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解説記事2019年03月25日 【ニュース特集】 税理士業務をめぐる最近の訴訟トラブル(1)(2019年3月25日号・№780)

ニュース特集
役員退職金の計上が問題となった事例も
税理士業務をめぐる最近の訴訟トラブル(1)

 税務処理や報酬額をめぐり顧問先会社と税理士法人との間に発生したトラブルが訴訟にまで発展するケースが少なくないなか、本特集では、ここ最近の裁判事例を2件紹介する。最初に紹介する事例は、多額の固定資産売却益を計上した事業年度に役員退職金を計上していれば節税ができたとして、顧問先会社が税理士法人に対して損害賠償を求めていたもの。もう1つの事例は、交際費の否認をめぐる税務調査の対応について、税理士法人には任務懈怠があると顧問先会社が主張して、顧問報酬などの支払いを拒んでいたものである。いずれの訴訟も、第一審では税理士法人側が勝訴しているものの、敗訴した顧問先会社は控訴を提起している。

役員退職金を計上すれば節税できたとして税理士法人に損害賠償を請求
 最初に紹介する事例は、多額の固定資産売却益を計上した事業年度に役員退職金を計上していれば節税ができたとして、原告会社が確定申告業務を受任していた被告税理士法人に対して実際の納税額(3,494万円)と役員退職金の計上による節税をした場合の納税額(1,064万円)との差額である2,430万円の損害賠償を求めた税賠訴訟である。
 事実関係をみると、原告会社の具体的な業務は、歯科医師である原告会社の取締役が経営する歯科医院(本社建物)の賃貸に限られていた。原告会社の取締役は、歯科医師である取締役とその妻の2人で、その役員報酬は月額10万円前後で推移していた。原告会社は、本社建物の売却により、平成24年11月期に固定資産売却益約9,000万円を計上した。原告会社は、この売却益を打ち消すために多額の役員退職金(取締役とその妻の両名で5,000万円以上)を計上することなどを被告税理士法人に相談した。これに対し被告税理士法人は、過去の役員報酬の支給実績などを踏まえ、取締役とその妻に支給する役員退職金として税務上認められるのはせいぜい2,000万円が限度であると判断して、原告会社の希望額を支給すると税務調査を受けて過大役員退職金として否認されるリスクがある旨の説明・助言を行った。これを踏まえ原告会社は、平成24年11月期での役員退職金の計上を見送った。
 ところが、原告会社は、別の税理士に被告税理士法人の税務処理に疑問がある旨の指摘を受けた。この指摘を契機として訴訟を提起した原告会社は、被告税理士法人には原告会社に対して平成24年11月期に役員退職金の支給を実施して節税するように助言すべき義務があったのにこれを怠ったことが債務不履行に当たると主張した(表1参照)。

【表1】役員退職金の計上をめぐる当事者(原告会社及び被告税理士法人)の主張
原告会社の主張 被告税理士法人の主張
 多額の固定資産売却益(9,000万円)を計上した平成24年11月期に原告会社の取締役及びその妻に役員退職金5,200万円を支給していれば、原告会社の納税額が2,340万円節税できた。
 法人税の確定申告業務を受任した被告税理士法人は原告会社に対して、平成24年11月期に役員退職金の支給を実施して、節税するように助言すべき義務があったにもかかわらず、これを怠ったことは債務不履行に当たる。
 被告会社において税務上容認される役員退職金の上限額は1,773万円程度であった。仮に平成24年11月期に5,200万円の役員退職金を支給したとしても、税務調査により過大役員退職金として否認されるおそれが高かった。
 そこで税理士法人は原告会社に対して平成24年11月期に高額な役員退職金を支給した場合の税務上の問題点を十分説明し、原告会社は自らの判断で平成24年11月期での支給を見送った。したがって、被告税理士法人に債務不履行はない。

地裁、必要な税務情報を提供したと指摘  地裁は、役員退職金について租税実務で一般的に使用されている具体的な算定方法として、功績倍率法などを挙げたうえで、原告会社の取締役とその妻の業務実態を踏まえた適正役員報酬額、その勤続年数等に照らせば、税務上認められる概算の限度額は多くとも合計2,000万円にとどまるとの被告税理士法人の判断は一般的な判断基準に合致するという意味で合理的なものであるとした。
 そして地裁は、被告税理士法人は平成24年11月期に役員退職金として約5,000万円を支給することの利害得失をわかりやすく説明しており、原告会社もその利害得失を十分に理解したうえで平成24年11月期に約5,000万円という高額な役員退職金を支給することを見送る旨を最終的に決定するに至ったと認定した。以上のような事情を踏まえ地裁は、役員の退職及びその退職時期を決定するのはその会社の役員自身の意思決定に委ねられるべきことに照らせば、被告税理士法人は原告会社が経営上の最終的な意思決定を行うために必要な税務上の情報を十分提供していたということができるから、被告税理士法人に債務不履行があるとは認められないと判断した(東京地裁平成31年1月11日判決)。

税務調査で交際費否認、税理士法人の対応を納税者が問題視
 次に紹介する事例は、原告税理士法人が被告会社に対して顧問報酬などの支払いを求める一方で、被告会社が原告税理士法人には税務調査の対応における任務懈怠があると主張して顧問報酬などの支払いを拒否していた訴訟である。
 事実関係をみると、被告会社に対する税務調査では、被告会社の代表者による交際費の支払いが問題視された。税務署は、交際費名目の支出を交際費として認めず、代表者の個人的な支出と認定したうえで、その支出は代表者に対する役員給与であると指摘した。原告税理士法人は、代表者に対する給与所得として扱われると多額の所得税が課せられるため、税務署と協議したうえで被告会社の代表者に対する貸付金として処理することについて税務署からの了解を得た。そして原告税理士法人は、貸付金と処理するために金銭消費貸借契約書・取締役会議事録・振替伝票を作成した。
 裁判のなかで被告法人は、原告税理士法人は事前に税務調査が入らないように適切に助言するとともに、税務調査が入った後には追加の納税額を少なくするよう税務署と交渉する義務があると主張した。
 そのうえで被告法人は、交際費の計上に関し原告税理士法人は被告会社に対して税務調査を招かぬよう注意喚起をすべき助言義務があったにもかかわらずこれを怠ったと指摘。また、代表者の個人的な費消とされた分について役員給与ではなく役員貸付金とする際にも、代表者の被告会社に対する多額の貸付金との相殺処理とするよう努力すべきであったにもかかわらずこれを怠ったと指摘して、原告税理士法人には任務懈怠があると主張した(表2参照)。

【表2】税務調査の対応をめぐる当事者(被告会社及び原告税理士法人)の主張
被告会社の主張 原告税理士法人の主張
 原告税理士法人は事前に税務調査が入らないように適切に助言するとともに、税務調査が入った後には追加の納税額を少なくするよう税務署と交渉する義務がある。
 ①交際費の計上に関して税務調査を招かぬよう被告会社に対して注意喚起をすべき助言義務を怠ったこと、②代表者の個人的な費消とされた分について代表者の被告会社に対する多額の貸付金との相殺処理とするよう努力すべき義務を怠ったことは原告税理士法人の任務懈怠に当たる。
 代表者による交際費名目の支出が代表者の個人的な飲食代である旨の説明は受けていない。被告会社が自らの経営責任の下で交際費の支出としたうえで税務処理の依頼をしている以上、その依頼に従って税務処理をせざるを得ないから、交際費の取扱いに関して助言する義務はない。
 原告税理士法人は税務署との折衝を重ねた結果、否認された交際費について役員給与ではなく代表者に対する貸付金として処理する方向になった。仮に、代表者の被告会社に対する貸付金の返済として扱うよう税務署に要請した場合には交渉がまとまる余地がなかった。

税理士法人の対応に義務違反は認められず  地裁はまず、代表者による交際費名目の支出は法人税法上の限度額の範囲内であったことから、対象となるか否か判然としない税務調査を理由に交際費の計上について原告税理士法人が被告会社に対してその計上を抑制するよう注意喚起をすべき義務があるとはおよそ考え難いとした。
 次に税務署から代表者の個人費消分は原則として役員給与になるとの指摘を受けた点について地裁は、原告税理士法人は代表者個人の所得税の追徴課税を回避する方向で税務署と折衝し、代表者に対する貸付金として処理する方向になったというのであるから、これが税理士としての善管注意義務に違反するとは考え難いとした。
 以上の点などを踏まえ地裁は、税務調査の対応について原告税理士法人に任務懈怠はなかった旨を判断したうえで、被告会社に対して未払報酬約300万円の支払いを命じた(東京地裁平成30年11月7日判決)。

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