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解説記事2019年04月01日 【ニュース特集】 図解 改正CFC税制上のペーパーカンパニーの定義(2019年4月1日号・№781)

ニュース特集
ブロッカーコーポレーション、不動産保有会社等が合算対象外に
図解 改正CFC税制上のペーパーカンパニーの定義

米国の連邦法人税率の引下げに伴い、多くの日本企業が米国に置く「ブロッカーコーポレーション」等のペーパーカンパニーの所得が外国子会社合算税制(CFC税制)上、全部合算の対象となるリスクが高まっていたが、平成31年度税制改正では、ペーパーカンパニーの定義を見直すという救済措置が導入されている。
 CFC税制上のペーパーカンパニーに該当しないためには、「事業要件」「資産割要件」「収入割要件」等を満たす必要があるが、CFC税制上のペーパーカンパニーの定義は、単純なブロッカーコーポレーション、階層的に設けられた持株会社、不動産保有会社、資源開発等プロジェクトに係るペーパーカンパニーなど、ペーパーカンパニーの設置パターンに応じて定められており、ペーパーカンパニーに該当するかどうかの判定は、外国関係会社ごとに行う必要がある。そこで本特集では、様々なタイプのペーパーカンパニーのCFC税制上の定義をそれぞれ図を用いて解説する。

ペーパーカンパニーに該当するかどうかの判定は外国関係会社毎に行う必要
 トランプ政権が米国の連邦法人税率を35%から21%へと引き下げたことに伴い、米国に所在する子会社の実質税負担率が(州税を加えても)30%未満となるケースが多発、これに伴い、多くの日本企業が事業上の必要性から保有するペーパーカンパニーがCFC税制上、全部合算の対象となるリスクが生じていたことは本誌既報の通りだ(745号7頁参照)。
 これを受け平成31年度税制改正では、米国で行われる通常のビジネスを阻害しない観点から、CFC税制上のペーパーカンパニーの「定義」が見直されることとなった。この定義は、ペーパーカンパニーの設置パターンに応じて定められており、ペーパーカンパニーに該当するかどうかの判定は、外国関係会社ごとに行う必要がある。以下、図解とともに具体的に見ていこう。

パターン01 単純な持株会社であるペーパーカンパニー

「収入割要件」の判定上、子会社株式のキャピタルゲインは分子に含まれず
 まず分かり易いところで、「ブロッカーコーポレーション」としての単純な持株会社であるペーパーカンパニーがCFC税制上のペーパーカンパニーに該当しないための要件から確認しておこう。
①子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で(事業要件)、②その資産の95%超が子会社の株式等及び一定の現預金等であり(資産割要件)、③その収入の額の95%超が子会社からの配当等の額及び一定の預貯金利子の額であるもの(収入割要件)。
※租税特別措置法66条の6 2項二号(3)(詳細は政令事項)

 日本の親会社が米国のパススルー事業体であるLLCやLPSとの間に、中間事業体とししてペーパーカンパニーを置くケースは珍しくないが、上記でいう外国関係会社は、「持株会社である一定の外国関係会社」のうち単純な持株会社、すなわちブロッカーコーポレーションを想定している。また、ここでいう子会社は「外国関係会社と同一国に所在する外国法人で、外国関係会社による持分割合が25%以上のもの」を指す(措法66条の6②二イ(3))。以上を整理すれば、図1の通りとなる。

 なお、上記「収入割要件」の判定に際しては、子会社株式のキャピタルゲインは分子に含まれない。これは、ブロッカーコーポレーションは米国における納税義務の遮断が主たる目的であり、子会社株式の譲渡は基本的に想定されていないからである。

パターン02 階層的に設けられたペーパーカンパニー

兄弟会社も管理支配会社に
 上記ケースは、ブロッカーコーポレーションの下に中間持株会社が存在しない単純なケースを想定している。もっとも、日本企業が海外で事業を展開する際には、事業に係る倒産・訴訟リスク回避の観点から、持株会社を“階層的に”設けることもある。
 平成31年度税制改正では、こうした複雑なスキームに対する救済策として、「経済活動基準」(後述)を満たす部分対象外国関係会社である「管理支配会社」に支配されるペーパーカンパニーである「被管理支配会社」が一定要件を満たす場合には、その所得を合算対象外とする措置が講じられている。具体的には、①「特定子会社」(後述)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で(事業要件)、②その本店所在地国と同一国に所在する管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること(被管理支配要件)、③当該管理支配会社が当該同一国において行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと(事業要件)、④その資産の額の95%超が特定子会社の株式等及び一定の現預金等の資産の額であること(資産割要件)、⑤その収入の額の95%超が特定子会社からの配当等の額、特定子会社の株式等の一定の譲渡対価の額及び一定の預金利子の額であること(収入割要件)等の要件を全て満たす必要がある(措法66条の6②二イ(4))。
 なお、ここでいう特定子会社とは、その外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する部分対象外国関係会社又は管理支配会社に係る他の被管理支配会社をいう。また、管理支配会社に求められる「経済活動基準」とは、その本店所在地国においてその役員又は使用人がその主たる事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していることを指している(以上、措法66条の6②二イ(3))。以上を整理すれば図2(1)の通りとなる。

 また、図2(1)では管理支配会社が被管理支配会社の株式を保有する親子関係を前提にしているが、法令には「管理支配会社は被管理支配会社の株式を保有しなければならない」とは書いていない。したがって、図2(2)のように兄弟会社も管理支配会社になり得ると考えられる。


パターン03 不動産を保有するペーパーカンパニー(不動産業)

不動産保有会社に手厚い救済措置
 米国の不動産会社では、不動産を別会社に切り離して保有することが少なくない。その目的は、必要に応じて会社ごと不動産を売却するなど、迅速なポートフォリオ組み替えに対応しやすくすることにある。また、このような場合にも、上記のケースと同様、持株会社が多層的に設けられていることがよくある。これには、不動産を保有する会社の売却に係る訴訟リスクを遮断するなどの目的がある。
 これらの会社は形式上ペーパーカンパニーに該当するが、平成31年度税制改正では、一定の場合にはこれらの所得を合算対象外とする救済措置が設けられている。具体的には、①その本店所在地国と同一国に所在する一定の不動産又は特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で(事業要件)、②当該同一国に所在する管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること(被管理支配要件)、③当該管理支配会社が当該同一国において行う事業(不動産業に限る)の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと(事業要件)、④その資産の額の95%超が当該不動産、特定子会社の株式等及び一定の現預金等の資産の額であること(資産割要件)、その収入の額の95%超が当該不動産及び特定子会社の株式等から生ずる収入の額並びに一定の預金利子の額であること(収入割要件)等の要件の全てに該当する必要がある(措法66条の6②二イ(5))。上記の「特定子会社」とは、管理支配会社に係る他の被管理支配会社をいう。以上を整理すれば図3の通りとなる。


パターン04 不動産を保有するペーパーカンパニー(非不動産業)

自社ビル等を別会社に切り離して保有
 不動産を別会社に切り離して保有したいというニーズは、不動産業以外の業種でもある。例えば、管理支配会社が自ら使用している自社ビル等の不動産を、事業遂行上、別会社に切り離して保有していることも少なくない。これらの会社も形式上ペーパーカンパニーに該当するが、平成31年度税制改正では、①その本店所在地国と同一国に所在する管理支配会社が自ら使用する当該同一国に所在する不動産の保有を主たる事業とする外国関係会社(事業要件)で、②当該管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること(被管理支配要件)、③当該管理支配会社が当該同一国において行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと(事業要件)、④その資産の額の95%超が当該不動産及び一定の現預金等の資産の額であること(資産割要件)、⑤その収入の額の95%超が当該不動産から生ずる収入の額及び一定の預金利子の額であること(収入割要件)等の要件の全てを満たせば、これらの所得を合算対象外とすることとしている(措法66条の6②二イ(5))。
 ここで「特定子会社」が登場しないのは、本措置があくまで不動産会社以外の会社を念頭に置いたものであるため。ここでは多層的なストラクチャーではなく、「不動産業ではない業種」を念頭に、シンプルな形での利用が想定されている。


パターン05 資源開発等プロジェクトに係るペーパーカンパニー

管理支配会社が単独で全事業を行わなくても可 特定子会社は「持分割合10%以上」に
 このように、今回のCFC税制上のペーパーカンパニーの定義の見直しでは、特に不動産を保有する持株会社に対し手厚い救済措置が講じられているが、都市開発など、比較的プレーヤーが多く、規模の大きい不動産事業になると、「不動産保有に係る一定の外国関係会社」に係る救済措置では不十分な場合がある。
 そこで平成31年度税制改正では、このようなケースについて別途救済措置を設けている(措法66条の6②二イ(5))。具体的には、①特定子会社の株式等の保有、非関連者から調達した資金の特定子会社への提供又はその外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する一定の不動産の保有を主たる事業とする外国関係会社で(事業要件)、②当該同一国に所在する管理支配会社等によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること(被管理支配要件)、③当該管理支配会社等が当該同一国において行う当該同一国の石油・天然ガス等の資源又は社会資本の開発又は整備等に関する事業(資源開発等プロジェクト)の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと(事業要件)、④その資産の額の95%超が特定子会社の株式等、特定子会社に対する一定の貸付金、当該不動産及び一定の現預金等の資産の額であること(資産割要件)、⑤その収入の額の95%超が特定子会社の株式等、当該貸付金及び当該不動産から生ずる収入の額並びに一定の預金利子の額であること(収入割要件)等の要件の全てに該当するものを指す。
 ここでいう「特定子会社」とは、その外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する持分割合10%以上の外国法人で、管理支配会社等が当該同一国において行う資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たすものを指す。また、「管理支配会社等」とは、経済活動基準を満たす部分対象外国関係会社で、その本店所在地国においてその役員又は使用人が資源開発等プロジェクトを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものをいい、その本店所在地国と同一国に所在する他の外国法人の役員又は使用人と共同で当該業務の全てに従事している場合の当該他の外国法人を含むことになる。
 上述の通り、事業要件には「石油・天然ガス等の資源」に関する事業と「社会資本の開発又は整備等」に関する事業の2つが出て来るが、このうち「石油・天然ガス等」に関する事業を例にとり、以上を整理すれば図5の通りとなる。

 本措置のポイントは、管理支配会社等の定義からも分かる通り、管理支配会社が単独で事業の全てを行っていない場合でも、パートナー(図では共同管理支配会社と表示)と共同して事業の全てを行っている場合にはペーパーカンパニーの定義から除外されるという点と、石油・天然ガス等の資源については、事業の性質上、子会社の持分割合が25%に達しないことが通常のため、それを救済するために特定子会社の定義が「持分割合10%以上」と緩くなっている点。不動産については、「不動産保有に係る一定の外国関係会社」に係る救済措置では「共同管理支配」しているケースも対象にするとは読めないため、ここで読めるようにしたということだ。
 なお、図1~4で示した救済措置とは異なり、本措置では、資産割要件には「貸付金」、収入割要件には「貸付金収入」が含まれている。これは、パートナーとの利害調整をメザニンファイナンス等を組み合わせた持分比率の調整により行っている場合を想定していることが本誌取材で確認されている。

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