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解説記事2019年03月04日 【解説】 租税条約と国内税法の関係(2019年3月4日号・№777)

解説
租税条約と国内税法の関係
 弁護士 仲谷栄一郎
 弁護士 梶原 康平

 国際的な課税関係を検討する場合、国内税法に加え租税条約を検討する必要がある。本稿は、一般に租税条約と国内税法とはどのような関係にあるかを、若干の歴史的な経緯とともに概説するものである(条文の引用は、必要な場合以外、法人税法のみとし、抜粋とする)。

Ⅰ 総 論
 一般に租税条約は国内税法に優先すると考えられているが、その範囲や限界につき必ずしも見解が一致しているわけではない。たとえば、国内税法において、「国内源泉所得」の定義については租税条約の規定が国内税法の規定に優先し国内税法の規定を置き換えると明記する条文(法人税法第139条第1項)がかつてから存在していた。しかし、この条文があることにより、逆にそのような条文がない場合(恒久的施設、国外源泉所得)はどうなるかにつき、問題が提起されていた(脚注1)。これらの問題については、近時、租税条約の規定が優先すると明記する国内税法の条文が次々と登場し、解決の方向に向かっている(脚注2)。法律により明確化されてきているのは、租税法律主義の観点から望ましい流れである。
 他方、既存の租税条約の条文を一定の条件のもとで上書きする「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多国間条約」(以下、英文の略称を用いて「MLI」という(脚注3)。後述)の発効により、租税条約と国内税法の適用関係が三層化し、難しくなってきている。

Ⅱ 国内税法と租税条約との適用関係-MLIなき世界にて
 国内税法と租税条約の適用関係につき、まずMLIが適用されない場合を検討する。この場合は、国内税法と個々の租税条約の関係のみの問題になる。

1 国内源泉所得  外国法人に対する課税の範囲を画する国内源泉所得について、租税条約が国内税法と異なる定めを置いている場合がある。
(1)源泉地置き換え規定-法人税法第139条第1項  前述のとおり、従前から、租税条約において国内税法上の国内源泉所得と異なる定めがある場合には、その租税条約の定めが国内税法上の国内源泉所得に置き換わるという明文の規定(法人税法第139条第1項)があった(脚注4)。
(2)AOA非準拠の租税条約との関係  2010年にOECDにおいて採用されたOECD承認アプローチ(Authorized OECD Approach。略称AOA)(脚注5)が、平成26年度税制改正により、日本にも導入され、AOA導入後に締結・改定された租税条約では国内税法同様AOA準拠のものが増えてきた(脚注6)。しかし、旧来型(AOA非準拠)の租税条約も多数存在しているため、それらと国内税法との適用関係が問題となる。
 この点に関して、法人税法第139条第2項は、内部取引から所得が生ずる旨を定めていない租税条約の適用があるときは、外国法人の恒久的施設と本店等との間の内部取引に係る所得は、恒久的施設に帰属する所得の算定にあたり勘案されないものとしている(同項は「利子」のみを明示しているが、法人税法施行令第183条第3項により、無形資産の使用料支払いや譲渡等の内部取引に係る所得にも適用される)。
 また、外国法人が恒久的施設を通じて国内で購入した棚卸資産につき、国内で製造等の行為を行わずに国外で販売する場合に、その購入・販売から生ずる所得は恒久的施設に帰属しない(いわゆる単純購入非課税)と定める租税条約の適用があるときは、その租税条約の定めるところにより、外国法人の恒久的施設において所得は発生しないものとされる。この点については、上記の内部取引のように明文の規定があるわけではなく、法人税法第139条第1項が定める置き換えの結果である。
 このように、AOAに準拠した帰属主義を採用する国内税法と、AOAに準拠せず内部取引からの所得非課税や単純購入非課税を採用する租税条約が適用される場面においては、AOAに準拠しない租税条約がAOAに準拠した新しい国内税法を(古い方向に)置き換えるという、ねじれた関係が生じている(脚注7)。

2 恒久的施設(PE)  恒久的施設(PE)につき、租税条約が国内税法と異なる定めを置いている場合、その適用関係が問題になる。
(1)従前の問題状況  租税条約が国内税法上のPEと異なる定めを置いている場合に、その租税条約の定めが国内税法上のPEに置き換わるか否かについては明文の規定がなく、以下のように解釈が分かれていた(脚注8)が、実務と判例は①の全面置換説に立っていると見受けられた(脚注9)。
① 全面的に置き換えるという解釈(全面置換説)(脚注10)
② 租税条約上のPEが国内税法上のPEよりも狭い場合にのみ置き換えるという解釈(限定置換説)
③ 租税条約の文言により結論が異なるという解釈(租税条約文言説)
(2)租税条約特有PE  租税条約によっては、国内税法上のPEの類型(事業所、建設、代理人)に対応しない類型のPE、あるいは、対応するか否か自体が問題になる類型のPEが規定されている場合がある(以下このようなPEを「租税条約特有PE」という)。全面置換説によるとしても、それらの租税条約特有PEが国内税法上のPEに置き換わるかどうかが問題になり得た(脚注11)。たとえば、次のようなPEである。
・芸能人の活動
 アイルランド(第6条第4項)、ブラジル(第4条第7項)。
・役務提供事業
 インドネシア(第5条第5項)、カタール(第5条第3項(b))、サウジアラビア(第5条第3項(b))、チリ(第5条第3項(b))、タイ(第5条第4項)、中国(第5条第5項、議定書1)、トルコ(第5条第5項)、ニュージーランド(第5条第5項)、フィリピン(第5条第6項)、ヴィエトナム(第5条第4項)。
・製造加工事業
 オーストラリア(第5条第7項)、ニュージーランド(第5条第8項)。
・保険事業
 サウジアラビア(第5条第7項)、カタール(第5条第6項)、フィリピン(第5条第9項)、ヴィエトナム(第5条第7項)、メキシコ(5条第6項)。
 この点につき、これらの租税条約特有PEまで含め租税条約上のすべてのPEが国内税法上のPEに置き換わるという考え方と、租税条約特有PEに限っては置き換えられないという考え方があった(脚注12)。後者の考え方の根拠は、租税条約特有PEが国内税法上のどの類型のPEに置き換わるかが不明なため、課税の方法が定められないという点であった。
(3)PE置き換え規定-法人税法第2条第12号の19ただし書き  平成26年度税制改正により、PEの類型を問わず課税の方法が統一されたため(法人税法第141条)、租税条約特有PEについても、もはや置き換えを否定する理由はなくなっていた。
 これを受け、平成30年度税制改正において、法人税法第2条第12号の19に、以下のただし書きが新設された。
 ……[租税]条約において次に掲げるもの[注:国内税法上の恒久的施設の定義]と異なる定めがある場合には、その条約の適用を受ける外国法人については、その条約において恒久的施設と定められたもの(国内にあるものに限る。)とする。
 このように、租税条約特有PEを含む租税条約上のPEはすべて国内税法上のPEとみなされることになり(脚注13)、PEについての置き換え問題は解決をみた。

3 外国税額控除  外国税額控除の適用においては、内国法人が「国外源泉所得」について課された外国の租税が対象とされる。
 従前、「国外源泉所得」は「国内源泉所得」の裏返し(「国内源泉所得以外の所得」。平成26年度税制改正前法人税法施行令第142条第3項)と定義されていたところ、租税条約との関係については、さまざまな問題があった。
 この点については、近時、租税条約との関係の明確化を図る条文が新設され、また、国外源泉所得は国内源泉所得の裏返しではなく独自に定義されることになった(法人税法第69条第4項)。
(1)国外事業所等帰属所得  独自に定義されることとなった国外源泉所得の中心を成すのが、国外事業所等(国外にある恒久的施設に相当するもの等)に帰属する所得である(法人税法第69条第4項第1号)。「恒久的施設に相当するもの」等については、租税条約にその定めがある場合は、当該租税条約の定めに従って判断されることとされている(法人税法施行令第145条の2第1項)。
(2)租税条約が相手国の課税権を認めている所得-法人税法第69条第4項第15号  従前、国内税法上は国内源泉所得とされるものについて、租税条約が相手国の課税権を認め相手国において租税を課されているが、租税条約に国外源泉所得の「源泉地の置き換え規定」(脚注14)が置かれていない場合、その所得は国外源泉所得に該当するか否かという問題があった(脚注15)。
 たとえば、(所得税の事例であるが、)イタリア法人の役員である日本の居住者が、日本で役員としての役務提供を行い、役員報酬を受け取る場合、当該役員報酬は当該役員の居住地国である日本で課税されるが(所得税法第5条第1項)、日本・イタリア租税条約は当該法人の居住地であるイタリアにおいても課税することができる旨を定めており(同条約第16条)、実際にイタリアにおいて所得税が課されると、日本とイタリアで二重課税が生じる。しかし、日本・イタリア租税条約は、「源泉地の置き換え規定」を設けていない(同条約第23条)。
 この場合、当該役員報酬は、国内税法上は国内源泉所得に該当するが(所得税法第161条第1項第12号イ)、租税条約の規定により国外源泉所得に置き換えられ外国税額控除の対象となるのか不明だった。
 この点につき、平成23年度税制改正による法人税法施行令第142条第4項第3号(平成26年度税制改正前。平成26年度税制改正後の法人税法第69条第4項第15号、同法施行令第145条の12も同趣旨)は、以下の所得が国外源泉所得となることを定めた。
 租税条約の規定により当該租税条約の相手国において租税を課することができることとされる所得のうち、当該相手国において外国法人税が課される所得
 これは、租税条約の相手国において租税を課される所得は当該相手国の源泉から生じたものとみなす「源泉地の置き換え規定」が租税条約に置かれていない場合でも、当該所得を国外源泉所得として扱うことを明示した規定である。
 すなわち、上記の例の場合、日本の居住者が受け取る役員報酬は、国外源泉所得に該当することになり(所得税法第95条第4項第16号(脚注16))、外国税額控除の控除限度額に反映され(同条第1項)、二重課税排除が図られる(脚注17)。
(3)租税条約が異なる定めを置いている国外源泉所得-法人税法第69条第6項  従前、国外源泉所得につき租税条約が国内税法と異なる明示の定めを置いている場合、国内税法上、国内源泉所得についての法人税法第139条第1項のような国内法上の「源泉地の置き換え規定」はないものの、当該租税条約の定めが優先されることは異論をみなかった(脚注18)。
 たとえば、上記(2)の事例において、日本の居住者がイタリア法人ではなくアメリカ法人の役員であった場合、日米租税条約は、「源泉地の置き換え規定」を設けているため(同条約第23条第1項)、国内税法上は国内源泉所得に該当していた役員報酬は、租税条約の規定により国外源泉所得に置き換えられる。
 この点につき、平成26年度税制改正において、以下の規定が定められた(法人税法第69条第6項)。
 租税条約において国外源泉所得につき前2項の規定と異なる定めがある場合には、国外源泉所得は、その租税条約に定めるところによる
 これは、国内源泉所得についての法人税法第139条第1項第1文と対応した定めとなっており、その性質もこれと同様に考えることができる(脚注19)。すなわち、国外源泉所得との関係においても、源泉地に係る租税条約の規定が国内税法の規定に優先して適用される上記の取り扱いを、明示的に確認したものであるといえる。
(4)AOA非準拠の租税条約との関係-法人税法第69条第7項、第8項  法人税法第69条第7項、第8項は、前述の国内源泉所得と同様、いずれも、AOAに準拠した帰属主義を採用する国内税法と、AOAに準拠せず内部取引からの所得非課税や単純購入非課税を採用する租税条約が適用される場面において、租税条約の規定が優先されることを確認した規定である。

Ⅲ 租税条約同士の適用関係-MLI後の世界にて

1 MLIの効力
 MLIとは、BEPS(税源浸食及び利益移転)防止措置を、既存の租税条約に同時かつ効率的に導入するための多国間条約であり、一定の条件のもと、既存の租税条約の規定がMLIの規定に置き換えられる。各租税条約が個別の改正を行うことなく一挙に置き換えられることになるため、その影響は非常に大きい。

2 MLIと(2国間)租税条約の適用関係  MLIが適用されると、国内税法と租税条約の適用関係の優先順位は、①MLIにより置き換えられた租税条約の規定、②MLIにより置き換えられていない租税条約の規定、③国内税法の規定という三層になる。そして、具体的には以下のような検討手順が必要となる。
(1)問題となる租税条約がMLIの適用対象(対象租税協定)であるか特定する
(2)租税条約がMLIの適用対象である場合、MLIのどの規定が日本と相手国の双方により適用対象として選択されているか特定し、MLIによる修正後の租税条約の姿を明らかにする
(3)MLIによる修正後の租税条約を前提として、問題となる規定が国内税法の規定をどのように置き換えるかを検討する
(1)租税条約がMLIの適用対象か  ある租税条約がMLIの適用対象となるためには、締約国双方についてMLIが発効しており、かつ、締約国双方が、当該租税条約をMLIの適用対象として選択していることが必要である(脚注20)。
 日本については、2018年9月26日に受諾書を寄託したことにより、3か月の期間が満了する日の属する月の翌月の初日である2019年1月1日に、MLIが発効している(脚注21)。
 日本がMLIの適用対象として選択している租税条約の相手国・地域は39か国・地域あり、そのうち2019年1月29日時点でMLIの批准書等を寄託している(したがってMLIが既に発効している又は近く発効する)国は、以下の10か国である(脚注22)。
・アイルランド
・イスラエル
・英国
・オーストラリア
・シンガポール
・スウェーデン
・スロバキア
・ニュージーランド
・フランス
・ポーランド
 上記のうちアイルランド及びシンガポール以外の8か国は2018年9月までに留保及び通告を提出しているため、これらの国については、遅くとも(日本についてMLIが発効する)2019年1月1日までにMLIが発効している(脚注23)。そして、これらの国も日本との間の租税条約をMLIの対象とすることを選択している。したがって、2019年1月1日以降、それぞれの租税条約がMLIの適用対象となる要件が具備されている。具体的に適用が開始されるのは、源泉徴収される租税については2019年1月1日以後に生じる課税事象、その他の租税は2019年7月1日以後に開始する課税期間に関して課される租税からである(脚注24)。
(2)MLIのどの規定が適用対象として選択されているか  各国は、MLIの各規定のうち、適用しない権利を留保することができるとされているものについて、適用しないこととする(留保する)ことや、適用することを選択することができるとされているものについて、適用することを選択することができる。そして、締約国双方が適用すること(留保しないことを含む)を選択している規定についてのみ当該国間の租税条約に適用され、租税条約が修正されることになる。
 MLIの規定は、租税条約の規定に代えて適用される場合もあれば、租税条約の規定に加えて適用される場合もある(脚注25)。租税条約の修正のイメージについては、前頁のを参照されたい。網掛け部分が、MLIによる修正後の租税条約の姿となる。

 このように、MLIによる租税条約の修正の有無(上記(1))、具体的に租税条約のどの規定がどのように置き換えられるか(本(2))の検討が必要となるため、租税条約の適用関係は、より複雑になる。
 これらの点については、OECDのウェブページで公表されているマッチングデータベース(脚注26)を利用すると、簡単に特定することができる。マッチングデータベースでは、特定の2か国(日本と相手国)を選択すると、両国間の租税条約がMLIの適用対象(対象租税協定)であるかどうか、MLIのどの規定が適用されるかが、一目で分かるようになっている。
 さらには、MLIの適用対象となる、日本が締結している租税条約については、財務省のウェブサイト(脚注27)において、各租税条約の規定とその規定について適用されるMLIの規定を統合して条文の形式で示した文書が、「適用関係の把握を容易にするために便宜的に作成されたもの」として公表されている。当該文書は法的効力を有するものではないことに注意を要するが、実務的には、この文書を参考にMLI適用後の租税条約の姿を特定することができる。
(3)国内税法をどのように置き換えるか  上記のようにMLIと租税条約の適用関係を整理した後、従前同様、それが国内税法をどのように置き換えるかを検討する(上記)。

3 日本が適用することを選択しているMLIの規定  日本が適用することを選択しているMLIの規定は、具体的には以下の11個である。これらは、日本が最近締結した租税条約(脚注28)において既に導入されているものである(脚注29)。
① 課税上存在しない団体を通じて取得される所得に対する条約適用に関する規定(第3条)
② 双方居住者に該当する団体の居住地国の決定に関する規定(第4条)
③ 租税条約の目的に関する前文の文言に関する規定(第6条)
④ 取引の主たる目的に基づく条約の特典の否認に関する規定(第7条)
⑤ 主に不動産から価値が構成される株式等の譲渡収益に対する課税に関する規定(第9条)
⑥ 第三国内にある恒久的施設に帰属する利得に対する特典の制限に関する規定(第10条)
⑦ コミッショネア契約を通じた恒久的施設の地位の人為的な回避に関する規定(第12条)
⑧ 特定活動の除外を利用した恒久的施設の地位の人為的な回避に関する規定(第13条)
⑨ 相互協議手続の改善に関する規定(第16条)
⑩ 移転価格課税への対応的調整に関する規定(第17条)
⑪ 義務的かつ拘束力を有する仲裁に関する規定(第6部)
 他方、日本が適用しないことを選択しているMLIの規定は以下の5つである。
① 二重課税除去のための所得免除方式の適用の制限に関する規定(第5条)
② 特典を受けることができる者を適格者等に制限する規定(第7条)
③ 配当を移転する取引に対する軽減税率の適用の制限に関する規定(第8条)
④ 自国の居住者に対する課税権の制限に関する規定(第11条)
⑤ 契約の分割による恒久的施設の地位の人為的な回避に関する規定(第14条)

Ⅳ おわりに
 以上見てきたとおり、法改正により租税条約と国内税法の適用関係が整理されてきている一方で、MLIの発効によりMLI、(2国間)租税条約、国内税法の三層が生じて適用関係の構造が複雑化している。法改正やMLI発効を踏まえた今後の実務の動向を注視していく必要があるだろう。

脚注
1 井上康一・仲谷栄一郎『租税条約と国内税法の交錯[第2版]』(商事法務、2011年)323頁、407頁。
2 法人税法第2条第12号の19ただし書き(平成30年度税制改正。後述)、法人税法第69条第6項(平成26年度税制改正。後述)。
3 Multilateral Convention to Implement Tax Treaty Related Measures to Prevent Base Erosion and Profit Shifting。Multilateral Instrumentと呼ばれることもあり、それを略してMLIと呼ばれることが多い。和文の略称は「BEPS防止措置実施条約」である。
4 この規定が創設規定か確認規定か、そして、国内税法よりも納税者に不利な置き換えが認められるか否かについては見解が分かれていた(前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』169頁以下)が、実務的にはほぼ結論は定まっていた。
5 内部利子の支払い等の内部取引についても独立企業原則を適用するアプローチである。
6 日英租税条約、日独租税条約、日本・スロベニア租税条約、日本・ベルギー租税条約等。
7 井上康一・仲谷栄一郎「租税条約とAOA化後の国内税法の交錯<下>~PEに帰属する所得の算定をめぐり~」国際税務33巻10号110頁以下、仲谷栄一郎・井上康一・梅辻雅春・藍原滋『国際取引と海外進出の税務』(税務研究会、2019年)434頁以下。
8 前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』328~329頁。
9 東京地判平成27年5月28日・訟務月報63巻4号1252頁(控訴審・東京高判平成28年1月28日・訟務月報63巻4号1211頁)。
10 前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』326頁。
11 前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』335頁、344頁。
12 前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』339頁。
13 寺﨑寛之ほか『平成30年版 改正税法のすべて』(大蔵財務協会、平成30年)668頁。
14 日米租税条約第23条第1項、日英租税条約第23条第3項、日本・オーストラリア租税条約第22条第2項等。
15 租税条約が「源泉地の置き換え規定」を設けていなくても租税条約に定める源泉地規定が直接適用されて国内税法を置き換えるという解釈もあり得るが(前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』411頁)、平成23年度税制改正(後述)の立案担当官は、これを否定する見解に立っていたようである(斎須朋之ほか『平成23年版 改正税法のすべて』(大蔵財務協会、平成23年)499頁参照)。
16 法人税法の場合の第69条第4項第15号に相当。
17 前掲注15『平成23年版 改正税法のすべて』499頁参照。
18 前掲注1『租税条約と国内税法の交錯』412頁。
19 増井良啓「国外源泉所得の受け皿規定」公益財団法人トラスト未来フォーラム『金融取引と課税(4)』(平成28年)37頁。
20 中澤弘治「BEPS防止措置実施条約について」租税研究820号160頁。
21 MLI第34条第2項。
22 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/mli.htm 23 シンガポールについては2019年4月1日に、アイルランドについては同年5月1日に、MLIが発効する。
24 MLI第35条第1項。同条第4項、第36条も参照。
25 たとえば、双方居住者に該当する団体に係るMLI第4条第2項(仮訳)は、「1の規定は、個人以外の者が二以上の当事国の居住者に該当する場合にその者を一の当事国の居住者として取り扱うか否かを決定するための規則を規定する対象租税協定の規定に代えて、又は当該規定がない対象租税協定について、適用する。…」と定めている。
26 http://www.oecd.org/tax/treaties/mli-matching-database.htm 27 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/mli.htm 28 日独租税条約等。
29 中澤弘治「特別解説 BEPS防止措置実施条約について」国際税務38巻5号77頁。

仲谷栄一郎 なかたに えいいちろう
 東京大学法学部卒業。弁護士。アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。『国際取引と海外進出の税務』(共著、税務研究会)、『租税条約と国内税法の交錯』(第36回日本公認会計士協会学術賞受賞、共著、商事法務)、 ほか、著書・論文多数。

梶原康平 かじわら こうへい
 東京大学経済学部卒業、同法科大学院修了。弁護士。アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。論文として「平成28年度税制改正大綱への対応 役員給与に関する改正」(共著、ザ・ローヤーズ2016年3月号)、判例評釈として「デンソーを勝たせた最高裁のロジック-タックス・ヘイブン対策税制における事業基準」(共著、T&Amaster No.719(2017.12.18))など。

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