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解説記事2018年12月10日 【未公開裁決事例紹介】 米国での遺産の保全費用、課税価格から控除できず(2018年12月10日号・№766)

未公開裁決事例紹介
米国での遺産の保全費用、課税価格から控除できず
プロベイト費用は相続税法の債務に該当せず

○米国での被相続人の遺産の維持保全のための活動費が相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当するか否か争われた事案。国税不服審判所は、米国での被相続人の葬儀に出席するための交通費等及び被相続人の遺産に係る米国カリフォルニア州の検認裁判所の手続(プロベイト)に係る諸費用については相続税法に規定された債務及び費用とはいえないとの判断を示した(平成30年2月1日、棄却)。

基礎事実等
(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)××××××××に居住していた伯母の死亡により取得した伯母夫婦が××で設定した信託の受益権について、伯母が有していた部分は当該受益権の4分の3相当であるとして相続税の期限後申告をしたところ、原処分庁が、伯母は当該受益権の全部を有していたとして更正処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、請求人が、伯母が当該受益権の全部を有していたことは争わないものの、他に控除すべき費用等があるとして、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令等の要旨(略)
(3)基礎事実
 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人の伯母である××××(以下「本件被相続人」という。)とその夫××(以下××といい、本件被相続人と併せて「本件被相続人ら」という。)は、平成3年2月28日、××××××において、本件被相続人らを委託者、本件被相続人ら及び××××××××××を受託者、本件被相続人らの夫婦共有財産等を信託財産とする××××××××××(以下「本件信託」といい、本件信託に係る証書を「本件信託証書」という。)を設定した。
ロ 本件信託証書には、①本件被相続人らが生存中は、本件被相続人らが受益者となる旨、②本件被相続人らの一方が死亡した場合には、生存者信託(Survivor's Trust)、婚姻信託(Marital Trust)及び家族信託(Family Trust)に分割(以下、分割前の信託を「本件分割前信託」といい、本件分割前信託の分割後の信託を「本件各分割信託」という。)され、生存者が受益者となる旨及び③その後、当該生存者も死亡した場合には、当該生存者が作成した遺言によって有効に指定されなかった部分については、本件各分割信託のうち5分の4は本件信託証書に記載された請求人を含む10名の者に平等に分配され、5分の1は××××××××に分配される旨(本件信託証書5.4)などが記載されていた。
  なお、本件信託証書に分配を受ける者として記載された10名のうち1名は、本件被相続人の死亡後、自身の権利を放棄した。
ハ ××××は、××××××××、××××××××において死亡した。
ニ 本件被相続人は、平成15年5月12日、「××××××××」と題する遺言書(以下「本件遺言書」といい、本件遺言書の記載内容を「本件遺言」という。)を××××××××において作成し、本件遺言書は、同地において認証された。本件遺言書には、①本件信託以外の本件被相続人の財産を本件遺言で指定する各受遺者に遺贈する旨、②①の遺贈がされた後の本件被相続人の残余財産を本件信託の一部に加え、管理し、分配することを指定する旨などが記載されていた。
ホ 本件被相続人は、××××××××(以下「本件相続開始日」という。)、××××××××において死亡した。
へ その後、本件被相続人の本件信託以外の財産に係る本件遺言の執行の請求に対し、××××××××××の監督下で検認手続(プロベイト)が開始され、平成25年7月24日、本件遺言書の記載どおり本件遺言を執行する旨の当該裁判所の命令が出された。
ト 請求人は、本件信託の受託者から、平成26年12月5日から平成28年3月30日までの間にされた本件各分割信託の受益権(上記ニの②により本件被相続人の残余財産が加えられた後のもの。以下「本件信託受益権」という。)に係る分配金として、合計で××××××××に相当する小切手を受領した。
チ 本件被相続人の遺産について、米国連邦遺産税は課税されなかった。
リ 本件被相続人らは、各死亡時において、日本国籍を有する者であった。
ヌ 請求人は、本件相続開始日において、日本国内に住所を有する者であった。
(4)審査請求に至る経緯 イ 請求人は、本件被相続人の相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、法定申告期限後である平成28年10月14日、別表1(略)の「申告」欄のとおり記載した申告書を原処分庁に提出した。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成28年11月28日付で、別表1(略)の「賦課決定処分」欄のとおりの無申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ また、原処分庁は、平成28年12月20日付で、別表1(略)の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。)をした。
ニ 請求人は、平成29年3月7日、本件更正処分等に不服があるとして審査請求をした。
  なお、請求人は、取得した本件信託受益権の価額について争っていない。

争点および主張
(1)請求人が本件被相続人の遺産の維持保全のための活動費として支出したと主張する別表2(略)に記載する費用合計1,359,000円は、請求人の本件相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当するか否か(争点1)。
(2)請求人が××の遺産について米国税務当局から課税されたと主張する米国連邦遺産税合計××××××は、請求人の本件相続税の納付すべき税額の計算上控除すべき金額に該当するか否か(争点2)。

【表1】被相続人の遺産の維持保全活動費として支出した費用は、相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当するか否か(争点1)
原処分庁 請 求 人
 本件費用については、相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当する旨の法令の規定は見当たらないことから、請求人の主張には理由がない。  本件費用は、次の理由から、請求人の本件相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当する。
(イ)極めて簡明な日本の相続法を前提として立法されている日本の相続税法に、直接的な規定が存在しないからといって、外国の煩雑な相続制度が適用された場合に発生した費用等を考慮しなくてもよいとするのは誤りである。
(ロ)××××××××の検認裁判所の手続であるプロベイトには大変な時間、費用を要することは明白な公知の事実であり、まして、分配の対象者として米国市民以外の日本人が関与した場合に手続が大幅に遅延することは顕著である。加えて、本件各分割信託に係る信託財産の具体的な情報が開示されていないことに基因して相続の辞退を申し出た者への説得活動や、数か国にまたがる著作権の処理等を行う必要があった。そして、遺産処理が長期化すれば、信託財産である各種動産等を保管するための各種費用が生じ、遺産管理人及び信託会社の報酬額が増大するため、これを放置していれば、遺産が減少する一方となることは明白である。

【表2】米国税務当局から課税された米国連邦遺産税は、相続税の納付すべき税額の計算上控除すべき金額に該当するか否か(争点2)。
原処分庁 請 求 人
 本件遺産税については、相続税の納付すべき税額の計算上控除すべき金額に該当する旨の法令の規定は見当たらないことから、請求人の主張には理由がない。  本件各分割信託は本件分割前信託を根源としているところ、本件被相続人がいわゆる専業主婦であったことからすると、本件被相続人の遺産の大部分は、××××××××に死亡した××の遺産から発生していることは明白である。そして、××の遺産については、米国税務当局に本件遺産税の額××××××を納税済みであるから、日米相続税条約に照らすと、二重課税を回避するために、本件遺産税を請求人の本件相続税の納付すべき税額の計算上控除すべきである。

審判所の判断
(1)争点1について
 イ 検討
(イ)相続税法第13条第1項は、課税価格に算入すべき価額は、相続又は遺贈により取得した財産の価額から、①被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの及び②被相続人に係る葬式費用を控除した金額と規定している。
(ロ)本件についてみると、本件費用のうち別表2(略)の「1葬儀出席のための渡米経費」については、請求人が××××××××で執り行われた本件被相続人の葬儀へ出席するに際して支出した交通費等の費用であり、また、それ以外の本件費用は、本件被相続人の死亡後に発生した同人の遺産に係る検認手続(プロベイト)、本件遺言に基づく遺贈手続及び本件信託証書の定めに基づく信託財産の分配手続に係る諸費用であり、いずれの費用も、本件被相続人の債務で相続開始の際現に存するものに該当せず、また、本件被相続人に係る葬式費用にも該当しないことは明らかである。
(ハ)したがって、本件費用は、請求人の本件相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当しない。
 ロ 請求人の主張について  請求人は、極めて簡明な日本の相続法を前提として立法されている日本の相続税法に、直接的な規定が存在しないからといって、外国の煩雑な相続制度が適用された場合に発生した費用等を考慮しなくてもよいとするのは誤りであり、本件費用は、分配財産を維持保全するのに不可欠な活動と評価すべきであって、相続税法の趣旨に照らすと、請求人の本件相続税の課税価格の計算上控除すべき金額に該当する旨主張する。
 しかしながら、相続税法上、相続税の課税価格の計算上控除すべき金額は、①被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの及び②被相続人に係る葬式費用に限定されているところ、本件費用がこれらに該当しないことは上記イのとおりであり、また、請求人の主張する事情を考慮しても、本件費用につき、請求人の課税価格から控除する旨の規定がない以上、これを控除することはできない。
(2)争点2について
 イ 検討
(イ)日本国と米国で相続税の二重課税が生じた場合の調整を図る規定として、相続税法第20条の2及び日米相続税条約第5条がある。
(ロ)相続税法第20条の2は、相続又は遺贈により法施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産について外国相続税が課せられたときに二重課税の調整を行う旨規定しているところ、請求人が米国にある財産を取得したことにつき米国連邦遺産税は課せられていないことから、請求人は、本件相続税の納付すべき税額の計算上、同条の適用を受けることはできない。
  また、日米相続税条約第5条(4)は、両締約国の租税が被相続人の死亡の時に同時に課せられる場合にのみ二重課税の調整を行う旨規定しているところ、本件被相続人の死亡の時に米国連邦遺産税は課せられていないことから、請求人は、本件相続税の納付すべき税額の計算上、同条の適用を受けることはできない。
  なお、請求人が本件相続税の納付すべき税額の計算上控除すべき金額に該当すると主張する本件遺産税は、××の遺産について課せられたものであって、本件被相続人の遺産について課せられたものではない。
(ハ)したがって、本件遺産税は、請求人の本件相続税の納付すべき税額の計算上控除すべき金額に該当しない。
 ロ 請求人の主張について  請求人は、本件各分割信託は本件分割前信託を根源としているところ、本件被相続人がいわゆる専業主婦であったことからすると、本件被相続人の遺産の大部分は××の遺産から発生していることは明白であるので、本件遺産税は、請求人の本件相続税の納付すべき税額の計算上控除すべき金額に該当する旨主張する。
 しかしながら、請求人の主張する本件被相続人の遺産の大部分が××の遺産から発生しているという事情を考慮しても、本件遺産税につき、相続税法及び日米相続税条約において、請求人の本件相続税の納付すべき税額の計算上控除する旨の規定がない以上、これを控除することはできない。

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