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解説記事2019年06月03日 【税務マエストロ】 組織再編成の検討の実務(1)―税務担当者やアドバイザーが知っておくべきポイントと心構え(2019年6月3日号・№789)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
組織再編成の検討の実務(1)
―税務担当者やアドバイザーが知っておくべきポイントと心構え

#231 栗原宏幸(弁護士・税理士)

略歴 森・濱田松本法律事務所 パートナー。広島県呉市出身。広島学院高校、東京大学法学部、東京大学法科大学院卒業。留学先の米国スタンフォード大学、ニューヨーク大学で国際税務を学ぶ。
国際税務、税務紛争、タックス・プランニングに精通。M&A、ファイナンス等の知識・ノウハウを生かし、法務・税務ワンストップの総合的なアドバイスを得意とする。

1 組織再編成の検討の実務における問題点  本稿は、合併、分割等の組織再編成を検討する税務担当者やアドバイザーが知っておくべきポイントや心構えを筆者の経験を踏まえて紹介するものである。
 筆者は組織再編成を用いたプランニングの案件に数多く携わっているが、以下の2点が問題であると感じている。
 第一に、案件の中で依頼者や他のアドバイザーから、組織再編成の否認リスクについての漠然とした不安や(筆者からみれば過剰に)保守的な意見を聞くことがある。
 その背景には、納税者によって程度の差はあれ、組織再編成が日常的に行われる取引ではないこと、否認された場合の追徴税額が巨額となること、実際に組織再編成に関して巨額の否認事案が存在すること等があるように思われる。
 たしかに組織再編成税制は複雑であり、留意を要する検討ポイントは少なくない。しかしながら、組織再編成税制の基本的な枠組みを理解すれば、過度の不安を抱く必要はなくなり、否認リスクをより客観的に把握することが可能となる。すなわち、組織再編成税制の基本的な枠組みを改めて確認することが本稿の主題の1つである。
 この点について、組織再編成で典型的に問題となる「適格性」について結論を先取りすると、プランニングの段階においては、①組織再編成が適格要件を満たしているかどうかと、②(適格要件を満たしているとしても)当該組織再編成が行為計算の否認規定により否認される可能性があるか、の二点を検討すべきということになる。
 第二に、上記①と②の判断の枠組みに関連するが、組織再編成の検討が法人税法の規定に則っていることだけで終わっており、行為計算の否認リスクの考慮が不十分な事案が見受けられる。検討の過程において行為計算の否認リスクへの言及がない場合も珍しくないし、行為計算否認のリスクの考慮が不十分である結果、納税者自らの行為が否認リスクを高める結果となっているという場合もある。公表事案や筆者の経験を踏まえると、組織再編成に関する税務調査での指摘の大半は行為計算の否認に関するものではないかと思われる。プランニングの段階から将来の税務調査を意識して行為計算の否認リスクへの適切な対応をとっておくということが本稿で説明するもう1つの重要なポイントである。
 以上の2点について、組織再編成の適格性を題材にして以下詳しく述べる(脚注1)。

2 組織再編成の適格性  組織再編成を行う場合、その組織再編成が適格組織再編成に当たるかどうかが主要な検討事項の1つとなる。
 ここで「適格組織再編成に当たる」という意味を改めて整理すると、適格組織再編成に当たらない場合(非適格組織再編成の場合)、消滅会社等は移転資産への譲渡益課税等を受け、消滅会社等の株主は株式譲渡益やみなし配当への課税を受けるが、適格組織再編成に当たる場合、消滅会社等とその株主に対する課税は繰り延べられる。この課税繰延べの取扱いは、「移転資産に対する支配の継続性が認められる場合には組織再編成の前後で経済実態に実質的な変更がないから課税の繰延べを認める」という基本的な考え方(脚注2)に基づくものである。
 消滅会社等に対する譲渡益課税は、移転資産の直前の簿価と時価との差額に対する課税であり、個々の資産の譲渡益に加えて、いわゆる「のれん」の譲渡益についても課税される(脚注3)。そのため、ある組織再編成が適格組織再編成に当たる場合は巨額の節税をすることができるが、その裏返しとして、その後の税務調査で非適格であるとして否認された場合、巨額の追徴課税を受ける可能性がある。

3 納税者が適格性を判断する必要がある  現行法上、後述する事前照会手続きを除き、組織再編成が適格かどうかを税務当局が事前に判定したり、適格性を税務当局が承認したりするプロセスは存在しない。そのため、組織再編成が適格であるか否かは、その他の多くの取引と同様に、原則として納税者の責任において判断して確定申告を行う必要があり、申告後に税務調査が入った際にその適格性の否認が問題となる。
 また、事前照会を活用する場合であっても、後述のとおり事前照会手続きには一定の限界がある。例えば、照会の前提と異なる事実関係の下で組織再編成を行った場合には、照会の回答は妥当しないため、税務調査で適格性が否認される可能性がある。また、照会内容が法解釈ではなく、事実の評価やあてはめに依拠する場合や、当局が租税回避行為に該当する可能性があると判断する場合には、回答が得られないこともある。その場合には照会を行わない場合と同じく、納税者の責任において適格性を判断することになる。

4 事前照会の活用とその限界  納税者がある取引を行う際にその課税関係を税務署等に事前照会することは一般に可能とされている。組織再編成については、各国税局課税部審理課等が事前照会を担当することとされている(脚注4)。
 組織再編成の適格性が否認された場合のインパクトの大きさを踏まえると、この事前照会により適格性について事前に税務当局の確認を得ておくという対応は検討に値する。
 もっとも、事前照会にはいくつかの留意事項があり、必ずしも全てのケースにおいて活用できるものではないという点は注意しておく必要がある。
 第一に、事前照会の所要期間である。国税庁によれば、簡単な照会に対する口頭での回答であれば、原則として照会からおおむね1ヶ月以内に回答するとされている(脚注5)。しかしながら、一般には、事前照会への回答は、照会から(追加資料の提出が必要とされた場合にはそれらの資料を全て提出してから)おおむね3ヶ月を要するとされている。そのため、スケジュールの観点から事前照会を利用可能かどうかは、個別事案ごとに検討を行う必要がある。
 第二に、事前照会は、一定の事実関係を前提にして法解釈についての税務当局の考え方を示すものであり、前提となる事実関係の詳細な説明が納税者に求められる。そのため、照会書に納税者が想定している事実関係が正確に記載されているかという点について、専門家のアドバイスも受けながら細心の注意を払う必要がある。それは、照会の前提とした事実関係と実際の事実関係が異なる場合や、重要な事実関係が照会書に記載されないまま回答を得た場合には、事前照会の回答に基づいて組織再編成の課税関係を判断してよいかについて疑義が生じるためである。
 第三に、照会の前提となる事実関係に複数の選択肢がある場合や、個々の財産の評価・取引等価格の算定や合併比率の算定に関するもの、組織再編成に係る行為計算の否認規定の適用の有無などについては、照会の対象とならないとされている(脚注6)。また、上述のとおり、照会内容が法解釈ではなく、事実の評価やあてはめに依拠する場合や、当局が租税回避行為に該当する可能性があると判断する場合には、回答が得られないこともある。
 事前照会を利用するかどうかは、以上の留意点を踏まえて専門家も交えて個別具体的に検討することが必要である。

5 税務当局が適格性を否認する法的根拠は2つのみ  税務当局が組織再編成を否認する法的根拠は、大別して2つに分けられる。
 第一に、「組織再編成が適格要件を満たしていないから非適格である」というものであり、第二に、「組織再編成に係る行為計算の否認(法人税法132条の2)等のいわゆる『行為計算の否認規定』に基づいて否認する」というものである。
 それぞれの留意点は追って説明するが、ここでの重要なポイントは、「税務当局が組織再編成を否認することができる正当な法的根拠は、基本的には以上に紹介した二つしかない」という点である(脚注7)。税務調査の調査官は納税者を説き伏せるために様々な説明をするが、組織再編成を否認するためには上記の法的根拠のいずれかに依拠する必要があり、そうでなければ当局内部の決裁も通らない。
 以上より、プランニングの段階において検討すべきポイントも、①組織再編成が適格要件を満たしているかどうかと、②(適格要件を満たしているとしても)当該組織再編成が行為計算の否認規定により否認される可能性があるか、の二点ということになる。この点、上記4.のとおり後者の行為計算の否認規定の適用については事前照会の対象とならないとされているため、事前照会をする場合であっても、行為計算の否認規定に関しては別途専門家を交えて検討をする必要があることに注意が必要である。
 次号では、①と②を検討する際の実務上のポイントを紹介する。(以下、次号に続く。)

脚注
1 本稿の内容は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する法律事務所の見解ではない。
2 政府税制調査会が平成12年10月に公表した「会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本的考え方」参照。
3 「のれん」は事業の超過収益力であるとか、無形資産の価値であると説明されることが多いが、実務的には、移転対象事業の時価総額と個々の移転資産の時価の合計額の差額と考えるのが便宜である。例えば、移転対象事業の時価総額が2億円、個々の移転資産の時価の合計額が1億5000万円の場合、差額の5000万円が「のれん」の譲渡益として課税される。
4 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/saikenshien/01.htm 
5 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/saikenshien/02.htm(Q5)
6 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/saikenshien/02.htm(Q7)
7 以上のほかに、納税者のある法律行為は真実は別の法律行為であると事実認定をして、その別の法律行為に即した税務処理に否認する手法(いわゆる私法上の法律構成による否認)も考えられる。もっとも、組織再編成については、株主からの承認、債権者異議手続き等の適用法令に基づく手続きが行われるから、ある組織再編成が真実は別の法律行為であると事実認定することは一般に困難であると考えられる。

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