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解説記事2018年10月22日 【SCOPE】 高齢者グループホーム敷地で固定資産税の評価ミス(2018年10月22日号・№760)

住宅用地の特例の適用を怠った都に賠償命じる
高齢者グループホーム敷地で固定資産税の評価ミス

 高齢者グループホームの敷地に対して「住宅用地の特例」の適用を怠ったとして、納税者が東京都に固定資産税等の過大納付額等の損害賠償を求めていた国賠訴訟で東京高裁は平成30年8月23日、東京都に過大納付額等約352万円の損害賠償を命じる逆転判決を言い渡した(確定済み)。高裁は、建物の外観から居住用建物であることが容易に推認できることから、都税事務所職員が建物の新築時に適切な現地調査を実施していれば特例の適用があることを容易に認定することができたなどと指摘。特例の適用を怠った都税事務所職員の行為は国賠法上の違法性が認められるとして、東京都に対して過大納付額等の損害賠償を命じた。

住宅用地の申告を怠った納税者にも過失あり、過納付額の7割を損害と認定
 納税者が所有する本件土地上には、認知症高齢者グループホーム(以下「本件建物」)が平成17年6月に新築された。新築登記に係る不動産登記簿では、本件建物の種類は「養護所」とされており、本件土地の地目は畑から宅地に変更されていた。
 都税事務所職員は、不動産登記簿の調査などを踏まえたうえで、本件建物は居住用家屋であるとの要件を満たさないことから本件土地に住宅用地の特例(以下「本件特例」)の適用はないと判断していた。この判断により納税者は、平成18年度から平成27年度まで本件特例の適用がないことを前提として算定された固定資産税等を支払った。その後、都税事務所職員は、平成28年1月に行った本件建物の実地調査などにより本件土地には本件特例の適用があることを把握した。そこで都税事務所長は平成28年2月、平成23年度から平成27年度までの過大納付額約460万円を還付したものの、平成18年度から平成22年度までの過納付額約460万円の還付には応じなかった。これを不服とした納税者は、還付されなかった過大納付額等の損害賠償を東京都に求める国賠訴訟を提起したものの、東京地裁が納税者の請求を全部棄却したことから(平成30年2月5日判決)、判決を不服として控訴した。

住宅用地の特例、居住用家屋の敷地の固定資産税を3分の1に軽減
 住宅用地の特例は、居住用家屋(専用住宅・アパートなど)の敷地などの固定資産税及び都市計画税の負担を軽減する特例措置である(地法349の3の2、702の3)。具体的には、居住用家屋の敷地に供される土地(住宅用地)については、その固定資産税の課税標準が通常の3分の1(都市計画税は3分の2)に軽減される。また、住宅用地が小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分)に該当する場合には、固定資産税の課税標準が通常の6分の1(都市計画税は3分の1)に軽減される。
 なお、東京都都税条例では、住宅用地の所有者は原則として、住宅用地の住所及び氏名、所在及び地積、住宅用地の上に存する家屋の所有者等を記載した申告書を知事に提出しなければならない旨が規定されている(都税条例136条の2①)。

高裁、特例の適用を容易に認定できたと指摘  東京高裁はまず、国賠法上の違法性が認められるためには、都税事務所職員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得る事情がある場合に限るものと解するのが相当であるとした。そして本件については、都税事務所職員が不動産登記簿から本件土地上に居住用の建物が建築された可能性があることを推認することは容易であったと指摘。また、本件建物の外観から居住用建物であることを推認することができることから、都税事務所職員が本件建物の新築当時、適切な現地調査を実施していれば本件土地に本件特例の適用があることは容易に認定することができたと指摘した。以上の点などを踏まえ高裁は、都税事務所職員には職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件土地に係る調査・認定を行ったと認め得る事情があるとした。そして高裁は、納税者が住宅用地の申告をしなかったことが被害の発生につながったといえることから、納税者の過失割合を3割としたうえで、過大納付額の7割相当額(約320万円)及び弁護士費用(32万円)の合計額(約352万円)の損害賠償を東京都に命じた。

【表】東京都側(課税庁)の主張及び東京高裁の判断
東京都側の主張 東京高裁の判断
 本件建物の不動産登記簿における種類である「養護所」から想定される用途には、居住用家屋である認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)もあれば、本件特例の適用外となる短期入所施設や通所介護施設もある。
 都税事務所職員が納税者に対する質問等(地法403②)を行うことにより本件特例が適用され得ることを認識できた可能性はあるものの、地方税法403条2項は努力義務を定めたものに過ぎないから、そのような調査を行わなかったからといって法的義務に違反したものではない。
 確かに「養護所」という登記簿上の記載からは住宅用地の特例が適用にならない短期入所施設などの様々な建物を想定することが可能である。しかしながら、本件建物は新築された当時の外観から居住用建物であることを推認することができるという事実関係の下では、都税事務所職員にはさらなる実地調査や納税者に対する質問等(地法403②)により、建物の用途を確認するなどして固定資産評価基準に従った公正な評価をすべき職務上の法的義務があったというべきである。したがって、東京都側の主張は採用することができない。
 納税者は、都税条例で義務付けられている住宅用地の申告をしていなかったから、都税事務所職員は納税者との関係において職務上の法的義務として通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件土地に係る調査及び認定を行ったものではない。  固定資産税等は申告納税方式ではなく賦課課税方式であり、本件特例の適用は土地所有者の申告が要件となっていないから、納税者が住宅用地の申告をしていなかったことをもって、直ちに都税事務所職員の注意義務違反が否定されるものではない。納税者が住宅用地の申告をしなかったという事情は、過失相殺の一事情として考慮すれば足りるというべきである。したがって、東京都側の主張は採用することができない。

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