰国してもNISA口座に戻すことはできない。このため、NISA口座保有者が海外転勤等により一時的に出国する場合など、日本を離れている場合であっても引き続きNISA口座を利用できるよう求めている。 また、民法改正により成年年齢が平成34年4月1日から18歳に引き下げられることを踏まえ、NISA制度の利用開始年齢の引下げも要望している。
デリバティブ取引等も損益通算の対象に  平成30年度税制改正大綱で検討事項とされていた金融所得課税の一体化も引き続き要望に盛り込んだ。金融商品間の損益通算の範囲については、平成28年1月より、上場株式等に加え、特定公社債などにまで拡大されたが、これをデリバティブ取引及び預貯金等にまで拡大するよう求めるものである。
 そのほか、世代間の資産移転を後押しするため、文部科学省とともに教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の恒久化を求めた。また、教育資金の交付請求時における領収書の提出要件の緩和(1万円以下を3万円以下まで引上げ)など、事務手続の簡素化等も併せて求めている。

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